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医療機関もRPAの活用で、業務効率化を実現!働き方改革や人材の有効活用にも役立つ

医療機関の働き方改革は喫緊の課題であり、実現するには仕事の仕組みを変え、業務効率化を図ることが欠かせません。
有力な解決方法の1つに、RPAの導入があります。
本記事では事例にも触れつつ、RPAを働き方改革に活用する有効性を解説します。

RPAの活用で医療機関も働き方改革

医療従事者と医療を守るため、働き方改革の実施は急務

医療従事者と医療を守るため、働き方改革の実施は急務

医療により人の命を救い、健康で過ごせる方を1人でも増やすことは尊いものです。
しかし、そのために医療従事者が病に倒れることがあってはなりません。

医療従事者と医療を守るためにも、働き方改革の実施は急務となっています。
まずは実情を解説した上で、解決策の1つであるRPAの可能性を考えます。

●医師は時間外労働が多い代表的な職種。残業時間の削減が急務

医師は時間外労働が多い職種の1つとして、「平成30年版過労死等防止対策白書」で重点職種の1つに挙げられています。
これに関連して、厚生労働省は病院勤務医の週勤務時間をまとめた資料である「医師の働き方改革について」を公表しています。
資料では以下の通り、勤務医の4割以上は過労死ラインの目安の1つとして挙げられる「時間外労働80時間」を超えている実態があります。

超過勤務時間 割合
週10時間(月40時間)未満 35.8%
週10時間(月40時間)以上
週20時間(月80時間)未満
23.6%
週20時間(月80時間)以上
週30時間(月120時間)未満
18.4%
週30時間(月120時間)以上 22.1%

参考:厚生労働省 医師の働き方改革について p4(2020年11月22日引用)

長時間労働は、睡眠時間の減少に直結します。
「医師の働き方改革について」資料によると、睡眠時間が短くなるほどミスが起きやすく、特に1日3時間睡眠を続けた場合に顕著であることが示されています。
最短の勤務間インターバルが9時間未満の方が43.1%にのぼることを考えると、医療者が十分な睡眠を取れないことにより医療の質が下がるリスクも無視できません。

厚生労働省では2024年4月から医師の労働時間に対する以下の規制を適用し、併せて努力義務を課すことにしています。

  • ○原則として時間外労働(休日労働を含む)は月100時間まで
  • 連続勤務時間は28時間まで(努力義務)
  • 勤務間インターバルは9時間以上(努力義務)

このため、医療機関も医師の働き方改革を進める必要があります。
医療機関によっては以下のように、医師の負担を減らす施策が取られています。

  • ○特定看護師や診療看護師に、一部の医療行為を任せる
  • ○電子カルテへの入力業務などの事務作業を、医師事務作業補助者に任せる

このような医師から他職種への「タスク・シフティング」は、働き方改革を進める重要なポイントの1つとなります。

●看護師の負担が大きい医療機関も。負担を増やさない工夫が求められる

看護師の負担が大きい医療機関も。負担を増やさない工夫が求められる

医師が行う業務の一部を引き受ける看護師の側も、働き方改革が課題となっている職種の1つです。
これについて田中は2019年4月の「働き方改革関連法」施行後、全国病院経営管理学会会員の220施設に対して調査依頼を行いました。
121施設から得た回答により、以下の結果が得られています。

  • ○月45時間以上の時間外労働を行っている職員がいる施設は、全体の30%
  • ○年間360時間以上の時間外労働を行っている職員がいる施設は、全体の20%

看護師は医師のように、働き方改革関連法の猶予を受けられる職種ではありません。
このため原則として「法定外労働時間が月45時間以下、かつ年間360時間以下」の規制を守る必要があり、これを上回ると罰則が課される可能性があります。
参考:日本看護協会 看護職の働き方改革の推進
厚生労働省 時間外労働の上限規制 わかりやすい解説 pp.4-6.

厚生労働省「平成30年版過労死等防止対策白書」によると、看護師が残業する最も多い原因に「看護記録等の書類作成のため」が挙げられています。
デスクワークの負担軽減は、働き方改革のポイントといえるでしょう。
また医師からのタスク・シフティングを行った結果、看護師の時間外労働が増加しないような工夫も求められます。

●働き方改革の実現に、RPAの活用は強力な後押しとなる

長時間労働の削減などの働き方改革を実現する手段として、個人の意欲に任せることは適切といえません。
代わりに仕事の量を減らし長時間労働が発生しにくくするよう、業務プロセスを変える工夫が求められます。

働き方改革を実現する方法の1つに、RPAが挙げられます。
RPAはあらかじめ作業の進め方を記憶しておくことで、人間に代わり自動で作業を行うソフトウェアのことです。
一例として、以下の作業が挙げられます。

  • ○Webサイトにアクセスして、必要な情報を収集する
  • ○あるシステムから、別のシステムにデータを転記する
  • ○さまざまなアプリケーションを操作する
  • ○データのチェックを自動で行う
  • ○レポートを自動で作成する
  • ○作成したファイルを保存する
  • ○メールの送信や印刷を行う

上記の通り多種多様な業務を担えることから、長江は「パソコン画面に表示されているアプリケーションであれば、ほぼすべて操作が可能である」と述べています。

RPAは部下のような役割を担うことから、日本語では「仮想知的労働者」「デジタルレイバー」などと呼ばれています。
定型的な事務作業をRPAに任せることで憂うつな繰り返し作業から解放され、業務の効率化を実現できます。
空いた時間はほかの職種のサポートに回せますから、働き方改革を強力に後押しするツールといえるでしょう。

医療機関にRPAを活用する4つのメリット

医療機関にRPAを活用する4つのメリット

医療機関にRPAを活用することには、働き方改革につながる4つのメリットがあります。
それぞれどのようなメリットがあるか、詳しく確認していきましょう。

●定型的で大量の処理が必要な業務に有効。事務作業やチェック作業が速くて正確

RPAはコンピューターで動作するプログラムの一種です。
そのため、以下の業務に適しています。

  • ○処理方法があらかじめ決まっている(定型的である)こと
  • ○大量の処理が必要な業務

繰り返し業務は、コンピューターが最も適している業務の1つです。
加えてRPAは人間のように、ケアレスミスを起こす心配も無用です。
ルールが決まっていれば迅速かつ正確に処理できることも、魅力といえるでしょう。

●繰り返し業務の苦痛からスタッフを解放する

人間は同じ作業を繰り返すと飽きてしまい、苦痛や疲れを感じるようになります。
加えて「ミスをしてはならない」という心理的な負担がかかることも見逃せません。

一方でRPAをはじめとしたコンピューターは、このような感情を持ちません。
RPAの導入によりスタッフを苦痛から解放できることも、見逃せないメリットです。

●残業代を減らせ、長時間労働からも解放できる

スタッフが行って10分かかる業務を、RPAを使って1分で終わらせることができれば、以下のメリットが得られます。

  • ○スタッフの労働時間を減らすことにより、生産性とQOL(生活の質)を高められる
  • ○スタッフの人件費や残業代を減らせる

RPAは初期費用とメンテナンスの費用こそかかるものの、賃金を支払う必要がありません。
それでいて必要ならば24時間365日稼働させることも可能であり、スタッフのように労働時間の制約を受けるわけでもありません。
このためスタッフは早く帰ることができ、人件費も減らせるわけですから、いいことずくめの手法です。

RPAはその適性を生かせる業務に導入することで、大きなメリットが得られます。
たとえば信州大学医学部附属病院では、購買業務にRPAを導入しました。
「システム間データ転記業務」の自動化などにより、年間1,448時間程度の削減効果を得ています。

●限りあるスタッフを人間の能力を発揮できる業務に集中でき、人材を有効活用できる

医療従事者の長時間労働が課題となっていることは、裏を返すと医療機関は限りあるスタッフで工夫をしながら業務を遂行していることを示しています。
RPAの導入により単純作業からスタッフを解放できれば、人間の能力を発揮できる業務により多くのリソースを割り当てることができるでしょう。
一例として、以下の業務が挙げられます。

  • ○患者さんへの説明など、対面で行う業務を充実させる
  • ○患者さんの状況をチェックする頻度を上げる
  • ○さらなる業務改革の手法を検討する

これにより労働時間や経費を削減しつつ、より良いサービスの提供が可能となります。
人材を有効活用できることも、大きなメリットです。
RPAの導入は、医療機関・医療従事者・患者さんともにメリットのある施策といえます。

RPAで働き方改革を実現した2つの事例

RPAで働き方改革を実現した2つの事例

ここからはRPAを活用して省力化と業務効率化を行うことにより、働き方改革を実現した2つの事例を取り上げます。

●済生会兵庫県病院では作業時間を削減しつつ、サービスレベルの向上を実現

済生会兵庫県病院では、短期間で自動化が可能な6つの業務について、RPAを導入しました。
このうち「認知症ケアに関するデータ集計業務」においては、以下の通り大きな効果が得られています。

業務時間 実施頻度
導入前 30分(うち職員が関わる時間は10分程度) 週2回
導入後 10分(タイマー起動による全自動化を実現) 毎日

引用:小田垣覚: RPAによる業務改善活動の実践~試験導入の成果と継続的な活用に向けて~. 医事業務NO.583: 43-44, 2020.

処理時間を削減しつつ、実施頻度もアップしていることが特徴的です。
職員の手間を省きつつ、サービスレベルのアップという効果が得られました。

RPAを導入した業務全体では、以下の成果が得られています。

  • ○業務全体で年間2,155時間の削減
  • ○職員の実作業時間で年間255時間の削減
  • ○単純作業からの解放による精神的な負担軽減
  • ○スタッフの力で業務自動化を実現できた達成感

これらはスタッフ1名の労働時間を超える削減効果があり、さらなる業務改善と自動化への意欲につながっています。

●旭川赤十字病院では毎月1人分の作業時間と、年間で約60万円を節約

旭川赤十字病院では2018年末から、電子カルテへの病名代行入力業務に対してRPAを導入しました。
この業務は7名の外来アシスタントが従事していた業務で、本番環境での調整期間を経て、2019年6月より全面的な運用を行っています。
RPAを導入した結果、以下の成果が得られました。

  • ○2019年7月は172時間9分、2019年8月には163時間13分が節約できた
  • ○年間60万円程度の超過勤務手当を削減

外来アシスタントに余力が生まれたため、余った時間は外来看護師のタスク・シフティング拡大に充てています。
このため経費削減はもちろん、幅広い職種の負担が軽減されるなどの効果も期待されます。

RPAは仕事の仕組みを改善し、働き方改革を実現する有力な選択肢

時間外労働時間の削減に代表される働き方改革は、組織をあげて実施する必要があります。
RPAの導入で仕事量を減らしほかの職務に回せるため、人員を増やさずに多忙な状況を解決でき、関係者全員がメリットを得られます。
仕事の仕組みを改善し、働き方改革を実現する有力な選択肢といえるでしょう。
導入に当たっては、少ない手間で改善できる業務から行うことがお勧めです。
この機会に、ぜひ一度導入をご検討ください。

参考:
田中美香: 看護師の働き方改革の現状と課題. 看護のチカラNo.532: 16-21, 2020.
村山典久: 医療機関におけるRPA活用による可能性の創造~働き方改革支援の効果も含め~. 新医療2019年12月号: 86-89, 2019.
加藤彰裕: 病院での事務作業置換を目的としたRPA戦略の現況~導入・運営方法の提案を含めて~. 新医療2020年9月号: 80-83, 2020.
白木康浩: RPAを活用した業務改善の実証結果と今後の展開~RPAから始めるデジタルトランスフォーメーション(DX)~. 医事業務NO.583: 16-20, 2020.
白木康浩: 購買業務効率化に端を発したRPA導入の具体的成果~RPA推進体制の組織化とデジタルトランスフォーメーション(DX)~. 新医療2020年9月号: 92-95, 2020.
野村英雄: RPAを用いた業務負担軽減の取り組み~医療ICTの普及に向けて~. 医事業務NO.583: 39-41, 2020.
小田垣覚: RPAによる業務改善活動の実践~試験導入の成果と継続的な活用に向けて~. 医事業務NO.583: 42-45, 2020.
長江範之: RPA活用による働き方改革の取り組み. 日本病院会雑誌2020年4月号: 435-443, 2020.
厚生労働省 医師の働き方改革について(2020年11月22日引用)
厚生労働省 平成30年版過労死等防止対策白書(本文)(2020年11月22日引用)
厚生労働省 平成30年版過労死等防止対策白書(本文)pp.147-155(2020年11月22日引用)
厚生労働省 STOP!過労死(2020年11月22日引用)
日本看護協会 看護職の働き方改革の推進(2020年11月22日引用)
厚生労働省 時間外労働の上限規制 わかりやすい解説(2020年11月22日引用)
メドレー 特定看護師とは? 特定行為研修を修了すると業務の幅はどう広がる?(2020年11月22日引用)
医療法人医仁会 さくら総合病院 診療看護師(NP)の紹介(2020年11月22日引用)
UiPath 医療現場の働き方改革で地域社会に貢献する―医療機関におけるRPA活用(2020年11月22日引用)
プレジデント なぜデキる人ほど仕事に「飽きない」のか(2020年11月22日引用)
伊藤忠商事 近江商人と三方よし(2020年11月22日引用)

  • 執筆者

    稗田 恵一

  • 千葉県在住で、ITエンジニアとして約14年間の勤務経験があります。過去には家族が特別養護老人ホームに入所していたこともありました。2018年からは関東にある私大薬学部の模擬患者として、学生の教育にも協力しています。
    現在はライターとして、OG WellnessのほかにもIT系のWebサイトなどで読者に役立つ記事を寄稿しています。

    保有資格:第二種電気工事士、テクニカルエンジニア(システム管理)、初級システムアドミニストレータ

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