リハビリ室に必ず導入したい移動式の姿勢鏡 視覚情報のフィードバックで効果的な訓練を
日々のリハビリ業務で、姿勢鏡を有効活用できているでしょうか?
姿勢鏡を積極的に使っているスタッフもいれば、そうでないスタッフもいると思います。
今回は、リハビリ場面で姿勢鏡を使う目的やメリット、実際の使用方法についてお伝えしていきます。
リハビリ場面で移動式の姿勢鏡を使う目的は?
ヨガやダンスの教室などでは、スタジオが鏡張りになっていて、都度自分の姿勢を確認しながら運動を行っています。
また、アスリートなどが鏡を見ながら何度もフォームを確認し、自分の体に覚えさせていく姿はテレビなどでも目にするでしょう。
これは、自分の体の動きに対する「視覚的なフィードバック」を使い、体の動きを適切に補正していくという考え方に基づいています。
鏡があると姿勢や運動を修正しやすくなることは感覚的に実感できますが、これは運動学習の方法としておすすめできるものです。
リハビリ場面では、患者さんが体の動きの知覚にかかわる感覚(体性感覚)が乏しくなっていることも多いです。
そのため、視覚情報を使って効果的にフィードバックしていくことで奏功するケースがあるのです。
姿勢保持や動作の練習に!移動式姿勢鏡の使い方
姿勢鏡はさまざまなシチュエーションで用いることができます。
次に、リハビリを展開する病院や施設では、どのように姿勢鏡を活用していけるのか、その具体例をまとめていきます。
●立位・座位保持の練習で、体の正中位を確認する
体幹を側屈させて安定を保っている患者さんや、脳卒中による麻痺・感覚障害で体が傾いている患者さんには、姿勢鏡を使ったリハビリは効果的でしょう。
体の中心がどこにあるかを学習してもらうために、鏡を使って姿勢を確認・修正していきます。
実際に体の位置を他動的に修正し、体性感覚からアプローチすることもできますが、視覚情報の併用が有用となる症例も少なくありません。
●平行棒の近くに設置し、歩容を確認する
平行棒の前方や側方に姿勢鏡を設置すれば、そのなかを歩く患者さんに、鏡を見ながら歩容を確認してもらうことも可能です。
左右どちらかに体が傾いていないか、前傾姿勢になっていないかなど、視覚的に確認することができます。
姿勢や歩容に関しては言語的にフィードバックすることも可能ですが、やはり姿勢鏡を見てもらうと理解を促しやすいでしょう。
●姿勢鏡を見ながら、バランス機能訓練を行う
姿勢鏡は、バランス機能訓練にも役立てることができます。
平行棒の間に立ち、棒につかまりながら鏡を見て立位をとります。
患者さんの状態やリハビリの目的に応じて、片足立ちの練習をしたり、体を動かして重心移動の練習をすることができます。
さらにレベルアップをするときには、平行棒の間に柔らかな素材でできたバランスパッドを敷くことをおすすめします。
その上に立ってバランス訓練を行うと、より負荷が上がりますが、姿勢鏡があればバランスをとりやすくなる患者さんも少なくありません。
リハビリ場面では、このようにさまざまな用途で姿勢鏡を用いることができます。
キャスター付きの「移動式姿勢鏡」だと平行棒の近くに置いたり、プラットホームの近くに設置したりと融通がきくので、リハビリ室にあると大変重宝します。
詳細はオージーウエルネス「移動式姿勢鏡」で紹介しています。
さらにスキルアップ!リハビリで使うフィードバックの種類や量を考える
先にご紹介したように、姿勢鏡を用いた視覚的フィードバックは患者さんにベネフィットをもたらします。
ただ、運動学習におけるフィードバックでは、種類や量などに配慮すると、より効果的に活用することができます。
「フィードバック」とひとくくりにせず、その要素を細かく考えていくことでスキルアップにつながるでしょう。
●鏡・ビデオ・言語…フィードバックの種類を使い分ける!
姿勢鏡を使ったフィードバックは視空間情報を利用したものに分類されます。
リハビリ場面では、こうした視覚的なフィードバックが奏功する例は多いですが、フィードバックにはさまざまな種類があります。
たとえば、ビデオで記録したものを見ながら振り返るということも可能ですし、「先ほどの傾きが10だとしたら、いまは6くらい」など言語的にフィードバックしていくこともできます。
目的や患者さんの特性に応じて、フィードバックの種類を使い分けていくことをおすすめします。
●どのタイミングでフィードバックを与えるのか?
姿勢鏡を使ったフィードバックでは、運動と同時にフィードバックを与えることから、「同時的フィードバック」と呼ばれます。
これは、ビデオ・データなどであとから振り返る場合とは区別されます。
あとからビデオやデータで振り返ることによって、認知的なレベルで運動を修正していけることもあれば、その場で運動を見直すことが効果的な場合もあります。
「フィードバック」とひとくくりにされることも多いですが、どのようなタイミングで情報を提示するのかについても考慮すると良いでしょう。
●フィードバックは単純に与えれば良いわけではない
患者さんに姿勢や運動に関するフィードバックを与える場合、その量についても考える必要があります。
たとえば、鏡を使ったフィードバックをずっと続けていると、鏡への依存が強まってしまう可能性もゼロではありません。
最初のうちは姿勢鏡で姿勢・運動を修正していき、定着すれば徐々にフィードバックの量や頻度を減らしてみるのも効果的でしょう。
フィードバックは効果的なリハビリのためには欠かせないものですが、ただ与えれば良いというわけではなく、実生活を見据えて調整していくことが望ましいのです。
まとめ
リハビリ室にはさまざまな備品がありますが、「姿勢鏡」を使った視覚的なフィードバックはぜひ活用していきたいところです。
これまでなんとなく姿勢の確認用に使っていたというスタッフは、ぜひほかの使い方も試してみてください。
また、なぜ姿勢鏡が有効なのか、どのくらいの頻度で使用していけば良いのかなど、フィードバックの質的な側面に目を向けることは大切です。
姿勢鏡を含め、効果的なフィードバックに関する知識を身につければ、さらなるスキルアップにつながるでしょう。