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クリニック・治療院 OGメディック

  • 岡田

    公開日: 2021年07月29日
  • リハビリと機器

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#作業療法

精神科作業療法で意外と使えるエルゴメーター!うつ病回復期の方への導入事例について説明します

運動には不安軽減効果があるといわれていますが、うつ病回復期の方へのエルゴメーター導入にも心身ともにさまざまなメリットがあります。
以下にエルゴメーター導入の実際について説明します。

精神科作業療法でのエルゴメーター導入事例

エルゴメーター導入の流れ

エルゴメーターは自転車の形をしたメジャーなリハビリ機器です。
まず、精神科で導入する際に大切なのは設置場所です。
視線が壁側を向く位置がおすすめですが、緑が見える窓側に設置するとよりリフレッシュ効果が高まります。
人と頻繁に視線が合う位置や騒音がある場所は落ち着かなくなったり注意散漫になったりするため適しません。
エルゴメーター開始にあたり、主治医の許可が必要です。
患者さんが運動を始められる心身の状態でないとエルゴメーター導入はできません。
合併症の有無なども重要なポイントです。
患者さんの体調を確認したうえでプログラムを導入
エルゴメーターを用いた治療プログラムの一例を紹介します。
まず、スタッフが血圧・脈拍の測定と簡単な問診を行い、患者さんが運動に適した体調かどうか確認します。
その上で、以下の流れに沿ってプログラムに参加していただきます。

1)セルフカルテの記載
 運動前の「気分」「疲労度」を五段階評価で丸をつける
2)全身のストレッチを行う
3)エルゴメーター走行
4)終了後、走行時間・距離・消費カロリーを記載
5)希望があれば他エクササイズに参加
6)運動後の「気分」「疲労度」を五段階で丸をつける
7)感想を記載

初日は負荷はかけずに、15分以内の走行を試してもらいます。
ペダルの回転数は50から60bpmを目安にします。
その上で利用した患者さんの感想(気分や疲労度、達成感)を聞き、継続するかどうかを決めていきます。
慣れてきた段階で患者さんの希望に沿って負荷や時間を徐々に増やします。

エルゴメーター導入のメリットと注意点

患者さんの状態に合わせて適正な負荷を勧めよう

エルゴメーター導入には下記のようなメリットがあります。

●患者さんに合わせて負荷、ペダル回転数、走行時間を設定できる
●一人で黙々と取り組めるため、男性や対人緊張の高い方でも取り組みやすい
●走行距離や消費カロリーが視覚化されているため、効果を体感しやすい
●うつ病により低下した心身機能の回復

また、エルゴメーター走行時に「運動負荷をかけること」よりも「運動による気分転換・不安の軽減」や「達成感の獲得」を重視します。
実際、運動後にすっきりした表情に変化する患者さんが多くみられます。
セルフカルテに運動前後の気分・疲労度を記載することにより、運動の効果をより意識できるようになります。
また、意外なことに運動後のほうが疲労度が低くなる患者さんが何人かみられました。
このことは、精神的な疲労が運動により改善されたためだと考えられます。
自ら運動することにより、症状を改善できたという経験は、自信の回復や症状のコントロールにつながります。
エルゴメーターを初めてこいだ患者さんが、継続することで手応えを感じ「退院後も続けてみようと思います」と語られたこともありました。

注意点は

●季節に応じて適切な気温を保ち、適宜水分摂取を勧める
●まれに負荷をかけることにこだわり過ぎてしまうケースがみられるため、ペダル回転数や心拍数を見ながら適正な負荷を勧める
●疲労を翌日に持ち越していないか注意を払う

ことなどが挙げられます。

うつ病の治療では「活動と休息のリズムを整える」ことが大切です。
100%の力で運動を頑張るのではなく、6〜7割くらいで取り組み、持続していくことが必要といえます。
うつ病の患者さんは無理をしてしまう傾向にありますが、そのときは自覚できず、後から疲れが押し寄せてしまうことがあります。
患者さんに「無理をしないように」とただ指摘するのではなく、治療上「いま頑張り過ぎないこと」の大切さを伝えた上で、頑張っているときに「焦っていないか」「運動の心地よさを感じられているか?」をセルフチェックしてもらいます。
このことは退院後の生活においても重要です。

機種はオージーウエルネス メデルゴEM-300がおすすめ!

メデルゴ EM-300

メデルゴのEM-300はシンプルな画面表示であり、操作も簡単な点がおすすめです。
患者さんは心身ともに疲労しています。
情報量の多い画面や、複雑な操作は患者さんの疲労や不全感のもとになります。
また、26kgと軽量であるため、使用場所を選びません。
個別作業療法から集団作業療法まで幅広く活用できます。
また、エルゴメーター単独でプログラムを運営するよりも、ストレッチやトレーニングなどと組み合わせるほうが、待ち時間の軽減や選択肢の増加につながるため利点が増します。
参加人数は小集団が理想的です。
理由は人数が多過ぎると参加時の緊張が増すためです。

エルゴメーターで患者さんに合わせた運動療法を行おう

エルゴメーターは、うつ病回復期の患者さんにとってメリットのある運動機器だと考えられます。
重要なのは、医師が回復の段階を見極め、運動が適切であると判断した上で導入し、本人の意欲を尊重することです。
また、患者さんが運動を頑張り過ぎずに適度に力を抜いて持続できるよう、作業療法士が協業していくことも大切です。

参考:
石井良和, 京極真,他: 精神領域の作業療法 第2版. 中央法規, 東京, 2016.
青木邦男: 運動の不安軽減効果及びうつ軽減効果に関する文献研究. 山口県立大学 大学院論集 第3号, 2002.
オージーウエルネス 有酸素トレーニング機器 メデルゴシリーズ EM-300/350/400/405.(2021年6月20日引用)
自転車エルゴメーターを使いこなそう!理学療法士がポイントを伝授します.(2021年6月20日引用)
リハビリにおけるエルゴメーターの使い方・用途とは?おすすめの機器や価格も紹介.(2021年6月20日引用)

  • 執筆者

    岡田

  • 初めまして、岡田と申します。
    作業療法士の資格を所得した後、精神科単科病院、就労継続支援B型事業所、精神障害者グループホーム等で勤務してきました。
    読んでくださる方々にとって「わかりやすく、気軽に試しやすい」内容の記事をお届けできるよう心がけています。
    保有資格:作業療法士 サービス管理責任者

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