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離島や山間部の住民にも、ドローンの活用で安心の医療を提供できる

離島や山間部の住民が医療機関にアクセスする場合は、長時間の移動など負担がかかる場合も多いです。
この状況を改善するため、遠隔診療とともにドローンの活用も進められています。
本記事では取り組みの例も含めて、ドローンを活用するメリットを解説します。

遠隔診療にドローンを活用するメリットとは

ドローンの活用で、安心できる医療につなげられる

ドローンの活用により、医療機関にない医療機器や薬でも迅速な配送が可能となります。
離島や山間部でも充実した医療の提供が可能となり、安心できる医療につなげられます。
ここではドローンの解説も含めて、活用するメリットにふれていきます。

人が乗れない 飛行可能な時間帯は日の出から日没まで と制限は多いもののメリットが多いドローン活用

●ドローンとは、遠隔操作や自動操縦による無人航空機

ドローンとは無人航空機の一種で、以下の特徴を持っています。

  • ○人は乗ることができない
  • ○物資の輸送は可能
  • ○遠隔操作や自動操縦により飛行する
  • ○飛行可能な時間帯は、日の出から日没まで

また200グラム以上のドローンは、国土交通省が提示する「ドローンの飛行ルール」が適用されます。
市街地などの「人口集中地区」や空港周辺、150m以上の高度で飛行させたい場合は、10営業日前(できれば1カ月前)までに国土交通省へ申請し、許可を受ける必要があります。

●スピーディーに処方薬を配送できる

遠隔診療の広がりにより、診療や薬についての説明は自宅でも受けられるようになりました。
一方で薬そのものは現物を渡さなければならないため、遠隔で済ませるわけにはいかず、配送が必須となります。
宅配業者の利用はよく使われる方法ですが、即日配達が難しいことは難点。
「今すぐに欲しい」という要望に対応できないことが課題です。

ドローンは、上記の課題を解決できる方法です。
最速で数十分程度での配送が可能。
患者さんへ薬をすばやく届けるだけでなく、訪問診療時に薬が不足した場合も、迅速に調達できるメリットがあります。

●離島や山間部の医療機関に、医療機器や医療資材を送付できる

離島など物流ルートが安定して確保できない地域に有効

離島や山間部にある医療機関のなかには、医療機器が充実していない箇所もあります。
そのような場合でも、軽量の機器ならばドローンを使い、迅速に輸送可能。
「医療機器がないので診断できない」といった事態を減らせるため、どこにいてもより良い医療を受けることが可能となります。

ドローンは離島での医療を守る力強い味方。2つの事例を紹介

離島での医療は、どうしても限られてしまいがち。
加えて移動手段が限られる点も、特徴に挙げられます。

ドローンは離島での医療を守る、力強い味方となります。
ここでは2つの事例を紹介し、詳しく解説していきます。

●その1:ドローンで検査機器や血液を輸送し、迅速な診断が可能(香川県三豊市粟島)

三豊市にある粟島は人口が約180人、島民の平均年齢は80歳に近い一方で、島で受けられる医療は以下の通り限られています。

  • ○粟島診療所において、内科のみの診療
  • ○午前は月・金の週2回
  • ○午後の診療日は、1カ月につき4日間

これ以外のタイミングで受診したい場合は本土に渡る必要がありますが、船の便数は限られています。

この事態を解決すべく、2020年7月30日と2021年2月5日に以下の物資を輸送する実証実験が行われました。

  • ○医薬品
  • ○心電計
  • ○血液

2月5日の実証実験においては、本土は詫間港ゴマジリ地区、粟島側は粟島郵便局前広場が離発着地となり、両区間を約10分で運航しました。
これにより、以下の事項が実現可能と確認されました。

  • ○患者はオンライン診療を受けてから、約1時間半ほどで処方薬を入手できる
  • ○島に常備していない医療機器も即日で利用でき、当日中に返却可能
  • ○島で採取した血液を、当日中に本土へ輸送できる

なお実証実験でドローンを運航していた「かもめや」は、毎日午後にドローンを本土から粟島まで運航する事業を、2021年8月より開始するとしています。

●その2:医師のいない曜日でも医療を受けられ、処方薬を受け取れる(長崎県五島市嵯峨島)

長崎県五島市には、多くの離島があります。
その1つである嵯峨島には診療所があるものの、常勤のスタッフは看護師1名のみ。
医師は水曜日の午後、歯科医師は火曜日に来るだけの体制となっています。
このため診療日以外に診察を受けたい場合は、福江島まで船で渡る必要があり、丸1日拘束されることが難点でした。

五島市では ANAホールディングスや長崎大学、NTTドコモなどとともに、2020年10月から2021年2月まで、オンライン診療・オンライン服薬指導とともにドローンによる配送の実証実験を行いました。
オンライン診療は、福江島にある三井楽診療所や五島中央病院の医師が担当。
患者は嵯峨島から出ることなく、医療を受けられるようになりました。

投薬が必要な場合はオンライン服薬指導の後、薬を福江島・貝津港まで運び、そこからドローンで輸送します。
貝津港から嵯峨島までは5kmの海上輸送となりますが、およそ10分で到着。
陸上での移動時間を含めても、約1時間で薬が患者さんの手元に届くことは魅力です。

山間部での医療をバックアップする、2つの活用例を紹介

ドローンの活用範囲は、離島に限られません。
日本に数多くある、山間部での医療もバックアップします。

これから紹介する2つの例はいずれも処方薬の配送が目的ですが、ドローンを必要とする背景は異なります。
それぞれの活用例について、詳しく確認していきましょう。

へき地でも診療だけでなく処方薬も家で受け取り可能

●その1:オンライン診療とともに、自宅で薬を受け取れる(静岡県浜松市天竜区春野地区)

浜松市天竜区春野地区には往診を行う医療機関があるものの、車で片道10km以上の走行を要する場合もあり、医師への負担が課題となっていました。
もちろんこのような地域に住む方にとって、具合が悪くなった際に医療機関にかかることは簡単ではありません。
自ら車を運転できない場合は、近隣の方や子どもなどに送迎を頼むことになります。

2020年10月19日から2021年1月14日まで実施された「春野医療MaaSプロジェクト」の実証実験では、患者さんの自宅に看護師とタブレット端末を搭載した移動診療車が出向き、医師が画面越しにオンライン診療とオンライン服薬指導を実施。
その後、処方薬をドローンで輸送し患者さんの自宅へ届けます。

2020年12月8日に公開された実証実験では、地域内にある小澤医院から春野協働センターまでの4kmを、気田川に沿って11分で輸送しました。
実証実験では車で並走しながらの操縦でしたが、将来は診療所などから操縦し薬を届けることを目標としています。

●その2:訪問診療時に持参していなかった薬も、スムーズに配送(大分県竹田市宮砥地区)

株式会社エー・ディー・イー(株式会社オートバックスセブンの100%子会社)は大久保病院などとともに、2020年度より大分県竹田市宮砥地区において、ドローンによる医薬品配送の実証実験を行っています。

宮砥地区には診療所がなく、40km離れた大久保病院の医師が地域の集会所において、週1回訪問診療を行っています。
訪問診療の際には必要な医薬品を予測し、車に搭載しています。
しかし現地で診療した結果、搭載されていない医薬品が必要となる場合もあります。
このような場合は、後日車を使って薬を配送するといった手間と不便が生じます。

ドローンの活用により、不足する薬も迅速に追加可能。
2021年2月23日に実施された実証実験は、以下の要領で実施され、無事成功しました。

  • ○ドローンは緒方川沿いを約1km飛行し、地域内にある宮砥分館のグラウンドに着陸
  • ○錠剤と湿布薬を輸送

2022年度の事業化を目指し、2021年度は目視外飛行で10kmの配送を計画しています。

ドローンを医療に役立てるためには、規制の緩和が必要

2021年現在、人がいる地域でドローンを運航するためには、法令により人が目視できる範囲での操縦が求められています。
このため「春野医療MaaSプロジェクト」では、ドローンにあわせて車で並走する措置が取られました。
ドローンを医療に役立てるためには、このような規制を緩和する必要があります。

首相官邸「空の産業革命に向けたロードマップ2021」では、人がいる地域でも目視なしでドローンを飛ばせるようにする目標が定められています。
2022年度をめどに、まずは離島や山間部から実現させる計画ですから、早期の実現が待たれます。

ドローンの活用は、地域を問わず良質な医療を受けることにつながる

離島や山間部など医療を受ける機会が限られている地域でも、ドローンの活用により医療機器や薬の配送をスムーズに行えます。
これにより、地域を問わず良質な医療を受けることにつながります。

医療におけるドローンの実証実験は各地で行われていますが、本格的な活用は始まったばかりです。
今後の普及により離島や山間部の住民も医療にアクセスしやすくなり、住み慣れた地域で安心して暮らせるようになることを期待します。

参考:
国土交通省 無人航空機(ドローン、ラジコン機等)の安全な飛行のためのガイドライン(2021年8月18日引用)
国土交通省 ドローンの飛行ルール(2021年8月21日引用)
国土交通省 無人航空機の飛行許可承認手続(2021年8月21日引用)
ベリーベスト法律事務所広島オフィス 200g未満のドローンなら、規制にひっかからない? 逮捕される可能性は?(2021年8月18日引用)
三豊・観音寺市医師会 三豊市国民健康保険粟島診療所(2021年8月18日引用)
瀬戸内海放送 医師がいない離島に「医療」を…香川県・粟島でオンライン診療やドローン輸送の実証実験(2021年8月18日引用)
三豊市 粟島スマートアイランド推進実証事業 医療ドローン試験飛行(2021年8月18日引用)
かもめや 無人航空機 KamomeAir(2021年8月18日引用)
かもめや 目視外飛行を行う無人航空機に関する飛行情報の提供について(2021年8月1日~2021年10月31日)(2021年8月18日引用)
ロジスティクス・パートナー かもめや/離島エリアでのドローン物流長期定期航路8月開設(2021年8月18日引用)
瀬戸内海放送 医師がいない離島に「医療」を…香川県・粟島でオンライン診療やドローン輸送の実証実験(2021年8月18日引用)
Melody International 遠隔診療と無人ドローン配送~安心して島に住み続けるための支援に向けて~オンライン診療とオンライン服薬指導、薬と血液検体、医療機器のドローン配送(2021年8月18日引用)
五島市 ドローン物流とアバターロボット等を活用した遠隔医療を開始しました(スマートアイランド実証調査事業)(2021年8月17日引用)
朝日インタラクティブ ANA、アバター×ドローン「遠隔医療」を五島市で成功–ドコモ、長崎大学、ACSLらと(2021年8月17日引用)
ANA 【ANAドローン事業化プロジェクト】国内初!離島に住む患者様の処方薬をドローンで配送!(2021年8月17日引用)
PR TIMES 静岡県浜松市の「春野医療MaaSプロジェクト」が始動!Level4環境下での自律飛行実現を見据え、オンライン診療と連動したドローンによる医薬品配送の実証実験に参加(2021年8月17日引用)
朝日新聞社 診療は遠隔、薬はドローン 山あい過疎地で実用化なるか(2021年8月17日引用)
中日新聞社 ドローンで薬配送実験 天竜区春野町(2021年8月17日引用)
日経BP 新・公民連携最前線 第19回 浜松市:中山間地域の高齢者にMaaSによる医療サービス(2021年8月17日引用)
トラジェクトリー 春野医療MAASプロジェクト デモムービー(2021年8月17日引用)
エー・ディー・イー 大分県竹田市宮砥地区ドローン薬配送プロジェクト(2021年8月17日引用)
オートバックスセブン ドローンによる医薬品配送の実証実験を実施します~へき地医療への負担軽減を図り、地域医療の活性化に貢献します~(2021年8月17日引用)
インプレス エー・ディー・イー、大分県竹田市でドローンによる医薬品配送の実証実験を実施(2021年8月17日引用)
大分県商工観光労働部新産業振興室 訪問診療先へドローンで医薬品をお届け!竹田市宮砥地区ドローン薬配送プロジェクト(2021年8月17日引用)
首相官邸 空の産業革命に向けたロードマップ2021(2021年8月17日引用)

  • 執筆者

    稗田 恵一

  • 千葉県在住で、ITエンジニアとして約14年間の勤務経験があります。過去には家族が特別養護老人ホームに入所していたこともありました。2018年からは関東にある私大薬学部の模擬患者として、学生の教育にも協力しています。
    現在はライターとして、OG WellnessのほかにもIT系のWebサイトなどで読者に役立つ記事を寄稿しています。

    保有資格:第二種電気工事士、テクニカルエンジニア(システム管理)、初級システムアドミニストレータ

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