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科学技術

新しい交通手段・ロボタクシー。その特徴と魅力に迫り、予想される未来を考える

2020年代に入り、ロボタクシーのニュースを見かけるようになりました。
ロボタクシーはタクシーが進化したものととらえがちですが、大きく異なる内容もあります。
本記事では実用化の見通しやメリットを解説し、予想される未来を考えていきます。

運転手がいないのに走る車 ロボタクシーの現状と未来

今までの常識を覆す、ロボタクシーとはどんなもの?

車を止めようと踏み込んだペダルがアクセルペダルで大きな事故に そんな事故を防ぐ自動運転

ロボタクシーは、皆さまが今まで持っている「タクシー」や「乗用車」の常識を大きく覆す乗り物です。
IT技術をふんだんに使う乗り物ということもあり、複数のメーカーが開発に取り組んでいます。
本記事ではまず、ロボタクシーの特徴と現状について解説していきます。

●運転手だけでなく、ハンドルやペダルも不要

ロボタクシーはIT技術やAIを活用し、適切な運転を行いながら利用者を目的地へ運ぶ乗り物です。
完全な自動運転であれば、運転手の同乗は必要ありません。
その際は車内で運転操作を行わずに済むため、ハンドルやペダルも不要となります。

●利用者にとって使いやすいデザインが可能

一般のタクシーでは、車内のレイアウトも一定の制約を受けます。
たとえば、運転席を後ろ向きに設置することはできません。
しかしロボタクシーでは運転席が必要ないため、以下に挙げる斬新なデザインも行えます。

  • ○客席をすべて向かい合わせにできる
  • ○前後で対称的な(見た目では前後がわからない)デザインが可能

家族やグループで乗車する場合は、会話もはずむことでしょう。
ロボタクシーでは、より利用者にとって使いやすいデザインが可能です。

●複数のメーカーが取り組んでいる

ロボタクシーには以下の通り、複数のメーカーが取り組んでいます。

  • ○Zoox(ズークス)
  • ○Cruise(クルーズ)
  • ○Waymo(ウェイモ)

それぞれの特徴について、簡単に確認していきましょう。

メーカー 特徴 開発状況
Zoox Amazon傘下。4人乗りのテスト走行動画を公開。最高速度120km、連続16時間の走行が可能 開発中
Cruise GM傘下。都市中心部など、多種多様な車が行き交う道路でも自動運転が可能 開発中
2021年1月に、ロボタクシー専用車両 Cruise Origin を発表
Waymo Google系列。車両の360度監視や、物体の方角や距離(300m以上先まで)、大きさを判別可能 2020年10月8日から、アリゾナ州フェニックスで一般客向けのサービスを開始(Waymo One)

国外かつ地域限定ではあるものの、すでにロボタクシーのサービスが開始されていることは注目すべきポイントです。

日本でも2030年頃には、ロボタクシーが普及する可能性がある

AIで全ての操作を管理

ロボタクシーを含む無人運転については、国の「官民ITS構想・ロードマップ2020」でも取り上げられています。
経済産業省・国土交通省「自動走行ビジネス検討会」によると、人や車、自転車等が混在する生活道路においても、2026年以降にサービスが実現する可能性があるとしています。

実際にロボタクシーがいつから交通手段の選択肢に入るのかについては、将来の技術開発や規制緩和の状況などにより大きく変わります。
それでも2030年頃になれば、街のあちこちでロボタクシーが駆け回っている可能性はあります。

ロボタクシーを活用するメリット

ロボタクシーはサービスを受ける側だけでなく、サービスを提供する側にもメリットがある移動手段です。
ここでは3つのメリットを取り上げ、詳しく解説します。

●タクシーよりも料金を下げられる

ロボタクシーが普及した場合、利用料金は乗務員が運転するタクシーよりも下がることが期待できます。
それは以下の通り、タクシーにかかる経費のうち人件費が7割前後を占めているためです。

年度 2003年度 2014年度
人件費 75.2% 69.6%
燃料費 6.0% 9.2%
車両修繕費・償却費 4.9% 4.4%
その他 13.9% 16.8%

引用:国土交通省 タクシー事業の実態 p1
国土交通省 タクシーサービスの改善による利用者利便の向上 p8

ロボタクシーの場合は、運転手が不要。
一方でコールセンターやオペレーションセンターなどの設備は欠かせないため、人件費をゼロとするわけにはいきません。
それでも少ない人数でオペレーションできるため、人件費の大幅な削減が可能です。

●車を持たない方でも、シームレスな移動が可能

車を持たない方が移動する場合、現状では以下の交通手段を用いることになります。

  • ○鉄道
  • ○バス
  • ○タクシー
  • ○自転車
  • ○徒歩
  • ○ほかの方に乗せてもらう

東京のように鉄道やバスといった公共交通機関が網の目のように張り巡らされ、本数も多い場所では、行きたい場所へスムーズに移動できます。
一方で地方や郊外では1日に数本、朝から日中のみ運行という地域も珍しくありません。
またタクシーは費用がかかり、自転車や徒歩では移動できる距離に限りがあります。

この結果、地方や郊外では以下どちらかの選択を迫られます。

  • ○都合の良いタイミングで移動できない不便
  • ○費用が高くなる不便

ロボタクシーならばタクシーよりも料金が安価で済み、都合の良いタイミングで利用できます。
車を持たない方でも、シームレスな移動ができるサービスです。

●車さえ準備できれば、チャンスを逃さず売上につなげられる

ロボタクシーは、サービスを提供する側にも以下のメリットがあります。

  • ○乗務員を採用する手間や人件費がかからない
  • ○配車希望が多い時間帯は、保有する車をフル活用することも可能

乗務員のシフトや休日・休暇を考慮する必要がないため、車さえあれば顧客の要望にこたえて配車し、売上を上げることが可能です。
もちろん、人件費の節約につながることも重要なポイントに挙げられます。

ロボタクシーの普及で予想される未来

狭い道路が入り組んだ町中でも自由自在に移動できる未来

ロボタクシーが普及すると、どのような未来が待っているのでしょうか。
未来の予測には不確定要素がありますが、ここでは公表されている情報をもとに、考えられる未来を考えていきます。

●都市部でも地方でも運転免許なしで生活可能

ロボタクシーが実用化されると、ちょっとした買い物程度であれば安価な料金で移動できるようになります。
都市部だけでなく地方にお住まいの方でも、運転免許なしで日々の生活を送ることが可能に。
「運転に不安がある」方でも便利な移動手段が確保できれば、思い切って車を手放す動機となるでしょう。

●高齢者でもIT機器を使いこなせることが必須の時代に

ロボタクシーの利用にはスマートフォンアプリなど、IT機器の活用が求められます。
キャッシュレス決済も普通となるでしょう。
スムーズな移動を実現するためには高齢者も努力し、IT機器を使いこなせるスキルを身につけなければなりません。

●自治体の施策が、ロボタクシー料金の助成へ一本化される可能性も

多くの自治体では、自動車を持たない交通弱者に対して助成や補助を行っています。
内容は自治体により大きく異なりますが、一例として以下の項目が挙げられます。

  • ○高齢者に対し、タクシー券を配布
  • ○バスや路面電車の利用運賃を、一定額まで助成
  • ○バス会社に対し、運行経費の一部を補助

一方でロボタクシーが普及すると、以下のような声が上がるかもしれません。

  • ○ロボタクシーのほうが安くて便利
  • ○不便で乗車人員も少ないバス路線を維持する必要はあるか

そのため将来は「費用対効果」を理由として、自治体の施策がロボタクシー料金の助成に一本化される可能性はあります。

●タクシーやバス、鉄道の未来

ロボタクシーが普及した時代では、地域ごとの事情に応じて、より最適な移動手段が選択されるようになると考えられます。
ある程度まとまった移動ニーズがある地域は公共交通機関、少人数の移動が多く目的地もばらばらといった地域ではロボタクシーが選ばれやすいといえるでしょう。
このためロボタクシーが普及した後も、都市部を中心に公共交通機関は使われ続けると考えられます。

その理由の1つとして、1km当たりの負担額があります。
JRとタクシー、ロボタクシーそれぞれで、15km移動した場合の運賃を考えてみましょう。

交通手段 運賃 備考
JR東日本 240円 幹線および地方交通線(紙のきっぷ)の運賃を適用
タクシー 5,220円 東京23区の場合
ロボタクシー 1,827円 原価率を現状の35%と仮定して計算

JRの運賃は、タクシーの5%未満。
そのため人件費を削ってみたところで、価格面でロボタクシーが優位に立てるわけではありません。
多くの路線バスとくらべても、運賃が高くなる可能性は少なくありません。

公共交通機関は待たなければならないことがデメリットですが、ある程度以上の運行頻度があれば安さを取るケースも多いでしょう。
従って大量輸送が必要な区間では、これまで通り公共交通期間が使われると考えられます。

一方でまとまった人数での移動がない地域では、ロボタクシーは安くて便利な交通手段となります。
優等列車の停車駅や高速バスターミナルまでは公共交通機関で、そこから先はロボタクシーといった使われ方は、想定されるケースの1つです。
ワンマン列車が1日数本といった路線や、バスが1日数本で乗客数も数人といった地域では、ロボタクシーに置き換わる可能性があります。

なおロボタクシーが普及することは、必ずしもタクシーがなくなることを意味しません。
移動において、人の温かさやフェイス・トゥ・フェイスのサービスを求めるニーズは一定数あります。
既存のタクシーは介護タクシーなど、より人間の特性を生かしたサービスで生き残ることが可能と考えられます。

ロボタクシーは移動の選択肢を増やし、生活を豊かにする

ロボタクシーは、鉄道やバスほど安価にはならない可能性があります。
一方で「タクシーよりも安く、鉄道やバスよりは自由に移動できる」交通手段の位置を確立することは期待できます。

とりわけあなたの都合に合わせて、今よりも安価な料金で移動できることは大きなメリット
特に車を運転しない方にとっては、力強い味方となることでしょう。
移動の選択肢を増やし、あなたの生活を豊かにする交通手段になることが望まれます。

参考:
ハースト婦人画報社 完全自動運転の「EVロボタクシー」がお披露目|アマゾン傘下の「Zoox(ズークス)」(2021年4月19日引用)
時事通信社 「ロボタクシー」を初披露 米アマゾン傘下の自動運転企業(2021年4月19日引用)
Zoox We are building a new kind of transportation(2021年4月19日引用)
Zoox Aicha Evans and Jesse Levinson take the first Zoox ride in San Francisco(2021年4月19日引用)
36Kr GMクルーズ、初の無人自動運転タクシーを発表 10年でコア事業を超えるか(2021年4月19日引用)
ウェッジ 無人タクシーで圧倒的に先行する米国に日本勢が勝てない理由(2021年4月19日引用)
Cruise(2021年4月19日引用)
Cruise Going Driverless, By the Numbers(2021年4月19日引用)
Verizon Media Japan GMの子会社Cruiseが運転手なしの自律走行車公道テストをサンフランシスコで開始(2021年4月19日引用)
Cruise Going driverless in San Francisco(2021年4月19日引用)
Waymo Introducing the 5th-generation Waymo Driver: Informed by experience, designed for scale, engineered to tackle more environments(2021年4月19日引用)
ストロボ グーグル系ウェイモ、自動運転システムの「第5世代」を公表(2021年4月19日引用)
山本康正: リーダーのためのDX超入門 第14回 米国が圧倒する「自動運転」の現在地. 週刊東洋経済2021年2月6日号: 92-93, 2021.
首相官邸 官民ITS構想・ロードマップ2020 pp.46-50,154(2021年4月19日引用)
国土交通省 タクシー事業の実態 p1(2021年4月22日引用)
国土交通省 タクシーサービスの改善による利用者利便の向上 p8(2021年4月22日引用)
アーサー・ディ・リトル・ジャパン モビリティサービスの事業性分析(詳細版)pp.19-20.(2021年4月22日引用)
鋸南町 鋸南町営循環バス時刻表(2021年4月22日引用)
ストロボ 自動運転ラボ 無人タクシー(ロボットタクシー)完全解説!自動運転技術で走行(2021年4月22日引用)
長崎市 令和3年度から高齢者交通費助成の方法が変わります!!(2021年4月22日引用)
千葉県 千葉県バス対策地域協議会第1回分科会協議結果総括表 分科会名:君津分科会 協議年月日:2年3月23日(2021年4月22日引用)
JR東日本 2019年10月1日消費税率引上げに伴う運賃・料金改定のご案内 p1(2021年4月19日引用)
東京ハイヤー・タクシー協会 タクシー運賃料金表(2021年4月19日引用)
朝日インタラクティブ 約3割が「反対」、なぜ介護ロボット導入に賛否が分かれるのか。ウェルクスが「介護ロボット」に関する調査を実施(2021年4月22日引用)
内閣府政府広報室 「介護ロボットに関する特別世論調査」の概要(2021年4月22日引用)

  • 執筆者

    稗田 恵一

  • 千葉県在住で、ITエンジニアとして約14年間の勤務経験があります。過去には家族が特別養護老人ホームに入所していたこともありました。2018年からは関東にある私大薬学部の模擬患者として、学生の教育にも協力しています。
    現在はライターとして、OG WellnessのほかにもIT系のWebサイトなどで読者に役立つ記事を寄稿しています。

    保有資格:第二種電気工事士、テクニカルエンジニア(システム管理)、初級システムアドミニストレータ

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