整形外科・リハビリ病院が抱える課題(ヒト・モノ・カネ)をサポート

  • Facebook

クリニック・治療院 OGメディック

グローインペインがとりきれない!?治療のポイントと予防方法について解説します!

グローインペインは、サッカー選手などによくみられる病態で、股関節を曲げたときの痛みが特徴的です。
基本的には股関節周囲の筋肉の柔軟性不足や、患部外の筋力不足により股関節に負担が集中することで痛みが生じます。
今回は、グローインペイン治療において注目すべきポイントと、その予防方法について解説します。

その痛み、股関節以外にも原因があった!?

筋肉は筋膜で覆われており、そして筋膜は全身につながっています。
たとえば、今着ている上着の裾を左手で下にピンと張り、右手をバンザイしようとすると、服がつれて手があがりにくくなります。
これは右手に問題があるわけではなく、裾が引っ張られていることが影響して、右手が挙上しづらくなっているのです。
これと同様に、肩があがりにくいという患者さんを目の当たりにしたとき、どうしても肩に原因があると考えがちです。
しかし実際にはそうではなく、本当の原因はおなかの硬さによる影響だった、ということがあります。
このように、ひとつの部位に負担がかかることで、影響を受ける範囲(ライン)のことをアナトミートレイン(筋筋膜経線=筋膜のつながり)といいます。
全身には、さまざまな路線(筋膜)が縦横無尽に走っており、これらでバランスを保っているのです。

●広背筋とハムストリングスに着目

アナトミートレインの考え方では、股関節自体に問題がなくても、背筋や股関節後面などの柔軟性が低下することにより、股関節に影響を及ぼす可能性があります。
このため、股関節を診療する場合には「股関節に乗り入れる路線の状態がどうか」、つまり全身に問題がないかも検証しなければなりません
代表的な評価例として、以下に広背筋とハムストリングスの柔軟性チェック方法についてまとめます。

●広背筋テスト

広背筋の柔軟性をチェックする方法として、いわゆる広背筋テストがあります。
検査方法は以下のとおりです。

  1. 1)壁に寄りかかった状態(背中と頭が壁につくように)で座位をとります。
  2. 2)手のひらを上に向けて両腕を伸ばし(前へならえのような状態、このとき肩関節は90°屈曲)、手のひらを顔に近づけるように肘から下を曲げていく(90°屈曲)
  3. 3)2)の姿勢のまま肩関節を内転(内側にすぼめるようなイメージ)し、両肘と手の小指側をくっつけます。
  4. 4)両肘と手の小指側が離れないようにしながら上にあげていきます(肩関節屈曲角度を増していく)。

肘関節の高さが鼻先を超えなければ、広背筋の柔軟性が低下していると考えられます。

●ハムストリングステスト

ハムストリングスの柔軟性は、代表的なSLRテストをタオルを用いて行います。

  1. 1)あお向けで寝ます。
  2. 2)両手でタオルの両端を持ちます。
  3. 3)検査する側の足裏にタオルの真ん中をかけ、膝を伸ばします。
    このとき反対側の膝が曲がらないように注意します。
  4. 4)タオルを引っ張りながら足全体を上に持ち上げます。

持ち上げた足の角度が70°を超えなければ、ハムストリングスの柔軟性が低下していると考えられます。

これらのテストを実施し陽性となった場合、股関節の症状はこれらの柔軟性が低下していることによって、引き起こされている可能性が考えられます。
またこれらのテストの行程はそのまま治療にもなり、継続して実施することで柔軟性の改善へとつながります。
秒数としては30秒以上を目安に、2~3セットを一日複数回実施することが望ましいです。
無理のない程度に実施してみてはいかがでしょうか。

●股関節自体に問題がある場合もある!

股関節の形態的問題や後遺症、負担集中などでもグローインペインを発症することがあります。

1)先天性の場合

股関節疾患のなかに、股関節インピンジメント(Femoroacetabular impingement/以下FAI)という病態があります。
これは、生まれつき股関節の受け皿や大腿骨の形状に異常があり、股関節を動かしたときにそれらが衝突することで痛みが生じる病態です。
FAIの場合は、受け皿と大腿骨がぶつからないような動作を獲得する必要があります。
しかしこれはあくまでも対処療法であり、根治を目指すには手術しかありません。
FAIはレントゲン検査で診断できる病態なので、股関節痛がある場合は整形外科にて検査してもらうことをオススメします。

2)ケガの後遺症の場合

股関節のみならず、関節の中で炎症が起きると滑膜(かつまく)が産生されます。
この滑膜は炎症を沈静化させるために必要なものです。
しかし、炎症が沈静化するまえに無理してプレーをしていたり、大きなケガのあとなどには、この滑膜が過剰に産生されてしまいます。
過剰にできた滑膜は非常にもろく、なにかのきっかけで切れたり傷ついたりすると、痛みが生じます。
このため、ケガをした場合の適切な処置が、グローインペインを予防することにつながるのです。

3)オーバーワークの場合

股関節に過負荷が生じている場合にも、グローインペインを引き起こす可能性があります。
股関節周囲はボリュームのある筋肉が多く存在しています。
逆に、それだけ筋肉に依存しなければならないほど、股関節は「負担が集中する関節」なのです。
そのため、筋肉が疲労した状態でプレーを続けていると、股関節にも大きく影響することになります。
オーバーワークは避け、適度な休養をとることも障害予防の重要なポイントといえます。

グローインペイン治療におけるポイントは、運動パターンの修正!

グローインペイン治療のポイントは、運動の質と柔軟性を評価することです。
また、注意点を選手に理解してもらうことも必要です。
以下では治療におけるポイントを詳しく解説していきます。

●運動の質を評価!クロスモーションできていますか?

グローインペインを抱えている患者さんは、ボールを蹴る動作で全身の筋力をバランス良く使えていない傾向にあります。
たとえば、腕を振り勢いをつけてボールを蹴ろうとしても、上半身の運動が下半身の運動に連動されず、結果として下半身の運動のみで蹴る動作をしている場合などです。
下半身の筋力(運動)に依存して蹴る動作を繰り返した結果、股関節痛が生じることがあります。
この場合、上半身の腕の振りを利用すれば、下半身の筋力発揮をもう少し抑えても蹴ることができるのです。
このように、上半身と下半身を連動させて動かす動きクロスモーションと呼び、これを習得するためのトレーニングが治療のメインになります。
「右足でボールを思いっきり蹴るとき、上半身は右側に捻る」
こうしたクロスモーションの習得が、股関節への負担を軽減し、運動の質をあげるためには必要です。

●足関節背屈可動域の獲得が重要!?

足関節背屈可動域が低下すると、足関節に対し脛(すね)の骨を前に傾けることができなくなります。
脛の骨を前に傾けられないと、重心を前に動かすことができません。
そうなると、無意識に股関節を過剰に動かし、重心を動かす動作戦略をとるようになります。
この動作を繰り返し行なうと、股関節に過負荷が生じ、グローインペインが引き起こされる可能性があります。
このため、足関節の柔軟性、特に腓腹筋(ひふくきん)やヒラメ筋などの後面筋(ふくらはぎ)の柔軟性を獲得することが重要になってきます。
腓腹筋、ヒラメ筋の柔軟性獲得には、以下のような踏み台を使ったストレッチがオススメです。

  1. 1)雑誌などを束ねて、10cm程度の段差をつくります。
  2. 2)片方の足の母指球(親指にあるふくらみ)までを段差にかけ、かかとは床につけます。
  3. 3)腓腹筋の伸長感が得られるまで、つま先に体重をかけていきます。

このとき、お尻を後ろに突き出さないように注意しましょう。
時間は最低30秒、一度に2~3セットを一日に複数回実施すると良いでしょう。
足関節柔軟性の維持は、グローインペイン発症予防にもつながります。
このため、可能であれば毎日実施することをオススメします。

●選手に理解してほしい予防のポイントは、基本的なこと!

グローインペインは、繰り返しやすい病態です。
このため、予防のポイントを正しく理解してもらうことが、治療を進めていくうえでとても重要になります。
予防のためのポイントを2つあげます。

1)痛みがでたら無理せず中断すること

痛みがでても無理をしてゲームや練習に参加する選手は多く、症状を軽く考えてしまっているケースもあります。
痛みがある状態で運動を続けると、症状をさらに悪化させる原因にもなります。
痛みがある場合は無理をせず、後述するトレーニングを実施することをオススメします。

2)ウォーミングアップでは、特に上半身と下半身の連動性を意識すること

グローインペインにおけるクロスモーションの重要性は上述したとおりです。
この動きを、いかなるときも意識して身体を動かすことが大切です。
特にウォーミングアップでの身体の使い方はプレーに直結します。
トップ選手のウォーミングアップにおいても、このクロスモーションは多くとり入れられており、競技パフォーマンスを高めています。

グローインペイン予防にオススメのトレーニング2選!

グローインペイン予防に有効なトレーニングを、股関節と複合運動に分けてまとめました。

●股関節

運動の目的は、鼠径部(そけいぶ)の筋肉を緩めることです。
股関節周囲筋の緊張が高くなっていると、それだけで血流が滞り、筋肉の柔軟性が低下してしまいます。
ターゲットとなる筋肉は、腸腰筋(ちょうようきん)と恥骨筋(ちこつきん)、長内転筋(ちょうないてんきん)です。
以下に柔軟性向上のトレーニングをご紹介します。

  1. 1)四つ這いになります。
  2. 2)片方の股関節を、膝を曲げたまま背中の面と平行になるまで持ち上げます。
  3. 3)膝を曲げたまま、股関節を中心に時計回り、反時計回りにグルグルと10周ずつ回します。

このとき、できるだけ大きく回すことがポイントです。
四つばいの方が脱力して実施できますが、立った姿勢でも可能です。

●上下肢の複合運動

股関節と腕や体幹の動きを連動させ、股関節への負担集中を予防することが目的となります。

  1. 1)肩幅に足を広げて立ちます。
  2. 2)右の股関節を後ろ方向に振り、同時に左の上肢をバンザイします。
    このとき左腕から、右の足へと伸びる1本線をイメージで行うと良いでしょう。
  3. 3)左手は振り下ろし、右足を前に振り出しておヘソの前でつま先と指先をタッチさせます。
    つま先と指先をタッチしたら、ふたたび2)の姿勢に戻ります。
  4. 4)これを10回繰り返し、反対も同様に行います。

これらの運動を実施することで、股関節筋への負担の集中を防ぐことができます。

まとめ

グローインペインにおける治療の考え方、具体的な治療方法についてまとめました。
症状はあくまでも現象であり、その原因となる部分はほかの場所にあることが多いため、こうした臨床的視点はどの疾患の治療においても必要です。
患部にとらわれず、適切な治療が施せるよう、ぜひ意識してみてください。

参考:
日本整形外科学会 鼠径部痛症候群(2018年3月11日引用)

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。

内容に問題なければ、下記の「コメントを送信する」ボタンを押してください。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)