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長引く腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)に困っていませんか?効果的な治療方法と、予防法をお伝えします

ランナーズニーとも呼ばれる腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)。
医療機関で痛みの軽減を図っても、いざ走ってみると「やっぱり痛みがでてしまった」という患者さんを経験される方は、非常に多いと思います。
今回は、腸脛靭帯炎の効果的な治療方法と、再発を予防する対策についてお伝えします。

物理療法と運動療法を併用することで治療効果アップ!

腸脛靭帯炎の治療は、超音波療法や電気刺激療法などの物理療法と、ストレッチなどの運動療法を併用することで、治療効果を高めることができます。

●超音波や電気刺激療法は、こんなにもメリットがある!

1)超音波

超音波刺激は、組織の修復や腫脹(しゅちょう)を軽減させる働きがあります。
この効果により急性期の炎症治癒を促進させ、患部の運動療法を早期に開始することができます。
また超音波刺激は、周波数を調整することで身体の深部まで刺激を加えることができるため、ストレッチやリラクセーションなどの徒手療法では介入が難しい部位でも、治療をすることが可能です。
また、超音波は筋攣縮(きんれんしゅく)を抑制する効果があります。
筋攣縮(こむら返り)がおこると、筋肉は収縮状態を強いられ、伸び縮みする機能を失います。
また、筋肉の収縮により血管が圧迫されることで、二次的に筋肉内の血流障害が生じます。
このため筋攣縮を放置してしまうと局所循環が悪くなり、組織修復が遅延化する恐れがあります。
つまり筋攣縮を抑える効果のある超音波は、組織修復を促進するために非常に有用な機器なのです。
超音波を照射する部位は、患部である膝関節周囲を中心に実施すると効果的です。
時間はおおよそ10分です。

2)電気刺激療法

電気刺激療法は、一般的に鎮痛や筋力強化の目的で使用されています。
さらに組織修復を促進する効果として、このほかにも報告がなされています。
Annexら(1998)によると、血管新生は組織損傷からの再生に非常に重要であり、そのメカニズムには、血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)や肝細胞増殖因子などの多くの血管新生因子が関与していると報告しています。
これらのことから、組織修復を促進する目的として、電気刺激療法が有効であると考えられます。
照射部位としては、膝蓋骨に近い部分に限局して照射するのがよいでしょう。
時間はおおよそ10分です。

●股関節周りの柔軟性獲得がカギ!

患部周囲に関しては、上述した物理療法を併用することにより、炎症を抑制することができます。
患部治療と並行して、腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)に付着する大殿筋(だいでんきん)や大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)、そのほかに大腿四頭筋(だいたいしとうきん)の柔軟性を獲得することも重要です。
これは、腸脛靭帯の攣縮が大殿筋や大腿筋膜張筋に波及することで、股関節周囲筋にも攣縮を誘発するためです。
大殿筋や大腿筋膜張筋の柔軟性が低下すると、深層外旋六筋や小殿筋などのいわゆるインナーマッスルの筋力発揮効率が低下します。
このため、テニスボールや、体の痛いところに押し当てて転がすグリッドフォームローラーなどを使い、各筋に対しストレッチをすることで柔軟性を維持、向上させることが重要です。

再発予防のカギは患部以外のトレーニング!?

患部に対するアプローチ以外では、患者さんへの教育として患部外トレーニングも必要です。
以下では、患部外トレーニングの2つのポイントをお伝えしていきます。

●足関節の背屈可動域拡大はマスト!

ご存じのとおり、足関節の背屈可動域とは、足首を足の甲のほうに曲げられる範囲のことを指します。
これが低下することににより、過度な膝関節の動きを必要とするフォームになることや、接地時にKnee in-Toe out(ニーイン・トゥーアウト:膝関節が内側にはいり、足がつま先を向いた状態)となります。
これらのような誤った身体の使い方により、腸脛靭帯炎を発症するリスクが高まります。
特に、ふくらはぎにある筋(長母指屈筋、後脛骨筋、ヒラメ筋、腓腹筋)の柔軟性は、足関節背屈可動域拡大に大きく関与します。
簡易的な自主練習方法として、段差に足をかけるストレッチをご紹介します。

  1. 1) 雑誌などを積みかさねて、5cmほどの段差をつくります。
  2. 2) 足の母趾球(親指の付け根にある膨らんだ部分)を段差にかけ、踵(かかと)は床につけます。
  3. 3) 膝は伸ばしたまま、重心を母趾球側にかけていきます。
  4. 4) ふくらはぎ(腓腹筋)の伸長感を感じたら、30秒程キープします。
  5. 5) 1回に2~3セットを、1日3回程度実施します。

一般的なアキレス腱伸ばしよりも効率よく、上記の筋肉を伸長することができます。
この方法によって足関節背屈可動域を拡大することで、膝関節に加わる負担を軽減することが期待できます。

●体幹と中殿筋を連結させる!

股関節外転作用のある中殿筋は、腸脛靭帯と力学的に走行が一致しています。
このため、中殿筋の筋力強化をすることで、腸脛靭帯に加わる負荷を軽減する効果が期待できます。
しかし、中殿筋単独の筋力強化を実施しても、体幹の安定性が得られていないとその筋力を十分に発揮することができません。
つまり、体幹と中殿筋を連結させ、筋力を発揮させる能力が必要になるのです。
ここでは筆者がオススメする方法をご紹介します。

  1. 1) 横向きに寝ます。
  2. 2) 下側の肘を曲げ、前腕と足部で身体を支えて腰を持ち上げます。
    このとき、頭から足先まで一直線になるように意識します。
  3. 3) 腰を持ち上げた状態のまま、上の膝を伸ばしてこぶし3つ分ほど持ち上げます。
  4. 4) 持ち上げた足を時計回り、反時計回りに10周回します。
  5. 5) 終わったら反対向きに寝て、2~4を繰り返します。

この方法なら、体幹筋と中殿筋の両方に刺激を加えることができ、これらを同時に鍛えることで、腸脛靭帯に加わる負担を軽減することが期待できます。

自主トレーニングでは姿勢の崩れに注意しよう!

医療機関での外来リハビリテーションに加え、自宅での自主トレーニングを指導するときに特に注意したいのが動作を行う際の姿勢です。

●中殿筋のトレーニングは、代償動作を取りやすい!

前述した中殿筋トレーニングでは、骨盤の傾きに注意が必要です。
骨盤の傾きは、上下、前後にも生じます。
骨盤が傾くことで中殿筋ではなく、大腿筋膜張筋や大腿四頭筋のトレーニングになってしまいます。
効果的に中殿筋のトレーニングを進めるためにも、骨盤の傾きに注意しながら実施することが重要です。
理想的な骨盤の位置は、前述した1)〜4)のすべての状態において、あらゆる動きのなかでも骨盤が真っすぐに保たれている状態です。
骨盤が真っすぐになっているかの目安は、上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく)の位置です。
最初のうちは、両方の上前腸骨棘にシールなどをつけて目印にすると良いでしょう。
鏡を見ながらトレーニングを実施し、シールの傾きをチェックすることで、骨盤のずれを把握することができます。

●日常生活で、股関節を大きく使うことを意識しよう!

日常生活のなかで、股関節を意識して動いてもらうことも重要です。
いくらリハビリテーションで中殿筋や体幹を意識しても、その動きが日常生活のなかで反映させなければ意味がありません。
特に股関節の可動域を意識して生活することは、理学療法士側からアドバイスをしなければ、患者さんは意識してくれません。
たとえば洗濯物をカゴから取り出すとき。
股関節を曲げるように意識しながら取る動作と、無意識でカゴからとる動作では得られる効果が変わってきます。
普段の生活のなかでも股関節の運動を意識することで、競技の際にも優れたパフォーマンスを発揮できるといっても過言ではありません。

まとめ

今回は腸脛靭帯炎についての治療、自主トレーニングでの注意点をまとめました。
腸脛靭帯に対する負荷を軽減することはもちろんですが、特に重要なのは、再発予防です。
筆者の経験上、慢性的に繰り返している腸脛靭帯炎は、必ずといっていいほど患部外に問題を抱えています。
患部の問題のみにとらわれずに、原因をしっかりと追求することで、リハビリの質を高めていきましょう。

参考:
Annex BH, Torgan CE, Lin P, et al:Induction and maintenance of increased VEGF protein by chronic motor nerve stimulation in skeletal muscle. Am J Physiol, 1998;274:860〜867.

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