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モニター心電図を理解しよう!セラピストが押さえておきたいポイントを解説します

急性期病院で勤務していると、モニター心電図を装着している患者さんのリハビリを担当することがあります。
「心電図は難しいからわからない」、「循環器疾患特有のものだから関係ない」と思い込んではいないでしょうか?
モニター心電図に関する基礎知識と、セラピストが知っておきたい活用方法やトラブル対処法について解説します。

モニター心電図の基礎知識

まずはおさらい、心電図の基礎知識

まず最初に、心電図の基礎知識とモニター心電図の特徴について解説します。

●心電図は心臓の電気活動を記録したもの

心電図とは読んで字のごとく「心臓の電気活動を記録図にしたもの」です。
言葉にすると単純ですが、生理検査で行われる標準12誘導心電図を見た際に、「こんなに多くの波形があるの?」と困惑する方もいるでしょう。
この12誘導心電図とは、心臓を12方向から見ているため、記録用紙に12個の波形が記されています。
心電図では、それぞれの誘導(見ている場所)で電気刺激が近づいてくる場合は上むき(陽性波)、遠ざかる場合は下向き(陰性波)に観測されます。
以下の表は、それぞれの誘導における特徴についてまとめたものです。

誘導の名称 どの方向から心臓を見ているか 波形の役割
Ⅰ誘導 左から右 心臓の側壁の異常を調べる
Ⅱ誘導 左下から右上 心臓の下壁の異常を調べる
Ⅲ誘導 右下から左上 心臓の下壁の異常を調べる
aVR誘導 右上から左下 右室の異常を調べる
aVL誘導 左上から右下 左室の異常を調べる
aVF誘導 下から上 心臓の下壁の異常を調べる
V1誘導 右前から左後ろ 右室と心室中隔の異常を調べる
V2誘導 右前から左後ろ 右室と心室中隔の異常を調べる
V3誘導 前から後ろ 前壁の異常を調べる
V4誘導 左前から右後ろ 前壁の異常を調べる
V5誘導 左前から右後ろ 側壁の異常を調べる
V6誘導 左から右 側壁の異常を調べる

●モニター心電図は変幻自在な単極誘導

モニター心電図は変幻自在な単極誘導

いっぽう、病棟などで装着されている心電図はモニター心電図とよばれ、上記誘導の1つを簡便に観測できることが特徴です。
多くの場合、右鎖骨下に陰電極(赤クリップ)、左鎖骨下にアース(黄クリップ)、左側胸部に陽電極(緑クリップ)を装着します。
装着場所については、患者さんを正面から見て、「アキミちゃん」や「あ〜きみ(君)」と覚えるとよいでしょう。
この貼り付け位置では、緑から赤、つまり下から上を見ていることになるので、12誘導のなかでもⅡ誘導に近い波形になります。
そのため、モニター心電図は貼り付け位置によって前額面上の波形(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、aVR、aVL、aVF)をチェックできる、変幻自在の誘導といえるでしょう。

モニター心電図をリハビリ場面で活用しよう

モニター心電図がついている患者さんを担当した場合、まずは「なぜ装着されているか」を考えることが重要です。

●循環器疾患以外でモニター心電図が装着されている理由

急性心筋梗塞や心不全などの循環器疾患では、命にかかわる不整脈が出現しないか、また運動時の心拍変化などを確認するため、心電図の装着は必須です。
しかし、運動器疾患や脳卒中などの心臓疾患以外でも装着されていることがあります。
その理由は、もともと心筋梗塞や狭心症などの既往歴がある場合や、手術前の心電図検査で不整脈が確認された場合などが挙げられます。
いまや早期離床は重要な概念ですが、なぜ心電図が装着されているのか、リハビリを進める上でどのようなリスクがあるのかを把握しておきましょう。
とくに、心原性脳塞栓症の場合、心房細動が原因になっていることが多く、頻脈の状態が続くと心臓や脳への血流量が低下するため危険です。
高齢者はさまざまな併存症(循環器疾患、呼吸器疾患、腎疾患など)をもっていることが多く、今後臨床場面でモニター心電図を目にする機会は多くなるでしょう。

●心房細動と心室性不整脈をチェックしよう

モニター心電図では、心臓を1方向からしか観察できないため、12誘導心電図にくらべると得られる情報は少ないです。
たとえば、12誘導心電図でⅡ〜Ⅲ誘導とaVF誘導のST部分が上昇していると、下壁の心筋梗塞であると推測できます。
しかし、モニター心電図では心臓を1方向からしか観察できないため、異常のある場所を特定するには情報量が不十分です。
モニター心電図の場合、心拍のリズムなど横の変化を把握することは可能であるため、心房細動などの不整脈を検出するには有用です。
その中でも、リズムが完全に不規則である心房細動や、1波形の形が明らかに異なる心室性期外収縮は発見しやすい不整脈であり、遭遇する頻度も高いといえます。

●バイタル評価の落とし穴、脈拍=心拍ではないことに注意!

バイタル評価の落とし穴

リハビリにおけるバイタル評価の代名詞といえば血圧、脈拍、呼吸数などが挙げられるでしょう。
電動血圧計で血圧を測定すると、血圧と脈拍が一度に確認できることはメリットですが、実はここに落とし穴が隠れています。
たとえば、血圧計は上腕動脈の拍動を感知して脈拍を表示しますが、必ずしも心拍数とイコールの数字とはいえません。
心房細動や心室性期外収縮がある場合、心臓からの拍出量が低下した際(空うちの状態)には末端の血管で脈を触知できないことがあります
電動血圧計の数値や橈骨動脈での検脈で確認できた脈拍が、実際の心拍数と10拍以上の差になることもあるので注意です。
より正確に評価をしたいのであれば、心音を聴診するか、モニター心電図で心拍数を確認するとよいでしょう

波形がおかしい?困ったときの対処法について

いつもと違う波形が確認された場合、その全てが不整脈というわけではありません。
ここでは、異常を感じたときに確認するべきポイントやその対応について解説します。

●波形がおかしいと感じたらチェックするべきポイント

波形がおかしいと感じたらチェックするべきポイント

波形が乱れていると感じた場合、まずは以下の3点をチェックしてみましょう。

◯シールの貼ってある場所をチェック
前述したように、モニター心電図のシールは多くの場合「アキミちゃん」の位置で貼られていますが、うまく波形が出ない場合もあります。
たとえば、皮下脂肪が多くて電気信号を読み取れない場合や、胸郭の動きが大きく雑音が混入する場合などが挙げられます。
その際は、シールを貼る位置を少し変えてみることで正常な波形が表示されることがあります
また、シールが剥がれかかっている場合もうまく波形が表示されませんので、シールの粘着性などもチェックするようにしましょう。

◯運動時にリードが揺れていないかチェック
モニター心電図は、リード(赤、黄、緑の線)が服の中から外へ出ているため、体の動きによってリードが揺れやすくなります。
歩行練習中やエルゴメーターをこいでいるときなど、リードが揺れることによって雑音が入る場合があります。
その際は、リードが揺れないようにテープで固定するか、モニター心電図の本体をポケットに入れるなどの対応がよいでしょう

●異常を発見したときは12誘導心電図での精査が必要

前述したように、モニター心電図では得られる情報が少ないため、12誘導心電図にくらべると診断的価値は高くありません。
そのため、「あれ、リハビリ中の心拍数が多い気がする」、「いつもより心室性不整脈の出現頻度が高い」などと感じた場合、まずは担当看護師や主治医に連絡しましょう。
いくら頭をひねって波形とにらめっこしていても、その場で解決策がでてくることはないでしょう。
モニター心電図は、普段の生活の中で心臓の異常を発見するために装着されるものであり、早期発見と早期診断につなげることが重要です。
「もしかしたら見間違いかも、自信がない」と尻込みするかもしれませんが、周りのスタッフに相談することが、自身の知識を深めることにもつながります。

まずはモニター心電図に慣れることが大切

循環器疾患で入院している患者さん以外にも、合併症や既往歴に不整脈をもっている方は多く、リハビリ場面でのリスク管理が重要になります。
モニター心電図は、誰でも簡便に装着することができ、有用な情報を得ることができる機器です。
また、心電図波形を完璧に読み解くことが重要なのではなく、早期に異常を発見して精査につなげることが重要です。 
モニター心電図を装着している患者さんを担当したら、バイタルを評価するときに心電図波形にも目を向けてみてはいかがでしょうか。

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参考:
渡辺重行,山口巖:心電図の読み方パーフェクトマニュアル.羊土社,東京,2006,pp.18-22.

  • 執筆者

    奥村 高弘

  • 皆さん、こんにちは。理学療法士の奥村と申します。
    急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。
    高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。

    保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士

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