急性期での拘縮予防に有効!超音波治療機器の活用方法についてご紹介します
リハビリ分野では、疼痛の改善を目的に低周波やホットパックなどの物理療法が多く利用されています。
しかし、物理療法の目的は疼痛緩和だけではなく、関節の機能改善を目的とした治療方法もあります。
本記事では、超音波治療機器が拘縮の治療に有効な理由について解説します。
超音波治療の効果は温熱作用と非温熱作用
まずはじめに、超音波治療機器が生体に与える効果についてご紹介します。
●深部まで届く温熱作用
物理療法には、ホットパックや極超短波などさまざまな温熱療法がありますが、超音波治療機器にも組織の温度を上げる作用があります。
ホットパックは簡便に使用できることが特徴ですが、皮膚や表層の筋肉などが対象になり、深層の筋肉や靭帯などには熱が届きません。
しかし、超音波の場合は周波数の設定によって表層・深層ともに温熱作用が期待できるため、対象とする組織によって幅広く使用できることが特徴です。
●損傷した組織を修復する非温熱作用
超音波治療では、連続して超音波を発生させる連続モードのほかに、パルスモードが存在します。
パルスモードでは、断続的に超音波を照射することにより組織の温度上昇が抑えられるため、急性炎症の時期にも使用することができます。
パルス治療の場合は、消炎鎮痛作用のほかにも損傷した組織を修復することが期待されます。
●治療にあたっての注意点
超音波治療機器は、組織の修復や疼痛改善などさまざまな効果が期待できますが、使用するにあたって押さえておきたい注意点があります。
◯対象組織によって周波数1MHzと3MHzを使い分ける
超音波治療は、使用する周波数によって到達する深度が異なります。
皮下組織など浅い部位には3MHz、関節内など深い部位には1MHzを用いることが多いです。
たとえば、膝の内外側にある靭帯に対して温熱作用を期待する場合は3MHzを選択しますが、関節内の炎症を抑えることが目的の場合は1MHzを選択します。
周波数の選択に誤りがあると十分な効果が期待できないため注意が必要です。
◯連続照射の場合はストローク法を用いる
温熱作用を期待する場合は連続モードを選択しますが、同じ箇所にアプリケータを固定したままにすると組織の温度が上がりすぎるため危険です。
この場合は、対象部位を中心に円を描くようにアプリケータを移動させ、均等に照射できるような配慮が必要です。
最新の超音波機器「StatUS」の特徴とは?
ここでは、オージーウエルネス製の超音波治療機器「StatUS」の特徴についてご紹介します。
●機器の特徴
同社の超音波治療機器にPHYSISONIC(フィジソニック)という製品がありますが、StatUS(ステータス)はPHYSISONICの新たなオプションとして追加されました。
製品の特徴を以下にまとめてみます。
◯デザイン・治療モード
超音波治療機器の設定は複雑と思う方もいるでしょうが、PHYSISONICはたった3つのステップで治療が開始できます。
- 1)プロトコルを選択する
- 2)疾患名や症状を選択する
- 3)ゲルをセットしてアプリケータを患部に当てる
治療プログラムに関しては、あらかじめ25種類(StatUSを用いると75種類)が設定されていますが、治療部位や目的などに応じてマニュアル操作が可能です。
画面操作もタッチパネル式であり、鮮やかな表示のため視認性もよく、初めて治療をするセラピストでも簡単に使うことができます。
また、大小2つのアプリケータがあるため、治療部位によって使い分けることができるのも特徴です。
◯急性期から慢性期まで幅広く活用できる
前項では周波数による到達深度の違いや、照射パターンによる効果の違い(温熱作用・非温熱作用)についてご紹介しました。
PHYSISONICでは、1MHz・3MHzの周波数を選択でき、照射パターンも連続・パルスを選択することができます。
そのため、急性期病院においても急性炎症から慢性疼痛まで幅広くカバーすることができます。
1台の治療機器でさまざまな疾患や症状に対応できるため、日々の臨床のなかでも使用頻度が高くなるでしょう。
●StatUSによるハンドフリー治療が魅力
消炎鎮痛を目的とした場合、パルスモードで固定法を選択することが多いですが、同一姿勢でアプリケータを保持するのはつらいと感じるでしょう。
また、塗布するジェルの量にばらつきがある場合や、アプリケータの固定角度がずれてしまうと、治療効果が減弱することがあります。
しかし、StatUSは任意の角度でアプリケータを固定することができるため、セラピストの業務効率改善や高い治療効果に貢献することができます。
膝前十字靭帯(ACL)損傷での超音波治療の活用例
ここでは、急性期における超音波治療機器の活用例についてご紹介します。
術直後の炎症期と積極的に関節可動域訓練を実施する時期では、使用する目的が異なります。
●術直後の固定期間中はパルスモードを用いる
ACLの術直後では、炎症による疼痛や伸展装具での固定による運動制限が問題になります。
急性炎症時の温熱療法は炎症を悪化させるため禁忌になりますが、超音波による非温熱作用は有効です。
パルスモードを選択することによって、組織の修復や消炎鎮痛作用を期待することができます。
以下に具体的な設定例を挙げてみます。
強度 | 周波数 | デューティー比 | 時間 | 照射方法 |
---|---|---|---|---|
0.5W/cm2 | 1MHz | 20% | 10分 | 固定法 |
デューティー比とは、照射時間率をあらわす比率のことで、照射と休止の割合を設定する必要があります。
デューティー比20%の場合は、2秒照射・8秒休止という意味になります。
50%でも鎮痛効果が期待できますが、あまり照射時間を長くすると温熱作用が出現する可能性があるため、最初は20%くらいに設定するほうがよいでしょう。
●関節可動域改善のために連続モードを用いる
手術から2~3週が経過して術部の炎症が落ち着いてきた時期では、関節可動域改善のために積極的なリハビリが行われます。
しかし、手術後の炎症や伸展位での固定により、膝蓋腱や脂肪組織の滑走性が低下していることが考えられます。
そのため、これら軟部組織の伸張性を改善するために、連続モードでの温熱療法が適応となります。
具体的な設定例を以下にご紹介します。
強度 | 周波数 | デューティー比 | 時間 | 照射方法 |
---|---|---|---|---|
1.0W/cm2 | 3MHz | 100% | 10分 | ストローク法 |
術直後の非温熱作用とは異なり、照射時間を長くすることで対象組織の温度を上げる必要があります。
しかし、固定法では1箇所に熱が集中する危険性があるため、アプリケータを常に移動させるストローク法を選択しましょう。
超音波治療は急性期での拘縮改善に有効
超音波治療はホットパックや低周波のように体感効果が少ないですが、急性期から慢性期まで活用できる優れた治療法です。
急性期では、安静・固定という「セラピスト泣かせ」の治療方針が選択されることもあります。
従来からのアイシングも効果的ですが、超音波治療は消炎鎮痛以外にも組織の修復や慢性期の拘縮改善に貢献できます。
「急性炎症のため今はなにもできない」と嘆くのではなく、超音波治療機器を取り入れてみてはいかがでしょうか?
参考:
田坂厚志, 沖貞明, 他:関節拘縮発生予防を目的とした超音波療法の効果. 理学療法科学 第24巻4号:577-580, 2009.
大矢暢久, 富田知也, 他:変形性膝関節症の膝の疼痛に対するパルス超音波療法を実施した一症例の検討. 理学療法科学 第27巻5号: 603-608, 2012.
OGウエルネス フィジソニック ES-7(2019年12月3日引用)
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執筆者
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皆さん、こんにちは。理学療法士の奥村と申します。
急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。
高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。
保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士
重岡幸代 さん
2020年9月15日 11:14 PM
突然のコメント失礼いたします。
約20年前に前十字靭帯再建術を行った膝ですが、最近になり不安定感や痛みも出てきていたため、先月、再再建の手術および半月板部分切除(石灰化部分)を受けました。
今月に入り、ようやく炎症も治まりはじめ、曲げ伸ばしや軽めのスクワットを開始しています。まだ関節内に水が溜まっており、ヒザの動きはスムーズではありません。膝蓋下脂肪体の固さも関係しているのか痛みも多少あります。
リハビリは、PTさんによる徒手マッサージと電気治療(筋肉に刺激を入れる目的で)をメインに週二度ほど行っています。
一度目の術後リハ(別の治療院)では、通院の度にまず超音波を当てていましたが、今通っているクリニックではそれがありません。リハ通院とは別で、整骨院など通ってケアしたほうがよいのかなと自分なりに考えはじめています。
もちろん、通院先のクリニックに相談したほうがよいこととは思いますが、リハビリの進め方についてはあまり説明がないので、ご意見を頂けたらと思いコメントさせていただきます。
お時間あるときで構いませんので、ご返信頂けましたら幸いです。