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#新型コロナウイルス

Googleが「COVID-19 感染予測」を公開。上手な活用方法を解説

2020年11月17日、Googleは日本における「COVID-19 感染予測」を公開しました。
このデータは各方面で、驚きをもって迎えられています。
本記事では公表後の数字を分析した結果も踏まえて、特徴や活用方法を解説します。

GoogleのCOVID-19 感染予測の特徴と活用方法

「COVID-19 感染予測」を詳しく解説

新型コロナに関する予測値を公表する「COVID-19 感染予測」。
正しく理解するためには、まずどのようなものか知ることが重要です。
ここでは「COVID-19 感染予測」の特徴を、3つのポイントに分けて確認します。

●全国や都道府県単位で、陽性者数や死亡者数などの実績や予測をグラフで表示

「COVID-19 感染予測」では、以下の数値を全国・各都道府県単位で確認できます。

  1. 1)死亡者数(日別・累計)
  2. 2)陽性者数(日別・累計)
  3. 3)入院・療養等患者数(日別)
  4. 4)28日以内に予測される死亡者数と陽性者数の合計値
  5. 5)向こう28日以内における、入院・療養等患者数の最大予測値
  6. 6)人口100万人当たりの死亡者数や陽性者数

このうち1~3番についてはグラフで表示されるとともに、カーソルをグラフに合わせるとその日の数字がポップアップで表示されます。

初期画面では、1~4番は全国の数字が表示されます。
リストから選ぶことで、選択した都道府県の数字に切り替わります。
なおもう一度全国の数字を見たい場合は、「F5」キーを押すなどにより画面を再表示させる必要があります。

●厚生労働省や自治体など、公的機関が公表するデータをもとに作成

COVID-19 感染予測のデータは、以下の通り公的機関が公表するデータをもとに作成されています。

  • ○厚生労働省が公表するオープンデータ
  • ○各都道府県などから公開されているデータ
  • ○2015年国勢調査のデータ

これに加えて、Google自身が所有する「コミュニティ モビリティ レポート」も分析に用いています。
このため公開されている情報は、根拠を持って作成されているものといえます。

●確認するタイミングにより、予測値には大きなブレが生じうる

「COVID-19 感染予測」は確認するタイミングにより、予測値が大きく変わりうることに注意が必要です。
一例として、岡山県の例を見てみましょう。

2020年11月29日からの予測データによると、岡山県では陽性者数が右肩上がりに上昇すると見込まれていました。
しかし実際の陽性者(7日間移動平均)を見ると、12月中旬までは予測値よりも大幅に少ない状況で推移しています。

図1 新規陽性者数予測値と実際の比較(岡山県:予測日11月29日~)

一方で2020年12月4日からの予測データによると、12月中旬までは実際の陽性者(7日間移動平均)との差が少なくなっています。

図2 新規陽性者数予測値と実際の比較(岡山県:予測日12月4日~)

一般的に予測値は、近い未来ほどその精度が上がります。
このためデータを利用する際には、最新の情報を確認し活用すると良いでしょう。

代表的なデータ項目を詳しく解説

ここからは「COVID-19 感染予測」で確認できる代表的なデータについて、詳しく解説していきます。

●今後28日間における、日ごとの予測値

皆さまが最も気になることの1つに、「近い将来の陽性者数がどうなるか」という点が挙げられます。
「COVID-19 感染予測」では以下の項目について、今後28日間における日ごとの予測値を表示できます。

  • ○陽性者数(新規・累計)
  • ○死亡者数(新規・累計)
  • ○入院・療養等患者数

今後の傾向を知るための、1つの情報として役立てます。

なお実際の陽性者数は、医療機関や検査機関が休日を取るなどの理由で上下します。
しかし「COVID-19 感染予測」では、そこまで考慮されていない場合が多いことに注意が必要です。
このため特定の日が予測値を大きく下回ったからといって、それだけでは安心できません。

●今後28日間における、人口100万人当たりの陽性者数・死亡者数それぞれの合計値

「COVID-19 感染予測」では都道府県ごとに、今後28日間における以下の数値の合計値も表示しています。

  • ○陽性者数(新規および最大予測値)
  • ○死亡者数

もっとも都道府県ごとに人口は異なりますから、そのまま比較すると人口が多いほど陽性者数や死亡者数も多くなってしまいます。
一方で人口が少ない県では「都会より少ないから大丈夫」と油断すると感染が広まり、医療に重大な影響を与えかねません。

このため、人口100万人当たりに換算した以下のデータも提供しています。

  • ○陽性者数(新規・累計)
  • ○死亡者数(新規・累計)

上記のデータでは分母が全都道府県で共通ですから、数字が多いほど感染が拡大していることを示します。
感染の度合いを確認する上で、有効なデータの1つといえるでしょう。

●7日間移動平均は、感染傾向をチェックする上で重要

さきに解説した通り、陽性者数は日々上下します。
特に実績値が顕著な傾向を示しているため、棒グラフを見ただけでは傾向がわかりにくい方も多いでしょう。

7日間移動平均は、感染傾向をわかりやすく示す上で有効なデータです。
当日から6日前まで、7日間の数値を平均することで、すべての曜日の情報が反映されたデータが得られます。

これにより曜日ごとの影響を受けずに、陽性者の傾向をチェックすることが可能となります。

予測データを活用する際の注意点

予測データは将来の感染状況を可視化する上で便利ですが、活用する際には注意すべき点がいくつかあります。
ここでは4点のポイントを取り上げ、解説していきます。

●数値は無保証である

公表されている数値は、あくまでも1つの情報として提供されるものです。
そのため、無保証であることに注意が必要です。
この情報だけに頼り、ほかの情報源を無視して判断することは避けなければなりません。

この点についてはGoogle自身も、以下の通り注意喚起をしています。

なんらかの決定を下すためにこの予測データを使用する際は、必ず他の情報源も併せて参照してください。また、モデルの予測がその用途に適しているかどうかは、ご利用者様ご自身で判断していただく必要があり、Google はその結果について一切の責任を負いません。

引用:Google COVID-19 感染予測 (日本版):ユーザーガイド

上記の通り、予測値と現実の値が大きく異なっていたとしても、Googleは利用した結果に関する責任を取ってくれるわけではありません。
予測データを活用する際は、この点に留意が必要です。

●感染傾向は地域ごとに異なるため、全国一律で上がるわけではない

全国、そして大都市圏の陽性者数が増加するニュースを見ると、お住まいの地域でも今にも感染が拡大するように思いがちです。
しかし感染傾向は地域ごとに異なりますから、全国一律で上がるわけではありません。
このことは、「COVID-19 感染予測」でもしっかり反映されています。

もっとも感染が少ない地域でもクラスターが発生し、陽性者が急増する可能性は常にあります。
過剰な心配は不要ですが、陽性者数が少ないからといって油断することは禁物です。

●ぜひ知っておきたい「95%予測区間」の意味

「COVID-19 感染予測」では累計死亡者数や累計陽性者数で、「95%予測区間」という用語が使われています。
これは累計人数が、下限値と上限値の間のどこかに入る確率が95%であることを示しています。

95%という数値は確実性を担保する上で一般的に用いられている値ですが、それでも5%の確率で予測値の範囲から外れる可能性があります。
1カ月に1~2回くらいは、予測区間から外れた結果が出ても不思議ではありません。
この点をあらかじめ理解した上で、データを用いることが重要です。

●公表された予測は確定された未来ではない。努力次第で結果を変えられる

「COVID-19 感染予測」により、事前に起こりうる未来を知ることができたケースも多くあります。

一例として、東京都の例が挙げられます。
Googleは2020年11月27日からの予測において、東京都では徐々に新規陽性者が増加し、12月後半には1日当たり700人以上となることを見込んでいました。
予測通り陽性者は増加し、12月後半には1日800人を超えた日も出ています。

図3 新規陽性者数:予測値と実際の比較(東京都:11月27日からの予測)

一方で公表されたデータはあくまでも予測であり、今後の施策や市民の取り組み次第で変わりうるものです。
そのため「陽性者数が1日1,000人」といった予測が出たからといって、絶望する必要はありません。

一例として、大阪府を見てみましょう。
2020年11月27日からの予測値では、大阪府では12月中旬以降に新規陽性者数が急増し、1日1,000人以上の日も出ることが見込まれていました。
しかし実際は1日400人強で頭打ちとなり、しだいに減少傾向となっています。

図4 新規陽性者数:予測値と実際の比較(大阪府:11月27日からの予測)

この時期に行われた施策の一例として、以下の項目が挙げられます。

  • ○大阪市内における飲食店への時短要請
  • ○GoToトラベルから大阪市を除外

参考:
日本テレビ 吉村知事 大阪市内“飲食店”時短を要請へ(2020年12月22日引用)
テレビ朝日 吉村知事が表明 GoTo停止を延長 期間は年末前まで(2020年12月22日引用)

このように、予測は未来を確約するものではありません。
数字を冷静に受け止め、適切に備えることが重要です。

予測は1つの可能性と認識し、備えに生かすことが重要

「COVID-19 感染予測」の情報は、ときにショッキングに感じるかもしれません。
しかし公表された予測は、1つの可能性に過ぎません。
各自の取り組み次第で、陽性者数を下げることができます。

新型コロナウイルスに正しく対応するためには、最新の情報を得ることが重要です。
公表された情報を正しく認識した上で、今後の備えに生かしましょう。

参考:
アイティメディア Google、都道府県別コロナ予測「COVID-19感染予測(日本版)」提供開始(2020年12月23日引用)
朝日新聞 グーグルのコロナ予測、政府が「前提条件」調査へ(2020年12月23日引用)
Google COVID-19 感染予測 (日本版) の公開について(2020年12月22日引用)
Google COVID-19 感染予測 (日本版):ユーザーガイド(2020年12月22日引用)
Google COVID-19 感染予測(日本版)(2020年11月30日、12月2日、12月6日引用)
Google GOOGLE TERMS OF SERVICE(2020年12月25日引用)
東京都 新型コロナウイルス感染症対策サイト モニタリング項目(4)検査の陽性率(2020年12月24日引用)
Minitab 予測の信頼区間と予測区間を指定する(2020年12月24日引用)
SAS 予測区間(2020年12月24日引用)
SAS 予測区間の例(2020年12月24日引用)
NHK 岡山県の新型コロナデータ(2020年12月25日引用)
NHK 東京都の新型コロナデータ(2020年12月25日引用)
NHK 大阪府の新型コロナデータ(2020年12月25日引用)
NHK 新型コロナウイルス関連データ・ダウンロードサービス利用規約(2020年12月25日引用)
岡山市 広報連絡 新型コロナウイルス感染症患者の発生について(市内460~517人目)p2(2020年12月25日引用)
日本テレビ 吉村知事 大阪市内“飲食店”時短を要請へ(2020年12月22日引用)
テレビ朝日 吉村知事が表明 GoTo停止を延長 期間は年末前まで(2020年12月22日引用)

  • 執筆者

    稗田 恵一

  • 千葉県在住で、ITエンジニアとして約14年間の勤務経験があります。過去には家族が特別養護老人ホームに入所していたこともありました。2018年からは関東にある私大薬学部の模擬患者として、学生の教育にも協力しています。
    現在はライターとして、OG WellnessのほかにもIT系のWebサイトなどで読者に役立つ記事を寄稿しています。

    保有資格:第二種電気工事士、テクニカルエンジニア(システム管理)、初級システムアドミニストレータ

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