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生活保護受給は持ち家でも可能な場合も!必要なら申請をためらわないで

コロナ禍の長期化で困窮する世帯が、生活保護制度への心理的不安や誤解で未申請のまま耐えるケースも見られます。
今回は「持ち家があっても受給できる場合」「親族への扶養照会は必須ではない」など意外と知られていない点・申請のポイントをお伝えします。

知っておきたい正しい「生活保護」の知識

厚労省はコロナ禍で「生活保護はためらわず申請を」と呼びかけ!

行き詰まってしまう前に迷わず相談を

コロナ禍の長引く2020年12月下旬、厚生労働省サイトには「生活保護の申請は国民の権利です」「ためらわずにご相談ください」とかつてない呼びかけが掲示されました。

厚生労働省ホームページ「生活保護を申請したい方へ」

これほどまでに厚生労働省が強く生活保護申請をPRするのは異例の状況です。
生活保護を受給すると批判を受けるケースもあり、生活が困窮しているにもかかわらず、必要な人が生活保護を申請しない状況が危惧されています。
確かにバッシングする人もいますが、なかには制度への誤解から生じるものもあります。
必要な人が安心して申請できるよう、制度の誤解されやすいポイントをお伝えします。

【生活保護の受給要件】持ち家や車はどうなる?

受給するなら家を売らないとダメ?

生活保護を受給できる条件はわかりやすくいうと以下の2点です。

  1. 1)世帯員全員が「利用し得る資産、能力その他あらゆるもの」を、その最低限度の生活の維持のために活用している
  2. 2)それでもなお(扶養義務者による扶養を含めても)、最低限度の生活を営めない貧困状態である

つまり保護より先に利用できる年金や手当を受け、資産は売却し、親族の扶養を受けられれば受け、働けるなら能力に合わせ働いている必要があります。
このため「生活保護を受けるなら車も家も絶対売らないといけない」「健康なら受けられない」という間違ったイメージができています。
しかし冒頭でご紹介した厚生労働省ホームページの呼びかけにも明記されている通り、生活保護を受けるときに持ち家や車の保有が認められることもあるのです。

●持ち家は絶対手離さなくてはいけない訳じゃない!

持ち家は必ずしも売却を求められるとは限りません。
生活保護希望者の持ち家が「申請する本人の住む家」であり「売却するよりそのまま住み続けるほうが転居費用や家賃より安くつく」場合、必ずしも家の処分を求められません。
(居住用でない家や、一等地に建つなど評価額が著しく高い不動産だと判断された場合は売却を求められることがあります。)
もちろん細かな条件はありますが「持ち家だから保護は受けられない」とあきらめず、窓口に確認してみてください。
※売却が必要でも家の処分に時間がかかり困窮が急迫していたら、先に受給開始し家を売却できたらその収入を保護受給分の返却に充てることを条件とする「急迫保護」も可能です。

●車も条件によってはそのまま持てる!

生活保護を受けるには車は原則処分しなければいけませんが、例外があります。
以下のような場合は、自動車の保有が認められる場合があります。

  • ○障害があり通院や通勤で必要
  • ○仕事で車が欠かせない(業務用の車/深夜勤務がある仕事など)
  • ○求職し約6カ月以内に就労で保護を脱却し車を使うことが見込まれる
  • ○車がないと通勤や通院が困難な交通の便が悪い地域に住んでいる
     (かつ車が自立に役立っており、車の処分価値が低く、車の維持費を収入が大きく上回り、近隣の自動車普及率が高く車を持っても地域の低所得世帯と均衡を失しない)

勘違いされやすい生活保護のポイント

収入があると受給できないの?

生活保護についてはほかにも世間で勘違いされていることがたくさんあります。
事実を知って誤解に惑わされず、必要なときは申請を検討しましょう。

<生活保護で誤解されやすいこと>

●生活保護は「健康」でも仕事が見つからなければ一時的な受給も可

生活保護は病気や障害などで働けなくなった人のためだけのものではありません。
健康でも社会情勢や景気後退でなかなか仕事が見つからずやむを得ず仕事が見つかるまで一時的に受給する方もいます。
もちろん保護受給の間は求職活動や就労支援に従い活動することが必要です。
しかし「健康なのに生活保護を受けるなんて」と制度を誤解したりバッシングを恐れたりして受給せず心身を追い詰められる人もいます。
働きたくてもどうしても仕事に就けない・体調を崩し今はどうしても働けないという状況なら、一時的に保護を受け命と生活を守り、また状況が回復したら保護を抜けましょう。

●親族への扶養照会は必須ではないし、親族からの支援を強制されない

保護申請すると扶養義務者である親類(3親等)に「金銭的支援が可能か?」と照会書類が送られます。
しかしこの扶養照会は必須ではなく、「DVを受け逃れている」「音信不通で明らかに交流が断絶している」といった事情があれば照会は要りません。
厚生労働省のサイトにも「同居していない親族に相談してからでないと申請できない、ということはありません」と明記されています。
なおもしも親族照会が送られても、その親族が余裕はなく「支援できない」と回答すれば、扶養義務があるといえど金銭的な支援を強制されることはありません。

●年金や仕事の収入で足りない分だけ受給も可能

生活保護は完全に無職・無収入でなければ受けられないというのは誤解です。
現在アルバイト収入や年金があっても、その金額が厚生労働省が定める最低生活費の基準額(地域・世帯数・年齢による)より低ければ差額分だけ保護を受けることができます。
(基準額は東京都23区の高齢単身世帯で約13~14万円くらい)
たとえばパート代が激減し最低生活費に届かなくなったがほかに仕事が見つからない場合、あるいは障害年金だけでは最低生活費に届かない場合などは、差額を保護費で受給できます。

●生活保護になっても介護保険サービスは受けられる

現在介護保険で介護サービスを受けている場合、生活保護になっても介護保険のサービスは利用可能です。
月々の介護保険料は生活保護の「生活扶助」に加算され、福祉事務所が保護費から天引きします。
介護サービス利用費用も保護費(介護扶助)が直接事業者へ支払われ、事業者から見ると支払元が変わっただけなので保護以前とサービスの質に差を付けることもありません。
(ただし施設では大部屋になる条件がつけられることはあります。)

●同居者がいても同じ世帯の「困窮者」のみ生活保護を受給できるケースも

生活保護は原則として介護保険のように同居する親などを「世帯分離」(同居は継続するが手続き上で世帯を分けること)ができません。
しかし例外があり、世帯単位で保護するより個人で保護したほうが世帯全体の自立につながる場合、同居している親だけ世帯分離して保護を受けることも可能です。
たとえば、寝たきりや重度障害で常に介護を要する困窮者(無年金など)と、同居家族の収入も最低生活費の基準額ギリギリの世帯の場合。
そのままだと家族全体が保護対象になる可能性があれば、それを防ぐために個人を世帯分離して保護するのが妥当とされます。
同様の理由で、老人ホームなど施設入所している人を世帯分離して保護しなければその世帯全体が保護の対象になる状況でも、世帯分離の考え方が認められる場合があります。

申請しても受け付けてくれない!?「水際作戦」に遭遇した場合の対処法

生活保護申請は国民の権利です

生活保護の申請は国民の権利なのですが、実際には福祉事務所など生活保護窓口において申請をあきらめさせるような職員の誘導が行われるケースがあります。
これは通称「水際作戦」と呼ばれ、生活保護の担当職員は異動が多く必ずしも福祉の知識がある人ばかりではないので、間違った認識で対応される場合があるのです。
もちろん多くの市町村担当職員は親身に対応してくれますし、あってはならないことですが、新人や不慣れな職員が間違った返答をし申請希望者があきらめてしまうことも。
万一こうしたケースに遭った場合、以下の方法で対応が改善することがあります。

<水際作戦への対処法>

  1. 1)納得のいかない回答の場合、職員の上長に確認を求める
  2. 2)担当ケアマネジャーやかかりつけ病院のソーシャルワーカーなどがいれば「こういう人が申請に行きますがいつ行けばよくわかる職員がいますか」とアポ取りしてもらう
    (同行や問い合わせしてもらえる場合もある)
  3. 3)生活保護希望者の支援団体や弁護士(法テラスなど)に同行か問い合わせを依頼

また国はコロナ禍の2020年度に生活保護窓口の適切な対応を求める通知を発信しているので、コロナ禍ではこれらを提示し真摯な対応を求めることもよいでしょう。
厚生労働省社会・援護局保護課「現下の状況における適切な保護の実施について」
いずれにしても、生活保護申請は権利なので窓口は拒否できません。
必要なときは友人でもいいので第三者に同席してもらい、きっぱりと申請する旨を伝えて審査を求めましょう。

必要なら生活保護はためらわないで申請を!

生活保護の申請は国民なら誰でもできる権利を持っています。
一時的に受給し、また仕事が見つかったり体調が良くなったりして保護を脱して自活している人も筆者は見てきました。
困ったときは制度を頼り、しっかり命と生活を心を守り、状況改善したあとに社会や周りの人に自分のできることを返していければいいと考えます。
必要な状況ならためらわず窓口に相談し、大切な命と生活を守っていただければ幸いです。

お金の困りごとについての関連記事:
有料老人ホームの費用が払えない…年金でまかなえないときの対処法4つ
高齢者が老後資金を借りられるリバースモーゲージとは?メリット・リスクを解説

参考:
厚生労働省 「生活保護制度」に関するQ&A(2021年1月19日引用)
厚生労働省 生活保護法による保護の実施要領について(2021年1月22日引用)
厚生労働省 生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて(2021年1月23日引用)
厚生労働省 「生活保護法による保護の実施要領について」の一部改正について(通知)(2021年1月23日引用)
第11回 社会保障審議会福祉部会 生活保護制度の在り方に関する専門委員会説明資料 参考資料2「不動産の保有の考え方」(2021年1月19日引用)
厚生労働省社会・援護局保護課  生活保護制度の概要等について(2021年1月23日引用)
福島県相双保健福祉事務所 生活保護について(2021年1月19日引用)
北海道枝幸町 「生活保護のしおり」(2021年1月19日引用)
奈良市 生活保護 活用できる資産・制度等はありませんか(2021年1月19日引用)
神奈川県逗子市 よくある質問と回答「生活保護を受給中に自動車の保有は認められますか。」(2021年1月23日引用)
NPO法人 POSSE 生活相談Q&A(2021年1月23日引用)

  • 執筆者

    湖上ゆうこ

  • 大学の社会福祉専攻を卒業後、内科・リハビリ病棟から精神科まで担う医療法人でソーシャルワーカーを勤めました。医療相談・地域連携をはじめ、入所施設の当直シフトもこなしていました。出産後はライターに転身。我が子の療育先で「やっぱりケアの専門職はすごい!」と感嘆する日々。多くの患者様やご家族の声に向き合った経験を活かし、一般の方には分かりやすい制度や社会資源の説明を、経営者・施設職員・コメディカルの方には明日の実践のヒントとなる情報をお届けします。

    保有資格:社会福祉士、精神保健福祉士

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