患者満足度(PS)を上げるのは、待ち時間の短縮とわかりやすい説明!
クリニック経営には欠かせない、患者満足度(PS)を向上させるには「待ち時間は短く診察は長く」といった、相反する要望に応える必要があります。
そこで今回は、患者満足度を上げ来院数を増やすための「要望のバランス」について、解説します。
目次
まずは不満を把握することから。1位は「待ち時間が長い」2位は「説明が不十分」
クリニックの経営において、患者満足度を上げることはそのまま経営に直結するといっても過言ではありません。
では、患者さんがクリニックに対して不満を持つ理由には、なにがあげられるのでしょうか?
2014年12月に日本医師会総合政策研究機関が発表した「第5回日本の医療に関する意識調査」によると、患者が医療機関に不満を持った理由として、第1位が「待ち時間(47.3%)」、そして第2位は「医師の説明(37.2%)」でした。
では具体的に、何分くらいの待ち時間であれば満足度は高くなるのでしょうか。
2005年に厚生労働省が調査した「受療行動調査の概要」によると、待ち時間が15分未満の場合、満足と答えた方の割合は47.9%と高い数値でした。
一方、15分から30分未満では29.4%、30分以上1時間未満では15%と、満足度は急激に低下し、待ち時間が1時間以上となると、不満と答えた方の割合が半数を上回っています。
この結果からもわかるように、患者さんは待ち時間が短ければ短いほど、満足度が高くなる、ということがいえます。
また、診療までの待ち時間そのものに対し、満足と答えた方の割合が24.7%だったのに対し、不満と答えた方は30.7%と不満が満足を上回っています。
満足度に対し「ふつう」と回答した方も37.0%であることから、待ち時間に満足している方は全体のわずか1/4であることがわかります。
これらの結果から導きだされるのは、患者はクリニックに対して「待ち時間を短くしてほしい」と思っており、同時に「病気や治療法について、きちんと説明してほしい」という要望も持ち合わせているということです。
待ち時間を短くしようとすると、患者さんへ説明する時間は長くとれません。
一方で、患者さんへの説明を長くすると待ち時間も長くなってしまいます。
つまり、この両極端ともいえる患者さんの2つの要求にバランスよく答えることが、患者満足度を上げるポイントになってくるのです。
説明はポイントをおさえて時短を図る。「治る」と「わかる」を重点的に!
待ち時間を短くしつつ、患者が満足できる説明を医師が行うこと。
この2つの両立は、容易なことではありません。
特にクリニックでは医師は1人しかいないため、個々の患者さんに対応できる時間は限られています。
説明に時間を費やせば費やすほど、待っている患者さんの待ち時間はより長くなり、これでは「要望の両立」にはなりません。
そこでポイントとしたいのが、短時間で患者さんが満足できる説明をすることです。
ではどうすれば、短い時間でも患者さんに満足してもらうことができるのでしょうか。
それは、「治ること」そして「わかること」にあります。
以下では整形外科クリニックを例にとり、「治ること」と「わかること」の内容を詳しく解説していきます。
整形外科クリニックに来院される患者さんたちは、共通して「不快に感じている症状を軽減してほしい」という要望を持っています。
よって通院することで不快な症状が軽減されれば、たとえ医師との関りは短くても、患者さんは満足感を得ることができるといえます。
これが「治ること」です。
しかし、いくら医師が「早く治したい」と思っていても、患者さんの状態によっては長期的な治療が必要な場合もでてきます。
そんな場合に必要なのが「わかること」です。
医師の説明を受ける際、なぜ治療に時間がかかるのか、どんな目的で検査を行い今後どのようなプロセスをたどるのかといった疑問が解決できないと、いくら時間をかけて説明しても、患者さん側は不満をもってしまいます。
そこで、医師というその道のプロフェッショナルが「納得できる説明」をすることで、患者さんに安心感を与えることができ、それは同時に大きな満足度へとつながるのです。
スタッフの連携プレーで診察前に情報収集!患者の「わかる」をサポート
患者さんがより「わかる」ようにするためには、事前の情報収集、そして事後の情報提供が必須です。
しかし、これらをすべて医師が一人で行ってしまうと、待ち時間の増化につながります。
そこで行いたいのが、整形外科クリニックのスタッフ全員で、患者さんの「わかる」をサポートすることです。
整形外科には、院長先生である医師以外にも、さまざまな職種のスタッフが働いています。
たとえば、患者さんが来院直後に訪れる受付。
受付では、まず患者さんに問診表を手渡し、大まかな情報を記入してもらいます。
このとき患者さんが、どんな情報を書き込めばいいのかがわかるように、具体例をあらかじめ用意しておけば、より詳しく症状を記入してもらうことが期待できます。
問診表の記入が終わったら、まずは医療事務が項目に目を通し「記入漏れがないかどうか」をしっかりと確認します。
記入漏れがないと確認できたら、次は専門知識を持つ看護師が問診票に書かれた内容を確認します。
そこでもし、医師が知っておきたいであろう情報が不足していると判断した場合は、診察まえに患者さんに直接確認をとり、問診票に書きこみます。
受付、看護師とそれぞれが自身の役割を果たしつつ、医師の「情報収集をアシスト」することで、より短時間で多くの情報を得ることが可能になるのです。
タブレットやパンフレットの活用で、より「わかりやすく」
診察中においても、時間を短縮しつつ患者さんの理解度を上げるアイテムがあります。
それが、タブレットとパンフレットです。
タブレットは、事前に起こりやすい症状の解説図を入れておくことで、言葉だけではなく、視覚でわかりやすく説明することが可能となり、患者さんの理解をより深めてくれます。
また、タブレットの場合は解説する図を、患者さんの視力に応じて拡大・縮小が自在に行えること、そして直接図へ書きこむこともできることから、医師側としても説明しやすいアイテムといえます。
また、タブレットと同時に効果的なのがパンフレットです。
症状ごとに処方される薬や注意点等を事前にまとめ、パンフレットにしておくことで、患者さんが自宅へ帰ったあとも自分で説明内容を確認することができ、さらに次回の診察時に同じ質問をする必要もなくなります。
パンフレットもただ医師から手渡すのではなく、診察終了後に看護師がパンフレットを渡しながら、要点を再度患者さんとともに確認することで、「このクリニックは医師だけでなく、看護師も丁寧に説明してくれる」というさらなる満足度へつなげることができます。
患者満足度の向上は「病院としての役割」を全うすることにあり
待ち時間の短縮についてはさまざまな方法がありますが、待ち時間を短縮すればするほど、患者さんの満足度が上がるわけではありません。
症状の改善と納得できる説明、この2つが満たされれば、たとえ短い時間の対応であっても、患者さんから高い満足度を得ることが可能となるのです。
待ち時間対策をする際は、同時に「患者さんが満足できる説明」についても押さえていただくことで、患者満足度の向上につなげていただければと思います。
待ち時間対策についてはこちら↓
「一体何分待たせるの!?」から考える、クリニックにおける3つの接遇改善ポイント
待ち時間30分で顧客満足度15%減。それをカバーする、診察後にスタッフがかける魔法の言葉とは?
待ち時間対策には「ゾーン分け」ストレスフリーの待合室はこうしてつくる!
参考:
厚生労働省 2005年(平成17年)受療行動調査の概要
船井総合研究所:40の困った!をスッキリ解決 診療所経営助っ人ツール:日経BP社:東京:2017年