輸液や経腸栄養の患者さんの栄養計算も、アプリで簡単に行える時代に
入院中の患者さんには食事だけでなく、輸液や経腸栄養などを組み合わせて栄養を取る方もいます。
適切な投与量の計算は難しく手間がかかる一方で、栄養計算を手軽にできるアプリも登場しています。
ここでは栄養計算アプリの有用性と課題について解説します。
複数の方法で栄養を摂取する患者さんに関する課題
患者さんの中には入院中の方を中心に、以下のうち複数の方法で栄養を摂取する方もいます。
- ○静脈栄養
- ○経腸栄養
- ○食事
患者さんの栄養状態を管理するためには、摂取する栄養をトータルで考えることが必須であるため、栄養量の計算が必要です。
ここでは課題を2点取り上げ、解説していきます。
●栄養量は算出するべき項目が多く、摂取方法により計算方法も異なる
栄養量の計算方法は、栄養を摂取した手段により異なります。
加えて栄養計算は、算出するべき項目が多いことも特徴です。
一例として以下に挙げる項目がありますが、これにとどまりません。
- ○エネルギー
- ○アミノ酸、たんぱく質
- ○脂質
- ○水分
- ○糖質
- ○食塩相当量
- ○ミネラル
一方で複数の手段で栄養を摂取している患者さんについては摂取方法ごとに計算を行った後、それぞれを合算した上で患者さんの必要量を満たしているかチェックすることが求められます。
特に食事の場合はメニューが多いため、選択肢も膨大となります。
従って適切なものを選んで計算することは、煩雑となりがちです。
特に手計算で行う場合は計算するべき箇所が多いため、間違いが起こる可能性も高くなります。
●パソコンで栄養摂取状況を計算できるツールは、患者さんの近くで操作しにくい
もっとも患者さんの栄養摂取状況を計算する上で、パソコンで使えるツールは存在します。
一例として経腸栄養については、NPO法人PDN(Patient Doctors Network)が提供する「PDN栄養管理プログラム」があります。
一方、パソコンで操作するツールには難点もあります。
それは机の上など、パソコンのある場所でしか操作できないという点です。
近年ではパソコン自体も軽いものが出ていますが、最低でも700g前後の重さがあるため、院内で持ち運ぶには不便です。
もしスマートフォンやタブレットで操作できれば、患者さんのベッドサイドで実際に滴下されている栄養剤の状況を見ながらシミュレーションできるメリットがあります。
栄養計算のシミュレーションにアプリを活用するメリット
栄養計算のシミュレーションにスマートフォンアプリを活用することには、それ以外の方法とくらべて3つのメリットがあります。
それぞれのメリットについて、順に解説していきます。
なおスマートフォンで栄養計算を行うアプリには、株式会社タスと滋賀医科大学付属病院栄養治療部で共同開発した「Easy NST」があります。
●複数の方法で栄養を摂取している患者さんも、必要な栄養をすばやく正確に計算できる
栄養計算アプリを使うと、複数の方法で栄養を摂取する患者さんに対しても、必要な栄養をすばやくかつ正確に計算できる点が主なメリットに挙げられています。
栗原らが2017年に公表した研究によると、Easy NSTは手計算に対して、以下の優位性があるという結果を得ています。
- ○研修医が使用した場合は手計算よりも3分の1程度の時間ですみ、かつ正しい値を算出できる
- ○管理栄養士が使用した場合はほぼミスなく算出でき、手計算よりも3分の1から4分の1程度の時間ですむ
●栄養計算の算出式を細かく覚えなくてもシミュレーションができる
栄養計算アプリは複雑な栄養計算の式を細かく覚えていない方でも、正確な値を算出できることも特徴の1つです。
従って、着任したばかりの医療職の方でも簡単に使えることはメリットに挙げられます。
また栄養計算に詳しい医療スタッフの時間も節約でき、ほかの業務に時間を割り当てられるというメリットも期待できます。
●シミュレーションが容易なため、投与する栄養の種類や量を細かく調整しやすい
栄養計算アプリを利用するメリットには時間の節約はもちろん、面倒な計算から解放されるという心理的なものも見逃せません。
とかく栄養計算に手間がかかると、とりあえず問題のない組み合わせが出たら「とりあえずこのパターンでいいか」ということで妥協するケースもあるのではないでしょうか。
しかし栄養計算アプリにより簡単に栄養計算のシミュレーションができると、さまざまなパターンを手軽に試算できるようになります。
従って投与する栄養の種類や量を細かく調整し、ベストの組み合わせが出るまでシミュレーションを続けやすくなります。
このことは、患者さんの回復がより早くなるなどの効果が期待できます。
加えて早期退院に結びつけることができれば、入院が必要なほかの患者さんを受け入れることも可能となります。
このように栄養計算アプリの導入により、さまざまな面でメリットをもたらすことが期待できます。
アプリを使った栄養計算の課題
アプリを使った栄養計算の主なサービスであるEasy NST は、以下のモバイル端末にのみ対応しています。
- ○iPhone
- ○iPad
- ○iPodTouch
従ってAndroid OSに対応したスマートフォンやタブレット端末では、栄養計算アプリを利用できないことが難点です。
ナースコールシステムなどではAndroid OSに対応するサービスがありますから、栄養計算アプリでも対応するサービスの開発が待たれます。
きめ細かい栄養管理をするためには、アプリの導入も選択肢
栄養管理アプリは、経験の少ない医療スタッフでも短時間で正確に栄養計算が行えることが魅力です。
患者さんに対してよりよい組み合わせを試しやすくなるため、栄養管理アプリはきめ細かい栄養管理の実現に大きく貢献しうるサービスです。
もっとも栄養管理アプリは有料であり、Androidスマートフォンにも未対応です。
しかし導入の環境が整っている場合は、栄養管理アプリの検討も選択肢の1つとなるでしょう。
参考:
栗原美香, 佐々木雅也 輸液・経腸・経口摂取栄養計算アプリ「easyNST」の有用性.(2019年9月21日引用)
インプレス 今買いの“1kg切り”超軽量ノートPCを一斉比較【2019年春版】.(2019年9月21日引用)
タス 栄養シミュレーションアプリ Easy NST.(2019年9月21日引用)
Patient Doctors Network NST活動と栄養アセスメント.(2019年9月21日引用)
コーエイコンピューターシステム 栄養管理ソフト 病院/施設/ランチ/簡易版「EIBUN Pro/Lite」.(2019年9月21日引用)
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執筆者
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千葉県在住で、ITエンジニアとして約14年間の勤務経験があります。過去には家族が特別養護老人ホームに入所していたこともありました。2018年からは関東にある私大薬学部の模擬患者として、学生の教育にも協力しています。
現在はライターとして、OG WellnessのほかにもIT系のWebサイトなどで読者に役立つ記事を寄稿しています。
保有資格:第二種電気工事士、テクニカルエンジニア(システム管理)、初級システムアドミニストレータ