重度の利用者さんでも歩行練習ができる!平行棒と一体化できる 免荷リフトの付いたオーバーヘッドフレームを紹介
重度の介護が必要な利用者さんの歩行練習は介護者の負担が大きく実施できなかったり、腰痛を招いたりすることは少なくありません。
そんな場合におすすめなのが、免荷リフトが付いたオーバーヘッドフレームです。
今回はオーバーヘッドフレームの特徴や使用方法、導入するメリットを紹介します。
目次
免荷リフトを使ったリハビリがおすすめな理由
大きな医療施設でなければ、免荷リフトを導入しているケースは多くはないかもしれません。
しかし、免荷リフトは介護老人保健施設や特別養護老人ホームなどの入所施設、通所リハビリや通所介護などの通所施設といった介護保険施設でも使用するメリットは少なくありません。
そこで、免荷リフトを使ったリハビリをおすすめする理由を紹介します。
●立位や歩行に重度の介助が必要な利用者さんでも立位でのリハビリができる
重度の麻痺や脊髄不全損傷で、立位の姿勢が難しい方や歩行に介助が必要な利用者さんは少なくありません。
そんな場合でも、以下のように利用者さんや家族から要望を受けた経験があるかもしれません。
- ○ベッドから車椅子の移乗で立つ必要がある
- ○居室内を介助で歩かなければならない
- ○トイレで下衣を上げ下げするのに立位の安定が必要
など
このような要望に対して、介助量が多かったり、マンパワーが不足したりして、十分なリハビリを提供することが難しいこともあります。
しかし、免荷リフトを使えば、利用者さんが耐えられるだけの荷重をかけることができるため、安全かつ安心して立位や歩行のリハビリをすることができます。
●無理な介助による2次障害を防ぐことができる
介助量の多い利用者さんに立ち上がりや歩行練習を無理やりしようとすると、筋緊張の亢進や皮膚を傷つけるといった「介助による悪影響」を生じさせるリスクがあります。
そこで、免荷リフトを使用すれば、利用者さんの体に無理な力が加わることなく立位や歩行の練習ができます。
そのため、介護による悪影響を受けずに、安楽なリハビリの提供が可能になります。
●スタッフの介護負担を軽減できる
立位や歩行介助のような立位で抱える動作をすると、安静立位にくらべ椎間板にかかる負担は約2倍になるとされています。
そのため、介護量の多い方の立位や歩行練習の介助は、スタッフの腰に大きな負担をかけます。
リフトを使うことで、介助量の軽減ができ、スタッフの体にかかる負担を和らげることができます。
●人員削減や離職防止による経済的効果も期待できる
私の働く法人でも立位練習に2人の介助を必要としたり、歩行練習を2名のリハビリスタッフで行ったりといった経験があります。
リフトを使用すれば、これらの介助に必要なスタッフを減らせるため、人件費にかかるコストの削減が期待できます。
また、スタッフの体にかかる負担を減らすことは、近年問題になっている、介護スタッフの腰痛による就労困難を減らす一助になります。
そのため、人員不足による新規採用や新人教育にかかるコストの削減につながります。
平行棒で免荷リフトが使える!オーバーヘッドフレームの特徴
平行棒内で免荷リフトが使用できる、OG Wellnessのオーバーヘッドフレームの特徴を紹介します。
●工事不要で平行棒に取り付けが可能
OG Wellnessの昇降式平行棒に直接取り付けることが可能になっているため、工事をする必要がありません。
設置可能な平行棒のタイプは以下の4種類になります。
- ○昇降式平行棒 標準型 GH-2650 3.5m
- ○昇降式平行棒 標準型 GH-2750 3.5m
- ○昇降式平行棒 両直線型 GH-2640 3.5m
- ○昇降式平行棒 両直線型 GH-2740 3.5m
また、設置する場合は天井高として2.7mのスペースが必要になります。
※平行棒に関する記事は「歩行練習の平行棒選びに迷う方は必見!オージーウエルネスの平行棒がオススメな理由とは!?」で詳しく解説しています。
●リフトは電動と手動の2種類!ハーネスは3サイズを標準付属
リフトは電動と手動の2種類から選べます。
電動を選べば、利用者さんのサポートを効率よく行うことができ、スタッフの介助量軽減につながります。
ハーネスはS/M/Lの3種類が標準付属されており、さまざまな体型の利用者さんに対応することができます。
●リフトの機能だけじゃない!スムーズなリハビリにつながる特徴3つ
オーバーヘッドフレームの特徴は、免荷リフトがついているだけではありません。
以下の3つの特徴もリハビリをスムーズに行うために役立ちます。
1.平行棒に歩幅がわかる目盛りがつけられる
平行棒の下に歩幅がわかる目盛りがつけられます。
そのため、利用者さんの歩幅を評価することはもちろん、障害物を設置する幅の目安にしたり、すくみ足の歩行練習時の目標にしたりすることができます。
2.平行棒の段差を解消できる
平行棒の両側の足元には土台となる段差があるのが一般的です。
しかし、オーバーヘッドフレームで固定してしまえば、土台が不要になります。
そのため、平行棒の段差を無くすことができ、より安全に歩行練習ができます。
3.縦手すりが設置できる
オプションでフレームに縦手すりを設置できます。
トイレや玄関など縦手すりを使用する機会は多いですが、リハビ室で実践する場所は多くありません。
そこで、いつでも気軽に縦手すりを想定したリハビリができます。
施設での使用例やリハビリの方法を紹介
理学療法士の視点を踏まえて、具体的な使用事例を以下に紹介します。
1.トイレや移乗時に立位保持が必要な利用者さんへの立位保持練習
介護量が最も多くなるのがトイレや移乗といった動作です。
「少しでも自分で立てられる力をつけてほしい」といったニーズは少なくありません。
そこで、免荷リフトを使用すれば、安全かつ負担の少ない立位保持の練習ができます。
状態に合わせて免荷の量を調整することで、効率的なリハビリが実施可能です。
また、オプションでつく縦手すりもトイレや玄関など日常生活の場面に即した立位保持練習に活用できます。
2.状態に合わせた質の高い歩行練習
介助が必要な歩行練習では利用者さんの状態に合わせて介助量や介助方法を調整する必要があり、スタッフの介護技術に歩行練習の質が大きく左右されます。
免荷リフトでは利用者さんの状態に合わせて免荷の量を調整でき、ハーネスにより無理に抱えあげられることも無いため、質の高い歩行練習ができます。
3.立位や歩行が困難な利用者さんの意欲向上のための活用
スタッフの介護でも立位や歩行が難しい利用者さんは、普段の生活でも車椅子やベッド上が主なため立位や歩行といった動作を諦めている場合も少なくありません。
そのような場合に、再び立位や歩行動作ができることは、喜びにつながり、リハビリや生活に対する意欲の向上が期待できます。
新しいオーバーヘッドフレームで利用者さん、家族、スタッフみんなの満足度を高めよう
免荷リフトを使用すれば、今まで立位や歩行が難しかった利用者さんのリハビリが進められます。
その結果、利用者さんの身体機能やADLの改善、廃用症候群の予防といった体の効果だけでなく、今までできなかったことができる喜びや意欲の向上といった心の効果も期待できます。
そのことは、家族やスタッフの介護量の減少につながることはもちろん、生き生きとした利用者さんを見ることへの喜びにつながります。
ぜひ、新しいオーバーヘッドフレームの利用を検討してみてはいかがでしょうか。
参考:
OG Wellnessカタログ 2020.(2020年2月23日引用)
Nachemson :The lumbar spine an orthopaedic challenge.Spine1:59-71,1976.
-
執筆者
-
整形外科クリニックや介護保険施設、訪問リハビリなどで理学療法士として従事してきました。
現在は地域包括ケアシステムを実践している法人で施設内のリハビリだけでなく、介護予防事業など地域活動にも積極的に参加しています。
医療と介護の垣根を超えて、誰にでもわかりやすい記事をお届けできればと思います。
保有資格:理学療法士、介護支援専門員、3学会合同呼吸療法認定士、認知症ケア専門士、介護福祉経営士2級