発達障害の子供のリハビリにおけるボールプールの活用方法|遊びの例を解説
発達障害の子供のリハビリにおいて、ボールプールを用いる機会は少なくありません。
ボールプールは単純に入って遊ぶだけでも楽しめますが、遊びのバリエーションが増えると、より治療的な目的を持って使用できます。
今回は、リハビリにおけるボールプールの活用において、ヒントとなるような使い方を中心に解説します。
目次
1.ボールプールでかくれんぼ
ボールプールの中に隠れる人と、隠れた人を探す役割に分かれて、かくれんぼをして遊ぶことができます。
リハビリで実施する場合は、セラピストと子供が役割を交代しながら遊んでいくと良いでしょう。
注意欠陥多動性障害(ADHD)の子供などで、じっとしていることが難しい場合には、音を立てずに隠れる遊びも、行動を抑制するために良いリハビリになります。
ボールプールでは、少し動いただけでボールが動いて音が出るため、特に静かに隠れることが要求されます。
探す人は、勢いよくボールプールに飛び込むと隠れている人を踏んでしまう可能性があるため、そっと入るように説明しましょう。
そうすると、他者や環境に配慮して遊ぶ練習にもつながります。
2.ボールプールで宝探し
ボールプールの中に、ぬいぐるみなどの物を隠し、それを探して遊ぶ方法もあります。
隠した物を探す過程では、色とりどりのボールの中に、何か異なるものがないか視覚的に注意を向ける必要があります。
そして、ボールの中を手で探索するときには、ボールとは異なる触覚のものがないか確認することになります。
視覚的注意を向けることが苦手な子供や、触覚刺激を感じにくい子供では、宝探しを通してリハビリしてみることも方法です。
3.ボールの色や数で学習
ボールプールにはたくさんのボールがあるので、色や数の学習をしたいときにも役立ちます。
柔らかいクッションでできたブロックなどをボールプールに入れて、「ボール屋さん」のコーナーを作り、「青いボール2つください」などのやりとり遊びをすることもできます。
平均台などを用いてボールプールに続くサーキットを作り、「ボールをお買い物してくる」などのルールにしても良いでしょう。
また、指示を理解する力を伸ばす目的で、「赤のボールを12個」「青が7個、黄色が4個」といったセラピストの指示に従ってボールをもらってくる遊びもできます。
保護者がリハビリに同席していれば、「お母さんに何色のボールがほしいか聞いてきて」と活動に巻き込むのも良いでしょう。
発達障害の子供では、幼稚園や学校で人の話や指示を聞けない、理解できない場合があります。
そのような場合、リハビリ室でも指示を理解して行動するための練習が必要となります。
色の種類や個数が多くなるほど、指示された内容を頭にとどめておく認知的負荷が上がり、ワーキングメモリのリハビリとしても一助になります。
4.ボールで的当て
ボールプールに入っているボールは、的当てにも活用できます。
軽いボールであるため比較的安全性が高く、把持しやすい大きさであるため、リハビリの中でも扱いやすいです。
リハビリ室に的当てがあればそれを使っても良いですし、なければ倒れやすいブロックやおもちゃのボーリングのピンなどを使って的にします。
ボールの投げ方ひとつでも、力加減の調整を促せば固有感覚系のリハビリになり、目で的をよく見て投げるように促せば目と手の協調運動のリハビリになります。
声かけ次第で、遊びを通してさまざまな機能を訓練することができます。
5.感覚探求が強い子供のクールダウン
自閉症をはじめ、発達障害の子供は、特定の感覚刺激を求めたり、逆に嫌がったりすることがあります。
リハビリで行う活動でも、ブランコの揺れなど前庭覚刺激を好んだり、スライムのような素材の触覚刺激を好んだりする子供がいます。
触覚の感覚探求が強い子供では、ボールプールの中に入って、全身がボールにそっと包まれるような刺激を感じることで、情緒や行動が落ち着くことも少なくありません。
机上課題を行うまえにボールプールに入る時間を設けて沈静化を図るなど、その子供の状態をコントロールする手段として活用することも可能です。
すべての子供に当てはまるわけではありませんが、ボールプールに入ることで行動が落ち着く場合には、リハビリの中で効果的に取り入れていきましょう。
発達障害のリハビリにおすすめのボールプール
発達障害のリハビリを行う施設では、必ず用意しておきたいリハビリ道具といっても過言ではないボールプール。
オージーウエルネスでは、2種類のボールプールを取り扱っています。
次に、それぞれの大きさや特徴についてお伝えしていくので、施設の広さや用途に応じて導入を検討してみてはいかがでしょうか。
1.ボールバス
ボールバスは、リハビリで用いるボールプールとしては比較的コンパクトで、直径が1520mmとなります。
大人と子供が一緒に入って遊べる大きさなので、リハビリでも活躍するでしょう。
寸法(バス) 寸法(ボール) |
Φ 1520×500(H)mm Φ 60mm |
---|---|
重さ | 21.1kg |
材質 | バス:ナイロン、ウレタン ボール:ポリエチレン |
内容 | バス:1個 ボール:2000個(赤・水色・緑・黄 各500個) |
2.大型ボールプール
リハビリ室の面積に余裕があるときに導入を検討したいのが、大型ボールプールです。
直径が1800mmと大きいため、大人と子供がゆとりを持って入ることができます。
ある程度の広さのあるボールプールでは、かくれんぼなどの遊びも行いやすくなります。
なお、こちらのボールプールは必要に応じておりたたみも可能となります。
寸法(バス) 寸法(ボール) |
Φ 1800×500(H)mm 大:Φ 60mm、小:Φ 50mm、パイルボール:Φ 120mm |
---|---|
重さ | 32.6kg |
材質 | プール:ナイロン、ウレタン ボール:ポリエチレン(パイルボール:パイル生地) |
内容 | バス:1個 ボール(大):1500個 ボール(小):1000個 パイルボール:20個 |
リハビリではボールプールを治療的に活用!
発達障害の子供のリハビリに共通していえることですが、遊びをいかに治療的に用いていくかが大切になります。
リハビリでは必ずさまざまな機能の評価をしてから訓練に入りますが、治療目的に応じて遊びの内容やルール、声かけなどを工夫していきます。
ボールプールに入って遊ぶだけでは「楽しい」で終わってしまうため、活動の内容を工夫しながら、治療的な意義をもたせていきましょう。
あわせて読みたい:
発達障害の小・中学生に実施するソーシャルスキルトレーニングの方法と実際
発達障害の療育で鍛えたい「見る力」ビジョントレーニングの必要性と期待できる効果を解説
-
執筆者
-
作業療法士の資格取得後、介護老人保健施設で脳卒中や認知症の方のリハビリに従事。その後、病院にて外来リハビリを経験し、特に発達障害の子どもの療育に携わる。
勉強会や学会等に足を運び、新しい知見を吸収しながら臨床業務に当たっていた。現在はフリーライターに転身し、医療や介護に関わる記事の執筆や取材等を中心に活動しています。
保有資格:作業療法士、作業療法学修士