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  • syusei

    公開日: 2018年11月29日

変形性膝関節症の運動療法に低周波を組み合わせて効果の底上げをしよう

変形性膝関節症の運動療法において、膝関節周囲の筋力強化は最も一般的な方法のひとつです。
効率よく筋力強化をする方法として、低周波を組み合わせる方法が注目されています。
今回は、運動療法に低周波を組み合わせるメリットや効果について紹介します。

変形性膝関節症の運動療法

筋萎縮や筋力低下に対する低周波の効果は2つ

筋萎縮や筋力低下に対する低周波の効果は2つ

整形外科クリニックや鍼灸整骨院で低周波といえば、疼痛緩和で使用するというイメージが強いかもしれません。
しかし、筋萎縮や筋力低下に低周波を使用する、神経筋電気刺激療法(NMES)が注目されており、変形性膝関節症の運動療法と併用する方法に効果が認められています。
まずは、低周波が筋萎縮や筋力低下を改善する理由として、末梢性効果と中枢性効果の2つを紹介します。

◯低周波による末梢性効果

低周波により皮膚から一定の強度の電気刺激が体内に加えられると、感覚神経や運動神経が興奮し、その興奮は体の末梢と中枢の両方向に伝わっていきます。
運動神経によって末梢に刺激が伝わると、神経に支配されている筋肉は自分の意志にかかわらず収縮します。
このような収縮を低周波による「末梢性効果」といい、自分で筋肉を動かせなくても、筋萎縮予防に必要な収縮を起こすことができるのです。

◯低周波による中枢性効果

電気刺激が末梢から加えられると、その刺激が脊髄から大脳の感覚野へ伝わります。
そして、感覚野に伝わった刺激は、筋収縮を引き起こす運動野の興奮を引き起こして、筋収縮を起こりやすくします。
以上のように、皮膚から伝わった電気刺激が神経を通じて中枢神経に働きかけ、筋収縮に関与することを「中枢性効果」といいます。
低周波による電気刺激は2つのメカニズムで、神経・筋肉といった筋肉の収縮に関わる部分を刺激することで、筋力を増やす補助的な役割を果たします。

変形性膝関節症に運動療法と低周波を実施して筋力を向上

変形性膝関節症に運動療法と低周波を実施して筋力を向上
電気刺激装置 PHYSIOUSコードレスバイクV67Ri

変形性膝関節症の保存療法として、運動療法はエビデンスの高い治療ですが、それに低周波を組み合わせることでさらなる筋力の改善が期待できます。

◯運動療法と組み合わせることで筋力改善が起こるメカニズム

Gregoryらによると電気刺激による筋収縮と自分で運動をすることによる筋収縮では、筋収縮のメカニズムが異なるため、どちらか一方を実施するより筋肉に対する負荷を高めることができるとしています。
そのため、筋の萎縮や筋力低下で、運動療法による筋収縮が不十分な患者さんでも、電気刺激と組み合わせることで、筋力を改善する強さの負荷をかけることができるのです。

◯変形性膝関節症に低周波と運動療法を併用する効果のエビデンス

Rosemffetらによると、変形性膝関節症の患者さんに対して、運動だけを実施した場合と運動と電気刺激を併用した場合を比較すると、併用した場合のほうが筋力が有意に改善したと報告しています。
また、Cheingらの報告でも同様に、運動療法と電気刺激を行ったほうが、膝の伸展筋力が改善したと報告しています。
電気刺激のみのエビデンスは乏しいものの、運動療法との組み合わせでは効果的なエビデンスが報告されています。

◯運動療法と低周波を併用した具体例

運動と電気刺激を組み合わせて使う具体的な例として以下のような方法があります。

運動療法の種類 刺激する筋
パテラセッティング 大腿四頭筋
自転車エルゴメーター 大腿四頭筋
荷重練習 中殿筋

変形性膝関節症の運動療法として、内側広筋を中心とした大腿四頭筋の訓練や股関節外転筋の強化を目的とした荷重練習があります。
これらの運動で働く筋に対して電気刺激を与えて、筋力の改善を効率よく行います。

人工膝関節全置換術(TKA)後でも効果を発揮

変形性膝関節症におけるTKAの術後でも、電気刺激と運動療法との併用が可能です。
特に変形性膝関節症は中枢性の筋萎縮が見られるため、電気刺激による中枢性効果が期待できます。

◯TKAに対する筋力改善のメカニズム

TKAの患者さんは術後に大腿四頭筋の筋力低下を引き起こすとされています。
その要因は以下の2点に分けられます。

  • ●廃用により筋が萎縮
  • ●運動に作用する中枢神経の働きが弱る

とりわけ、術後早期の筋力低下は神経の関与が大きいとされており、中枢性効果を狙った電気刺激が有用です。
また、保存療法と同様に、自分で大腿四頭筋とりわけ内側広筋の選択的な収縮が難しい患者さんに、電気刺激を併用することも可能です。

◯低周波を使用する場合の注意点

低周波による筋力改善を目指す場合、刺激の強度は筋収縮が見られる程度にするのが効果的です。
しかし、人によっては痛みや不快感を伴う場合があります。
吉田らは、TKA術後の患者さんに電気刺激を感じる程度の強度で、運動療法と併用したところ、筋力が増えたと報告しています。
以下のような実践例を参考にして、医師としっかり連携をとりながら、患者さんの状態を観察して、無理のない強度で実施するようにしましょう。

患者さんの状態 強度の例
術後早期で筋力発揮が難しい できるだけ強めで中枢性効果を促す
自分で筋力トレーニングができる 刺激を弱めて運動の強度を上げる
電気刺激に対して耐性が低い 不快のない強度で運動と併用

変形性膝関節症の保存療法・術後に低周波を活用しよう

変形性膝関節症に関して、大腿四頭筋を中心にした筋力の改善には運動療法を実施する場合が多いです。
しかし、うまく運動ができなかったり、術後になかなか筋力が発揮できない場合も少なくありません。
そのため、低周波をうまく活用して効率的に筋力の改善を図りましょう。
ただし、運動強度の設定や機器の使用方法には注意が必要ですので、医師や医療機器メーカーとしっかり連携をとりながら、患者さんへの適応、設定を検討しましょう。

参考:
渡部幸司, 長岡正範:リハビリテーションにおける電気刺激療法の展望. 順天堂医学56: 29-36, 2010.

吉田陽亮, 他:人工膝関節全置換術後症例の大腿四頭筋に対する神経筋電気刺激の効果 刺激電流強度に着目して. 第50回日本理学療法学術大会 抄録集, 2015.

Cheing GL, Hui-Chan CW :Would the addition of TENS to exercise training produce better physical performance outcomes in people with knee osteoarthritis than either intervention alone? Clin RehabilPhys 18(5): 487-497, 2004.

Gregory CM, Bickel CS:Recruitment patterns in human skeletal muscle during electrical stimulation. Phys Ther85(4): 358-364, 2005.

Rosemffet MG et al.:Effects of functional electrostimulation on pain,muscular strength,and functional capacity in patients with osteoarthritis of the knee.J Clin Rheumatol10(5): 246-249, 2004.

  • syusei

    公開日: 2018年11月29日

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