これだけは知っておきたい!セラピストが整形外科疾患のレントゲンを活用する必要性と読むためのポイント
整形外科病院では診断のためにレントゲン撮影が頻繁に行われています。
レントゲンを見たときに「全くわからない」、「なにをどう見たらいいのかわからない」と思った経験はありませんか?
レントゲン画像には、リハビリテーションを進める上で有益な情報が多くあります。
今回は、セラピストがレントゲン画像を活用する必要性と、レントゲンを読むためのポイントを解説していきます。
目次
レントゲンでなにが分かるの?セラピストがレントゲン所見を活用する必要性とは
レントゲンを見ることでリハビリを進める上で必要な情報を得ることができます。
まずはレントゲンでなにが分かるのか確認していきましょう。
●レントゲンで骨折や固定方法、軟部組織の状態を把握しよう
レントゲンを見ることで骨折の状態や固定方法、軟部組織の状態などを把握することができます。
1)骨折の状態
骨折の状態を把握するために必要な考え方は、どのような外力が加わって骨折したのかということです。
骨に加わる外力は、
- ○剪断力
- ○捻じれ
- ○牽引
- ○圧迫
- ○屈曲
などの外力に分けることができますが、骨折線の入り方でどのような外力が加わったのかを把握することができます。
骨折線の入り方は
- ○横骨折
- ○縦骨折
- ○斜骨折
- ○ラセン骨折
- ○複合骨折
に分けることができます。
2)整復位や固定の状態はどうか
医師は骨折後に転位があれば必ず整復を行います。
骨折部が癒合していく条件として
- ○骨片間の隙間が大きすぎないこと
- ○骨片間の動きが大きすぎないこと
- ○強固すぎる固定ではないこと
- ○骨片間に圧迫力が加わること
が挙げられ、医師はこの条件を満たすように整復を行います。
しかし骨折の程度によっては条件を満たせない場合もあり、その場合はリハビリを進めるときに注意が必要です。
また、手術をした場合は、固定に使用されるインプラントの種類やインプラントと骨の位置関係などは疼痛や骨癒合が順調に進むかどうかの判断材料になります。
3)軟部組織の状態はどうか
骨折の程度によって骨折周囲にある筋、腱、靭帯などの軟部組織の損傷が起きている可能性があります。
骨折時に加わる外力による損傷や、骨折部の転位による損傷などがあります。
そのため、軟部組織の損傷を想像するためにもどのような外力が加わったかを把握することが重要となります。
4)時間経過で変化があるか
時間経過で読み取れることは
- ○骨癒合
- ○骨萎縮
- ○アライメント(骨折の転位)
- ○インプラントの位置
などがあります。
順調に骨癒合しているか、骨折部の転位はしていないか、インプラントの破損やゆるみなどはないか、骨萎縮が起こっていないかなどを考えながらレントゲンを見ることが重要になります。
●レントゲンを活用することで治療方針を明確にできる!リスク管理にも効果的
レントゲンを見ることでどのような情報を得られるか述べました。
これらを理解することで臨床上どのように役立つのでしょうか。
1)医師と情報の共有ができる
当たり前のことですが、主治医との情報の共有は重要です。
- ○なぜこの固定方法を選んだのか?
- ○整復位、固定は良好か?
- ○プロトコール通りに進めても大丈夫か?
などを確認します。
これらを確認、共有することで、リハビリを進める際の注意点や治療法の選択などができます。
2)リスクの確認
人工股関節のような脱臼肢位を理解しておくことも重要ですが、受傷直後、術直後にしてはいけないことを把握できるかが大事です。
不用意に動かすことで組織の修復を阻害することにつながる場合もあります。
たとえば、足首を内反方向に捻って足関節の外果骨折を受傷した場合、同時に外側の靭帯を損傷している可能性もあるため、術直後から内反方向へ動かすことは損傷部にかかるストレスを考えると控えたほうがいいでしょう。
レントゲンの特徴を理解しよう!レントゲンを読み解くポイント
ここではレントゲンの特徴とレントゲンを読み解くポイントを述べていきます。
●レントゲンは全体像を捉えやすいが、立体的には捉えにくい面もある
レントゲンにも得意な部分と苦手な部分があります。
レントゲンの特徴には
- 1)全体的なアライメントが捉えやすい
- 2)骨折の状態の確認が容易
- 3)2次元なので前後が分かりにくい
- 4)立体的に捉えにくい
- 5)ちょっとした角度のずれで見え方が変わってしまう
などがあります。
レントゲンを見ていくことで重要なことは、2次元の画像であるレントゲンを頭の中で立体変換することです。
このためには色々な方向からのレントゲンを見る必要があります。
●セラピストがレントゲンを読み解くポイント
セラピストがレントゲンを見るときのポイントを、膝蓋骨骨折を例に挙げながら述べていきます。
1)骨折の状態、受傷機転を想像する
まずは骨折の状態の確認が必須ですが、術後のレントゲンだけではなく、必ず術前のレントゲンも見るようにします。
骨折の状態を確認するには
- 1.骨端部での骨折か骨幹部での骨折か?
- 2.どの方向に折れているか?(例:ラセン骨折?横骨折?)
- 3.どのような外力が加わったのか?(例:剪断骨折?圧迫骨折?)
などのことを確認しましょう。
このときに受傷機転を想像しながら見ることで、骨にどのような外力が加わったのかが分かってきます。
たとえば膝蓋骨骨折の場合、直接膝蓋骨を強打(直達外力)して起こる骨折と、大腿四頭筋に引っ張られて(介達外力)起こる骨折の仕方があります。
直達外力の場合は粉砕骨折になりやすく大きな転位はあまり生じませんが、介達外力での骨折の場合は多くが横骨折になり、大きく転位する可能性があります。
(もちろん両者が混在する場合もあります。)
2)軟部組織の損傷の状態を想像する
軟部組織の損傷を考えるには、受傷機転による外力の方向と骨折の転位の大きさに着目すると分かりやすくなります。
上記と同じように膝蓋骨骨折で考えてみると、膝蓋骨には靭帯組織が数多く付着していますが、介達外力で起こった転位の大きい骨折の場合はこれらの軟部組織の損傷が疑われます。
逆に転位が少ない場合は軟部組織の連続性は保たれている可能性があります。
軟部組織の損傷は、大腿四頭筋、膝蓋骨、膝蓋靭帯から構成される膝伸展機構も破綻することになり、筋力の発揮も不十分になると予測することができます。
どのような外力が加わってどういう骨折をしたかで軟部組織の損傷具合を考えていきましょう。
3)インプラントの位置関係で固定性や疼痛の原因も想定できる
インプラントの機能を発揮するには、インプラントが適切な位置に挿入されていることが重要です。
インプラントの位置が不適切だと疼痛の原因や固定性の低下につながります。
膝蓋骨骨折ではtension band wiring(TBW)と呼ばれるワイヤーを使用する手術が一般的ですが、このワイヤーが長かったり、緩んでいたりすると疼痛の原因や固定性の低下につながります。
このような状態で無理に膝を曲げようとすれば、疼痛の助長や骨折部へのストレスなどを与えてしまいます。
レントゲンを見ることで患者さんの病態把握につながる!たくさん見て練習しよう
今回は、レントゲンを活用する必要性と読み解くポイントについて述べました。
レントゲン画像は骨折や固定の状態、軟部組織の損傷の把握などができます。
これらの情報は患者さんの病態の把握につながり、治療方針の決定やリスク管理にも反映することができます。
レントゲンを読み解くには数多くのレントゲンを見ることが必要になってきます。
多くのレントゲンを見て少しずつ読み解けるように練習していきましょう。
参考:
青木隆明,浅野昭裕他:運動療法に役立つ単純X線像の読み方 第1版.メジカルビュー社,2017, pp.2-16,pp.33-45.
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執筆者
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専門学校卒業後、理学療法士として整形外科病院に勤務しています。
大腿骨骨折などの高齢者の骨折の手術後はもちろんのこと、靭帯損傷などのスポーツ外傷や成長期のスポーツ障害、慢性疾患など幅広く対応しています。
日本理学療法士協会認定の認定理学療法士(運動器)も取得しています。
また、中学生の野球チームへのトレーナー活動や、車椅子テニス大会などのサポート経験もあります。
皆様の疑問に答えられるような執筆をしていきたいと思います。
保有資格:保有資格、理学療法士、認定理学療法士(運動器)