遠距離介護の交通費は控除になる?飛行機の介護割引等を使い帰省費用を抑える方法
遠距離介護者向けに、航空各社やJRでは帰省に使えるお得な「介護割」があります。
介護割引とは?遠距離介護の交通費は通院医療費のように控除にできる?
今回は遠距離介護の帰省費用を抑える方法、コロナ禍の介護帰省で感染対策にも割引を活用する方法をお伝えします。
目次
遠距離介護の交通費は医療費控除になる?
遠距離介護の交通費軽減を考えるとき気になるのが「通院が必要な身内の介護のために使う費用だから、交通費だって医療費控除になるのか?」でしょう。
国税庁サイトでは、医療費控除の対象となる医療費の項目の中に「医師等による診療等を受けるための通院費」とあります。
しかし、これは介護が必要な本人(と付き添い時の家族)の通院交通費が対象ですので、遠距離介護のために移動する家族の交通費は控除対象外となります。
残念ながら、遠距離介護の交通費節約には以下の割引などほかの手立てを活用する必要があります。
航空各社の介護割引
飛行機で帰省するなら航空各社がコロナ禍以前から「介護割引」プランを用意しています!
大手だけでなくLCCまで、意外に幅広く使える会社があるので、ぜひ利用しましょう。
(※表は2020年11月17日現在の情報です)
全日空(ANA) | 日本航空(JAL) | ソラシドエア | スターフライヤー | |
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割引名称 | 介護割引 | 介護帰省割引 | 介護特別割引 | 介護割引運賃 |
適用範囲 | 満12歳以上で要介護または要支援認定された人の ・「二親等以内の親族」 ・「配偶者の兄弟姉妹の配偶者」 ・「子の配偶者の父母」 |
満12歳以上で要介護または要支援認定された人の ・「二親等以内の親族」 ・「配偶者の兄弟姉妹の配偶者」 ・「子の配偶者の父母」 |
要介護・要支援被認定者およびその介護者(満12歳以上) ※介護する人は被介護者の ・「二親等以内の親族」 ・「配偶者の兄弟姉妹の配偶者」 ・「子の配偶者の父母」のうち2名まで |
要介護・要支援被認定者および介護者 (2親等以内の親族、配偶者の兄弟姉妹の配偶者ならびに子の配偶者の父母に限る) |
利用条件 | 事前に「介護割引情報登録」の済んだANAマイレージクラブカードを予約・購入・搭乗時に提示すること | 事前に「介護帰省割引情報登録」し、JALマイレージバンク(JMB/JALカード)へ入会が必要 | 事前に「介護割引パス」を発行してもらい、提示が必要 | 事前に「介護割引パス」を申請し、チケット購入時・搭乗手続き時に提示が必要 |
利用可能な路線 | 介護する人と介護される人の最寄りの空港を結ぶ路線 ※直行便がなければ出発地と目的地の区間を結ぶ経由地2カ所まで指定可 |
介護する人と介護される人の居住地の最寄りの空港を結ぶ一路線限定 ※直行便がない場合は経由地複数箇所でも可だが、経由地を含む全旅程の航空券を同時に購入すること |
介護する人とされる人の最寄り空港を結ぶ一路線限定 | 介護する人とされる人の居住地の最寄りの空港を結ぶ一路線限定 |
必要書類 | ・介護保険証または介護認定結果通知書(「認定有効期間内」で現住所と要介護又は要支援状態区分が記載されたもの) ・戸籍謄本または抄本(介護される人とする人の関係を確認するため) ・現住所記載の公的書類(介護する人の免許証など) |
・介護保険証(「認定有効期間内」のもの) ・戸籍抄本・戸籍謄本 ・現住所記載の公的書類(介護する人の免許証など) |
・介護保険証(認定有効期限内のもの)または認定結果通知書 ・割引適用者本人の写真 ・割引適用者の現住所を証明する書類(免許証など) ・戸籍謄本や抄本など介護者と被介護者の関係を証明する公的書類 |
・介護保険証または介護認定決定結果通知書(認定有効期間内のもの) ・戸籍謄本または抄本 ・被認定者と介護者の住所を証明する公的書類(免許証など) ・割引を申請する本人の顔写真 |
注意点 | ※旅客施設使用料が加算される ※便によっては割引設定がないか座席数に制限がある場合も |
※JALグループ便または他交通機関を利用時は割引適用外 | ※介護割引パス発行に申請から2~3週間かかる ※割引適用の座席数は限定あり |
※介護割引パスの発行は郵送申し込みのみ受け付け |
【注意点】
●介護割引は上記以外にもさまざまな注意点があるので必ず各航空会社のサイトで確認してください
●介護割引は一度申請しても定期的な更新手続きが必要な場合があるのでサイトをお確かめください
●時期によっては情報変更の可能性があるので、各航空会社サイトを随時チェックしましょう
●事前登録には数週間かかる会社もあり、平日の窓口対応がない場合もあるのでご注意ください
JRの会員割引・セット割引
JRには介護割引という名称のサービスは無いですが、遠距離介護の帰省に使えるお得な割引がたくさんあります。
時期によっても割引プランが変わるので、都度チェックして割引率の良いものを利用しましょう。
1)エクスプレス(EX)予約
・JR東海とJR西日本が運営する東海道、山陽新幹線のネット予約サービス
・1年中お得な割引料金で新幹線指定席を利用できる
・会員制だが年会費も1,100円(税込)と負担が過剰に高くない
・往復割引や早めの予約「早得」割なども充実
2)e5489(JR西日本)
・ネット予約で窓口購入より安く新幹線や特急のチケットを購入可能
・山陽、九州、北陸新幹線区間の新幹線だけでなく特急列車の予約もできる
・「J-WESTカード会員」登録をすると利用できるトクトク切符の範囲が広い
・「J-WESTカード会員」だと満50歳以上は自動で「おとなび会員」になりさらにお得
・チケット発券前なら予約を何度でも変更可能
3)レール&レンタカー予約(JR全社共通)
・「駅レンタカー」とJRの列車チケットをセットにしたお得な割引切符
・同乗者全員のJR乗車券が20%割引、特急券とグリーン料金が10%割引になる
障がい者割引・シニア割も活用する!
介護帰省する人・される人に障がいがあったり、60歳以上であれば、「介護割引」の名称のサービスでなくても障がい者割やシニア割の利用でお得になります。
帰省や、一時的に被介護者を介護者の元へ呼び寄せるときなどに活用しましょう。
大手のANAやJALの障がい者割引やシニア用の割引サービスだけでなく、格安航空会社(LCC)でも利用できます。
たとえばLCCのスカイマークでは障がいのある方と介護人が利用できる「障がい者割引運賃」、60歳以上が利用できる「シニアメイト1」などが用意されています。
ほかにもLCCではソラシドエア、AIR DO(北海道国際航空)でも障がい者割・シニア割を用意しています。
コロナ禍帰省の感染対策にも「割引」の有効利用を
コロナ禍でもやむを得ない理由で帰省を行う必要がある場合は、感染対策にも「割引」を有効利用しましょう。
●実家に宿泊せず「GoToトラベルキャンペーン」で地元の宿に泊まる
コロナ禍で帰省するときは、高齢の親への感染リスクを下げるため、実家には泊まらず「GoToトラベルキャンペーン」を利用して実家近くの宿やホテルに泊まるのも一案です。
特に地方の観光地から少し離れた宿は、比較的に利用者が少なく予約が取りやすい状況なので狙い目です。
●レンタカーを活用
帰省には飛行機や新幹線の利用が多いですが、コロナ禍ではいつもなら「新幹線+JR在来線」で移動するところを「新幹線+レンタカー」で移動するのも感染対策になります。
JRの割引のところでも紹介した「レール&レンタカー予約」なども有効利用しましょう。
レンタカーだと「県内ナンバー」なので、他県ナンバーの車で帰省するよりもコロナ禍の県をまたぐ往来に敏感な方とのトラブルを避けられるメリットもあります。
事前登録で介護割をいつでも使えるようにしておきましょう
介護割引を利用すると遠距離介護でも通常の交通費よりかなりお得に帰省が可能です。
年末年始やお盆などのハイシーズンはそれでも価格が高く席数も制限されたりしますが、その時期以外での遠距離介護の「頻繁な帰省」「定期的な帰省」にはお得に活用可能です。
事前に介護割引適用に必要な申請を行っておき、突然の帰省が必要なときも使えるようにしておくのがおすすめです。
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参考:
国税庁 医療費控除の対象となる医療費(2020年11月17日引用)
ANA 「介護割引」のご案内(2020年3月改訂)(2020年11月15日引用)
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執筆者
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大学の社会福祉専攻を卒業後、内科・リハビリ病棟から精神科まで担う医療法人でソーシャルワーカーを勤めました。医療相談・地域連携をはじめ、入所施設の当直シフトもこなしていました。出産後はライターに転身。我が子の療育先で「やっぱりケアの専門職はすごい!」と感嘆する日々。多くの患者様やご家族の声に向き合った経験を活かし、一般の方には分かりやすい制度や社会資源の説明を、経営者・施設職員・コメディカルの方には明日の実践のヒントとなる情報をお届けします。
保有資格:社会福祉士、精神保健福祉士