AI、機械学習、ディープラーニング。それぞれの違いと活用例を解説します
AIや機械学習、ディープラーニングという用語は、よく聞かれるようになりました。
これらは異なる意味を持ちながらも、互いに関連しています。
本記事では3つの用語について解説し、それぞれの関連性や医療・介護における活用例を解説します。
目次
AI、機械学習、ディープラーニングはそれぞれ異なる
AI、機械学習、ディープラーニングはお互いに関連しており、ときに混同して使われがちです。
しかしこの3つは、それぞれ異なります。
ここでは各々の意味について、順に確認していきましょう。
●AIとは?
AIとは、人間が行う知的活動をコンピュータでも行えるようにしたものを指します。
日々多忙な医療・介護職の方にとって、幅広い情報を確認したり、論文をじっくり読むことはなかなか難しいものです。
ときには疲労したり、体調がすぐれなかったりする場合もあるかもしれません。
AIならいつでも同じパフォーマンスで、幅広いデータをもとに迅速に回答を出してくれますから、忙しい医療職の方にとって強い味方となります。
AIには、強いAIと弱いAIの2種類があります。
強いAIは人間の知能そのものを代替するものですが、まだ実用化されていません。
一方で弱いAIは人間の知能や業務の一部を、人に代わって行うものであり、広く実用化されています。
機能は限定されているため、決められた用途以外に使うことは難しいです。
このため私たちが「AIの活用例」と呼ぶものは、すべて弱いAIによるものであり、用途別に特化したものとなっています。
●機械学習とは?
機械学習とは例をいくつか示すことでコンピュータが学習し、データに潜むルールなどを見つけ、未知のものに対しても正しく回答できる方法を指します。
大きく分けてデータの分類と、データの傾向を把握し将来を予測する場面で使われます。
たとえば分類する場合は、同じデータでも「分類する際に着目すべきポイント」をどのように指示するかにより、出力される結果を変えることができます。
機械学習では出力された結果について、根拠を提示することが可能です。
一方でデータをそのまま投入したのでは、うまく学習できません。
このため、事前にデータを学習しやすい形に加工する必要があります。
機械学習には、主に以下に挙げる手法があります。
手法 | 特徴 |
---|---|
アクティブラーニング | 正解のデータと誤りのデータなど、あらかじめ着目すべきポイントの例を提示しながら学習させる |
ディープラーニング | データを与えておけば、コンピュータが自動的に特徴を抽出し、学習する |
ディープラーニングについては、この後の項目で解説します。
●ディープラーニングとは?
ディープラーニングは機械学習の1つで、以下の特徴があります。
- ○人間の脳を模した、何層にもわたるニューラルネットワークを活用している
- ○データから特徴を自動的に抽出し、分類などの学習を行う
- ○事前に注目すべきポイントなどを、人間が教えておく必要がない
- ○大量のデータが必要(数万~数十万件を要するケースも少なくない)
データを処理するごとに結果を自らチェックし、以後の処理方法を微調整します。
このため、ルールや規則、課題を解決する手がかりがわからない場合でも、自動的に特徴をつかみ学習できることがメリットです。
ディープラーニングを行う際には、大量のデータや高性能のコンピュータが必要なことが難点でした。
しかしIT技術が進歩したことにより、ディープラーニングはさまざまな用途で活用されています。
一方でディープラーニングにも、弱点はあります。
通常のディープラーニングでは、何を基準にして学習しているか、根拠を示しません。
たとえ学習が成功しても、「どうしてそうなったのか」がわからないわけです。
これではほかの方に「その根拠は?」と質問されても、回答に困ってしまいます。
このため注目した画像や単語、思考プロセスなどを表示することで根拠を把握しやすくするディープラーニングもでています。
AIの学習方法はさまざま。機械学習やディープラーニングはその一部
機械学習とディープラーニングは、AIが学ぶ代表的な手法です。
コンピュータの能力がアップしたことにより、大量のデータでも短時間に処理し、AIに学ばせることができます。
従ってAIと機械学習、ディープラーニングは、相互に深く関連するものです。
別々のものととらえず、セットで理解することがおすすめです。
もっともAIが学ぶ方法は、この2つだけではありません。
一例として、ルールベースがあります。
これは事前に入力された情報や質問ごとに、応答する内容と文章をあらかじめ決めておく方法です。
一例として、チャットボットを利用した医療用医薬品の問い合わせサービスが挙げられます。
詳細は「医療用医薬品の情報もAIで得られる!AIを活用した製薬会社の問い合わせサービスを解説」記事をご参照ください。
医療や介護で使われている例を紹介
医療や介護において、AIや機械学習、ディープラーニングは、さまざまな場面で活用されています。
ここではそれぞれについて、一例を取り上げます。
●AIを活用するサービスは数多い
AIを活用した例には、以下のものが挙げられます。
- ○Watson(「コンピュータはカルテの記録機器から、診断の力強いアシスタントに!人工知能による診療支援システムはここまで進んでいる」記事で解説)
- ○医療用医薬品の問い合わせサービス(「医療用医薬品の情報もAIで得られる!AIを活用した製薬会社の問い合わせサービスを解説」記事で解説)
- ○新型コロナウイルスに関する問い合わせサービス(「人工知能を活用した新型コロナ対策。あなたも気軽に不明な点を確認し、不安を解消できる」記事で解説)
もっともAIには機械学習やディープラーニングが含まれることは、さきに解説した通りです。
この後で解説される例も、大きな意味ではAIを活用しているサービスに含まれます。
●機械学習が活用されている例
機械学習を活用した例には、以下のものが挙げられます。
- ○入院直後に、入院期間や再入院の可能性を予測(「医療における情報技術の革新は、入院翌日に退院時期や再入院の可能性がわかるところまで進んでいる!人工知能を使った最新技術を紹介します」記事で解説)
- ○薬の候補となりうる物質を選ぶ
- ○将来の高校生の平均身長を予測する
望ましい回答がある程度わかっている場合に、機械学習は有効な方法といえるでしょう。
●ディープラーニングの活用例
ディープラーニングを活用した例には、以下のものが挙げられます。
- ○VRを用いた認知症の治療(「VR体験を使い、認知症の方の脳を活性化する取り組みを紹介」記事で解説)
- ○ケアプランの作成サポート(「AIによるケアプラン作成の現状と将来性。AIはケアプランをどこまで作れるのか?」記事で解説)
- ○画像診断(CT、眼底の写真、内視鏡など)
ディープラーニングは未知の事象を調べたい場合やルールが煩雑となる場合に、適した方法と考えられます。
各々の特徴を把握した上で、適した方法の選定をおすすめ
AIと機械学習、ディープラーニングは、医療や介護のさまざまな場面で活用されています。
これらは人間に取って代わるものではありませんから、1つの道具として、適材適所で活用することがおすすめです。
またAIにもさまざまなものがありますから、内容を理解することで適切なサービスを選びやすくなります。
もし本記事で取り上げた技術を用いた研究を行われる場合は、各々の特徴を把握した上で、適した方法を選びましょう。
参考:
藤田広志: 医用画像ディープラーニング入門. オーム社, 東京, 2019, pp.2-20, 146-197.
山口達輝, 松田洋之: 図解即戦力 機械学習&ディープラーニングのしくみと技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書. 技術評論社, 東京, 2019, pp.12-23, 40-41, 44-45.
三津村直貴: 60分でわかる!AI医療&ヘルスケア最前線. 岡本将輝, 杉野智啓(監修), 技術評論社, 東京, 2019, pp.38-39, 50-51, 58-59.
城塚音也: ビジュアルAI(人工知能). 日本経済新聞出版社, 東京, 2019, pp.10-51.
岡田正彦: 医療AIの夜明け. オーム社, 東京, 2019, pp.33-36.
京都大学 ビッグデータを使わない薬物候補探索モデルを開発―化合物の実験データから薬効予測に有効なものを選びとる新手法―(2020年7月16日引用)
VOST AI研究所 徹底解説!AIを作るために必要なビッグデータの量とは?!~データセット一覧まとめ(2020年7月19日引用)
Ramprasaath R. Selvaraju, Michael Cogswell, Abhishek Das, Ramakrishna Vedantam, Devi Parikh, Dhruv Batra: Grad-CAM: Visual Explanations from Deep Networks via Gradient-based Localization p3(2020年7月16日引用)
朝日インタラクティブ それ、本当に「機械学習」が必要ですか?–適材適所で見極めたいAI活用(2020年7月16日引用)
アイティメディア 【図解】コレ1枚で分かるルールベースと機械学習(2020年7月16日引用)
-
執筆者
-
千葉県在住で、ITエンジニアとして約14年間の勤務経験があります。過去には家族が特別養護老人ホームに入所していたこともありました。2018年からは関東にある私大薬学部の模擬患者として、学生の教育にも協力しています。
現在はライターとして、OG WellnessのほかにもIT系のWebサイトなどで読者に役立つ記事を寄稿しています。
保有資格:第二種電気工事士、テクニカルエンジニア(システム管理)、初級システムアドミニストレータ