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整形外科クリニックを黒字経営にする必須条件は、来院患者数一日40人以上!

全国の診療所数第2位である整形外科でも、赤字経営から閉院や休業に追い込まれてしまうケースも珍しくありません。
そこで今回は、整形外科クリニック黒字経営のために知っておきたい1日来院患者数と、関連事業の動向をお届けします。

一日来院患者数40人は、整形外科経営の「最低達成ライン」

クリニックを経営されている先生が、経営状況を考えるうえでまず気になるのが「1日来院患者数」ではないでしょうか。
医業経営専門コンサルティング会社が、厚生労働省が提示している「社会医療診療行為別統計」および「医療施設調査」を元に、週の稼働日を5~6日とした調査によると、全診療所の平均的な1日あたりの患者数は、36~43人でした。
実際には1日100人以上来院するクリニックもあれば、1日あたり10数人というクリニックもあるため一概にはいえませんが、おおよそ1日40人以上来院すれば、1日来院患者数の平均値はクリアしている、ということがいえます。
この1日来院患者数が40人というデータを元に、平均的な内科診療科における大まかな収支構造を計算すると、院外処方や検診、スタッフの人件費や賃料などを考慮したうえで、税金やクリニック設立時における借入金の返済などを差し引いても、利益が約190万円程度となり、勤務医と同等かそれ以上の収入を得ることができます。
この計算はあくまでも内科での計算となりますが、整形外科においてもこの40人という来院数は、クリアすべき数値であるといえるのではないでしょうか。
また、こんなデータもあります。
先ほどご紹介したコンサルティング会社が、診療科目別にみた患者数も併せて調査しているのですが、これによると整形外科クリニックの1日あたりの患者数は103人とされ、内科(35人)や小児科(43人)にくらべて2倍以上の集患数を誇っていました。
この結果から、整形外科は他診療科にくらべて圧倒的な集患数を見込める診療科であることが伺えます。
よって整形外科クリニックの経営においては、全診療科の平均値である1日来院患者数40人を超えるというのが、最低限達成すべきラインであるといえます。

整骨院や通所介護事業所の増加への対応が、黒字経営のカギ

整形外科クリニック経営について考えるとき、1日来院患者数のほかに考慮しなくてはいけないのが、整骨院および通所介護事業所の顕著な増加です。
整形外科診療所が2008年から2011年までの3年間に5.2%減少しているのに対し、整骨院は21.8%増、通所介護事業所に至っては、26.8%と施設数が増加しています。
なぜ、整骨院と通所介護事業所が整形外科クリニックの経営において重要なのでしょうか。
その理由は、患者さんが整形外科と整骨院、そして整形外科と通所介護事業所の違いがわからず、本来は整形外科での治療が適切であっても、これらの事業所へ通ってしまうケースがあるからです。
そして、これらの施設が整形外科クリニックにとって脅威となるもう一つの原因として、「外部へのアピールが強い」という点があげられます。
整骨院では保険適応となる治療のほかに、自由診療によってさまざまな施術を行っています。
そのため、ポスターやチラシ、道路沿いの看板などで積極的に宣伝活動を行い、整骨院でしかできない骨盤治療や姿勢矯正といった施術をアピールすることで、患者数を伸ばしているのです。
また通所介護事業所も、自宅まで送迎を行うことで通院による負担を軽減する事業所や、リハビリに特化した短時間の通所施設など、それぞれの特色を前面に打ち出すことで、通所人数を増やしています。
これらの積極的なアピールは、施設数が急増している整骨院や通所介護事業所だからこその流れであり、外部へのアピール力に劣る整形外科クリニックは、結果的に集患率を落し、経営が厳しくなってしまう恐れがあるのです。
このような状況から、整骨院や通所介護事業所の増加への対応が、経営を安定させるカギであるといえるのです。

安定した整形外科経営をするための、独自性をだす2つのヒント

整形外科は他診療科にくらべて患者さんが集まりやすい診療科ですが、一方で整骨院や通所介護事業所の増加によって、「整形外科である」というだけでは患者さんを集めることが厳しくなっているという現状があります。
そこで1日あたりの患者数を増やし、安定した経営をするうえで重要となるのが、特化した独自の価値をつけることです。
では、どういった点が「独自の価値を生みだす」ことにつながるのでしょうか。
ここでは、整形外科クリニック独自の価値をだすための2つの対策法をご提案します。

●整形外科「のみ」ができる診療や治療を全面に押し出す

整骨院の増加率に対抗して検討したいのが、整骨院ではできない治療や診断を積極的に患者さんへアピールすることです。
整骨院では、国家資格者である柔道整復師が治療を行うことはできますが、レントゲンやCT、MRIなどで検査を行い、診断を下すことはできません。
また、疼痛を和らげるためのブロック注射や投薬も、整形外科でなければ処方および処置をすることはできません。
よって、整形外科クリニックでは整骨院ではできない「画像診断によってより詳細に調べ、原因を精査することができる」こと、そして「痛みがでている部分に対し、適切な薬を使用することで早期の疼痛改善が期待できる」をアピ―ルすることで、整骨院と差別化を図ることができます。
これらのアピールをするために効果的なのは、地域の健康セミナーなどに講師として参加することです。
周辺住民に対し、腰痛や膝の痛みなど関心を引きやすい症状から、整形外科でしかできない診断や治療について解説することで、「この症状が出たら整骨院ではなく、まず整形外科へ行こう」と思ってもらうことができます。

●リハビリor介護に強い整形外科クリニックを目指す

介護事業所の増加に対し、整形外科クリニックができる対策として考えられるのが、リハビリor介護に強い整形外科クリニックになる、ということです。
整形外科クリニックでは、医療保険が適応となる「運動器リハ」を行うことができます。
この運動器リハは介護事業所では行うことができないリハビリとなるため、介護事業所と差別化を図ることができます。
運動器リハをより充実させるため、物理療法が行えるよう設備を整えるとともに、リハビリ専門の専門スタッフを新たに配置し「整形外科疾患の治療からリハビリまでを一貫して担うクリニック」にすることで、「治療が終わったら、後はリハビリのために介護事業所へ変更する」という患者さんの流れを食い止めることができます。
またある整形外科クリニックでは、整形外科に介護事業所を併設し、整形外科での疾患によって介護が必要となった方を、そのまま併設した介護事業所で受け入れることで、経営を安定させることに成功したケースもあります。
併設は初期投資がかかりますが、まずはこういった「整形外科にしかできないリハビリに特色をだす」ことから検討されてみてはいかがでしょうか。

まとめ

整骨院や通所介護事業所が急増している一方、整形外科クリニックを含む診療所の数は、ここ数年横ばいとなっています。
これは、年間7,600件の診療所が新たに開業および再開されている一方で、同数の診療所が廃業、もしくは休業に追い込まれていることを示しています。
集患数が見込める整形外科であっても、経営状況を今後も安定させていくために、独自の価値を生みだす必要性が今、高まっています。

参考:
小松大介: 診療所経営の教科書 第2版: 日本医事新報社, 東京, 2017, pp.2-5.
船井総合研究所:40の困った!をスッキリ解決 診療所経営助っ人ツール: 日経BP社, 東京, 2015, pp.156.

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