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CPX第2弾「実践編」!検査の実施から運動処方までの流れをご紹介します

CPXは運動耐容能を調べる検査ですが、検査の手順や活用方法を知らない方もいるでしょう。
呼気ガス分析や心電図など難しいイメージがありますが、検査からわかるパラメーターはリハビリ場面でも非常に有用です。
CPX第2弾の本記事では、検査の実施から運動処方の具体例までをご紹介します。

CPX第2弾「実践編」検査の実施から運動処方までの流れ

CPXの実施手順と検査前の準備

CPXの実施手順と検査前の準備

まずはじめに、CPXをするにあたっての準備や実施手順について解説します。

●検査の同意と体調管理は忘れずに

CPXで最高酸素摂取量を求めるためには、自分の限界まで運動を継続する必要があります。
対象が高齢者の場合、運動後に関節痛が起こる場合や、循環器の病気をもっている方では不整脈や狭心痛などが起こる可能性があります。
そのため、検査の前には十分な説明と同意を心掛けましょう。
また、検査前に倦怠感や気分不良がある場合は検査を中止したほうがよいでしょう。
心肺運動負荷試験が禁忌に該当しないか、以下の項目をチェックしておくことが大切です。

絶対禁忌

  • ◯急性心筋梗塞(発症から3~5日以内)
  • ◯不安定狭心症
  • ◯コントロールされていない不整脈
  • ◯コントロールされていない心不全症状
  • ◯症候性の大動脈弁狭窄症
  • ◯運動によって悪影響を及ぼすと思われる非心臓性疾患(腎障害など)

なお、認知機能低下などで協力が得られない場合や、何らかの理由で安全な検査が行えない場合は相対禁忌となります。
本人の最大努力を要する検査になるため、不安がある場合は中止することも重要です。

●CPXの実施手順

CPXの実施手順

以下にCPXを実施する際の一般的な流れを解説します。

  1. 1)検査機器のチェックとガス較正
  2. 2)プロトコルの選択と被験者データ入力
  3. 3)心電図やマスクの装着
  4. 4)安静時データのチェック(心電図・血圧・呼吸数など)
  5. 5)検査開始・ウォーミングアップ
  6. 6)検査終了・クールダウン
  7. 7)検査結果の分析
  8. 8)被験者への説明

ramp負荷の場合、検査開始から終了までは、連続的に負荷量がアップしていくため、2~3分に1回は血圧と心電図をチェックしておくことが望ましいです
また、検査終了後すぐに運度を中止すると、急な血圧低下をきたしてしまう危険があるため、クールダウンは3~5分程度とるとよいでしょう。

関連記事:心肺運動負荷試験(CPX)とは?リハビリ場面での活用方法をご紹介します

心拍数やMETsを用いた運動処方とは

CPXを実施したあとは、検査結果をもとに適切な運動負荷量を決定する必要があります。
ここでは、心拍数やMETsを用いた運動処方について解説します。

●ATレベルにおける心拍数が安全

AT(嫌気性代謝閾値)レベルの運動強度では、血圧や心拍数が過度に上昇しないため、心臓や血管系に強い負担をかけることなく運動することが可能です。
心拍数をもとにした運動処方ではkarvonen(カルボーネン)法が有名であり、簡便に中等度の運動強度(最大酸素摂取量の40~60%相当)を求めることができます。
しかし、心拍数を抑える薬を服用している方や、運動習慣のない高齢者では注意が必要です。
その理由は、十分に心拍数が上昇しないため、一般的に中等度の負荷といわれている最大酸素摂取量の40~60%が過負荷になることがあるからです。
筆者の経験上、実際にCPXで評価した際のATレベルが最大強度の20~30%に相当することもありました。
このように、実際の中等度負荷と心拍数の計算式が乖離することがあるため、一人ひとりに合った適切な運動強度を求めるためにもCPXは有用です。

●日常生活動作の負荷量はMETsを参考にする

CPXではエルゴメーターやトレッドミルの適正負荷量を求めることができるため、リハビリ時の運動強度を決定することができます。
しかし、実際の臨床場面で運動量の目安を伝える際に、「畑仕事はしてもいいのか?」、「階段を上ってもいいのか?」という、具体的な運動の可否を聞かれることも多いです。
エネルギー代謝の指標であるMETs(メッツ)はよく知られていますが、CPXでは各フェーズにおけるMETsを算出することが可能です。
METsの計算方法は簡単で、安静時における酸素摂取量3.5ml/kg/minが1METsになります。
たとえば、最高酸素摂取量が24.5ml/kg/minの方の場合7METsになります。
求められたMETsを参考に、どれくらいの日常生活動作なら安全に行えるのか、どのスポーツなら許可できるのかなどを指導することができます。
次項では、CPXで算出されたMETsをもとに、運動指導の具体例について解説します。

CPXの結果を参考にした運動処方例

ここでは、心拍数やMETsを指標にした運動処方の具体例をご紹介します。

●エルゴメーターではAT1分前のワット数に設定する

エルゴメーターではAT1分前のワット数に設定する

エルゴメーターを用いてCPXを行った場合、ATや最大運動時点におけるワット数が算出されます。
しかし、負荷量に対して身体が応答するまでには時間差が生じるため、AT時点でのワット数で運動をすると過負荷になる可能性があります。
そのため、その負荷で運動することによってATレベルに到達するという意味で、1分前のワット数を処方するのが一般的です。

●ウォーキング時に自己検脈を指導する

ウォーキング時に自己検脈を指導する

運動中に自己検脈(自分で脈を計ること)ができる方の場合、適切な脈拍になっているかを指導することが有効です。
たとえば、ATにおける心拍数が95回/分の場合なら、「90回から100回の間におさまるように調整しましょう」と指導するとよいでしょう。
最近では時計型のウェアラブル端末などを使用する方も多く、運動負荷量の自己管理をする上で、目安となる脈拍数を伝えることは大切です。

●METsを用いて日常生活の指導をする

最高酸素摂取量をMETs換算すれば、過負荷となる動作について指導することができます。
しかし、患者さん側としては、どんな動作なら安全に行えるのかが気になるでしょう。
その場合は、AT1分前のMETsを参考にすることが有用です。
たとえば、AT1分前のMETsが5METsの場合では、シャベルで土を掘る動作や雪かきなどの動作では息切れが出現します。
一方、軽い農作業やゆっくり階段を上り下りするのは問題なくできるでしょう。
筆者が指導する際には、「長く雪かきをしてると息が切れてくるので、5分程度で休憩を挟んで呼吸が乱れないように注意しましょう」などと伝えています。

CPXを活用して安全な運動処方を

心疾患や腎疾患をもつ高齢者が増えてくるなか、リハビリ場面において運動負荷量の決定は重要な評価項目です。
CPXでは血圧や心拍数を管理しながら、その対象者に合った運動強度を求めることができるため、対象疾患にとらわれず非常に有用な検査であるといえます。
また、日常生活場面での負荷量も判断できるため、生活の注意点を聞かれた際にも自信をもって答えられます。
運動負荷量の評価にお悩みの方は、これを機にCPXの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

関連記事:
CPX第1弾「基礎編」心肺運動負荷試験(CPX)とは?リハビリ場面での活用方法をご紹介します
CPX第3弾「応用編」!運動耐容能低下の原因を考える際のポイントとは?

参考:
OGウエルネス フィジソニック ES-7(2019年12月17日引用)
特定非営利活動法人 日本心臓リハビリテーション学会:指導士資格認定試験準拠,心臓リハビリテーション必携.株式会社コンパス,2010,pp.162-163.

  • 執筆者

    奥村 高弘

  • 皆さん、こんにちは。理学療法士の奥村と申します。
    急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。
    高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。

    保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士

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