IT技術の活用で薬の詳しい情報が手に入る!製薬会社からの情報提供方法を解説
薬の情報提供は、長らくMRが重要な役割を担っています。
これに加えて、IT技術の活用による情報提供という選択肢も加わっています。
ここでは製薬会社から薬の詳しい情報を入手する新しい選択肢として、IT技術を使った情報提供方法を解説していきます。
IT技術の活用で、医師のニーズに沿った薬の情報を提供できる
製薬会社からの情報はIT技術を活用することで、薬についての情報をスピーディーかつ適時に提供することができます。
また医師も「薬についての中立的な情報提供」を求めていますから、IT技術の活用はこのニーズに沿ったものとなります。
●年齢が若い医師ほど、中立的な情報提供を求めるニーズがある
日本医療・病院管理学会誌2017年1号に発表された研究結果によると、20代から40代の医師の場合は、薬の長所だけでなく短所も含めた、中立的な情報提供を求める傾向が強くなっています。
このため、製薬会社からの情報提供の重要性はより増しています。
●適切な情報をタイムリーに提供できる
製薬会社からの情報提供手段としては、MRも重要な役割を果たしています。
しかしMRも日々多忙なため、毎日同じ医師のもとへ訪問することはなかなかできません。
この点でIT技術の活用は、情報をタイムリーに提供できる点で優位性があります。
●複数の情報提供手段を使い分ける
医師は大変忙しい職業です。
このため有用な情報であっても、毎日大量の情報を送信するといったやり方ではなかなか読まれず、日々の診療にも生かされません。
このため製薬会社からの情報発信には、複数の情報提供手段を使い分けることが求められます。
この点についてITmediaの情報によると、医師への情報提供手段には以下の4種類があるとされています。
- ○MRがeディテーリングツールを持参して訪問(2週に1回程度、情報量が多い)
- ○オウンドメディアや医療従事者向けのWebサイト(必要の都度閲覧、情報量が多い)
- ○メルマガ(週1回程度、情報量は中程度、URL添付可)
- ○LINEなどのメッセージングツール(毎日でも可、情報量は少ない、URL添付可)
これにより用途にあわせて、以下のような使い分けが可能となります。
- ○細部までの詳しい情報はeディテーリングツール
- ○じっくり読みこんでもらう記事はオウンドメディア
- ○メッセージングツールでは短く要点を伝えて、関心のある場合はURLの先にある文書を読んでもらう
特に最後のメッセージングツールは情報量が少ないため、ストレスの少ない情報伝達を行える点で有効な方法となります。
IT技術を利用した情報提供の事例
IT技術を利用した薬の情報提供には、すでにいくつかの事例があります。
それぞれの事例について、解説していきます。
●医師のニーズに応じてメルマガの内容を最適化
ファイザーは、2010年2月から医療関係者向けの会員サイト「ファイザープロ」を通じて、情報提供やメルマガ配信などを行っています。
ファイザープロでは全会員に一律のメルマガを送付するのではなく、医師のニーズに応じてメルマガの内容を変えていることに特色があります。
実現方法としては、まず医師が過去のメルマガに対して、どのようなキーワードに反応したかを記録し、ファイザー側で4つのグループに分けます。
それぞれのグループに対して、タイトルと項目の並び順を最適化した上でメルマガを配信します。
この方法によりメルマガの開封率とクリック率が上昇し、効果のある情報提供が可能となります。
●LINEを利用した情報提供の事例
トランスコスモスは「LINEビジネスコネクト」を用いて、アストラゼネカの「医療関係者向け公式LINEアカウント」取得を支援しました。
2015年12月25日から、アストラゼネカは医療関係者向けサイト「MediChannel」会員向けに、LINEでの情報提供サービスを開始しています。
LINEではセミナーや新製品などの情報が配信されています。
これにより新着情報を速やかに受け取れることはもちろん、最新の文献検索や、専門分野に合った情報を受け取れるといったメリットもあります。
薬に関する情報入手手段は使い分けが重要
製薬会社から情報を入手する方法としては、IT技術を活用した方法のほかに、MRも重要な役割を担っています。
それぞれの情報入手手段には特徴がありますから、使い分けが大切です。
●すべての情報が公開されているわけではない
インターネットにはさまざまな知が集積されていますが、すべての情報が公開されているわけではありません。
たとえば社外秘の情報であるが、提供先を絞れば公開可能という情報を提供する役割として、MRは最も適しています。
●MRはIT技術で送信できない個別の情報を、きめ細かく伝えることも可能
さきに紹介した日本医療・病院管理学会誌の研究成果によると、20代・30代の医師は症例ベースの情報提供を求める傾向もあります。
つまり、情報を聞いて患者のイメージが浮かぶかどうかも重要視しているわけです。
これらは、IT技術で一斉に送信することが難しい情報です。
このため個々の医療機関のニーズに沿った情報は、MRから得ることが適しています。
IT技術の活用により、さまざまな情報が入手可能となる
IT化が進むことによって、さまざまな情報が入手可能となります。
ベースとなる情報入手はITによって行われるようになるかもしれません。
たとえばメルマガやLINEなどでも、ニーズに沿った情報提供はある程度まで行うことが可能です。
しかしMRからは、医療機関個別のニーズに沿った情報の提供が受けられます。
これまで以上に多種多様な情報が入手できる社会ですから、確かな判断をするための情報を得ることが可能となります。
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参考:
ITmedia 製薬企業のマーケティングを変えるデータ活用【第3回】医療従事者向け情報提供ツールの膨大な選択肢から効果的な手段を選ぶコツ.
http://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/1704/10/news03.html(2018年7月11日引用)
ミクス 製薬企業からMRがいなくなる日 動き出した製薬産業の構造改革、情報ソースはMRからIT・AIにシフト.
https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/54991/Default.aspx(2018年7月11日引用)
一般社団法人日本医療・病院管理学会 日本医療・病院管理学会誌2017年1号.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsha/54/1/54_19/_pdf/-char/ja pp.19-30(2018年7月11日引用)
厚生労働省 医師の労働時間を取り巻く状況について(第5回 医師の働き方改革に関する検討会).
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000189113.pdf p.16(2018年7月11日引用)
シナジーマーケティング 事例 ファイザー株式会社.
https://www.synergy-marketing.co.jp/showcase/pfizer/(2018年7月22日引用)
トランスコスモス トランスコスモス、アストラゼネカのLINE ビジネスコネクト導入を支援.
https://www.trans-cosmos.co.jp/company/news/151225.html(2018年7月22日引用)
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執筆者
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千葉県在住で、ITエンジニアとして約14年間の勤務経験があります。過去には家族が特別養護老人ホームに入所していたこともありました。2018年からは関東にある私大薬学部の模擬患者として、学生の教育にも協力しています。
現在はライターとして、OG WellnessのほかにもIT系のWebサイトなどで読者に役立つ記事を寄稿しています。
保有資格:第二種電気工事士、テクニカルエンジニア(システム管理)、初級システムアドミニストレータ