車椅子で有酸素運動ができるエルゴメーターを紹介!上肢の運動も可能
エルゴメーターは屋内で有酸素運動ができ、施設でもっとも使用されるリハビリ器具の1つです。
しかし、従来のタイプでは車椅子の方が使用しにくく、効果的な有酸素運動の実施に苦慮することも少なくありません。
今回はそんな悩みを解消できる「車椅子に乗ったまま使えるエルゴメーター」の特徴やメリットを紹介します。
目次
車椅子の方に最適なエルゴメーター「BE-Wellシリーズ」の特徴
車椅子の方でも使用できるエルゴメーターとしてOG Wellnessから新登場した、「BE-Wellシリーズ」のエルゴメーターを紹介します。
●座席を外して車椅子のままドッキングが可能
「BE-Wellシリーズ」の最大の特徴は、簡単に座席を取り外せることです。
座席はレール上に設置されているため、ロックを外してレールを滑らせるだけで、取り外せます。
そのまま、車椅子をレールに沿って移動して、固定用のベルトを装着すれば、車椅子のままでエルゴメーターを使用した有酸素運動ができます。
●上肢を使った全身運動ができる!片麻痺の方でも使用可能
「BE-Wellシリーズ」にはクロスステップとリカンベントバイクの2種類があります。
クロスステップタイプでは、上肢を使ってアームを引くことで上肢の運動もでき、上肢・下肢を使った全身運動が可能です。
また、アームとペダルが連動して動くため、片麻痺の方でも全身運動ができます。
●座席の取り外しだけじゃない!「BE-Wellシリーズ」安心・安全設計の3つの特徴
車椅子で使用できるという特徴以外にも、患者さんや利用者さん、スタッフみんなが使用しやすい特徴があります。
1.ウォークスルーで安全かつ負担の少ない移乗が可能
レールは簡単にまたげるようなウォークスルー設計になっており、座席へ安全に乗り降りができます。
また、座席が回転するため、利用される方が簡単に乗り降りできることはもちろん、介助が必要な方でも移乗しやすく、介助者の負担を軽減することができます。
2.コンパクト設計で小柄な方でも使いやすい!省スペースも実現
筆者が施設で小柄な高齢女性にエルゴメーターを使用してもらおうとしたときに、エルゴメーターのステップに足が届きにくかったり、乗り降りが難しかったりした経験があります。
しかし、「BE-Wellシリーズ」では、移乗がしやすいだけでなく、身長が135cm程の方でもステップに足が届きやすい設計になっており、小柄な方でも快適にトレーニングができます。
座席は前後に調整できるため、身長に合わせてペダルとの距離を調整することが可能です。
また、機器全体も以下のようなコンパクト設計になっており省スペースで設置できます。
種類 | クロスステップ WE-100![]() |
リカンベントバイク WE-110![]() |
---|---|---|
外寸 | 高さ約120cm× 幅約66cm×長さ約150cm | 高さ約120cm× 幅約65cm×長さ約150cm |
3.運動プログラムの設定で安全で効果的なトレーニングが可能
利用される方の体力レベルを5段階で評価して運動プログラムを設定できる、「体力テストモード」を搭載しています。
運動プログラムは以下の4種類から設定できるため、症状や効果に合わせた運動ができます。
- ○脈拍一定
- ○ワット一定
- ○負荷一定
- ○マニュアル
脈拍はイヤーセンサーで継続して測定できます。
タッチパネルでの表示・設定ですので、数値が確認しやすく操作性も良好です。
※エルゴメーターで使用されるワットについての詳しい解説は、「自転車エルゴメーターで表示されるワットの意味は?理学療法士がわかりやすく解説します」
車椅子の方にエルゴメーターを活用するメリット
車椅子の方は運動量が低下しがちで、リハビリが思うように進まない経験をされた方も多いのではないでしょうか。
そのため、車椅子で使用できるエルゴメーターはさまざまなメリットがあり、おすすめの運動プログラムの1つです。
●軽い運動強度から実施できる
車椅子を利用する方は、強い運動強度には耐えきれず、なかなか負荷のかけられない場合も多いです。
そのため、低負荷の運動から開始できるエルゴメーターは車椅子レベルの方に導入しやすく、虚弱な高齢者に効果的な低負荷・高頻度の運動が実施できます。
●さまざまな疾患に対する有酸素運動の効果が期待できる
車椅子を使用されるような高齢者は、心疾患や糖尿病、腎不全などのさまざまな疾患が合併していることも少なくありません。
そのため、それらの疾患に対する有酸素運動の効果が期待できます。
また、車椅子を使用される方は運動量が減少しやすく、疾患発症のリスクを高める肥満や高血圧などの生活習慣病が慢性化しやすくなっています。
そのため、疾患の予防の観点からもエルゴメーターによる継続的な有酸素運動はおすすめです。
●認知症に対するリハビリとしても活用できる
有酸素運動は認知症予防に対するリハビリとして実施できます。
車椅子を利用されている介護度の重度の方は、認知症を合併していることが少なくありません。
介護度が重度の場合、ウォーキングなども難しい場合も多いため、エルゴメーターが使用できれば、簡単に有酸素運動が実施できます。
介護サービスの事業所にもおすすめ!活用例を紹介
車椅子の利用者さんが多い介護サービス事業所では、有酸素運動のメリットがわかっていても、なかなか実施できない場合があります。
そのような場合に、「BE-Wellシリーズ」のエルゴメーターの導入がおすすめです。
今回は介護サービス事業所で使用する場合のポイントを具体的に紹介します。
●負荷の設定に悩む場合は医師やリハビリ職にアドバイスを聞こう!
エルゴメーターの導入で難しいのは、「適切な負荷の設定」です。
そこで「BE-Wellシリーズ」に搭載されている、「体力テストモード」を活用すれば、低負荷から高負荷まで利用される方に合わせた負荷の設定ができます。
それでも、車椅子を使用されている高齢者の方は、多彩な疾患を合併しており、負荷の調整に不安になることがあるかもしれません。
そのような場合は、主治医に聞いたり、リハビリ職のアドバイスを受けて負荷の設定を調整しましょう。
主治医にはケアマネジャーとうまく連携することで、適切な運動負荷などの助言を受けることができます。
通所介護やグループホームなどでは、生活機能向上連携加算でリハビリ職の助言を聞くことも可能になっているため、加算の活用をすることもおすすめです。
※生活機能向上連携加算については、「【生活機能向上連携加算】通所介護の算定でわかったメリット・デメリット」で詳しく紹介しています。
●ちょっとした工夫で楽しくエクササイズ
車椅子を使用されている虚弱な高齢者は単調なエルゴメーターのエクササイズでは楽しめないという場合もあります。
そこで、楽しくエクササイズができる工夫をすることで、退屈せずに意欲的に運動を継続することができます。
以下に具体的な工夫の例を紹介します。
○脳トレができるプリントを見えるところに貼る
脳トレのプリントなどを正面の壁に貼っておいて、考えながら運動してもらうことで、ただこぐよりも楽しく運動ができます。
筆者の施設でも間違い探しやなぞなぞなどをときながらエルゴメーターをしてもらっていますが、ただこぐのにくらべて時間が立つのが早いという声が多いです。
脳トレのプリントを見えるところに貼れば、「脳トレ&有酸素運動」というデュアルタスクトレーニングができるというメリットもあります。
○身近な場所の距離を目標にする
目標を設定することは運動に対するモチベーションの向上・維持におすすめです。
エルゴメーターでは走行距離が表示されるため、施設周辺や利用者さんの自宅周辺の場所を目標にしましょう。
「今日は隣町の〇〇まで行けたよ!」というように、達成感を得ることができます。
○ご褒美制を導入する
「月間の目標走行距離まで行けたら表彰状を授与する」
「〇〇までこげたらちょっと高級な飲み物が飲める」
などご褒美制を導入することで、楽しくエルゴメーターによる運動を継続するための目標になります。
最新のエルゴメーターを導入してリハビリの質を向上させよう
最新のエルゴメーターを使えば、車椅子の方が今までできなかったプログラムが実施でき、施設におけるリハビリの質の向上が期待できます。
介護サービス事業所でも、工夫しながら活用することで、さまざまな利用者さんに有酸素運動を楽しく取り組んでもらうことが可能です。
車椅子の方でも、いつまでも元気に生き生きと生活をしてもらうために、エルゴメーターの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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執筆者
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整形外科クリニックや介護保険施設、訪問リハビリなどで理学療法士として従事してきました。
現在は地域包括ケアシステムを実践している法人で施設内のリハビリだけでなく、介護予防事業など地域活動にも積極的に参加しています。
医療と介護の垣根を超えて、誰にでもわかりやすい記事をお届けできればと思います。
保有資格:理学療法士、介護支援専門員、3学会合同呼吸療法認定士、認知症ケア専門士、介護福祉経営士2級