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筋力強化だけじゃない!サンディングボードの効果、活用方法

サンディングボードは筋力強化目的の運動のほか、麻痺による上肢機能の改善にも利用でき、病院などで広く取り入れられています。
座位でも立位でも利用でき、作業療法での上肢や体幹機能の向上に欠かせない治療器具の一つです。

サンディングボードの効果的活用法

サンディングボードとは

サンディングとは、もともとは「木材などの資材に紙やすりをかけて、表面を滑らかにする作業」のことを指す言葉です。
サンディングボードの表面を滑らすように大きく上肢を動かすことで、関節可動域の拡大や、筋力の強化への効果が期待されます。
作業療法では、上肢機能の向上のための訓練道具として、病院などで広く扱われています。

Sanding やすりなどによる研磨

1)OG Wellnessで取り扱う「昇降式サンディングボード」について

ここでは、「昇降式サンディングボード」の特徴をご説明します。

サンディングボードの特徴 メリット
天板の昇降範囲が670 ~ 820mm 天板の高さが動かせるので、座位でも立位でも、ちょうどいい高さに合わせて利用できる。
天板傾斜範囲は0 ~ 70°の無段階調整が可能 70°まで傾斜を調整できることで、訓練負荷が段階づけやすい
さらに傾斜部にはメモリがついているため、患者さんの変化を評価しやすい。
作業板は取り外し可能 作業板をつければ、サンディング運動による筋力増強訓練ができる。
天板はメラミン化粧板なので、作業板を取り外せば、傷や汚れが付きにくく、ワイピングにも最適。
アジャスターがついている 患者さんに合わせて、場所を移動しやすい
自主トレーニングとして使う場合に、訓練道具をまとめておきたいときなどに移動しやすいと便利。

角度調節や高さ調節ができるサンディングボード

2)サンディングボードセットについて

サンディングをより効果的に行うためには、両手用握り変換式サンダーとMP用サンダーがセットになった「サンディングボードセット」が欠かせません。

●両手用握り変換式サンダー

両上肢での筋力増強訓練ができます。
ブロック台の握りの位置を変えることで、さまざまな動きを引き出せます。
ブロックの上面に握りを取り付けると、前腕中間位での筋力強化が可能です。
ブロックの側面に握りを取り付けると、前腕回内位での筋力強化が可能です。
さらに、ブロック台中央の支柱に重錘を取り付けることにより、より効果的に筋力を強化できます。
重錘は0.5㎏、1.0㎏、2.0㎏の3種類が用意されています。
サンディング用のサンドペーパーの目の粗さは3種類あり、段階づけて利用できます。
重錘の重さや、サンドペーパーの種類を調整することで、負荷を段階づけて上げていけます。

●MP用サンダー

片手でのサンディング運動が行えます。
手指、特にMP関節の屈曲改善に利用でき、同時に手関節の背屈改善も期待できます。
MP用サンダーは手指固定ベルトがあるので、手の位置がずれずに動かせます。
手指固定ベルトはマジックテープ式なので、麻痺があっても取り付けやすい構造になっているのも便利です。

筋力増強訓練としての活用方法

サンディングはサンドペーパーの目と木面の摩擦抵抗を利用し、筋力の強化を図るものです。
ここに、重錘を取り付けることで、さらに運動強度を高めることができます
サンディングする動きにより、肩まわりの固定性の向上上肢筋力の強化を図り、上肢機能の改善につなげます。
立位で行うことで、体幹や下肢の筋力を強化し、体力をつけることも期待できます。

サンディング 筋力の強化/ワイピング 柔軟性の向上

1)運動の目安

基本的な使い方としては、ブロック台にサンドペーパーを取り付け、サンディング運動を行います。
運動方向は、肩関節の屈曲の動きである前方もしくは上方に動かします。
運動は1セット10回とし、3セット程度を目安に取り入れていただくとよいでしょう。
3セット行っても疲労を感じない場合は、運動負荷を上げてみるとよいでしょう。

2)運動負荷の段階づけ

  • ●サンドペーパーを細目のものから、粗目のものへ換える
  • ●重錘で負荷をかける→さらに重錘の重さを重くする
  • ●傾斜角度を上げる
  • ●(座位での運動が負担なく行える場合)作業姿勢を座位から立位へ変える

などの種類があります。
患者さんの身体状況に合わせて、それぞれの段階づけを行いながら(時に組み合わせながら)、効果的な運動を取り入れてください。

麻痺手の上肢機能改善訓練としての活用法

サンディングボードは、脳卒中などの疾患により麻痺症状を呈した患者さんでも、活用できます。
それは「ワイピング」です。
ワイピングとは、折りたたんだタオルの上に麻痺のある手をおいて、摩擦の少ない環境下で上肢を動かす訓練方法です。
肩甲帯や上肢の運動の促通や、肩関節周囲筋群の柔軟性の向上に効果的です。
サンディングボードの傾斜角度を上げていき、上方かつ前方へリーチを行うことで、体幹の伸展や骨盤の前傾を促せ、座位姿勢の保持に必要な筋力が強化されます。
それにより、立ち上がり動作が行いやすくなったり、座位や立位の姿勢が改善したりする効果にもつながります。
ワイピングは、運動方法を変えていくことで、麻痺の程度に合わせて難易度を調整できます。

1)基本的な運動方向、回数

基本的な運動回数は1セット10回とします。
しかし、麻痺の程度によっては、代償動作の出現にも注意が必要です。
回数が増すごとに疲労感や代償動作が出現する場合は、1セット5回としてもいいでしょう。
運動方向は、肩関節の屈曲方向に動かしたいときは前方へ、水平外転方向に動かしたいときには左右方向に動かします。

●ポイント!患者さんに指導するときの伝え方

これらのことを、患者さんに伝えながら、ワイピングを行うといいでしょう。

  1. 1.運動時は肘をしっかりと伸ばす
  2. 2.手を前に伸ばすとき(肩関節の屈曲の動き)は、できたら体もしっかりと前傾する
  3. 3.勢いをつけると痛みや代償動作が出やすいこともあるので、ゆっくりと痛みの出ない範囲で動かす

●ポイント!代償動作とは?

代償動作とは、麻痺などによりある運動ができなくなったときに、ほかの筋肉の働きによってその運動を補うことを指します。
麻痺側上肢の運動時は、肩甲骨の挙上、肩関節の外転、肘関節の屈曲、体幹の側屈などが出現しやすいです。
代償動作を使った運動パターンを学習してしまうと、姿勢の崩れや、肩こり・首の痛みの出現にもつながりやすくなります。
正しい運動パターンを学習できるよう、初めのうちは運動を介助しながら行ってもよいでしょう。
また、自主トレーニングとして一人でワイピングをするときには、運動方向にお手玉を置き、それを押すように指示するとわかりやすいです。

2)麻痺別の運動パターン

●麻痺が重度の場合

麻痺が重度とは、麻痺側の上肢の動きがほとんど出現しない、もしくは共同運動が一部出現する状態のことを指します。
タオルの上に麻痺手を置き、その上から非麻痺手を重ねます。
そして、非麻痺側上肢の動きを主体としながら、タオルを前後左右の方向にそれぞれ動かします。
麻痺側上肢のみの運動は難しくても、ワイピングの動きにより体幹の支持性を向上させたり、肩甲帯周囲の筋収縮を引き出したりする効果があります。
早期から積極的に麻痺側上肢を動かす機会を設けることは、機能回復において大切です。

●麻痺が中等度の場合

麻痺が中等度とは、麻痺側上肢の随意運動がみられるが、十分な共同運動が可能、もしくは分離運動が一部可能な状態のことを指します。
初めは傾斜をつけない状態で、麻痺手でワイピングを行います。
代償動作の出現に気をつけながら、セット回数を増やしたり、サンディングボードの傾斜角度を上げたりして、訓練難易度を調節します。
サンディングボードに傾斜をつけることで、肩関節の屈曲範囲を拡大できます。
それにより、肩関節の可動性の向上を促せます。

●麻痺が軽度の場合

麻痺が軽度とは、分離運動が全般的もしくは十分に可能な状態を指します。
軽度の場合でも、上肢挙上した際に負荷のかかる運動をすると、肩の痛みが出やすい方などには、サンディングよりも負荷が少ないワイピングのほうが適している場合もあります。
また、立位が可能な方は立位で行うと、より体幹の持続的な伸展が促され、姿勢の改善にもつながります。

活躍の場は病院がメイン!しかし、ほかの施設でも活用できる

サンディングボードは、急性期や回復期病院の作業療法場面で広く利用されています。
しかし、病院でのリハビリだけにとどまらず、デイケアや介護老人保健施設など高齢者施設でも活用できます。
サンディングボードを活用することで、高齢の患者さんにも体力の維持や向上、肩の柔軟性の向上などの多くの効果が得られます。
ぜひ、患者さんのリハビリに活用してみてください。

  • 執筆者

    もり あさな

  • 作業療法士資格取得後、回復期病院や療養病院に勤務しました。結婚・出産を機に福祉の視点も学びたいと思い、社会福祉士資格を取得しました。
    作業療法士としての知識が、在宅で介護をされる方や福祉施設等で働く方、健康に関心がある方のお役に立てればと思い、ライターを始めました。
    現在は作業療法士として小児分野の施設で働きつつ、在宅でのライティングを行っています。医療・福祉の視点や知識を活かし、わかりやすく、かつ生活に役立つ記事を作成できるよう、心掛けております。

    保有資格:作業療法士、社会福祉士

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