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バイタル測定を自動化!時短・ミス減・負担減、いいことずくめの三拍子

患者さんのバイタル測定、これを電子カルテに入力する作業は意外と面倒なもの。
そんな現場の声を受けて、バイタル測定を自動化している病院もあります。
そこで今回は、実際の導入事例などを紹介しながら、バイタル測定の自動化によるメリットをお伝えしていきます。

バイタル測定を自動化できれば、看護師の負担軽減につながる

病棟で勤務する看護師にとって、入院患者さんのバイタル測定は重要な仕事であり、また患者さん一人ひとりと接することのできる、貴重な時間でもあります。
しかしその負担は大変重くなっています。
2014年12月13日に行われた「第1回iNurse(イナース)研究会」で発表された内容では、看護師が1日に8時間勤務した場合、そのうちの1時間を入院患者のバイタルデータ入力に費やしているとされています。
特に夜勤の場合は受け持ち患者さんの数も多く、より多くの時間を電子カルテへの入力に割かなければなりません。
あまりにも膨大な量に、「事務作業をするために看護師になったわけではないのに」と思った方もいるのではないでしょうか。
また、慌ただしい業務の合間を縫って作業をするため、別の患者さんのデータを入力してしまうなどのミスも起こりがちです。
看護師は、ほかにもやらなければならない業務が山ほどありますから、日々のバイタル測定業務をある程度自動化できれば、看護師の残業削減や、転記ミスの防止にも役立ちます。

バイタル測定の自動化は徐々に進んでいる

バイタル測定業務の自動化は、大規模病院から徐々に進んでいます。
ここでは2種類の検温バイタル自動記録システムと、その活用事例をご紹介します。

フクダコーリン「スポットチェックモニタ」の機能

フクダコーリンでは、検温バイタル自動記録システム「スポットチェックモニタ」を発売しています。
「スポットチェックモニタ」は以下のバイタルデータを測定し、結果を電子カルテに送信するシステムです。

  • ●血圧
  • ●脈拍数
  • ●体温(別売のオムロン製電子体温計「けんおんくん」を使用)
  • ●SpO2(別売のフクダコーリン製パルスオキシメータを使用)

血圧や脈拍数は本体で測定します。
本体の重さは0.7kg、サイズは縦15.9cm・横18cm・高さ15.7cmとコンパクトですから、ナースカートに載せて持ち運べます。
また担当看護師や患者さんを識別・認証する機能もあります。
一方、体温は「けんおんくん」を、SpO2はパルスオキシメータを、それぞれ本体のRFID受信部にかざすことでデータを読み取ります。
本体のRFID受信部は、「測定 停止」ボタンの左側に内蔵されています。
受信したデータはワンタッチで電子カルテに転送しますから、すぐに患者さんのデータを確認することができ、データの転記ミスもありません。

「スポットチェックモニタ」の導入事例と導入効果

東京ベイ・市川浦安医療センターでは、2012年3月からオムロンヘルスケア「スポットチェックモニタ」(現在はフクダコーリンにて取り扱い)を使用し、バイタル測定業務の自動化を図っています。
「スポットチェックモニタ」導入まえは、患者さん一人当たりのバイタル測定業務に138秒を要していました。
また看護師全員が、バイタルデータの記録を理由に残業の申請をしていました。
導入後は、患者さん一人当たりのバイタル測定時間は93秒と、導入まえとくらべて45秒短縮され、記録のために費やされた時間も不要となりました。
それ以外にも、特に受け持ち患者数が多い夜勤帯においては、看護師の負担軽減に役立つことが大いに期待できます。

島津エス・ディー「バイタルデータターミナル」

島津エス・ディーでは、検温バイタル自動記録システム「バイタルデータターミナル」を発売しています。
「バイタルデータターミナル」は、NFC(近距離無線通信)に対応した医療機器で、測定されたデータを「読み取り部」にかざすことで電子カルテに送信されるシステムです。
「バイタルデータターミナル」は以下のバイタルデータを送信できます。

  • ●体温
  • ●血圧
  • ●SpO2
  • ●血糖値

NFCが搭載された機器であれば読み取りが可能で、測定機器を特定のメーカーでそろえる必要がないことがメリットとなっています。
また測定機器に時計機能が内蔵されていれば、測定を実施した時刻も記録でき、さらに担当看護師や患者さんを識別・認証する機能も搭載しています。
「バイタルデータターミナル」は患者さんのベッドサイドに「読み取り部」を設置するため、ベッド数と同じ個数が必要になります。
このため島津エス・ディーでは、2017年7月12日から読み取り部をナースカートに搭載した「バイタルデータターミナルNC」も発売しています。
ナースカートの読み取り部で読み取ったバイタルデータは、必要に応じてデータ確認専用のアプリケーションで確認することができます。
このアプリケーションはスマートフォンにインストールできるので、看護師の院内用スマートフォンで測定データの内容を確認後、電子カルテに送信するといった使い方も可能です。

「バイタルデータターミナル」システムの導入事例と導入効果

2016年5月より、病床数1121床の京都大学病院では島津エス・ディー「バイタルデータターミナル」システムの使用を開始し、バイタル測定業務の自動化を図っています。
京都大学病院では、ベッドサイド固定型のものを採用しています。
さらに「バイタルデータターミナル」の導入を検討するにあたって、事前にどれだけの時間短縮につながるかの試算を行っています。
京都大学医学部附属病院 医療情報企画部 黒田知宏教授によると、以下の試算結果が得られているとのことです。

  • 検温業務にかかる時間は、53秒から25秒に短縮する
  • 京都大学病院全体では、一日当たり5737分の業務が削減される
  • 500床程度の病院であれば、導入後2年程度で投資額を回収できる

また導入後は、バイタルデータの入力時間が短縮されたことで、ガーゼ交換などほかの看護業務に時間を回せるようになったという効果もでています。
患者さんのベッドに向かう際には、測定機器だけ持って行けばよいことも大きなメリットとなっています。

検温バイタル自動記録システムの導入によって、患者の満足度向上も狙える

検温バイタル自動記録システムを導入した場合のメリットは、以下の3点があげられます。

  1. 1)バイタル測定業務の時間を短縮できる
  2. 2)転記ミスや電子カルテへの誤入力がなくなる
  3. 3)電子カルテに取り込んだデータは、すぐに患者のために活用できる

検温バイタル自動記録システムを導入すると、測定データを取り込んだ瞬間に入力が完了します。
看護師による電子カルテへの入力作業が不要になりますから、その分の残業時間が短縮されるなど、看護師の労働環境の改善が図れます。
また測定データを手動で入力する場合は、患者さんの測定データを別の患者さんのデータとして入力してしまう場合があり、これが重大インシデントにつながる恐れがあります。
しかし検温バイタル自動記録システムを導入することで、こうしたミスを防ぐことができるのです。
システム導入によるメリットは医療者だけではなく、患者さん側にもあります。
たとえば測定データを迅速に電子カルテに取り込むことができれば、病状の変化に対する対応も速やかに行うことができます。
また、看護師に時間的な余裕が生まれることで、患者さんやその家族と向き合う時間も長くなり、「看護師さんが忙しそうだから声をかけられない」といったコミュニケーション不足による不満の解消を図ることも可能になります。

測定業務の自動化によって得られる最大のメリットは「時短」といえますが、これによってもたらされるさまざまな効果は、結果的に患者さんの満足度を上げ、病院全体の評価を高めることにもつながっていくのです。

まとめ

検温バイタル自動記録システムを導入することによって、測定データの入力ミスを防止、看護師の業務負荷を軽減、そして患者さんの満足度向上という一石三鳥の効果が見込めます。
設備投資は決して安いものではありませんが、京都大学病院の試算結果をみれば、短期での投資額回収は期待できるといえるでしょう。
ぜひこの機会に、バイタル測定自動記録システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

参考:
iNurse研究会 第1回iNurse研究会記録集 pp.4-17(2018年3月16日引用)
iNurse研究会 第2回iNurse研究会記録集 pp.5-9(2018年3月16日引用)
厚生労働省 病院医療従事者の負担軽減について(その2)pp.16-34(2018年3月16日引用)
フクダコーリン 商品情報|スポットチェックモニタ HBP-1600 基本情報(2018年3月16日引用)
フクダコーリン 商品情報|スポットチェックモニタ HBP-1600 特徴(2018年3月16日引用)
フクダコーリン 商品情報|スポットチェックモニタ HBP-1600 使用例 (2018年3月16日引用)
フクダコーリン 商品情報|パルスオキシメータ HPO-1601(2018年3月16日引用)
オムロンヘルスケア 電子体温計「けんおんくん」MC-1600W-HP(2018年3月16日引用)
アスキー オムロン、生体情報測定データを電子カルテに自動転送する「HBP-1600」を機能拡充(2018年3月16日引用)
島田エス・ディー株式会社「バイタルデータターミナルNC」を発売(2018年3月16日引用)
島田エス・ディー株式会社 モバイル回診カート[MMPシリーズ](2018年3月16日引用)
日経デジタルヘルス 京大病院のICT改革(上):バイタル記録は「かざす」だけ(2018年3月16日引用)

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