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外国人患者の増加に医療現場はどう向き合う?言葉と文化の違いに配慮した対応を

日本では在留外国人数・訪日外国人数ともに増加しており、対応にあたる医療機関が出てきました。
「外国人にも平等に医療を提供したい」という考えで、マニュアル作成や認証の取得に尽力している機関もあります。
2020年には東京オリンピックも控えており、多くの外国人が訪れることが予想されるため、外国人患者への対応の在り方を考えてみてはいかがでしょうか。

日本で増加する在留外国人の数は247万人超

東京や大阪などの大都市を中心に、「外国人を見かける機会が増えた」と感じる方も多いのではないでしょうか?
法務省の統計によると、2017年6月時点における在留外国人数は、247万1,458人とされています。
2016年末のデータとくらべて3.7%の増加とされており、日本で暮らす外国人の数が増えている実態がうかがえます。
また、観光で訪れる訪日外国人の数も急増しており、2000年に約475万人だったところ、2016年には約2403万人であったことが示されています(観光局調べ)。
日本にいる外国人の数が急激に増えたことで、医療機関にも少なからず影響が出てきます。
中国人や韓国人の訪日外国人は急増していますが、すべての方が英語を話せるわけではないため、中国語や韓国語での対応が必要になることもあります。
また、日本においては労働力不足の問題があり、外国人の受け入れを積極的に行っている経緯から、ベトナムやネパールから来る技能実習生なども増えています。
英語はもちろんのこと、多言語で対応できる体制を整えることが望ましいでしょう。

外国人を受け入れている医療現場の数

2017年には、観光庁が訪日外国人旅行者の対応が可能な医療機関のウェブサイトを多言語化しました。
さらに、各都道府県で外国人旅行者の対応が可能な医療機関を選定し、2017年にはその数が900にも達しました。
そうした経緯もあり、少しずつ外国人が日本で医療を受けやすい状況になってきているのです。
観光庁によると、選定要件には次のようなものが含まれています。

  • ●救急患者を24時間・365日受け入れている
  • ●内科・外科・小児科・救急科を含んだ複数の診療科を持つ
  • ●英語による診療が可能(通訳者を介する診療も含む)

つまり、救急患者の受け入れ体制が整っており、少なくとも英語を使った対応ができる総合病院が選定の対象になるということになります。
また、JMIP(ジェイミップ)という外国人患者の受け入れに関する認証制度もあり、こちらは多言語での診療案内はもちろん、文化・宗教にも配慮できるかどうかなどを評価します。
この認証を受けるためには第三者的な評価が必要になるため、認定された病院は国内でも非常に少なく、2018年2月時点で36施設にとどまっています。
外国人にも平等に必要な医療を提供したいという使命を全うするために、受け入れを展開している例も少なくありません。
積極的に受け入れていない病院でも、外国人が受診しに来たときの対応をあらかじめ決めておくことをおすすめします。
少なくとも、他施設とどのように連携していくのかを検討しておくことは必須といえるでしょう。

外国人の受け入れでは言葉・文化の面でトラブル防止に努めること

外国人患者の受け入れを行う場合には、やはり言葉や文化の壁に直面することがあります。
言葉と文化の違いによって起こるトラブルを回避するために意識を高く持つことが大切です。

●言葉の壁をどう乗り越えるか

言葉に関しては、英語で詳しい病状や治療法まで伝達できれば良いですが、現実的にはスムーズにいかないこともあります。
「外国人だから英語を話せる」というわけではありませんし、日本の医療者がなんとか自力で英語を使って伝えても、あとから「言った・言わない」を巡ってトラブルになるケースもあるのです。
多言語に対応した問診票をあらかじめ用意しておいたり、医療通訳を確保しておくなどの配慮は必要になるでしょう。
一般的な通訳のスキルがあっても、医療用語が分からなければ対応は難しいため、医療通訳を専門的に学んだ経験のある人材が望ましいです。
手書きの問診票であればコミュニケーションが難しくなるため、セキュリティ面の課題がクリアできればタブレット端末などを用いた電子問診票を導入し、ある程度定型化していくことも一つの方法です。

●文化の違いにも配慮が必要

日本人にとっては当たり前のことでも、外国人の文化では違った捉え方になる例も多いです。
たとえば、多くの日本人は予約時間を厳守することは当然と考えますが、文化によっては細かく時間を気にせずに遅れてくる方もいます。
日本はバスが概ね定刻通りに発車しますが、国によってはほとんど時刻表に意味がない場合もあり、こうした感覚には文化的な違いが生じるものです。
また、患者さんが入院する場合には、宗教上の理由から食事にも配慮しなければならないことがあります。
どちらが良い・悪いということではなく、あくまでも文化的な差異として受け入れる姿勢を持ち、必要な場合は丁寧に説明を行っていきましょう。

このように、外国人の患者を受け入れるということを実現するためには、非常に多くの側面から細やかに配慮していかなければなりません。
院内で受付・医療スタッフ・医療通訳を含め、すべての関係者で共有するマニュアルを作ることから始める必要があるでしょう。

まとめ

筆者は仕事や旅行などで海外に行く機会が多いですが、やはり滞在先に日本語が通じる病院があれば、非常に安心感は大きくなります。
日本で暮らす外国人、日本を訪れる外国人は増えてきており、2020年の東京オリンピックではさらに多くの外国人が日本に足を運びます。
条件を満たせばJMIPのように第三者の認証を取得する仕組みもあるため、ぜひ体制の整備を視野に入れてみてください。

参考:
法務省 平成29年6月末現在における在留外国人数について(確定値)(2018年2月20日引用)
日本政府観光局 年別 訪日外客数、出国日本人数の推移(2018年2月20日引用)
観光庁  訪日外国人旅行者受入可能な医療機関のウェブサイトを多言語化しました(2018年2月20日引用)
日本医療教育財団 外国人患者受入れ医療機関認証制度(JMIP)について(2018年2月20日引用)

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