整形外科・リハビリ病院が抱える課題(ヒト・モノ・カネ)をサポート

  • Facebook

クリニック・治療院 OGメディック

自転車エルゴメーターを使いこなそう!理学療法士がポイントを伝授します

多くの介護事業所で使われている運動機器のなかに、自転車エルゴメーターがあります。
体力を向上させるために使用する代表的な器具ですが、器具の特徴や運動のポイントを知るだけで、よりその効果を発揮することができます。
今回は、理学療法士が自転車エルゴメーターを使用するためのポイントをご紹介していきます。

自転車エルゴメーター

自転車エルゴメーターってどんな器具なの?

自転車エルゴメーターは、有酸素運動を行うための代表的な器具で、医療や介護に携わる方なら誰でも見たことがある、とてもポピュラーなリハビリ機器の一つです。

自転車と同様にペダルをこいで運動を行いますが、ペダルの重さを変更することができるため、使用する方に合わせた運動量を設定できます。
また、脈拍数や走行距離、ペダルの回転数、運動の強さなどをモニタリングしながら行うことが可能で、運動中でも体の状態に合わせて調整できます。
自転車エルゴメーターには、大きく分けて2つのタイプがあります。

アップライト型:通常の自転車のようにサドルに座るタイプ
リカベント型:背もたれのある椅子に座るようなタイプ

形状が違うため、乗りやすさや座りやすさなども異なり、それぞれの特徴を考慮して使い分けていくことが重要になります。
また、サドルの高さやハンドルによって運動量がかわるので、使用される方の身長や状態なども考えて調整する必要があります。

タイプ別の適応基準やサドル調整などの注意点は、運動の強さを設定する方法と一緒にのちほど説明したいと思います。

持久力がつくだけじゃない!?自転車エルゴメーターの効果とは

自転車エルゴメーターの効果としては、まず体力の向上が挙げられますが、そのほかにも以下のようなものがあります。

  • ●生活習慣病の予防
  • ●脳機能低下の予防
  • ●肥満の改善
  • ●うつ状態の改善

これらの効果は有酸素運動を行うことで得られるものです。
有酸素運動は心臓疾患や糖尿病、脳卒中などの疾病を予防するために効果的とされています。
つまり自転車エルゴメーターは、負荷量を調整しながら有酸素運動を行うことができる、非常に魅力的なリハビリ機器だといえるのです。
これらの効果をしっかりと発揮させるためには、自転車エルゴメーターの使い方を十分に理解して、有効活用することが大切です。

ただこぐだけではダメなの?使用するためのポイントを紹介

ここからは、自転車エルゴメーターを使用するためのポイントを紹介していきます。
機器の種類や選択基準、運動の強さを設定する方法、サドルの高さや位置という順に見ていきましょう。

アップライト型とリカベント型の選択基準
先ほど、2つのタイプの違いを大まかに紹介しましたが、実際にどのように使い分ければ良いのかを詳しく解説していきます。
まずアップライト型は、自転車と同じようにサドルをまたぐ動作が必要になるため、転倒リスクの高い方は注意が必要です。
一方リカベント型は、椅子に移乗するように乗ることができるため、立つことが難しい方でも介助しながら乗ることができます。

また、背もたれの有無による違いもあります。
背もたれのないアップライト型では、姿勢を保つために体幹の筋肉を使用し、体幹や下肢の筋肉を同時に活動させることができます。
リカベント型は背もたれがあるため、アップライト型にくらべて筋肉の活動が少なくなります。

さらにアップライト型は血圧が下がりやすい傾向があります。
その理由は、運動後に血管が拡張するという生理的な現象に加えて、両脚を下に降ろした状態でペダルをこぐという特徴があるためです。
このため血圧が下がりやすい方は、リカベント型が適しているといえます。

以上のような特徴を踏まえると、

  • ●アップライト型 サドルをまたぐことができ、体幹を含めた全身の運動をしっかりと行うことが必要な方向き 
  • ●リカベント型  サドルをまたぐことが難しく血圧が下がりやすい方、腰痛などがあり姿勢の保持が難しい方向き

ということがいえるでしょう。

運動の強さを設定する方法
医療の現場では、自転車エルゴメーターなどの機器を使う際、特殊な機器を用いて「心肺運動負荷テスト」という検査を行います。
これは、運動をしているときの心臓の状態を把握し、どの程度まで安全に行えるかを知るためのものです。
それはイコール「運動の強さを設定するための指標」でもあります。
しかし医療機関ではない介護施設では、こうした検査機器がない場合も多く、心肺運動負荷テストを行うことは難しいといえます。
そんな場合でも、運動強度を測る方法があります。

  • ●METs
  • ●Borg scale(ボルグスケール)
  • ●目標心拍数
  • ●トークテスト

●METs

METsは「運動の強さの目安」とされる指標です。
平成25年の厚生労働省の運動基準・運動指針の改定に関する検討会 報告書によると、高齢者は3METs以上の運動が望ましいとされています。
自転車エルゴメーターでは30~50Wattの運動が3.5METsとされていますので、モニターに表示されるWattを、しっかりとモニタリングするようにしましょう。

●Borg scale(ボルグスケール)

Borg scale(ボルグスケール)は、運動を行った際に自覚される疲労感を数字で表す方法です。
6~20の15段階で疲労を表し、数字が低いほど「楽」、高いほど「きつい」となっています。
有酸素運動として行う場合は、9の「かなり楽」から13の「ややきつい」の範囲内におさまる強さが目安です。
筆者が働くデイケアでも自転車エルゴメーターの前に表を貼り付け、スタッフが常に質問しながら運動を行うようにしています。

●目標心拍数

自転車エルゴメーターは脈拍数をモニタリングできるため、目標心拍数を設定して運動を行うことができます。
目標心拍数は年齢別に予測できる最大心拍数から計算することが可能です。

最大心拍数は「220-年齢」で決まるため、最大心拍数の何%の強度で行うかで目標を決めます。
有酸素運動の目安は最大心拍数の50%~60%ですので、最大心拍数から目標心拍数を計算して実施しましょう。

●トークテスト

運動強度の設定において、もっとも簡単ともいえる方法はトークテストで、有酸素運動レベルの運動であれば「運動しながら普通の会話ができる程度」とされています。

以上のように、運動の強さを設定するさまざまな方法を駆使して、しっかりと有酸素運動を行うようにしましょう。

サドルの高さや位置も考えよう!

一般的な自転車と同様に、自転車エルゴメーターでもサドルの高さや位置によって、膝をどのくらい曲げ伸ばしするかが決まります。
好みに合わせて調節すればよいというわけではなく、使用される方の状態を確認しながら、その高さや位置を設定する必要があります。
たとえばサドルを低くすると、膝を深く曲げてペダルをこぐことになりますが、変形性膝関節症などがある場合、あまり深く曲げてしまうと患部に痛みが生じてしまいます。
サドルを調節するときの基本は、「伸ばしきったときに軽く膝が曲がる程度」です。
こうした目安を参考に、さらに使用される方の状態を見ながら、無理なく曲げ伸ばしができる位置に設定しましょう。

自転車エルゴメーターはサドルだけではなく、姿勢に影響するハンドルの位置も重要なポイントです。
ハンドルを高くすると体はしっかりと起き、低くするとやや前屈みになります。
筆者の経験では、体を少し前屈みにしていた脊柱管狭窄症の方が、ハンドルの位置を調節することによって腰の負担が軽減されたというケースもあります。

細かいことかもしれませんが、サドルやハンドルは利用する方に合わせて、しっかりと調整することを忘れないようにしましょう。

まとめ

自転車エルゴメーターは、ご高齢の方でも適切な有酸素運動を行うことができる機器です。
しかしその効果を発揮するためには、機器の特徴や運動の強さを考慮して使用する必要があります。
自転車エルゴメーターを活用して、少しでも多くの方の体力向上を目指しましょう。

自転車エルゴメーターについては、こちら(自転車エルゴメーターで表示されるワットの意味は?理学療法士がわかりやすく解説します)でも紹介しています。

参考:
大渕修一:予防理学療法学要論.医歯薬出版株式会社,東京,2017
神谷晃央,他:エルゴメーター駆動中の体幹・下肢筋活動について.第42回日本理学療法学術大会,抄録集,2007
高橋哲也:臨床思考が身につく運動療法Q&A.医学書院,東京,2016
居村茂之:呼吸・心臓リハビリテーション.高橋哲也(編),羊土社,2015
運動基準・運動指針の改定に関する検討会 報告書.厚生労働省

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。

内容に問題なければ、下記の「コメントを送信する」ボタンを押してください。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)