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外国人の患者に対する「言語の壁」を、ITを用いた通訳で解決する

インバウンドを中心とした訪日外国人の増加に伴い、医療機関では外国人患者への対応も求められています。
その際には、外国語への対応という「言語の壁」の課題も見逃せません。
本記事ではこの課題に触れた後、解決方法としてITを用いた通訳を解説します。

ITの力を借りて「言葉の壁」をクリアしよう

外国人の患者を迎えるには、外国語への対応が課題

外国人の患者を迎えるには、外国語への対応が課題

医療の現場には、外国人の患者も来院する可能性があります。
一方で外国語で話しかけてくる患者に対して、どうコミュニケーションを取るべきか頭を悩ませる方も多いのではないでしょうか。
本記事ではまず、この課題について解説を進めていきます。

●母国語は人によりさまざま

世界にはさまざまな言語があります。
文部科学省が2006年に公表した「世界の言語別使用人口」によると、主に使われる上位10言語には以下のものが挙げられます。

中国語、英語、ヒンディー語、スペイン語、ロシア語、アラビア語、ベンガル語、ポルトガル語、マレー・インドネシア語、フランス語
参考:文部科学省 (2)世界の言語別使用人口

特に英語の人口が2番目であることは、留意すべき点といえます。
私たちは「外国人とのコミュニケーション=英語」と捉えがちですが、実際には英語を話せない方も少なくありません。
そのため、英語が通じない外国人がいることに留意が必要です。

●外国語ができる医療スタッフばかりをそろえることは難しい

もし医療スタッフの中で2カ国語以上の言語を話せる方が多ければ、外国人にとって診療を受けやすい医療機関になることが期待できます。
これは外国人にとって、ふだん使っている言語で診療を受けられることは主なニーズの1つであるためです。

YOLO JAPANが2019年8月に公表した調査結果によると、外国人におすすめしたい病院には以下の項目が挙げられています。

  • 1位「言語対応が可能・外国人スタッフがいる」(411人、78%)
  • 2位「病院内の案内が分かりやすい」(249人、47%)
  • 3位「医師や看護師の対応が親切」(166人、31%)

引用:YOLO JAPAN 【アンケート結果】日本に住む外国人が病院で困ること・おすすめしたい病院を発表!

一方で外国語ができる医療スタッフを積極的に採用することは、難しいものがあります。
事実、厚生労働省が2019年3月に公表した調査結果によると、2次医療圏のどこかで医療通訳者がいる地域は全体の37.3%にとどまっています。
2次医療圏は都道府県を地域別に分けたものですから、「地域内で外国人の会話に対応可能な医療機関がない」事態となっている地域が多く発生していても不思議ではありません。

だからといって外国語対応に躍起となるあまり、すべてのスタッフに主な言語を学ばせることも非現実的です。
このためITなどを活用して、言語の課題をクリアする工夫が求められます。

ITを用いた通訳の活用で、外国人が受診した際の手続きをスムーズに

ITを用いた通訳の活用で、外国人が受診した際の手続きをスムーズに

外国人が受診のために医療機関を訪れた場合は、ITを用いた通訳の活用により、手続きをスムーズに進めることが可能です。
これは、患者が安心して受診できる点でも重要です。

ITを用いた通訳には、以下の2種類があります。

  • 〇遠隔地にいる専門の医療通訳者が、タブレット端末を介して顔を見ながら通訳する
  • 〇アプリで機械翻訳を行い、自動で通訳する

それぞれの特徴とメリットについて、以下で解説していきます。

●医療通訳サービスは、医療通訳者を加えた3者で会話を進める

医療通訳サービスではタブレット端末と専用のアプリを利用して、外国人との通訳を行います。
会話には、以下の3者が参加します。

  • 〇外国人患者
  • 〇医療スタッフ
  • 〇医療通訳者

特徴として、それぞれの顔や表情を見ながら会話を行えることが特徴です。
これは画面を介して参加する医療通訳者も同様で、医療機関にいる外国人患者や医療スタッフの表情を確認しながら通訳できます。
このため難しい表現も正確に通訳できることはもちろん、表情を見ながらニュアンスをくみ取り、適切に伝えることができます。

医療通訳サービスの一例として、コニカミノルタの「MELON」や、ニチイ学館の「タブレット多言語通訳サービス おまかせグローバルトーク」などが挙げられます。

コニカミノルタの「MELON」
ニチイ学館の「タブレット多言語通訳サービス おまかせグローバルトーク」

●機械通訳サービスは、タブレット画面を介して会話を進める

ITを活用した外国語対応には、機械通訳サービスもあります。
医療通訳サービスと同様にタブレット端末とアプリを用いますが、医療通訳者は会話に加わりません。
代わりに会話の内容を、日本語と外国語でタブレット端末に表示します。

このためお互いの言葉は聞き取れなくても、タブレット端末を見れば内容が理解できます。
ほかの人から見ると、お互いにタブレット端末を見ながら会話しているように見えるでしょう。
一例としてさきほど紹介した「MELON」では、受付や会計などで使われる簡単な会話であれば対応可能としています。

●ITを用いた通訳サービスを活用するメリット

ITを用いた通訳サービスの活用には、以下のメリットがあります。

  • 〇月々の利用料金を支払うことで、主な言語の通訳を利用できる
  • 〇タブレット端末1台で、受付でも診察室でも使える
  • 〇24時間365日、夜間でも休日でも利用できる
  • 〇会話の履歴を後で確認できる

そもそも、一日中絶え間なく医療通訳が必要というわけではありません。
従って外国語に堪能な人を雇用するよりも、ITを用いた通訳サービスを活用するほうが低コストでより高い効果をあげられます。
また会話の内容が記録されるサービスもあるため、後日トラブルが発生した場合に当時のやりとりを確認できることも見逃せないポイントです。

ITを有効に活用するため、外国人へ対応する際に心がけたいこと

ここまで解説した通り、外国人患者への対応にITの活用は有効です。
一方で言葉がわからないからといって、コミュニケーションを安易にITに頼ることも、よい方法とはいえません。
本記事では最後に、ITを用いて外国人への対応をする際に心がけたい点を取り上げ、解説していきます。

なお外国人への対応については、OGメディック「外国人患者の増加に医療現場はどう向き合う?言葉と文化の違いに配慮した対応を」記事もご参照ください。

●言葉以外からも来院者の状態や表情を読み取ることが求められる

診療において患者の訴えは重要な項目の1つであり、きちんと耳を傾けなければならないことはいうまでもありません。
しかし訴えだけきちんと聞けばよいかというと、そうでもありません。

アメリカの心理学者であるアルバート・メラビアンは、話し手が聞き手に与える影響を「メラビアンの法則」として、1971年に提唱しています。
この法則によると、視覚、聴覚、言語の各情報が聞き手に影響を与える割合は、それぞれ以下の通りとなっています。

要素 割合
視覚情報(見た目や表情) 55%
聴覚情報(声質や口調) 38%
言語情報(話の内容) 7%

出典:自由国民社(編): 現代用語の基礎知識2019. 自由国民社, 東京, 2019, p.1042.

このように、言葉以外でも伝えられる情報は少なくありません。
たとえば患者が入室した際の表情や足取り、しぐさなども、診療の参考になりえます。
日本人同士の場合と勝手が違うからこそ五感を研ぎ澄ませて患者の状態を読み取り、診療や対応に生かすことが求められます。

●説明は可能な限りきちんと行うことが望ましい

外国人の言葉がさまざまであることと同様に、文化もまた出身の国や地域ごとに異なります。
日本人同士であれば簡単なやり取りで診察を始められる場合もありますが、外国人に対応する場合はこれでよいとは限りません。
場合によっては口の中を見る、胸に聴診器を当てるといった行為のそれぞれについて、逐一ていねいな説明を求められる可能性もあります。

リクルートドクターズキャリアでは、その一例を以下のように記しています。

日本では医師があまり話しかけることなく聴診や打診などを行うことが一般的ですが、英語圏では医師が「何をするのか」「なぜ必要なのか」「どのようなことをして欲しいのか」そして「どのようなことが予想されるのか」ということを逐一説明することが一般的です。

上記のようなケースもありますから診断の結果を説明するときのみならず、診察の途中でもこれから何をするかなど、可能な限り説明をきちんと行うことが望ましいといえます。

もっとも全く知らない言語で話しかけられた場合、十分に行き届いた説明を行うことは難しい場合も多いでしょう。
現実的には、医療通訳サービスに頼る場面も出てくると思います。
それでも身振り手振りなどを加えて、可能な限りきちんと説明を行うように努めることが、以後のトラブルを防ぐ観点でも望ましいといえるでしょう。

ITを用いた医療通訳の導入で「言語の壁」を乗り越えることが可能

外国人が来院した際、未知の外国語への対応は不安なものです。
しかしITを用いた医療通訳の導入により、円滑なコミュニケーションが期待できます。
これは外国語に堪能な医療スタッフを採用するよりも、費用対効果が高いことが多いです。
従って外国語が不得意なスタッフばかりでも、ITを用いた医療通訳の活用により「言語の壁」を乗り越え、外国人へていねいな対応を行うことが可能です。

参考:
文部科学省 (2)世界の言語別使用人口.(2020年2月12日引用)
文部科学省 平成18年度以前に終了した会議等の情報.(2020年2月17日引用)
ポール・ジェイコブス 日本および諸外国におけるバイリンガリズムへの見解-バイリンガルが育つ環境としての日本の実情と将来性-.(2020年2月12日引用)
YOLO JAPAN 【アンケート結果】日本に住む外国人が病院で困ること・おすすめしたい病院を発表!.(2020年2月12日引用)
厚生労働省 医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査の結果(概要版).(2020年2月12日引用)
コニカミノルタ 医療機関向けコミュニケーション支援サービス MELON.(2020年2月13日引用)
コニカミノルタ 医療通訳.(2020年2月13日引用)
コニカミノルタ 機械通訳.(2020年2月13日引用)
コニカミノルタ プラン.(2020年2月13日引用)
コニカミノルタ FAQ.(2020年2月17日引用)
日経BP ニチイ学館が病院窓口に外国人患者向けクラウド型翻訳サービス、NECが発表.(2020年2月13日引用)
ニチイ学館 タブレット多言語通訳サービス おまかせグローバルトーク.(2020年2月13日引用)
一般社団法人 日本産業カウンセラー協会 【見た目が一番大事ってホント?】メラビアンの法則を正しく活用すれば、より伝わる!.(2020年2月12日引用)
銀座コーチングスクール メラビアンの法則.(2020年2月12日引用)
サーキュレーション メラビアンの法則って何?誤解されがちな法則の本来の実験内容を解説!.(2020年2月12日引用)
自由国民社(編): 現代用語の基礎知識2019. 自由国民社, 東京, 2019, p.1042.
リクルートドクターズキャリア 身体診察の英語表現.(2020年2月12日引用)

  • 執筆者

    稗田 恵一

  • 千葉県在住で、ITエンジニアとして約14年間の勤務経験があります。過去には家族が特別養護老人ホームに入所していたこともありました。2018年からは関東にある私大薬学部の模擬患者として、学生の教育にも協力しています。
    現在はライターとして、OG WellnessのほかにもIT系のWebサイトなどで読者に役立つ記事を寄稿しています。
    保有資格:第二種電気工事士、テクニカルエンジニア(システム管理)、初級システムアドミニストレータ

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