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三次元動作解析(モーションキャプチャー)の導入で診療の質は上がるの?

整形外科などの診療科を中心に、理学療法士や作業療法士が動作分析を行う機会は多いです。
現状では、スタッフが患者さんの動作を目で見て評価することが一般的ですが、客観的な評価方法であるとはいえません。
今回は、少しずつ普及しつつある三次元動作解析の導入によって、診療の質が上がるのかを解説していきます。

二次元動作解析のメリットとデメリット、三次元動作解析との違いは?

身体にマーカーを貼り、家庭用デジタルビデオカメラで撮影して使うタイプの二次元動作解析機器は非常に簡便なツールです。
二次元動作解析機器は、筆者も学生時代に行った卒業研究のなかで使用していました。
その後、研究などで三次元動作解析機器を使用する機会もあったため、この2つの機器を使って筆者が感じたことを詳述していきます。

●二次元動作解析は簡便に使えることが最大の魅力

二次元動作解析では、被験者の前方(前額面)と側方(矢状面)から動きを分析していくことになります。
基本的にマーカーとデジタルビデオカメラ、専用のソフトウエアなどがあれば動作を分析できるため、十分な設備がなくても簡単に使用することができます。
二次元動作分析では、マーカーの軌跡を表示したり、関節の角度変化などを分析することが可能です。
二次元の場合は測定場所の確保も容易であり、貼り付けたマーカーが映る距離にカメラを設置できれば良いので、大きな部屋を確保する必要がありません。
関節の屈曲・伸展など、簡単な動作をとらえる分には二次元で十分な場合も多いです。
比較的小規模な整形外科クリニックなどでも、気軽に導入できる点は大きなメリットといえるでしょう。

●二次元動作解析の限界は「奥行き」を考慮できないことにある

二次元動作解析の場合は、人間の複雑な動きを記録するうえでは限界があります。
単純な屈伸運動であれば活用できることも多いですが、ここでは被験者の方に片足を浮かせていただく場面を考えていきます。
膝につけたマーカーをトラッキングする際、記録するマーカーの軌跡はさまざまな要素の影響を受けます。
この例では、片方の足を浮かせると膝のマーカーが動いていきますが、股関節の内旋(ないせん)や外旋(がいせん)といった回旋の動きまではとらえることができません。
実際の生活場面においても、膝の屈伸など単純な運動を行うよりも、複数の関節が関与する複合的な運動を行う場面が多いので、複合的な運動についても評価していく必要があります。
前後左右の動きだけでなく、奥行きや回旋の動きまでしっかりと評価したい場合には、三次元動作解析が適しているといえるでしょう。
2012年には、東海スポーツ傷害研究会会誌で、スクワット動作において二次元・三次元動作解析を行った研究が発表されました。
このなかでも、回旋動作を伴う動作における二次元動作分析の限界について触れられていました。

三次元動作解析は普及している?国内外で導入が進んでいます

臨床では、二次元動作解析を使用している病院・施設も多いことが実情です。しかし、徐々に三次元動作解析を導入する病院・研究機関も増えてきています。
近頃は、赤外線反射マーカーをつけて、アスリートの動作を分析する試みなどをテレビでも見かけるようになりました。
日本国内でも、三次元動作解析機器を導入し、歩行や立ち上がりなどの動作を詳細に解析する病院は増えてきました。
また、人工股関節手術を終えた方の動作指導に、動作解析のデータを役立てる整形外科も少しずつ増えてきています。
筆者がカナダのリハビリ病院で研修を受けた際も、大きな部屋に三次元動作解析の設備が整っており、患者さんの評価や治療に役立てていました。
リハビリ部門には理学療法士や作業療法士がいることはもちろん、動作解析を専門に行うスタッフも在籍しており、その行き届いた体制には驚かされました。
その動作解析のスタッフは過去に日本を訪れたことがあるそうで、「日本で見た街行く女性はみんな股関節が内旋していて不思議だった」と感想を述べられました。
これは、日頃から動作解析を専門にしているスタッフならではの着眼点であり、まさに動作分析のプロフェッショナルであることが伝わるエピソードでした。
海外の大きな病院では大型の動作解析機器がすでに導入されている状況を目の当たりにして、日本の医療機関も積極的に活用していくべきだと感じました。

三次元動作解析を導入すると「診療の質」は上がるのか

三次元動作解析は、高度な分析を進めていけるという点で恩恵があります。
ただ、機器が高額であること、機器を設置するスペースを確保しなければならないことから、導入を迷っている方も多いのではないでしょうか。
三次元動作解析のメリットを確認しながら、果たして本当に機器を導入する価値があるのかを検討してみてください。

●三次元動作解析が診療もたらす恩恵は大きい

三次元動作解析を臨床で導入することによって、どのような恩恵があるのでしょうか。筆者が考える機器のメリットを整理していきます。

  • 1)スタッフのスキルに依存せず、客観的な動作分析が可能になる
  • 2)回旋の動きも考慮しながら分析できる
  • 3)ある程度ダイナミックな運動にも対応できる
  • 4)スポーツ分野のニーズに応えることができる
  • 5)患者さんの動作指導に用いることができる
  • 6)治療効果のフィードバックに活用できる

リハビリに携わる理学療法士や作業療法士のスキルには通常ばらつきがあるものです。
しかし三次元動作解析のような機器を用いることで、療法士のスキルに関係なく、客観的なデータを残していくことができます。
また、二次元動作解析機器との比較でいけば、回旋の動きを考慮できること、歩行やジャンプなど、ある程度ダイナミックな運動でも解析が可能であることはメリットといえるでしょう。
それに関連して、アスリートの動作分析などさまざまな用途で用いることができることも魅力です。
スポーツ領域で患者さんをフォローしている整形外科も、三次元動作解析を導入してみる価値はあります。
三次元動作解析のデータは、患者さんに対する治療効果の説明・動作指導にも役立てることができるなど、応用の仕方は広がります。
たとえば、膝の痛みの原因を「歩行の特徴」などの観点から考えて、痛みが発生しにくい歩き方を指導することも可能になるでしょう。
治療の成果や動作指導は、口頭だけで伝えられても患者さんが十分に理解できない可能性があります。
患者さんへ提供する情報は、三次元動作解析の結果を活用しながら視覚的に示すことで、満足度の向上につながるのではないでしょうか。

まとめ

現状からすると、三次元動作解析は広く普及しているわけではありませんが、徐々に導入する病院も増えてきている印象です。
二次元で簡易的に動作解析を行うか、三次元で精度を上げて丁寧に分析していくのか、検討してみる価値はあります。
客観的なデータに基づき、診療を展開していくことには意義があるといえます。
診療やリハビリの質を上げることで、結果的に患者さんの満足度向上も期待できるでしょう。

参考:
山田圭介, 岡戸敦男, 他:スクワット動作における2次元動作分析と3次元動作分析の比較. 東海スポーツ傷害研究会会誌30: 4-6, 2012.

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