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バーチャルリアリティをリハビリに応用する時代へ。筆者がカナダで視察した「CAREN」の魅力

近年、テクノロジーの発展により、医療現場において様々なツールが導入されるようになりました。
リハビリの分野では、バーチャルリアリティの応用が世界的に注目されています。
今回は、バーチャルリアリティを用いたリハビリの動向と、筆者が実際にカナダで視察した「CAREN」というシステムの魅力を詳述します。

バーチャルリアリティを用いた研究の動向

バーチャルリアリティの仕組みを医療やリハビリへ応用する試みは、世界各国で進められています。
近年、バーチャルリアリティをリハビリへ応用した研究報告は続々と発表されてきているのです。

2016年にSheehyらがBMC Neurologyで発表した報告では、通常のリハビリにバーチャルリアリティを使った訓練を加え、脳卒中の方に対する治療効果を検証しています。
この研究で用いているバーチャルリアリティの仕組みでは、車椅子などに座ったまま体を動かして画面中のゲームを進行していくことができます。
研究者は脳卒中の方の座位バランスを改善することを目指しており、この調査でバーチャルリアリティが通常のリハビリを補助するツールとして有用であると示しています。

この論文を始めとして、近年はバーチャルリアリティとリハビリをテーマに設定している報告は相次いでいます。そのことから、世界的にも関心を集めているトピックの一つといえるでしょう。

テクノロジーと医療は親和性が高く、既に様々なツールが導入されてきています。効果が検証され、コストの問題がクリアできれば、バーチャルリアリティのような仕組みが日本のリハビリ現場に普及する日がくるかもしれません。

筆者がカナダの病院で視察した「CAREN」

2015年、筆者はカナダ・アルバータ州に足を運び、現地のリハビリ専門病院を視察しました。
その際、大型のバーチャルリアリティ装置である「CAREN」の応用について学びました。
視察した病院の概要と、筆者が見たバーチャルリアリティの仕組みについてご紹介していきます。

グレンローズリハビリテーション病院

筆者が視察した病院は、カナダのアルバータ州にあるグレンローズリハビリテーション病院(Glenrose Rehabilitation Hospital)です。
その名の通りリハビリを専門的に行う病院であり、理学療法士や作業療法士などのスタッフが在籍しています。
リハビリの部門には理学療法士や作業療法士だけでなく、テクノロジーを専門とする方も常駐していました。小児から高齢者まで様々な患者さんがここでリハビリを受け、社会復帰を目指しています。

◯CARENとは?

CARENとは、オランダのMOTEK社が開発した大型のバーチャルリアリティシステムです。
前方には大型のディスプレイが広がり、トレッドミル上で歩行しながらトレーニングを行うことが可能です。
このシステムを活用できる対象者について、MOTEK社は次のように掲げています。

  • ◯脳卒中
  • ◯脳性麻痺
  • ◯パーキンソン病
  • ◯外傷性脳挫傷
  • ◯切断
  • ◯変形性関節症
  • ◯筋骨格系の障害
  • ◯転倒リスクが高い高齢者

このように、CARENは非常に幅広い疾患・障害に対応できることが特徴的です。
トレッドミルのスピードや傾斜、スクリーンに映し出す映像は変更できる仕組みになっており、リハビリが必要な患者さんのニーズに対応可能です。
患者さんの状態に合わせて様々な観点から負荷を調整でき、担当のリハビリのスタッフや技術スタッフがケースに合わせて適切なレベルを検討していきます。

◯実際のトレーニング場面

視察に訪れた筆者も、実際にCARENを体験してみました。初めてトレーニング室を見たときは設備のスケールに驚き、日本国内でリハビリ部門にこれほどの設備がある病院はなかなかないと感じました。

トレーニング時は安全面への配慮としてハーネスを装着するため、転倒の心配はありません。
CARENには様々なトレーニングプログラムが導入されており、患者さんのリハビリ目的や状態に応じて調整します。筆者が体験したいくつかのプログラムをご紹介します。

今回は、一本道を歩きながら、モニター内を飛んでくる鳥などに向かって手を伸ばしてリーチするプログラムに挑戦しました。
全身には動作解析用のマーカーを貼付しており、手や足を動かしながら画面中のタスクをこなしていくことが可能になります。

歩きながら注意を配り、リーチ動作を行う課題はなかなか負荷が大きいと感じましたが、これらは生活場面においても要求される要素です。
負荷を上げていくと、スクリーンに表示される数字から計算を行うなど、さらにレベルの高いマルチタスクが要求される場面もありました。運動面だけでなく、認知的な側面でもトレーニングできるシステムであることを実感しました。

この他に、バスの中での揺れを想定したプログラムも体験しました。
こちらはトレッドミル上で立位を保ちながら、画面上の映像に対応して揺れ・ブレーキ等の刺激を経験することができます。

本当にバスの中に乗っているかのような、まさにリアリティのあるプログラムでした。
リハビリにおいてはボトムアップ的に機能訓練を行うことも必要ですが、このように実際の生活場面を想定して、対応できるだけの力をつけていくことが大切になります。
実生活に即したリハビリを実践できる点で恩恵のあるプログラムであると感じました。

バーチャルリアリティをリハビリに活かすメリット

今回、実際にバーチャルリアリティの仕組みを体験し、患者さんが楽しくリハビリを継続できるツールであることを実感しました。
もちろんリハビリにおいて「楽しさ」は重要なポイントでしょう。ただ、バーチャルリアリティの魅力は、単純に「楽しい」というだけではありません。

◯運動と視覚が協調したトレーニングを実現できる

実際の生活場面においては、単純な運動だけが求められるのではありません。
段差や坂道を視認できるかといった、視覚情報への対応は非常に重要な要素です。
バーチャルリアリティでは、こうした複合的な観点でリハビリを実現できることにメリットがあるでしょう。

◯負荷の段階付けが容易になる

バーチャルリアリティのプログラムでは、レベルの調整が簡単に行えるようになります。
スピードや傾斜など身体運動に関わる要素はもちろん、認知的負荷も段階付けできるようになります。
患者さんに合わせた細かな調整が容易になることは、テクノロジーの恩恵といえるでしょう。

このように、バーチャルリアルティをリハビリに活かすことには様々なメリットがあるのです。
CARENのような大規模な設備を導入するにはハードルが高くなりますが、最近は簡易的なデバイスも販売されています。こうしたツールを積極的に活用してみてはいかがでしょうか。

まとめ

今回は、リハビリ業界で国際的なトピックになっているバーチャルリアリティについてご紹介しました。
バーチャルリアリティは効果的なトレーニングの実現に貢献する可能性を十分に秘めています。
テクノロジーを上手に活用しながら、患者さんの生活を支えていきたいところです。

参考資料
1) L. Sheehy, A. Taillon-Hobson, et al. Does the addition of virtual reality training to a standard program of inpatient rehabilitation improve sitting balance ability and function after stroke? Protocol for a single-blind randomized controlled trial. BMC Neurol 16(2016).
2) What is CAREN? (https://www.motekforcelink.com/product/caren/)

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