最新の義足・義手はコンピューターで動きを制御!特徴や適応を紹介
近年、医療・介護現場ではロボットの活用が進んでいますが、義足・義手においても例外ではありません。
切断患者さんにとって、より高度で、思い通りの動きを実現するため、コンピューター制御による義肢が開発されています。
そこで、ロボット機能をもつ最新の義足・義手について特徴や適応を解説します。
目次
コンピューターで膝の動きを制御する最新の義足とは?
最新の義足として、コンピューターにより膝継手の動きを制御する商品が開発されています。
そこで、どのような機能がコンピューターにより制御されるのかを解説します。
●立脚期における膝折れ防止や遊脚への移行をコントロール
通常、膝折れを防ぐために、膝継手は伸展位でロックされたり、ある程度しか屈曲しないようなバウンシング機能が備わっています。
しかし、最新の義足では、立脚期に適度な抵抗がかかり、ゆっくりと膝を屈曲することができるイールディング機構が備わっており、膝折れを防ぎつつ、スムーズな体重の移行や立脚期の安定性が獲得できます。
ottobock社のC-Legのように油圧で抵抗がかかるものや、Ossur社のRHEO KNEEのように磁気粘性流体で抵抗がかかるものがあります。
傾斜や角度を感知するセンサーや細かな動きを感知するジャイロセンサーが搭載され、地面の傾斜や角度、体の動きが細かく感知できるため、必要なタイミングで必要な抵抗量や屈曲角度の調整ができます。
そのため、階段や坂道、柔らかい地面などでも膝折れをせず、状況に合わせた安定性を得ることができます
立脚期から遊脚期への移行もスムーズに調整され、つまずいたときのステップや後ろ歩きなども可能になります。
●遊脚期の振り出しも細かく調整可能
多彩なセンサーにより、歩行速度や歩行する環境を素早く感知して、必要な速度で膝が曲がるように制御できます。
ottobock社のGeniumは小走りをすると「ランニングモード」に自動で切り替わり、より膝の屈曲角度を大きくしてクリアランスの確保を可能にします。
また、人工知能が搭載されているタイプもあり、歩行を繰り返すことで、使用する患者さんに最適なコントロール方法を学習します。
電気信号により指を開閉!「筋電義手」の特徴
最新の義手として、筋電信号を動源にしてモーターを働かせ、義手を動かす「筋電義手」があります。
●筋電義手のメカニズム
筋電義手は指の部分にあたる手先具、手関節部分の手継手、バッテリー、電極、ソケットからなります。
脳から発信された筋収縮を促す電気信号(筋電信号)を電極が感知することで、手先具の開閉が制御されます。
能動義手ではハーネスやケーブルの力を利用して手先具を動かしていたため、作業する空間が制限されていたのに対して、ケーブルが不要な筋電義手はどのような腕の位置でも手先具を動かすことができます。
そのため、頭上や真横に手を上げた状態でも、手を使うことができます。
以前は全指を同時に開閉するのみの機能でしたが、最近では各指にモーターが搭載され、各指それぞれの動きを独立して制御できる筋電義手も開発されています。
母子のCM関節の外転を可能にしたものもあり、お皿などの平たいものを横つまみを活用してつまむといった、より多彩な動きを可能にしています。
●開閉スピードや把持力の制御が可能
開閉スピードの制御方法は大きく分けて2種類あります。
・on-off制御
筋電信号が一定の強さを超えたら、一定のスピードで開閉
・比例制御
筋電信号の強さに比例して、開閉スピードの調整が可能
比例制御では、開閉スピードだけでなく、把持力区の調整をすることができ、筋電信号を強くすることで、より強く握ることができます。
また、把持した状態でリラックスしても、指が開かないような機能が備わっている商品もあります。
最近では、人工知能を搭載した筋電義手の開発も進んでおり、個人の状況に応じた制御が可能となってきています。
●小児でも活用が可能
小児用の筋電義手も開発されており、小さい頃から遊びなどの中で筋電義手の操作を習得することもできます。
通常、「開く」と「閉じる」の動作を2種類の電極を動作のスイッチとして使用しますが、1〜3歳くらいの年齢でうまく2種類の筋電信号を扱えない場合は、EVOシステムと呼ばれる電極の機能を使います。
EVOシステムは、1つの電極のみを使用して、筋電信号で「開く」動作のみを制御して、信号がなくなれば、「閉じる」ように制御されます。
また、小児の場合は成長に合わせて、手先具やソケットの大きさを変える必要があります。
そのため、適宜、医師や義肢装具士と連携して、適切なサイズをチェックして、調整していきます。
多職種でのチェックが不可欠!最新義肢の適応とは
ご紹介したような義肢を活用すれば、今までの義肢では実現できなかった動きを行えるようになります。
しかし、誰でも適応になるわけではなく、義肢の処方が適切かを多職種で連携してチェックしていく必要があります。
●患者さんの心身機能や使用のニーズで適応が異なる
高機能の膝継手を公費で支給されるためには、大腿切断者や非切断側の下肢が機能低下を引き起こしており、ほかの膝継手では歩行が困難な場合や就労において高いパフォーマンスが必要な場合が想定されています。
自費での購入はもちろん可能ですが、非常に高額な商品であるため、公費支給の可能性を考えて、適応には身体機能や就労環境などを十分考慮する必要があります。
●適切に使用するためのリハビリや義肢のメンテナンスは必須
高性能の義肢を装着したからといって、すぐに動作に活用できるわけではありません。
体の機能や必要な動作に合わせて、リハビリを行う必要があります。
そのため、最新の義肢に関して専門的な知識や技術を持ったセラピストの指導は欠かせません。
最近は最新義肢に関する研修も活発に行われるようになっているため、現場での活用を検討するセラピストは、それらの研修に積極的に参加する必要があります。
また、装具の機能を調整したり、修正するためには医師や義肢装具士のチェックが必要になります。
義肢のメンテナンスを行うことで、状況に応じた最適な義肢の状態を保つことができます。
より豊かな生活を実現するために最新の義足・義手を活用しよう
医療現場でロボットの活用が進むことで、患者さんは以前にも増して、思い通りの生活が実現可能になっています。
そのため、セラピストも最新の知識や技術を学び、多職種で協力しながら、患者さんに適切に活用してもらうことが重要です。
これからも発展し続ける義足・義手の最新情報を把握して、患者さんのより豊かな生活が実現できるようにしましょう。
参考:
Ottobock社 コンピューター制御膝継手.(2019年2月19日引用)
Pacific Supply株式会社 リオニー.(2019年2月19日引用)
Nabtesco社 Hybrid Knee.(2019年2月19日引用)
Ottobock社 筋電義手.(2019年2月19日引用)
Pacific Supply株式会社 i-limb quantum.(2019年2月19日引用)
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執筆者
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整形外科クリニックや介護保険施設、訪問リハビリなどで理学療法士として従事してきました。
現在は地域包括ケアシステムを実践している法人で施設内のリハビリだけでなく、介護予防事業など地域活動にも積極的に参加しています。
医療と介護の垣根を超えて、誰にでもわかりやすい記事をお届けできればと思います。
保有資格:理学療法士、介護支援専門員、3学会合同呼吸療法認定士、認知症ケア専門士、介護福祉経営士2級
岡崎良介 さん
2019年11月7日 2:49 AM
広島県在住です。今年から義足になりました。ただいま、リハビリで歩行練習をしています。大腿部切断です。これからの生活で膝継手に興味があります。機能性と価格でいろいろ知りたいです。よろしくお願いします。