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家族介護

体験から学んだ在宅介護で知っておくべき3つのこと。知っておけば・・・と後悔しないために

「最後は家で一緒に過ごしたい」。
施設に入所していても、在宅介護をしていても、いつかは訪れる最期のとき。
少しでも後悔が残らないように、看護師である筆者の実体験を交え、終末期にこそ知っておきたい「3つの学び」についてご紹介します。

自宅で祖父を看取った家族

学びその1 お風呂に入ればラクになる?入浴はかゆみを悪化させる可能性がある

祖父が最期を自宅で過ごすために退院したとき、季節は夏でした。
田舎は盆地にあり、その年は特別暑かったことも影響して、温度は連日35度を超えるほどの猛暑。
祖父が過ごす部屋は冷房をかけ、快適な温度になるようにしていましたが、祖父は温度調節がうまくいかないためか、寒い、暑いと細かく訴えていたそうです。

祖母や母は少しでも快適に過ごせるようにと、扇風機などを使い空調にはより注意を払っていましたが、祖父はそのうち汗のせいで全身がかゆい、なんとかしてほしいと訴えるようになりました。
そこで祖母と母は、少しでもリフレッシュできるようにと考え、訪問入浴を依頼しました。
祖父にとって帰宅後初めての入浴。

入浴中、祖父もとてもリラックスした表情となり、祖母と母も安心したそうです。
しかし、それから先が問題でした。

入浴後、時間が経過するとともに、祖父は激しい全身のかゆみを訴えるようになったのです。
いくら祖母と母が対応しても、祖父のかゆいという訴えは続きます。
結局お風呂に入ったその日は、深夜になってもかゆみが軽減することはなく、祖父も祖母も母も、全員が眠れぬ一夜を過ごすことになってしまいました。

●入浴後は保湿をすることが鉄則

入浴後の保湿イメージ
今回のケースにおいては、入浴によって皮膚の水分が失われてしまい、結果として激しいかゆみを引き起こしてしまったと考えられます。
祖父は当時、すでに食事や水分が満足にとれない状態でした。

入院中は点滴によってある程度の水分補給はできていましたが、在宅へ切り替えたことで点滴を持続させることも難しく、水分摂取は口からとれるわずかな量だけになっていました。
そのため、加齢による乾燥に加え、脱水が進行した結果、皮膚がより乾燥しやすい状態にありました。
今回のケースでは、久しぶりの入浴によって皮膚表面にあったわずかな水分および皮脂が奪われたことで、よりかゆみを助長してしまったと考えられます。
詳細はこちら→「かゆみで入浴を我慢する前に 看護師がおススメする入浴前後の6つの習慣」

最期を過ごす際は、こういった皮膚バリアがより弱くなるため、より入浴後の保湿を心がけることで、かゆみによる苦痛を軽減させることができます。
このことを事前に伝えることができていれば、祖父も、そして祖母や母の負担も減ったのではないか、と今でも思います。

学びその2 オムツ交換の強い味方!もう一人の介助者「クッション」の活用

祖母と母が在宅介護を始めるにあたり、一番苦労したのがおむつ交換でした。
祖父は徒歩で入院した病院を寝たきりの状態で退院したほど、急激に全身状態が悪化してしまったため、祖母と母はそれまで一度も祖父のおむつ交換をしたことはありませんでした。

入院中、看護師さんに習って何回か経験したものの、早く帰らないとこのまま病院で最期を迎えてしまうという焦りもあり、おむつ交換に対して十分な知識や経験がないまま、在宅介護が始まってしまったのです。
小柄な祖父でしたが、自身ではまったく自分の体を支えることができなくなってしまっていたため、おむつ交換の際は祖母も母も、汗だくになって行いました。

人は最期のときが近くなると、肛門近くの筋肉も緩んでしまいやすく、お通じが出やすくなります。
そのため、おむつを交換して、着ているものを整えて…とやっている間に、また新たなお通じが出てしまい、おむつ交換を1からやり直す、ということが続きました。

その結果、おむつ交換だけで1時間もかかってしまう、ということも多く、祖母と母の疲労は大きいものでした。

●おむつ交換は「支えをより多くすること」がポイント

自分でまったく身体を動かせない方のおむつ交換をする場合、介助する人が自分の手足で全体重を支えることは大変です。
そこで活用したいのが、「クッションなどで身体を支えることで、介助する側の負担を減らす」ことです。
おむつ交換をするために身体を横にする際、身体を支えるよう、自分の手以外にクッションで身体を支えるようにします。

そうすることで支える側の負担が減り、スムーズに作業することができるのです。
体の向きを変える用のクッションもありますが、自宅にあるクッションでも入れ方を工夫することで活用することは十分可能です。
在宅介護にあたって、ぜひクッションを活用し少しでも「人が支える」という状態を回避することをお勧めします。

学びその3 最期のときはいつ訪れるかわからない~在宅介護の限界も視野に~

祖母と母、主に二人で在宅介護を続けていましたが、母の長期休暇が終わる日が近づいていました。
祖父が退院した時期が、たまたま母の長期休暇と重なったため、仕事を気にすることなく祖父の介護に専念することができました。
しかし、看取りのときはいつくるかわかりません。

母の仕事が始まる日が近づくとともに、祖母の不安はどんどん増していきました。
頼りの母は日中仕事。
自分と祖父、二人きりで過ごさなくてはいけない。
いざというとき、祖母一人で対応できるのか。

そもそも、祖母のほかに母がいるからこそ引き受けた在宅介護。
このまま一人で続けることができるのか…。
結果として、祖父は母の休みが終わる直前に亡くなったので、祖母が一人で介護をすることはありませんでした。
しかし、当時の祖母の感情を思うと、家族としてやりきれないものがあります。

●在宅介護をするにあたっては、長期にわたる可能性も視野に入れておく

我が家のケースではたまたま祖母が心配したようなことにはなりませんでしたが、人生の終わりがいつ訪れるかは、医師を含め誰にもわかりません。
事実、祖父も退院時にはあと1週間もつかどうか…といわれていましたが、結果として約1カ月、頑張ってくれました。

そのため、在宅介護に切り替えるにあたっては、ぜひ長期的なスパンでみることをお勧めします。
我が家のケースでは、母と祖母、二人の強い思いからほかの家族に相談することなく、そのまま在宅介護へと入りました。
そのため、私を含めほかの家族の協力体制が整っておらず、結果として母や祖母に多くの負担をかけることになってしまいました。
在宅介護は、いつどうなるか誰にもわかりません。

だからこそ、開始するにあたっては「長期的になる可能性もある」ことを視野に入れ、十分な検討をしたうえで受け入れ体制を整える必要があります。

まとめ

私が看護師になると祖父に報告したとき、「これで俺が倒れても安心だな!」といっていました。
しかし、実際にそうなったとき、私は子どもを出産直後で実家へ帰ることができず、看護師として家族に十分な情報提供ができませんでした。

「我が家は大丈夫だろう」と安易に考えず、普段から介護が必要になったとき家族はどう対応するかについて、詳細まで確認しておくことを、実体験からも強くお勧めします。

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