介護サービス事業者はどう選ぶ?よりよい事業者を選ぶポイント
介護サービスを利用するとき、気になるのは「どの事業者を選べばよいのか?」ではないでしょうか。
生活をサポートしてくれる介護サービス事業者ですから、よい事業者を選びたいものです。
本記事では、よりよい介護サービス事業者を選ぶためのポイントについてお話します。
介護サービス事業者を選ぶ前に
介護保険制度制定前は、介護が必要になったら「どんな介護サービスを利用するか」を行政が決めていました。
介護を受ける側に選択権はなかったのです。
介護保険制度がスタートしてからは、介護サービスの種類、サービスを提供する事業者ともに、利用者さんがご自身で選択できるようになりました。
しかし実際には、利用者さんが自ら介護サービスの種類や事業者を比較・検討し、選択するのは容易なことではありません。
ですから、まずどのような介護サービスを利用するかをケアマネジャーに相談するとよいでしょう。(まだ要介護認定を受けていない、ケアマネジャーについて知りたいという方はこちら「ケアマネージャーにはなんでも伝えて欲しい!介護の愚痴から利用者の生い立ちまで」「良いケアマネジャーを選ぶ方法~選び方から交代方法まで解説」「訪問看護師が教える介護保険制度~申請からサービス開始までを分かりやすく~」をご覧いただいてからですと分かりやすいです)
ケアマネジャーに、ご自身がこれから「どんな生活をしたいか」の希望を伝え、希望する生活を送るために必要な介護サービスを提案してもらいます。
担当のケアマネジャーならば、あなたの要介護度に応じて、利用できる範囲の介護サービスを提案してくれるでしょう。
その際に、提案された介護サービスでどこまでお願いできるのか、ご自身の希望する生活がその介護サービスで成り立つのかをしっかり確認しましょう。
介護サービスの利用が始まってから「○○もお願いしたいのに断られた」という利用者さんの声を聴くことがあります。
保険を使ったサービスですので、提供できるサービスの範囲は法律で決められています。
範囲を超えた過剰なサービスを提供することはできません。
サービス内容に疑問があるときには積極的にケアマネジャーに質問し、納得した上で選んでください。
「介護サービス情報公表システム」を活用しましょう
利用する介護サービスの種類が決まったら、その介護サービスを提供してくれる事業者を選ぶことになります。
今後さらに進展する高齢化社会に備え、介護サービス事業はさらに充実させていかなくてはなりません。
そのために年々事業者が増えており、大都市などでは少し歩くだけでいくつもの事業者を発見することができます。
一方で利用する側からすれば選択肢が増える半面、ますますどの事業者を選べばよいのか悩ましくなっています。
ケアマネジャーから事業者の情報を得ることも可能ですが、ケアマネジャーとはいえ、さすがに地域にある事業者すべての情報を把握しているわけではありません。
あなたが利用できる範囲に
- ○いくつの事業者があるのか
- ○事業者の運営状況や特色
の情報を得るために利用したいのが「介護サービス情報公表システム」です。
このシステムは介護保険法によって2006年から開始されたサービスです。
介護サービス事業者が年に一回直近の情報を都道府県に報告し、報告された内容を都道府県がインターネットで公表するというものです。
報告内容に虚偽などが疑われる場合、都道府県による訪問調査が実施されるため、公表されている内容は信頼できると考えてよいでしょう。
筆者が勤務する訪問看護ステーション(所在地は東京都)の情報を閲覧してみましたが、東京都の平均値とくらべたステーションの運営状況がレーダーチャートで分かりやすく表示されていました。
また、利用者さんの平均年齢、従業員の年齢構成や経験年数、力を入れていることなども詳しく公表されています。
このシステムは案外一般の方には認知されていないようですが、事業者を比較・検討する際には活用しやすいものです。
インターネットで誰でも閲覧できますから、ご家族やケアマネジャーと一緒にもっと活用してほしいと思います。
契約時、利用開始後のチェックポイント
情報を収集して、依頼したい事業者をいくつかピックアップしたら、見学ができるところであれば契約前に見学してみましょう。
たとえば通所介護(デイサービス)などが見学できる事業者にあたります。
自宅に訪問してくれるサービスと違い、施設系のサービスは「長時間過ごすことになる自宅以外の場所」ですから、スタッフの印象や施設内の雰囲気を契約前に知ることは大切です。
●いよいよ契約。分かりにくいことがあったけれど…
契約は多くの場合、責任者や管理者が自宅に訪問して契約書と重要事項について説明してくれます。
問題がなければサインをして契約成立となりますが、サインの前にちょっと確認しましょう。
介護保険制度はただでさえ複雑で分かりにくいものであり、説明されても「よく分からない」項目がいくつか出てくるはずです。
その「よく分からない」のなかには、大体分かればよいことと、そのままではいけないことがあります。
たとえば利用料ですが、筆者はご自身の負担額が分かれば、仕組みなどは大体でよいと考えています。
基本料金や加算は国が決めるものですから、サービス事業者ごとに違いはありません。
詳しく知りたければあとからゆっくり確認しても遅くはないのです。
●契約時のチェックポイント
それでは、ご自身を守り、トラブルを回避するためになにに注意したらよいのでしょうか。
契約時・利用開始後に分けてお話します。
契約時のチェックポイント
お金のこと | ・自費のサービスが含まれていないか →自費のサービスは全額あなたの負担です。 ・お金を預けるときの管理方法が決まっているか →買い物など、お金を預けるときはあなたと担当スタッフ間だけで決めないこと。必ず責任者や管理者にも関わってもらいましょう。 ・キャンセル料は妥当か →あなたの都合でサービスをキャンセルするとき、いつまでに連絡するのか、やむを得ない事情(急な体調不良など)の場合も発生するのか、料金は一般的に妥当か。 |
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緊急時は? | ・緊急時の対応が徹底されているか →どこに、どう連絡するのか。 |
事故が起きたら | ・サービス利用中に事故が起きたときの連絡方法 →事故が起きたら、事業者は市町村などに報告する義務があります。 ・損害賠償保険に加入しているか |
クレーム対応 | ・苦情や相談の窓口が明確であるか ・契約を解除したいとき、どうすればよいのかが明確であるか →契約解除は何日前までに申し出ればよいのか、その設定は長すぎないか。 |
担当スタッフ について |
・担当スタッフの変更や、曜日の変更は可能か →訪問(訪問看護・介護など)のサービスでは特に重要です。しかし、スタッフ数の少ない事業者は難しいかも。 |
利用開始後のチェックポイント
契約内容 | ・契約時に確認したことは守られているか →計画書の説明・評価、変更や緊急時の対応はどうだったか、自費サービスの押し付けはなかったかなど。 |
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満足度 | ・スタッフに対して →言葉づかい、態度、秘密保持、時間厳守、引き継ぎなどに気になる点は? ・介護サービス利用の効果は? →サービスを利用して生活はどうなったか(楽になった、変わらない、悪くなったなど)。 |
介護サービス事業者は変更が可能です。
事業者に相談しても改善されないとき、トラブルになってしまったとき、だれに相談したらよいのか分からないときは我慢せず、担当ケアマネジャーや市町村の窓口に相談してみましょう。
介護サービス事業者選びには積極的に関わってほしい
利用者さんに選択権があるとはいえ、今回お話したような要因から「どこでもいい」「おまかせ」と言いたくなってしまうかもしれません。
しかしサービス事業者は、利用者さん、ご家族の介護に直接の影響を及ぼすものです。
情報公表システムやケアマネジャーが持っている情報などを上手に使って、ぜひ「介護事業者選び」に積極的に関わってください。
参考:
厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 介護サービス情報公表システム.(2018年12月14日引用)
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執筆者
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訪問看護師の橘ゆみです。国立病院附属看護学校卒。
日赤病院、総合病院にて手術室、小児、NICU、ICU、循環器科、脳神経外科等に勤務。
病棟主任、看護学生の臨地実習指導者として充実した日々を過ごしました。
結婚・出産・子育てとライフスタイルにあわせて働きかたを変え、現在は訪問看護師をしています。
高齢化が進む日本において介護や介護予防は大変重要な分野です。
分かりにくい介護保険制度をできるだけ分かりやすく、また介護に関する有意義な情報をお伝えしていきたいと思います。
保有資格:看護師免許、臨地実習指導者