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IoTやAIを使った軽度認知障害を早期発見する研究の現状と将来

軽度認知障害は認知症の入り口といわれていますが、早期発見し適切に対処すれば改善に導くことも可能です。
現在IoTやAIを活用し、軽度認知障害の兆候を検知する研究が進んでいます。
本記事ではこの点を中心に解説し、将来への期待を考えていきます。

認知症診断におけるIoT・AIの活用

軽度認知障害は、早期発見が重要

軽度認知障害は、早期発見が重要

軽度認知障害(MCI)は、早期発見が重要です。
ここでは主な症状や注意が必要なポイントも含めて、解説していきます。

●これって認知症?それぞれの違いを解説

軽度認知障害は、認知症ではありません。
ただし物忘れなど、なんらかの認知機能の低下が見られることは共通していますから、どちらも医療機関にかかる必要がある状態です。

主な相違点は、日常生活に支障が生じているかという点が挙げられます。
たとえば物忘れ以外に症状がなく、本人は自覚していて日常生活にも支障がない場合は、老化または軽度認知障害という可能性も十分にあります。
一方で周りから見て明らかに認知症の症状が見られるにもかかわらず、本人の自覚がない場合は注意が必要です。

もっとも軽度認知障害か認知症か、それとも老化の範囲内なのかは、医師による診断が必要です。

●早期発見が重要な理由

早期発見が重要な理由

軽度認知障害は「認知症の予備軍」「認知症の前段階」と呼ばれています。
それは一定割合の方が、軽度認知障害から認知症になるといわれているためです。
厚生労働省によると、年間で10~15%程度の方が認知症に移行すると公表しています。

もし軽度認知障害の段階で発見し適切な治療を受ければ、以下のいずれかのメリットが得られる可能性があります。

  • ○認知症の発症を遅らせる
  • ○認知症を発症せずに済む
  • ○以前の状態に戻せる

認知症に進んでしまうと、完全に治すことはなかなか難しいもの。
軽度認知障害の段階で早期発見することは、より良い老後を過ごす重要なポイントとなります。

●注意したい兆候や症状

周りの方のなかには、そそっかしい方やよく予定を忘れる方、忘れ物をよくする方がいるかもしれません。
軽度認知障害の症状は以下のような、さまざまな形で現れます。

  1. 1)片付けたものがどこにあるのか見つけることができない
  2. 2)同じことを何度も言うようになった
  3. 3)何かに取り組んでも途中までしか続かなくなった
  4. 4)きれい好きだったのに部屋を散らかすようになった
  5. 5)今まで好きなことだったのに関心がなくなった
  6. 6)料理の味付けが変わった

引用元:OGスマイル 軽度認知障害(MCI)は治る?認知症に進行させないために必要な対策は?

高齢者が上記の行動を取ると、周りの方は「これって軽度認知障害?」と思うかもしれません。
しかし上記の行動が見られるからといって、直ちに軽度認知障害や認知症であるとは限りません。
それは、もともとこのような性格や行動パターンであるかもしれないためです。
軽率に「認知症」などと言ってしまうと、高齢者の心を傷つけてしまうかもしれません。

以下に示す2つの傾向が継続することは、注意が必要なサインに挙げられます。

  1. 1)以前よりも物忘れしやすくなった。または複雑なことができなくなるなど、行動が変わった
  2. 2)同じ世代の方とくらべて、物忘れが進んでいること

上記の変化は、本人ではなかなか気づかない場合もあります。
もし「そういえばこの頃、昔と行動が変わった」などの傾向が見られた場合は、周りの方が注意して観察することが重要です。
かかりつけ医や専門医、地域包括支援センターに相談することも良い方法です。

IoTやAIを活用し、軽度認知障害を検知する研究が進んでいる

IoTやAIを活用し、軽度認知障害を検知する研究が進んでいる

認知機能の低下はいつの間にか始まり進行するため、初めのころは本人だけでなく、周りの方もなかなか気づかないかもしれません。
このためIoTやAIを活用し、軽度認知障害を検知する研究が進んでいます。

ここでは2つの例を取り上げ、どのように進められているか解説します。

●パナソニックによる実証実験

パナソニックでは高齢者の認知機能低下に関する、さまざまな実験や調査を行っています。
そのなかの1つにセンサーを用いて以下の情報を収集し、認知機能の低下を検出するものがあります。
この調査は、パナソニックグループのサービス付き高齢者住宅で実施されました。

取得データ センサーを埋め込み、情報を取得する機器
室内の活動量 エアコン
睡眠状態 ベッドのマットレスの下
回路ごとの電力使用量 分電盤
リモコン操作データ テレビ本体
音声データ ナースコール
歩行データ 廊下の天井に設置したカメラ

参考:阿部賢吾, 松村吉浩, 他 軽度な認知機能低下を示す高齢者の早期検知

この結果、認知機能が低下すると以下の現象が見られるという結果を得ています。

  • ○外出する割合が低下する
  • ○リモコンのボタンを押す時間が2~3秒程度になる。速く押す操作や長押しする操作が減る
  • ○睡眠障害により、深夜から早朝の活動量が増加する

もっともさまざまな家電にセンサーを張り巡らせることは、新築の住宅や設備の整った施設でない限り難しいかもしれません。
しかし家電を使って操作情報などを収集することにより、軽度認知障害を早期に検知できる可能性を示す結果といえます。

またパナソニックは2020年1月に、国立循環器病研究センターと共同で軽度認知障害の早期発見に関する研究を行うことを公表しました。
この共同研究ではドアの開閉や電力の使用状況などをIoTを使って収集し、生活習慣の特徴と認知機能の変化との関係を分析するとしています。

●加古川市における実証実験

加古川市における実証実験

加古川市と綜合警備保障、NTT西日本、ジョージ・アンド・ショーンの4社は、加古川市においてAIやIoT機器を活用した「健康寿命延伸サービスの実証実験」を行っています。
期間は2019年8月から2021年3月までの予定であり、現在実証実験中です。

まず参加者に対して見守りタグ「biblle(ビブル)」などのIoT機器を活用し、以下の情報を収集します。

  • ○行動
  • ○睡眠
  • ○室内情報

biblleは身の回りの物につけておける「紛失防止タグ」の役割も持っています。
この情報を用いることで室内だけでなく、外出時でもどこまで行動したか把握できます。

収集した情報はAIで解析され、今後の施策に役立てることにしています。
また参加者に対しては、定期的にスクリーニングテストの結果を提供します。
これにより、健康や認知症への意識を高めてもらう効果が期待できます。

IoTやAIの活用で期待されること

IoTやAIの活用で期待されること

IoTやAIの活用で軽度認知障害の可能性を検知することにより、期待されることはいくつかあります。
ここでは2つのポイントを取り上げ、どのようなメリットが期待できるか考えます。

●客観的なデータや情報をもとに、早期の受診につなげられる

軽度認知障害の始まりはなんらかの形で気づいても、それは主観的な情報である場合も多いもの。
このため「気のせい」と思い、見逃してしまうかもしれません。
また周りの方が気づいても、以下のような会話がされると見逃してしまいがちです。

  • 「お父さん、最近物忘れが多くなったように思うのだけど」
  • 「そうかな?何か変わったようには思わないし、元気だよ」

ここでIoTやAIで分析されたデータにより「軽度認知障害の可能性」を示すデータが提供されると、状況が変わる可能性があります。
それは第三者により、客観的かつ科学に基づいた「医療機関への受診の勧め」が提示されるためです。
家族はこの情報を活用して説得し、早期の受診につなげやすくするメリットがあります。

●安心を買える

認知症は、意外と身近なものです。
内閣府が2015年10月に公表した「認知症に関する世論調査」によると、以下の通り多くの方が認知症の方と接しているデータが得られています。

  • ○認知症の方と接したことがある方は、全体の56.4%
  • ○認知症の方と接したことがある方のうち、家族が認知症の方は43.5%(全体の24.5%)

参考:内閣府 「認知症に関する世論調査」の概要

このデータを見て、「私も将来、認知症になってしまうかも」と不安に感じる方は多いかもしれません。
しかし「老後はいつか認知症になってしまう。どうしよう」と日々不安を抱えながら過ごすことも、精神衛生上よくありません。

加古川市で行っている実証実験は、見守りサービスに関連することが特徴です。
もし軽度認知障害のサインを知らせてくれるならば、それまでは安心して暮らせます。
また早期に発見できれば異常も軽度であるため、生活への影響も少なくて済むこともメリットに挙げられます。

軽度認知障害の早期発見に向けて、今後の研究結果に期待

もしIoTやAIで軽度認知障害を次々と発見できる時代になれば、早期に治療を受ける方の増加が期待できます。
これにより認知症患者の増加スピードを抑えられる、または減少できる可能性があります。
また軽度認知障害のサインを早期に発見できることにより、それまでは安心して暮らせる点も見逃せないメリットです。

軽度認知障害の早期発見にはさまざまな研究が行われていますから、今後の研究成果に期待しましょう。

参考:
朝田隆(監修): 認知症かな?と思ったらすぐ読む本. 技術評論社, 東京, 2017, pp.36-37,46-49.
ファンメディケーション: 60分でわかる!認知症対策. 技術評論社, 東京, 2020, pp.38-41.
井上憲: 高齢者認知症/MCI早期検知による健康寿命延伸サービス. 自動認識33(6): 12-15, 2020.
オージー技研 軽度認知障害(MCI)は治る?認知症に進行させないために必要な対策は?(2021年1月25日引用)
オージー技研 軽度認知機能障害の症状とは?介護施設のスタッフが知っておきたいサインを解説(2021年1月25日引用)
厚生労働省 e-ヘルスネット 軽度認知障害(2021年1月25日引用)
ひろかわクリニック MCI軽度認知障害/認知症の予防から治療まで(2021年1月25日引用)
ひろかわクリニック 品川駅前MCI相談室(2021年1月26日引用)
成本迅 認知症のステージ毎に起こりうる生活障害の理解(2021年1月25日引用)
阿部賢吾, 松村吉浩, 他 軽度な認知機能低下を示す高齢者の早期検知(2021年1月25日引用)
パナソニック 国立循環器病研究センターと軽度認知障害(MCI)の早期発見に関する共同研究を開始(2021年1月26日引用)
ジョージ・アンド・ショーン 見守りサービスにおける健康寿命延伸サービスの実証実験の開始について~加古川スマートシティプロジェクト「見守りサービス」の更なる発展に向けて~(2021年1月25日引用)
ジョージ・アンド・ショーン biblleについて(2021年1月25日引用)
内閣府 「認知症に関する世論調査」の概要(2021年1月25日引用)

  • 執筆者

    稗田 恵一

  • 千葉県在住で、ITエンジニアとして約14年間の勤務経験があります。過去には家族が特別養護老人ホームに入所していたこともありました。2018年からは関東にある私大薬学部の模擬患者として、学生の教育にも協力しています。
    現在はライターとして、OG WellnessのほかにもIT系のWebサイトなどで読者に役立つ記事を寄稿しています。

    保有資格:第二種電気工事士、テクニカルエンジニア(システム管理)、初級システムアドミニストレータ

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