認知症の初診はどこがおすすめ?医療機関の種類別に雰囲気や診療の特徴を解説
認知症かも?と思ったら、最初にどこへ受診すればいいのでしょうか。
適切な病院や受診科でないと、思うような診療を受けられない可能性も。
認知症の診察を相談員としてサポートした経験から、初診におすすめの医療機関や特徴・雰囲気を種類別に解説します。
目次
認知症の初診でどこに行くかは受診拒否を防ぐためにも重要!
認知症は適切な治療を受けられれば早期発見・早期治療で落ち着く場合があります。
しかし医療機関によってどの程度の症状まで対応できるかは違いがあり、「暴言暴力に困って苦労して連れていったのにその病院では対応できないと言われた」ということも。
受診先で納得のいく診療を受けられないと、本人も以降の受診を拒否したり、家族もまた違う病院を探して連れていくのが大変です。
症状が軽い人に向く医療機関、症状が激しく暴力などがある人でも対応できる医療機関など、症状の程度に合った受診先を初診で選ぶと、治療をスムーズに進められます。
認知症の診察ができる受診科は?
認知症の診察や治療ができるのは何科なのでしょうか?
いろんな科の呼び方がありますが、下記のような名称の科・診療部門なら認知症に詳しい医師がおり受診が可能です。
- 1)もの忘れ外来
- 2)認知症専門外来
- 3)メンタルクリニック
- 4)精神科・神経内科
- 5)認知症疾患医療センター
特に「認知症専門医」という認定を受けた医師がいるところは認知症にとても詳しい医師がおり、専門的な治療を受けられますのでおすすめです。
病院のホームページで医師の紹介欄に記載されていることもあります。
症状の程度別に初診でおすすめの医療機関とその特徴
次に医療機関の種類ごとにどんな雰囲気や設備の違いがあるのか、それぞれ初診時にどのくらいの症状の程度なら受診できるかを説明します。
●かかりつけ医
暴力などの激しい症状がなければ、かかりつけの内科病院などへ通院したときに「実は最近物忘れでこんなことが」と相談もできます。
病院によっては家族だけ受診し相談することを事前電話で了解してくれるところも。
そこから詳しい検査や専門の治療が必要なら紹介状を書いてもらえたり、患者本人が納得できるように検査の必要性をかかりつけ医から説明してくれたりすることも。
<かかりつけ医の特徴>
- 1)信頼する医師の説明は本人も不安が少なく紹介先への受診がスムーズにいきやすい
- 2)かかりつけ医はこれまでの病歴や受診歴・服薬にも詳しく、そこからの紹介状があると専門病院でも診断や治療方針を決めやすい
- 3)かかりつけ医からの紹介状があると紹介先の病院で改めて聞き取ることが減り、受診時間が減って本人への負担も軽くなる
- 4)大きな病院に受診するときにかかりつけ医の紹介状があると「選定療養費」をとられない
●メンタルクリニック・心療内科クリニック・神経内科クリニック
暴力など激しい症状がなければ、メンタルクリニック・心療内科・神経内科などのクリニック(診療所)にも受診できます。
ホームページを確認し診療内容に「認知症」「もの忘れ」「メモリー外来」などと記載があれば受診が可能です。
<メンタルクリニックなどの特徴>
- 1)待合室も静かでリラックスできる音楽が流れていたり、氏名を呼ばず番号で呼ぶなど個人情報に配慮されていたりするので、安心して受診できる
- 2)入院設備がないか少ないので、入院が必要なほど症状の悪い患者が少なく、比較的落ち着いた症状の方が通っているので、本人が不安になりにくい
- 3)スタッフが少人数で医師も一人の場合が多く、毎回同じ医師と話せる
- 4)クリニックにはMRIなど診断に使う検査機器がないこともある
- 5)MRIなどを用いた診断が必要だと専門病院に紹介してもらえる。または検査を大きな病院に依頼して、診断後の治療はクリニックで継続できる場合も
- 6)街中の便利な場所にあったり、名称が診療科のわからないネーミングだったり、ビルの中なので入るところを見られにくいなど、受診しやすい工夫がされている
●総合病院の精神科・もの忘れ外来
大学病院や大きな総合病院の中にも「もの忘れ外来」や「精神科」がある場合があります。
<総合病院の中の精神科・もの忘れ外来の特徴>
- 1)所属する精神科医の人数が多く、特に大学病院では最新の治療や診断が受けられる
- 2)内科などほかの疾患で通院したときに相談すれば、こうした科の予約をとってくれる場合がある
- 3)入院中のもの忘れ発症にも対応してくれる場合もあり、予防や症状の進行をゆっくりにするリハビリを受けることもできる
- 4)暴力や徘徊が激しいと設備面で対応が難しく専門病院を紹介されることも
- 5)「精神科」と大きく窓口に掲げられていることもあり、本人が受診を拒む可能性もあるので医師らと受診の誘導に工夫が必要
●精神科病院
病院名に「精神科」となくても、診療科目を「精神科」「神経内科」「内科」「リハビリテーション科」などに限った大きな病院は、認知症を含む精神疾患を主に治療する病院です。
<精神科病院の特徴>
- 1)施錠できる入院病棟や専門知識のある人員があり、暴力や激しい徘徊などにも対応可能
- 2)ほかの精神疾患とは別で認知症に特化した治療病棟や療養のための病棟があるところも
- 3)症状がひどいとき・軽減したときなど症状の変化に応じて本人が過ごしやすい病棟に移りながら適切な治療を受けられる
- 4)治療で症状が安定すると在宅やほかの介護系施設に紹介転院できることも
- 5)認知症のリハビリができるスタッフが専門の医師とともに心身の改善を図ってくれ、精神保健福祉士がおり、本人の権利擁護も法律に従いしっかり守られる
- 6)昔からある精神科病院だと本人が世間体を気にして通院を拒む可能性もあるが、まずは併設のデイケアや訪問看護の利用から信頼を築くことも可能
●認知症疾患医療センター
認知症疾患医療センターは厚生労働省が全国の都道府県や指定都市の病院の中から指定している、認知症専門医療の中核機関です。
認知症に詳しい専門の医師と専門スタッフがおり、主に実績とノウハウのある精神科の専門病院が指定されていて、地域全体の認知症理解に向けた啓発も行っています。
<認知症疾患医療センターの特徴>
- 1)「レビー小体型」など認知症のより詳しい判別診断が可能なところも
(センターにMRIなどがなくても連携病院に検査を手配し正確な診断を行う) - 2)身体合併症や激しい症状(暴力など)がある場合も診察・受診調整が可能
- 3)かかりつけ医からの紹介や事前予約が要る場合も
- 4)相談員が介護保険申請などの困りごとの相談にものってくれる
- 5)地域の他病院、介護施設、自治体、地域包括支援センターとも連携して支えてくれる
(地域包括支援センターは、介護が必要な高齢者の多様な相談にのってくれる窓口) - 6)電話相談も相談員が受け付けるので、いきなりの受診に抵抗がある人やかかりつけ医のない人も相談可能
⇒以上の特徴から、症状に応じた初診におすすめの医療機関をまとめると
軽度の症状 | かかりつけ医・メンタルクリニック・神経内科クリニックなど |
---|---|
暴言や暴力・徘徊がひどい | 認知症疾患医療センター・精神科病院など |
内科の疾患もある | かかりつけ医・総合病院・認知症疾患医療センターなど |
となります。
認知症で初めて受診するときのポイント
では実際認知症の初診をするときに気をつけたいポイントとは?
うまく初診が済むためのコツは以下を参考にしてください。
1)受診に付き添う家族は、具体的な症状と出始めた時期を簡潔に紙に書き医師に見せる
(受付で渡しておいたり、看護師などの問診時に渡してもよい)
→本人の前で詳しく症状を話すことが減りプライドを守れ、医療者もわかりやすい
2)受診を本人に勧めるときは「検査」「認知症」という言葉を使わず、内科的治療に絡めて受診を勧めることも有効
※こちらの記事も参考にしてください
認知症の受診拒否にどう対応する?家族を上手に病院へ連れていくためのコツ
3)暴力が強い場合、対応の難しい病院もあるので予約の電話をするときに確認する
4)暴力など激しい症状があり、どうしても本人の受診が困難な場合、認知症疾患医療センターや精神科専門病院に連絡相談するか、地域包括支援センターを介して受診相談も可能
5)本人や家族が病院にどうしても行きにくいなら、市町村の「こころの相談」窓口でも無料で地域の精神科医師に相談できるのでそこからスタートするのもアリ
キーポイントは認知症患者本人に合う医療機関探し
認知症は家族にとっても心の動揺が大きいものですが、当事者である本人も大きな不安の中にいます。
本人に合う医療スタッフとの出会いが、安心して治療を受け症状が落ち着く第一歩です。
今はネットの口コミもたくさんありますし、ホームページに情報公開している病院も増えており、地域包括支援センターでも介護サービスを含め医療福祉の情報を教えてもらえます。
気になる医療機関があればまずは電話して受診できるか聞いてみてください。
参考:
東京都福祉保健局 とうきょう認知症ナビ 東京都認知症疾患医療センター(2021年1月25日引用)
-
執筆者
-
大学の社会福祉専攻を卒業後、内科・リハビリ病棟から精神科まで担う医療法人でソーシャルワーカーを勤めました。医療相談・地域連携をはじめ、入所施設の当直シフトもこなしていました。出産後はライターに転身。我が子の療育先で「やっぱりケアの専門職はすごい!」と感嘆する日々。多くの患者様やご家族の声に向き合った経験を活かし、一般の方には分かりやすい制度や社会資源の説明を、経営者・施設職員・コメディカルの方には明日の実践のヒントとなる情報をお届けします。
保有資格:社会福祉士、精神保健福祉士