整形外科は通いにくい?患者数を増やす鍵は「送迎」にあった!
全国のクリニックのうち、整形外科は内科の次に多い診療科です。
そこで今回は、同業者以外にも整骨院など競合が多く、患者数の伸びが悪いと悩んでいる整形外科クリニックの経営者へ向けて、送迎サービスがなぜ増患に効果があるのか、その3つの理由を解説します。
目次
患者さんの約4割は、通院時の移動手段に困っている
増患対策を考察するにあたり、整形外科がほかの診療科と異なる点は、患者は運動器疾患を抱えているため、ほかの領域以上に通院時の負担が大きいということです。
生化学工業株式会社が行った調査によると、膝に痛みを抱えているにも関わらず、整形外科を未受診の方のうち、40.7%もの方が「痛みに耐えられなくなったときに受診する」と答えています。
膝の痛みが耐えられないということは、当然生活および歩行にも支障をきたしていることが考えられます。
一方、株式会社NTTデータ経営研究所の調査によると、通院について困っていることとして、「医療機関までの交通手段が乏しい」が39.4%、「医療機関までの移動費用が高い」が20.6%、「通院サポートをしてくれる家族等がいない」が10.5%という結果でした。
この2つの結果から、
整形外科へは痛みに耐えられない時点で受診をする
通院について、交通手段や移動費用、サポート体制が整っていないことで困っている方が多い
ということがわかります。
耐えられない痛みがあるなか、近隣で送迎つきの整形外科があったとしたら。
数ある整形外科のなかでも、初診の第一選択として、貴院があげられる確率は飛躍的に上がるといえるのではないでしょうか。
送迎が求められているのは、地方だけとは限らない
整形外科病院を経営されている方のなかには「うちは都市部にあって、バスや電車など公共交通機関が整っている場所にあるので、わざわざ送迎サービスを準備しなくてもよいのでは」と考える方もいます。
確かに移動手段などの利便性については、地方によって差があります。
メディカル生命が2014年に行った調査によると、病院を選ぶ際に駐車場の有無を重視するかについて、居住地域別に調査したところ、東海地方が52.0%と最も高く、ついで中国・四国、北陸・甲信越と地方が続いており、関東や近畿は20%台という結果でした。
この結果から、公共交通機関が充実している地域ほど、駐車場の有無はさほど重視されていないことがわかります。
しかし一方で、こんなデータもあります。
2013年現在、全人口の19.9%が65歳以上の高齢者だった政令指定都市である広島市では、前期高齢者の62.5%、後期高齢者の46.1%は自転車や自動車など、個人的な交通手段で占めていましたが、広島市内で起きた交通事故のうち、約3割は高齢者が関連していることがわかっています。
また国土交通省の調査では、2040年までに全都道府県にて高齢化率が25%を超える見込みとなっていること、単独世帯や夫婦のみの世帯といった構成が増加傾向にあることを指摘しており、広島市、国土交通省ともに「高齢者が利用しやすいパーソナルな移動交通手段の確保が必要となる」と提言しているのです。
これらの情報より、たとえ今は高齢化がそれほど深刻ではない地域であっても、高齢化の進行とともに移動手段の確保が必要となってくると推測されることから、利便性の良い都市部にあったとしても整形外科での送迎サービス導入は、増患対策として有効であると考えられるのです。
送迎サービスを行うことで得られるさまざまなメリット
整形外科病院が送迎サービスを行うにあたっては、車両の購入費用や維持費、運転手の確保など、クリアしなくてはならないさまざまな課題があります。
しかし送迎サービスを行うことによって、大きなメリットを得られることも期待できるのです。
・地域貢献につながる
送迎バス(車)の稼働に伴い、最も考慮しなくてはいけないのが「送迎サービスによってかかる諸費用を補えるほど、増患が期待できるか」という点です。
この問題について、昭和株式会社では送迎バスの使用理由を貴院への受診に限定せず、65歳以上の高齢者の外出支援として運用することで、利用者を増やすことを提案し、コンサルティングを展開しています。
自力での移動が可能であり、今現在では整形外科への受診が必要ない方にも送迎サービスを利用していただくことで、将来受診するきっかけとなることを目的としているのです。
現在、神奈川県横浜市や千葉県船橋市といった都市部では、すでに行政と病院や教習所などが協定書を締結し、行政に経費の一部を負担してもらいながら送迎サービスを運用しています。
送迎サービスを運用することで地域貢献となり、また将来的な増患対策にも成り得るのです。
・送迎バス(車)による宣伝効果も期待できる
増患対策にもなるもう一つのメリットとして、ラッピングバスによる宣伝効果が挙げられます。
送迎のたびにあらゆる道を走行する送迎車をラッピングすることで、貴院の宣伝媒体としても利用することができるのです。
都内にある大学が、駅貼りポスター、窓上ステッカー、ラッピングバスの3つの宣伝効果を比較したところ、ラッピングバスは駅貼りポスターに次いで多かったという研究結果もあり、その宣伝効果は絶大です。
このように、送迎サービスの運用は社会貢献・集患・宣伝効果のトリプル効果が期待できる、極めて有効なサービスといえます。
高齢化が進む今だからこそ、送迎サービス運用の検討を!
送迎サービスの運営にあたっては、費用以外にもクリアしなくてはいけない項目が多々あり、実際に運用開始に至るまでは時間と労力を要します。
しかし高齢化社会を迎えるなか、今後はどの地域で開業したとしてもクリニックによる送迎サービスへの需要は高まることが考えられるため、他院との差別化を図るためにも、送迎サービスは十分検討すべき価値があると考えます。
増患対策として、ぜひ送迎サービスを検討されてみてはいかがでしょうか。
送迎サービスの費用や届け出の詳細については、こちら(増患が見込める送迎サービスの費用はいくら?届け出は必要?調査しました!)でご確認頂けます。
参考:
小松大介:診療所経営の教科書 第2版:日本医事新報社、東京、2017,pp74-78
生化学工業株式会社 変形性ひざ関節症の初期症状のひざの痛みを有する受診患者 519 名、未受診患者 518 名を対象とした“日常生活で感じるひざの痛みと受診意識の実態調査”(2018年5月24日引用)
株式会社NTTデータ経営研究所 遠隔医療に関するアンケート結果(2018年5月24日引用)
メディカル生命 病院選び・医者選びに関する調査(2018年5月24日引用)
国土交通省 高齢者の生活・外出特性について(2018年5月24日引用)
広島市 高齢者が利用しやすい交通に関する取り組みについて(2018年5月24日引用)
ラッピングバスにおける広告効果および、ICカードを用いたセグメント広告(2018年5月24日引用)
昭和株式会社 施設送迎バスを活用した、高齢者等外出支援調査のご提案(2018年5月24日引用)