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脳卒中の上肢機能評価と訓練の実際|リハビリの質を高めるためのコツを伝授します!

脳卒中の方における上肢機能の回復度合いは、日常生活に大きな影響を及ぼします。
上肢の機能を最大限に引き出すことで、その後の生活が変わってくるため、リハビリ職が担う役割は大きいです。
今回は、リハビリですぐに使える上肢機能評価・訓練の考え方やコツについてご紹介していきます。
普段の評価・介入をワンランク上のものにするため、ぜひ参考にしてみてください。

これだけはマスト!脳卒中における上肢機能評価のポイント

脳卒中の方は、発症を起点として上肢機能の状態が変化していくため、そうした変化を追うためにも「評価」は欠かせません。
次にご紹介するポイントをおさえて、できるだけ質の高い評価を実践できるようにしていきましょう。

●反射・筋緊張・関節可動域はチェックしておく

脳卒中の方の上肢機能を評価するにあたり、まず確認しておきたい3つの評価が反射・筋緊張・関節可動域です。
MRIなどが発達してきたため、脳損傷の部位も特定しやすくなりましたが、脳卒中には特徴的ともいえる病的反射については確認しておきたいです。
また、脳卒中の方は筋緊張が亢進することはよく知られていますが、単に緊張が「高い」「低い」の2択で記録するのではなく、それがどの程度なのかを記録しておくことをおすすめします。
MAS(modified Ashworth scale)では、可動域の2分の1で引っかかりがある、全可動域で筋緊張が高いなど、段階に沿った記録ができるというメリットがあります。
関節可動域に関しては、筋緊張の影響などによって制限が生じる場合も多いため、痛みに配慮しながら測定しておくと良いでしょう。

●脳卒中による片麻痺の機能はどう評価する?

脳卒中による片麻痺の機能評価には、ブルンストロームステージ(Brunnstrom stage)がよく用いられます。
上肢・手指・下肢に分けて、StageⅠ(随意運動なし)〜StageⅥ(分離運動・協調運動が可能)までの6段階で評価していきます。
ブルンストロームステージの使用は非常に簡便であり、脳卒中の治療ガイドラインでもグレードB(行うよう勧められる)に分類されるなど、評価スケールとしては有用性が確立されています。
しかし、Stageごとの運動について、「できる」「できない」という基準が曖昧な側面もあり、検査者によって評価が分かれてしまうことはしばしば経験します。
改良された片麻痺機能テストである、「上田式片麻痺機能テスト(12段階片麻痺機能検査)」を使うことで、実際の患者さんの状態を正しく反映した結果が得られやすいです。
ブルンストロームステージよりは若干の時間を要するかもしれませんが、細かな分類で評価することで、あとから回復の度合いを比較する際にも役立つので、ぜひ有効活用してみてください。

脳卒中の上肢機能訓練〜リハビリで獲得したい3つの機能〜

脳卒中の患者さんでは、麻痺側上肢の機能を最大限高めていくことが大切になりますが、効果的な訓練を提供できるかどうかはリハビリ職の腕にかかっています。
「なんとなく上肢を使った訓練」というあいまいなレベルを脱却し、具体的にどんな機能を高めていく必要があるのか、そのためにどんなリハビリを提供すれば良いのか、ということを考えていく必要があります。

●まずは基本となる「支持機能」の獲得を

麻痺側の支持機能を高めることは、基本的なアプローチといえます。
非麻痺側の手を動かす際に、麻痺側での支持が得られるのと得られないのとでは大きく状況が異なります。
ベッド・マット・壁などを使い、麻痺側の手を支持に使う練習をしてみましょう。
なお、ベッド上での寝返り・起き上がりの際に促しながら、動作のなかで支持機能を高めていくことができると効率的です。

●「リーチ機能」は実用的な手の使用の基盤

上肢機能のなかでも、対象物に手を近づけるリーチ機能は、手を実用的に使ううえでの基盤ともいえる位置づけになります。
麻痺側でのリーチ動作は、テーブル上などに手を乗せることで腕の重さをとり、机上でスライドさせながら実施すると良いでしょう。
非麻痺側の上肢は机上で支持に用い、麻痺側でタオルを使ってテーブルを拭くような動作をしながら、リーチ動作を引き出していくことがおすすめです。
上肢を挙上できる段階になってきたら、机上ではなく、空間でのリーチを促します。
なお、麻痺側上肢のリーチ運動に関しては、脳卒中の治療ガイドラインでもグレードA(行うよう強く勧められる)に設定されているため、積極的に実施したいところです。

●分離運動を促しつつ「操作機能」の獲得を目指す

実際に物品を操作するための機能も、生活場面でよく用いるため重要度は高くなります。
お手玉など粗大握りでもつかみやすい物品からはじめ、ある地点からカゴの中などに移動させる訓練をすることがおすすめです。
指の分離運動のレベルに応じて、おはじきなど小さな物品を使って、指先でのピンチ動作を促していきます。
大小さまざまなペグを使った「ペグボード」も、訓練のレベルを段階づけするためには有効活用できます。

上肢機能を含め、基本的な機能が高まってきたら、実際の生活場面で求められる着替えなどの動作も練習していきます。
このように機能的な訓練からはじめるボトムアップの観点も大切ですが、どんな生活動作であれば獲得できそうかを推測し、トップダウン的な視点で介入していく姿勢も重要になります。

単調なリハビリだとつまらない?達成感・楽しさを感じられる工夫をしよう

脳卒中の上肢機能訓練は、どうしても単調になってしまいがちです。
おはじきを箱に入れたり、輪投げなどでリーチ動作を練習したり…。
どれも治療上は意味があるものですが、同じような訓練ばかりでは患者さんが「飽きてしまう」というのが正直なところです。
やる気が低下すると、最終的には治療効果にも影響が及んでしまうことがあります。
患者さんのモチベーションを上げるために使える2つのアイディアをお伝えしていきます。

●リハビリスタッフが変化をフィードバックする

達成できたことや変化についてフィードバックするなど、スタッフの声かけや関わり方次第でもモチベーションが上がる例も多いため、うまくやる気を引き出していきましょう。
できたことに対して「褒める」ということも有効ですが、患者さんのなかにはお世辞のように感じてしまう方もいるので、リハビリの経過でなにがどう変わったのかを客観的にお伝えすることもおすすめです。
口頭だけでいわれるよりも、写真や映像でフィードバックしてもらうほうが効果を実感しやすいので、定期的に記録を残しておくと変化を伝える際に役立ちます。

●ゲーム性のあるリハビリで「やる気」を引き出す

リハビリを楽しいものにするためには、なにかゲーム性のあることを実施してみることも方法です。
たとえば、タオルを使ってテーブル拭きをするような活動で、目標となる地点に置いた柔らかなブロックを倒すような設定にしてみるなど、ちょっとした工夫だけでもやる気につながることがあります。
また、市販のリハビリ機器を活用することもおすすめです。
オージーウエルネスの「車椅子ボードトレーナー」では、もぐらたたきをしながら上肢機能の訓練をしていくことができます。
車椅子ボードトレーナーの詳細を以下にまとめていきます。

ボード傾斜範囲 0〜75°
ボード指標数 18個
時間設定範囲 5秒〜9分50秒
点灯周期設定範囲 1〜10秒
表示 総合得点・最高得点・正解回数など

もぐらのランプが点灯したら、そこへリーチしていくことで、得点が記録される仕様になっています。
ボードの傾斜や点灯の周期なども設定できるので、患者さんの状態に合わせて細かな調整ができるのも機器を使うメリットです。
さらに「車椅子ボードトレーナー」という名称のとおり、この製品は車椅子に乗ったままで上肢機能の訓練ができます。
椅子に移乗して座位保持ができる方であれば、椅子座位のほうが正しい姿勢で訓練できますが、車椅子での介入が必要な方には重宝するアイテムといえます。
病院に一つあると、脳卒中以外の方の上肢機能訓練やアクティビティとしても活用できるので、ぜひ視野に入れてみてください。

まとめ

脳卒中の方の上肢機能は、その後のさまざまな生活動作にも影響を及ぼすため、丁寧に評価・介入していく必要があります。
また、リハビリが苦痛なものではなく、達成感や楽しさを感じられるものにできるかどうかも、セラピストの腕にかかっています。
達成できたことをわかりやすく伝えたり、ゲーム性のある要素を取り入れるなどして、患者さんのモチベーションを引き出してみてください。

※必ずお使いの製品の添付文書および取扱説明書をご確認の上、ご使用いただきますようお願い致します。

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参考:
脳卒中治療ガイドライン 評価(2018年3月17日引用)
脳卒中治療ガイドライン 上肢機能障害に対するリハビリテーション(2018年3月17日引用)

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