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失語症や構音障害を、ロボットを活用して改善する方法を紹介します

失語症や構音障害は脳卒中の主な症状の1つであり、QOLを向上させる上でぜひ改善させたい症状です。
そのトレーニングには、ロボットを活用した取り組みも行われています。
本記事ではロボットを活用する取り組みと、そのポイントを考えていきます。

失語症や構音障害を、ロボットを活用して改善する方法

失語症や構音障害のリハビリにおける特徴と課題

失語症や構音障害を治療する主な手段の1つに、手や足などと同様、リハビリが挙げられます。
しかし言語に関するリハビリを実施する上では、特有の課題があります。
本記事ではロボットを活用したリハビリについて、改善に向けた試みと可能性、および課題について考えていきます。

なお失語症や構音障害についての詳しい解説は、弊社Webサイト内の記事「失語症とは?種類や構音障害との違いをわかりやすく解説」をご参照ください。

●失語症や構音障害は手足よりも長期間にわたり、リハビリによる回復が期待できる

失語症や構音障害は手足よりも長期間にわたり、リハビリによる回復が期待できる

厚生労働省「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」によると、脳卒中に罹患した患者における機能回復が見込める目安は、以下の期間となっています。

  • ○運動機能はおよそ発症から 3~6 カ月までに顕著に回復し、それ以降はあまり変化が見られなくなる
  • 言語機能などは 1 年を経過して徐々に改善する傾向がある

失語症や構音障害は言語機能に分類されますから、手や足よりも長期間にわたり、リハビリによる回復が期待できます。
この点について野原は、重度の失語症となった脳梗塞の患者に対して1年半のリハビリを行ったところ、ほとんど話せない状態から発話が増えるまでの回復を得た事例を報告しています。

●医療保険制度では、入院で受けられるリハビリに日数制限がある

脳卒中となった場合、まずは急性期の病院に入院後、2カ月以内に回復期リハビリテーション病棟を備える病院に移ることとなります。
専門的なスタッフが揃った病院で十分なリハビリを期待したいところですが、医療保険の制度上では、入院してリハビリできる期間が原則として150日までに制限されています。

そのため多くの患者は入院後150日に達すると、まだ回復の余地があってもリハビリ病院を退院しなければなりません。
以後は外来での対応となりますが、入院時と同じようなサポートやトレーニングは望めません。
従って失語症や構音障害の回復が見込める患者さんに対して、退院後にどのようなサポートを行うかは重要な課題の1つです。

●言語聴覚士の人数も不足している

言語聴覚士の人数も不足している

失語症や構音障害に対応するリハビリ職には、言語聴覚士があります。
この資格は1997年に創設された新しい国家資格ということもあり、2019年3月現在で働いている方は15,198人と、まだ多いとはいえません。
東京都を除くとどの道府県も1,000人未満であり、特に東北地方では110~150人程度しかいない県も少なくありません。
一方で介護・医療用アプリの開発・運用を行っていた株式会社ロボキュアが2018年6月に公表した情報によると、言語聴覚士を求める患者は600万人以上いるとしています。

従って言語聴覚士のサポートが必要な症状であっても、すべての患者が必要なサポートを受けられるとは限りません。
このため失語症や構音障害を回復するポテンシャルとチャンスを生かすことができず、不本意の状態のまま症状が固定してしまう恐れもあります。

ロボットによるトレーニングは、失語症改善への有力な選択肢の1つ

 ロボットによるトレーニングは、失語症改善への有力な選択肢の1つ

これまでに解説した通り、失語症や構音障害は長期間のリハビリでも回復が見込める症状です。
しかしリハビリを続ければさらなる回復が見込める患者に対し、公的保険による制度上の制約により治療を諦めなければならないことは、本人だけでなく医療スタッフにとってももどかしく思うものです。

この点でロボットを活用したトレーニングは医療機関以外でも可能であり、かつ公的保険の制約を受けずに行うことも可能です。
従って失語症や構音障害の患者さんにとって、ロボットによるトレーニングは改善への有力な選択肢となり得ます。

特にロボットに対しては人間を相手にする場合と異なり、「相手にどう思われるか」ということを気にする必要がありません。
従って患者さんはきちんと話せなくても、恥ずかしがらずにトレーニングを進められることがメリットの1つに挙げられます。

ロボットを活用した失語症や構音障害を改善する試み

ロボットを活用した失語症や構音障害を改善する試み

失語症や構音障害の患者さんに対して、ロボットを活用して症状を改善する試みが行われています。
ここではPaPeRo iを用いたトレーニングを紹介し、その内容と効果について解説します。

PaPeRo iはNECプラットフォームズが提供する、高さ30cm、横20cmのロボットです。
NECソリューションイノベータは脳梗塞リハビリセンター(株式会社ワイズ)の監修を得て、PaPeRo iを用いた「NEC 言語トレーニング支援サービス」を提供しています。
このサービスは、PaPeRo iが音声で単語や短文を示し、患者はそれに答えたり復唱したりすることでトレーニングを進めるものです。
特徴として、健康保険や介護保険制度の枠外で実施できることが挙げられます。
またこのサービスは主に介護施設など、高齢者施設で使われることを想定しています。

NECソリューションイノベータは2017年5月、全国にある6カ所の介護関連施設にPaPeRo iを設置し、主に要介護3以下の高齢者に対して実証実験を行いました。
その結果、比較的不自由の度合いが高い方においても、個室や自宅で積極的にトレーニングをする姿が見られたという報告がされています。

アシスティブはこのサービスを活用し、高齢者施設向けの「あんしんクラウド」にPaPeRo iを使った言語トレーニングプログラムを含める形で提供しています。
PaPeRo iが発話した単語を復唱するトレーニングの動画も公開されているため、実際にどのようなトレーニングが行われるか確認することが可能です。

ロボットを用いた失語症や構音障害を改善するポイントと可能性

ロボットを用いたリハビリのサービスが提供され始めていることは、ここまで述べた通りです。
将来に向けて可能性のあるサービスといえますが、同時にサービスを受けるに当たって押さえておきたいポイントもあります。
最後の章では、この点について考えていきます。

●医療保険や介護保険などの制約を受けなくても、さまざまな場面でトレーニングが可能

ロボットを用いたトレーニングは、医療保険や介護保険の枠外となっています。
その反面、保険制度の制約を受けないため、成果が得られるならば何カ月でもトレーニングを続けられることは魅力です。
また、さまざまな場面でトレーニングが行えることも特徴の1つです。

●小型で手頃な価格のロボットを使えば、家庭でのトレーニングも可能

失語症のリハビリを受けている患者さんのなかには、自宅でもトレーニングをしたいと思う方もいるかもしれません。
その場合、家庭でロボットを導入することは1つの選択肢です。
施設で行うトレーニングと同じことはできないまでも、症状の改善に向けてロボットを役立てることは可能です。

この点、PaPeRo i は家庭でのトレーニングに使える可能性のあるロボットです。
高さ30cm、横20cmという大きさは、自宅での存在感を出しつつも邪魔にならない大きさです。
価格はオープンプライスとなっていますが、年間契約で初期費用5万円強、月額1万円程度で利用できる場合もあります。

将来はロボットを使い、家庭でも手軽にトレーニングできるサービスの普及が期待される

将来はロボットを使い、家庭でも手軽にトレーニングできるサービスの普及が期待される

失語症や構音障害は、ロボットを使うことにより改善が期待できる結果が得られています。
これにより実用化されているサービスもありますが、現状では施設向けのサービスが主体となっています。
その一方、在宅で過ごす患者も多いですから、家庭でロボットを使ったトレーニングができれば失語症や構音障害を改善できる患者も増えるでしょう。
将来はロボットを使い、家庭でも手軽にトレーニングできるサービスの普及が期待されます。

参考:
オージー技研 失語症とは?種類や構音障害との違いをわかりやすく解説.(2019年10月26日引用)
オージー技研 リハビリテーションとは?理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の違いと役割をわかりやすく解説!.(2019年10月27日引用)
オージー技研 【回復期編】脳卒中の症状とリハビリテーション 家族が知っておきたいポイントを解説.(2019年10月27日引用)
厚生労働省 事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン 参考資料 脳卒中に関する留意事項.(2019年10月27日引用)
野原愛 約1年半にわたる言語訓練により改善を認めた重度失語症例.(2019年10月27日引用)
一般社団法人 回復期リハビリテーション病棟協会 回復期リハビリテーション病棟とは.(2019年10月27日引用)
明治安田システム・テクノロジー MY介護の広場 脳出血のリハビリテーション.(2019年10月27日引用)
一般社団法人 日本言語聴覚士協会 会員動向.(2019年10月27日引用)
一般社団法人 日本言語聴覚士協会 言語聴覚士とは.(2019年10月29日引用)
マイナビ 【平成31年 言語聴覚士国家試験結果速報】.(2019年10月27日引用)
メディケア・リハビリ 言語聴覚士(ST)の地域医療での役割とは?今、在宅分野で求められる言語聴覚士(ST).(2019年10月29日引用)
ロボキュア ロボキュア、言語リハビリサービス「ハナセル」を提供開始.(2019年10月27日引用)
ワイズ 脳梗塞リハビリセンター 言語リハビリロボット「PaPeRo i(パペロアイ)」.(2019年10月26日引用)
NECソリューションイノベータ NEC 言語トレーニング支援サービス.(2019年10月26日引用)
NECソリューションイノベータ NEC 言語トレーニング支援サービス 実証実験レポート.(2019年10月26日引用)
財経新聞社 NECソリューションイノベータ、「NEC 言語トレーニング支援サービス」を提供.(2019年10月26日引用)
ロボットスタート PaPeRo i(パペロ アイ).(2019年10月26日引用)
NECプラットフォームズ PaPeRoi.(2019年10月26日引用)
アイティメディア NECプラットフォームズ、サービスロボット「パペロ」を披露.(2019年10月29日引用)
アシスティブ トップページ.(2019年10月27日引用)
アシスティブ パペロくんとお話トレーニング動画公開.(2019年10月26日引用)
アシスティブ 190503 パペロくんと言語トレーニングv1.(2019年10月26日引用)
アシスティブ 高齢者介護施設向けサービス.(2019年10月26日引用)

  • 執筆者

    稗田 恵一

  • 千葉県在住で、ITエンジニアとして約14年間の勤務経験があります。過去には家族が特別養護老人ホームに入所していたこともありました。2018年からは関東にある私大薬学部の模擬患者として、学生の教育にも協力しています。
    現在はライターとして、OG WellnessのほかにもIT系のWebサイトなどで読者に役立つ記事を寄稿しています。
    保有資格:第二種電気工事士、テクニカルエンジニア(システム管理)、初級システムアドミニストレータ

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