腰椎の牽引が腰をかけるだけでできる!患者さん・スタッフにもやさしい牽引装置
腰椎の牽引装置はどこの整形外科クリニックでも目にする物理療法機器です。
以前の牽引装置とくらべ、最新の腰椎牽引装置は多くの機能が備わっています。
今回は、オージーウエルネスの「オルソトラック ラセディア」を参考に、最新装置のメリットや導入方法を紹介します。
目次
「寝起き不要」と「空気による固定」で患者さんの負担軽減
まずは、最新の腰椎牽引装置の特徴と導入することによる患者さんへのメリットを紹介します。
◯座った姿勢から牽引ができるため寝起きをする必要がない
以前の装置は患者さんに仰向けで寝てもらい、牽引をする必要がありました。
しかし、最新機器では椅子のような装置に座ってもらえば、装置がティルティングしていき、患者さんが自動的に仰向けの姿勢をとることができます。
そのため、患者さん自身で寝起きをしてもらう必要がありません。
筆者の働く整形外科でも、腰痛のある患者さんが腰椎牽引をするために寝起きをするのは苦痛だといわれる経験も少なくありませんでした。
そのため、寝起きが不要の機能は腰椎牽引の対象である患者さんにとてもやさしい機能です。
◯空気によるベルト固定で圧迫感を軽減
腰を締めるベルトに空気が入って、膨らむことで腰を固定します。
牽引時は空気が入って、しっかり固定するとともに、牽引休止時には空気が自動で抜けるため、圧迫感を軽減することができます。
また、締め付けの強さは3段階で調整できるため、患者さんの感じ方によって固定力の調整をすることができます。
ほかにも、腰や首の部分に冷感を緩和するためのヒーターが内蔵されており、患者さんの負担をやわらげます。
固定部分のワンタッチ装着や自動調整機能でスタッフの負担軽減
腰椎牽引はスタッフが操作に時間を要する物療機器の1つです。
新しい牽引装置は、そんなスタッフの負担を軽減する機能が備わっています。
◯ワンタッチ装着で時間短縮
牽引するために装着する腰ベルトですが、ベルトを通して、はずれないようにベルトを締める作業はかなり時間がかかります。
その点、最新の腰椎牽引装置では、マジックテープで装着するだけですむので、作業時間を短縮できます。
また、ベルトを締めるなどの牽引装置の準備はスタッフに中腰の姿勢を強いるため、腰痛の悪化を招くリスクを高めます。
そのため、ワンタッチ装着の機能はスタッフの体にもやさしい機能になっています。
◯脇の固定の自動調整で手間を削減
古いタイプの牽引装置では、脇を固定するのも、ベルトで脇に通して、締め具合で固定力を調整する必要があります。
しかし、最新の腰椎牽引装置は患者さんの体型にフィットするように自動で調整してくれますので、いちいち脇にベルトを当てたり、患者さんに合わせて調整する手間が省けます。
以上のように、最新機能によりスタッフの時間的な負担が減るため、ほかの業務を行ったり、人件費の削減につながったりします。
新しい腰椎の牽引装置を施設に導入するための実践例
腰椎の牽引装置は決して安い物ではなく、簡単に施設に導入できず悩むことも少なくありません。
そこで、施設に導入するための方法を実践例を交えて紹介します。
◯時間短縮でコスト面のメリットをアピール
コスト面が導入の障壁になっている場合、コスト面のメリットをしっかりアピールしてみましょう。
私の働くクリニックでは、古いタイプの物療機器が多く、物療アシスタントを複数雇っていました。
しかし、最新の牽引装置などを導入することで、数百万円のコストがかかりましたが、人件費を大幅に削減することができました。
とりわけ、装着などに時間を要する牽引装置は、最新装置に変更することで、人件費削減によるコスト面のメリットをアピールしやすい機器です。
その際に、メーカー担当者と連携をとって、コスト面に関する資料を一緒に作成するのもオススメです。
また、座位タイプの牽引装置は頚椎牽引の機能も一緒についているタイプの機器もあります。
そのような機器を一緒に導入するのも、上記のようなメリットをより活用する方法の1つです。
◯患者さんの満足度は重要!アンケートを実施しよう
メーカー担当者に依頼をしてデモ機を準備してもらって、患者さんに実際に使い心地を体験してもらい、アンケートを実施してみましょう。
寝起きが不要な点や空気によるベルトの固定、冷感緩和のヒーターなどの機能は、患者さんにとって満足度が高く、以下のような声が聞かれます。
- 「座るだけで簡単に牽引が受けられる」
- 「腰が痛いときに寝起きしなくてすむのは良い」
- 「ずっと圧迫されないので楽」
コスト面のメリットだけでなく、患者さんの生の声を積極的に活用して、稟議書などに組み込むことで、より機器の導入が実現しやすくなります。
患者さんやスタッフの負担軽減に最新装置の導入を検討しよう
腰椎の牽引装置は以前よりも大きく進歩しており、患者さんだけでなく、スタッフにとっても時間的、身体的な負担を軽減してくれます。
また、省スペース設計になっているため、空いたスペースにほかの機器を置いたり、治療や評価のスペースにしたりもできます。
そのようなメリットを十分に発揮するために、施設のスタッフだけでなく、機器の特性をよく知るメーカー担当者としっかり連携をとり、最新機器の腰椎牽引装置導入を検討しましょう。
参考:
OGウエルネス オルソトラック ラセディア OL-6600/6100(2019年1月20日引用)
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執筆者
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整形外科クリニックや介護保険施設、訪問リハビリなどで理学療法士として従事してきました。
現在は地域包括ケアシステムを実践している法人で施設内のリハビリだけでなく、介護予防事業など地域活動にも積極的に参加しています。
医療と介護の垣根を超えて、誰にでもわかりやすい記事をお届けできればと思います。
保有資格:理学療法士、介護支援専門員、3学会合同呼吸療法認定士、認知症ケア専門士、介護福祉経営士2級