院内連絡はスマートフォンの時代!ナースコールも進化する「医療用スマホ」
医療用PHSに代わり、院内連絡の主役となりつつあるスマートフォン。
その多彩な機能は、迅速な対応が求められる医療現場にも多くのメリットをもたらします。
ここでは、スマートフォンを利用した院内の連絡システムについて解説していきます。
目次
PHSサービス終了への動きが始まっている
2017年4月20日、ソフトバンクはPHSの新規申込みや機種変更受付の停止など、一部サービスの提供終了を発表しました。
もちろん、病院のPHSがすぐに使えなくなるわけではありませんが、今後PHS自体、徐々に縮小されていく可能性が高いと考えられます。
2018年4月以降、新規申込みと機種変更の受付が終了となる
2017年4月20日、ソフトバンクはPHSのうち下記のサービスについて、2018年3月31日をもって終了することを発表しました。
- ○PHS端末への機種変更
- ○PHSの料金プラン「ケータイプラン」への新規申込・変更
PHSの契約には料金プランへの加入が必要ですが、ケータイプランへの申込ができなくなるため、新規加入することができません。
またソフトバンクは日本でPHSを運営する唯一の企業ですので、2018年4月以降はPHSの新規申込みができなくなります。
このため、PHSサービス終了への大きな一歩を踏み出したといえるでしょう。
修理の受付は引き続き行われますので、当面の利用に問題はありませんが、修理不可能ということになった場合は、PHSの台数が減ることになり、いずれはPHS以外のシステムを導入しなければなりません。
システム切り換えは早めの検討を
将来PHSサービスが終了した場合、医療用PHSをご利用の医療機関では、なんらかの形でシステムの切り換えを迫られることになります。
とはいえ、システム切り替えには費用がかかりますから、すぐに実行できるわけでもありません。
PHSが使える今のうちから将来を見越して、早めにシステム更新に着手することが大切です。
院内連絡は声と文字だけでは限界がある
医療用PHSは離れた場所にいる医療スタッフと会話したり、どこでもナースコールを受信できるなどの機能があります。
しかし、PHSは、通話とメール受信はできても、アプリが使えないという限界があります。
したがって、患者情報を画面に表示させたり、院内のスタッフと文字で情報のやり取りをすることができません。
院内連絡が円滑になる!患者情報・指示・記録が一度に叶うスマートフォン
現在では病院内の連絡手段として、スマートフォンも利用可能です。
スマートフォンを通信機器として使うことで、PHSではできなかった多くのことが可能となります。
ここでは東京慈恵会医科大学(以下、慈恵医大と略)の例を中心に、代表的なものをあげていきます。
患者情報を画面で確認でき、処置内容もその場で登録できる
慈恵医大では、アイホン株式会社が提供する「Vi-Nurse」を導入しています。
これにより、以下のことができるようになりました。
- ○ナースコールを受信した際、患者の名前や病室なども併せて表示できる
- ○処置内容をスマートフォンですぐに入力できる
特に次々とナースコールが鳴るような状況では、処置内容を後で記録することは大きな手間となります。
その場で処置内容を記録できる機能は、医療の質の向上に役立つことでしょう。
ナースコールで16台まで一斉呼び出し
Vi-Nurseでは、ナースコールを押すと最大で16台のスマートフォンを一斉に呼び出すことが可能です。
これにより、すぐに看護師に連絡が取れる可能性が高くなり、対応のスピードアップに役立ちます。
院内一斉通知ができる
慈恵医大では、株式会社アイキューブドシステムズが提供する「CLOMO」も導入しています。
このなかの「CLOMO MDM」では、緊急連絡をスマートフォンの画面に表示させることができます。
メールでは見逃しのリスクがあり、院内放送では患者さんの迷惑となりますが、CLOMO MDMではその心配もいりません。
これにより、院内で急変があった場合でも迅速な対応が可能となります。
スタッフ同士のチャットなども可能
CLOMOのなかの「CLOMO IDs」には、チャット機能があります。
LINEなどのアプリを使う感覚で、気軽にコミュニケーションができます。
電話では話し声が周りに聴こえてしまいますが、チャットならその心配もありません。
院外の専門医ともコミュニケーションが可能
慈恵医大病院ではCLOMO IDsとは別に、株式会社アルムと共同で医療用コミュニケーションアプリ「Join」を開発しました。
これにより、院外にいる専門医ともコミュニケーションを取ることができます。
CTやMRIなどの画像も添付できますから、オンコールの医師にわざわざ病院まできてもらわなくとも、その場で判断してもらえるケースが増えることが想定されます。
高機能なスマートフォン、気になる医療機器への影響は?
かつて、携帯電話はPHSよりも電波の出力が強かったため、病院内での利用は制限されていました。
しかし、現在ではPHSよりもスマートフォンの方が医療機器への影響は小さくなっています。
慈恵医大とNTTドコモは2013年3月、スマートフォンや携帯電話の電波が医療機器に影響を与える距離について、調査結果を発表しました。
これによると、以下の結果となっています。
- ○PHSは6cm以上離せば問題ない
- ○スマートフォンは電波状況により2cmから34cm
- ○スマートフォンは電波状況が良好な場合は弱い送信電力で済み、2~5cm離せば良い
スマートフォンは基地局までの距離が遠いと、遠くまで電波を送信しなければならないため送信電力が大きくなります。
しかし、院内に基地局を造設すればて、スマートフォンの送信電力が最小の10mwで済み、医療機器への影響も小さくなります。
このように、現在のスマートフォンはPHSより高機能であるにもかかわらず、電波の送信電力を弱めることが可能であり、さらに安全な院内通信の実現につながります。
まとめ
以上の通り、現在ではスマートフォンの方がPHSよりも安全、かつ高機能なコミュニケーションを実現できます。
今後新しいナースコールシステムを導入したり更新したりするなら、スマートフォンを基軸としたシステムを導入することをお勧めします。
また、PHSは徐々にサービスが縮小していますから、サービス完全終了の告知がされた時点であわてて対策をとることは避けたいものです。
今から十分に時間をかけて院内コミュニケーションシステムの更新を考えることが、満足度の高い医療を提供することにつながるでしょう。
参考:
日経トレンディ PHSが終了 スマホや定額料金の土台作った20年 ワイモバイルが2018年新規契約を終了(2018年2月12日引用)
ソフトバンク “ワイモバイル”で提供中の一部料金プランなどの受付停止について」(2018年2月12日引用)
ソフトバンク よくあるご質問 (FAQ No.404188)今後、PHSサービスはどうなるのですか?(2018年2月12日引用)
ソフトバンク STOLA 301KC(2018年2月12日引用)※Web上で紹介されているPHS唯一の商品
ソフトバンク 料金 ケータイ(2018年2月12日引用)
ソフトバンク ケータイプラン(2018年2月12日引用) ※2018年3月31日で受付終了の告知あり
ソフトバンク ケータイプランSS(2018年2月12日引用) ※PHSでは利用できない
ソフトバンク よくあるご質問 (FAQ No.415857)「ケータイプラン」と、「ケータイプランSS」の違いを教えてください。(2018年2月12日引用)
株式会社アイキューブドシステムズ iPhone活用事例(病院):東京慈恵会医科大学(2018年2月12日引用)
アイホン ナースコールシステム Vi-nurse(ビーナース)(2018年2月12日引用)
アイホン ナースコールシステム Vi-nurse(ビーナース)機能・特徴(2018年2月12日引用)
アイホン ハンディナースシステム(2018年2月12日引用)
KOSネットワーク株式会社 スマホナースコールで院内コミュニケーション効率化(2018年2月12日引用)
株式会社アルム Join(2018年2月12日引用)
順天堂大学医学部附属順天堂医院 院内PHSの導入について(2018年2月12日引用)
ワイモバイル ナースコール連携ソリューション(2018年2月12日引用)
東京慈恵会医科大学 先端医療情報技術研究講座:スマホで始まる未来の医療~医療+ICTの最前線~. 日経BP社, 東京, 2016, pp.37-42,58-61,88-91,102-121
東京慈恵会医科大学 先端医療情報技術研究講座:医療機器に関する最大干渉発生距離, スマホで始まる未来の医療~医療+ICTの最前線~. 日経BP社, 東京, 2016, p90 ※2013年3月に発表された、慈恵医大とNTTドコモの調査結果を掲載
総務省 「電波の医療機器等への影響に関する調査」平成28年度報告書(2018年2月12日引用)