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患者への手術の説明にITを用いることで、スタッフや説明時間を増やさなくても効果的に行える

手術が必要となった場合、患者に対する事前説明は欠かせません。
しかし医療機関と患者の双方にとって改善すべきいくつかの課題があるため、ITによる解決が期待されています。
本記事では、手術の事前説明にITを活用する取り組みとメリットを解説します。

患者への手術の説明にITを用いることで、スタッフや説明時間を増やさなくても効果的に行える

手術前に行う患者への事前説明には、3つの課題がある

手術前に行う患者への事前説明には、3つの課題がある

手術を行う前に、今後患者が受ける手術の内容を事前に説明することはもちろん重要です。
患者の側も同様の認識をしているため、いくら時間がなくても省略はできません。

しかしこの事前説明には多くのマンパワーが割かれるなど、いくつかの課題があります。
本記事でははじめに事前説明の課題を3点取り上げ、それぞれの課題を考えます。

●手術の事前説明は患者も重要と考えているため、時間がなくても省けない

患者がいざ手術を受けることになった場合、ほとんどの方は手術そのものやその後について、多少なりとも不安や心配があるものです。
そのため患者の側も事前説明を重要と考えており、また不安や心配事が和らぐ効果が得られています

栗山らは帝京大学医学部附属溝口病院において、「麻酔の術前説明に対する患者の満足度、不安感の調査」を行いました。
有効回答99例に対して、以下の結果を得ています。

  • 〇十分な説明を求めた患者は81例
  • 〇事前の説明に対して不安が解消された患者は85例

多くの方は、「私の身体に何かするのであれば、きちんと説明してほしい」ということは感覚的に理解できるでしょう。
この調査は上記の内容を裏付けるものですから、いくら時間がなくても事前説明を省くことはできません。

●入院日数の短期化に伴い、外来での十分な説明が求められる

もう1つの課題には、事前説明を行うタイミングが挙げられます。
それは入院日数の短期化により、入院の予約時や通院時に時間をかけた、十分な説明の実施が求められているためです。

厚生労働省の「患者調査の概況」によると、平成11年から平成23年までの12年間で、入院日数は大きく減少しています。

項目 平成11年(1999年) 平成23年(2011年)
手術前平均在院日数 6.7日 4.7日
手術後平均在院日数 18.4日 14.4日

しかし患者にとっては入院日数が短くなったからといって、手術そのものの不安や心配が和らぐわけではありません。
従って入院する前であっても手術が決まった段階で、外来での十分な説明が求められます。

●忙しいかどうかに関わらず説明に十分な時間を要するため、スタッフの負担軽減が課題

一方で手術の事前説明は、時間を要することも課題の1つです。
たとえば白内障の手術でも、30分程度の時間を要する場合があります。

もし入院後に説明する時間が取れなければ、必然的に外来で説明を行わざるをえません。
1日に何人もの患者に説明を行うと、医療スタッフの負担は増すことも事実です。
このためITの活用により、スタッフの負担軽減と患者の不安軽減の両立が期待されます。

手術前の説明にITを活用した例

手術前の説明にITを活用する方法には、さまざまなものが実用化されています。
一例としてタブレットやロボットの活用、動画による情報提供などがあります。
ここでは3つの事例を取り上げ、それぞれの活用方法と効果を解説します。

●タブレット端末の活用で、対面での説明時間を短縮

タブレット端末の活用で、対面での説明時間を短縮

はじめに、タブレット端末の活用で説明の質を保ったまま医師の説明時間を3分の1に短縮できた、岩井医療財団の例を取り上げます。
岩井医療財団は、「岩井整形外科内科病院」「稲波脊椎・関節病院」を運営する医療法人です。

岩井整形外科内科病院では、毎日7~8件の脊椎内視鏡下手術を行っています。
このことは手術前の説明も1日7~8件程度あることを意味しますが、説明に要する時間は患者ひとり当たり30分以上となる場合もあります。
そのため、ほかの患者を長時間待たせるといった課題が生じていました。

新しく開設された「稲波脊椎・関節病院」では上記の課題を踏まえて、Wi-Fi設備を設けました。
あわせて、専用のタブレット端末で資料を閲覧できる体制も整えています。
患者は待合室でタブレット端末を操作して、手術の基本的な説明を各自のペースで見ることが可能です。
これにより医師はすべての患者に共通する部分の説明を省き、患者各自に即した説明に集中して時間を費やすことができます。
その結果説明の質を保ったまま、時間を10分程度に縮めることができました。

岩井医療財団ではこの成果を受けて、手術後のリハビリの説明にもタブレット端末を活用しています。

●ロボットを活用する

ロボットを活用する

手術前の説明には、ロボットを活用する方法もあります。
富山大学附属病院の眼科では、日々白内障の手術を多く行っていますが、事前説明に30分程度の時間を要します。
この手術や入院に関する事前説明を効率化する目的で、2016年に人型ロボットのPepperを導入しました。

Pepperは人間と異なり「さっき言ったでしょ」などと文句を言わないため、患者は納得いくまで説明を聞き直せます。
このことは患者が手術を十分に理解し、安心して手術を受けられる点で大きなメリットです。

●手術前の麻酔や手術前後のリハビリについて、動画でいつでも自宅で確認できる

手術前の麻酔や手術前後のリハビリについて、動画でいつでも自宅で確認できる

3例目には自宅にいながら動画で手術の説明を受けられる、千葉大学医学部附属病院の事例を取り上げます。
千葉大学医学部附属病院では「動画解説 手術を受けることが決まったら」ページを設けています。
このため患者は手術に伴う麻酔やリハビリの情報を、いつでも確認できます。
1つの動画は長くても5分程度であるため、忙しい方でも短い時間で確認できることも特徴です。
いつでも知りたいときに情報を得て疑問を解決できることは、安心して手術を受けることにつながります。

ITを活用して手術前の説明を行うメリット

ここまで解説した通り、手術前の説明にITを活用することで、医療機関と患者の双方にメリットが得られます。
本記事の最後では、ITを活用する3つのメリットを解説します。

●患者のペースで理解を進められる

患者が対面で説明を受ける場合、ある程度医師や看護師などのペースに合わせる必要があります。
一方でタブレット端末やロボットの場合は、操作を患者自身の手で行うことが特徴です。
これにより、以下に挙げる3つのメリットが得られます。

  • 〇自由に端末を操作し、各自のペースで読み進められる
  • 〇内容を理解してから次の画面へ進められる
  • 〇不明な点が出てきたらその場所へ戻り、読み返すことができる

ITの活用により、患者のペースで手術への理解を深めることが可能です。
従って不明点や不安が少なくなり、納得いく状態で手術を受けやすくなることが期待できます。

●説明の時間が短縮できる

手術の説明にITを活用することには、医療機関側のメリットもあります。
それは限られた人員を、より「対面で行うことが求められる」職務に当てられることが挙げられます。
たとえば30分の説明時間をタブレット端末の導入で以下のように変えれば、医療スタッフに求められる時間は半分に減ります。

  • 〇タブレット端末での説明時間:20分
  • 〇対面での説明時間:15分

上記により医療スタッフの負担を軽減しながら、患者への満足度を向上させることも可能な点は見逃せません。

●手術への理解が向上し、事前準備を積極的に行ってもらえる

ITの活用は、患者自身が手術への理解度を向上することにもつながります。
そもそもタブレット端末などで自分のペースで読み進むことには、患者自身の能動的な操作が求められます。
これにより、患者は「医者から言われたから受ける手術」から「自分で受ける手術」というように、手術をより「自分自身のこと」として受け止めることが可能です。
また手術によって起こりうる事態を積極的に知ることにつながるため、事前の準備も積極的に行ってもらえることが期待できます。

ITを手術の事前説明に活用することで、医療スタッフが少なくても充実した説明を実現できる

手術の事前説明は重要なため省けないものの、ITの活用により医療スタッフが直接関わる時間を省くことは可能です。
あらかじめ充実した資料を用意しておけば、少ない医療スタッフでも患者に対して充実した説明を実現できることは、大きなメリットといえます。
スタッフの退職があっても影響を少なくできる点も見逃せません。
患者の不安解消と人手不足への対応を両立できる方法として、有力な1つの方法といえるでしょう。

参考:
栗山陽子, 内村彩子, 他:麻酔の術前説明に対する患者の満足度、不安感の調査. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/27/4/27_4_326/_pdf (2020年2月14日引用)
小笠美春, 當目雅代, 他:「待機手術患者用心配事アセスメントツール」の開発と信頼性・妥当性の検討. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsnr/36/5/36_20130910001/_pdf/-char/ja (2020年2月14日引用)
厚生労働省 平成11年患者調査の概況. https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/kanja99/index.html (2020年2月14日引用)
厚生労働省 平成11年患者調査の概況 (3)手術前在院日数・手術後在院日数. https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/kanja99/4-3.html (2020年2月14日引用)
厚生労働省 平成23年(2011)患者調査の概況. https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/11/index.html (2020年2月14日引用)
厚生労働省 平成23年(2011)患者調査の概況 3 退院患者の平均在院日数等. https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/11/dl/03.pdf (2020年2月14日引用)

岩井医療財団 トップページ. https://www.iwai.com/ (2020年2月14日引用)
岩井医療財団 タブレットでの資料閲覧で患者の手術理解度を向上 手術図解説明をタブレットで事前閲覧することで、医師説明時間が1/3に短縮. https://handbook.jp/wp-content/uploads/2016/01/case-iwai.pdf (2020年2月14日引用)

アイティメディア 病院で働くPepper、命をつなぐIoTペンダント――富山発、地方の高齢者を救うIT. https://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1606/20/news014.html (2020年2月15日引用)
富山大学附属病院 アイセンター(眼科). http://www.hosp.u-toyama.ac.jp/guide/medical/ophthalmology.html (2020年2月15日引用)
エムスリー 臨床充実と柔軟な取り組み。眼科を立て直した手腕生かすー富山大学附属病院・林篤志病院長に聞く◆Vol.3. https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/691474/ (2020年2月15日引用)
ソフトバンク Pepper. https://www.softbank.jp/robot/pepper/ (2020年2月16日引用)

  • 執筆者

    稗田 恵一

  • 千葉県在住で、ITエンジニアとして約14年間の勤務経験があります。過去には家族が特別養護老人ホームに入所していたこともありました。2018年からは関東にある私大薬学部の模擬患者として、学生の教育にも協力しています。
    現在はライターとして、OG WellnessのほかにもIT系のWebサイトなどで読者に役立つ記事を寄稿しています。

    保有資格:第二種電気工事士、テクニカルエンジニア(システム管理)、初級システムアドミニストレータ

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