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高齢者がおむつを使って起こるトラブルとは?安易な使用はとても危険

人は加齢とともに排泄機能が低下し、尿漏れなどの失禁が増えるようになります。
高齢者への対処としては、おむつを使用することが一般的に考えられますが、実はトラブルの多い対策でもあるのです。
「おむつをすれば大丈夫」という発想は危険かもしれません。

おむつトラブルの対処と予防法

高齢者がおむつを使用して起こるトラブル

日本泌尿器科学会によると、女性は体の構造や出産などにより、40歳以上では4割以上が尿失禁を経験しているという結果が出ています。
高齢者になればこの割合は増え、当然男性も例外ではありません。
実際に、どのような問題が発生しやすいのか見ていきましょう。

●肌トラブルは高齢者のおむつ使用で起こりやすい

おむつの中は高温多湿になるため、肌トラブルが起こりやすい環境にあります。
特に高齢になると肌が乾燥しやすく、通常であればバリアの機能を果たす皮膚が弱る傾向にあり、かぶれなどの炎症が起きやすくなります。
長い時間同じおむつを使用していると、カビの一種であるカンジダを中心にさまざまな雑菌が繁殖して、肌だけでなく泌尿器系の感染症リスクも高めます。
また、便や尿は排泄後に弱酸性からアルカリ性に変化し、付着すると肌を弱らせてトラブルが起こりやすい状態にするのです。
基本的にお尻や坐骨周辺のように出っ張っている部分に異常が出やすく、悪化すると「褥瘡(じょくそう)」と呼ばれる床ずれの状態になります。

●排泄機能の低下

おむつを使用することでトイレに行く行為自体が減ってしまうと、排泄に関する機能が全般的に低下しやすくなります。
普段尿意や便意を感じたときには、誰しも失禁しないようにトイレまで我慢をするでしょう。
しかし、おむつに依存した状態になると我慢する必要がありません。
正常な感覚がある内におむつに頼りすぎると、本来はコントロールできていた部分も衰えていくことがあります。
そうなると、尿意や便意を感じにくくなり、我慢する筋力も低下して無意識的に排泄する状態になる場合があるのです。
また、感染症になると排泄コントロールがさらに難しくなり、不調から動けずトイレにも行けない事態になるなど、悪循環にもつながる恐れがあります。

●本人のメンタル的な負担も大きい

「トイレすら自分でできないなんて」「人の手を煩わせたくない」

皆さんが「失禁することがあるので今日からおむつをしてください」といわれたら、どのように感じるでしょうか。
介護する側としては、状態によってはトイレ移動する際に抱えるなど、排泄に関わる介助は負担に感じる部分もあるでしょう。
手間を軽減することや、失禁時でも安心なのでおむつを使用することは悪いことではありませんが、それは本人にとっても精神的な苦痛をともなう可能性があることを忘れてはいけません。

高齢者に起こりやすい排泄障害の原因

排泄障害の原因はさまざまで、同じ失禁でも人によって要因が異なります。
本人が注意していても起こったことに対して、「気をつけて」と不適切な言葉をかけないように正しい知識を身につけておきましょう。

●排尿障害の種類

排尿障害は大きく2つに分けることができます。
おむつ使用に直接的に関わるのは「蓄尿障害」といわれ、排尿を我慢するなど尿をためることが難しい状態です。

  • ○排尿に関わる筋肉が過活動の状態
  • ○膀胱の出口が緩んでいる
  • ○尿道の閉じる力が弱っている など

これらが原因で起こる失禁で、さらに細かく分けることができますので詳細は次項で説明します。
この状態の反対の意味として「排出障害」があり、こちらは排尿がスムーズに行えないという症状です。
主に前立腺肥大などで閉塞状態になったり、椎間板ヘルニアや糖尿病などにより排尿に関わる末梢神経に障害が起こったりすることで発生します。

●尿失禁の種類

腹圧性尿失禁,切迫性尿失禁,機能性尿失禁

尿失禁といっても、実は人によってさまざまな要因がありますので、具体的な種類について見ていきましょう。

  • ○腹圧性尿失禁:特に女性に多く、お腹に力が入ったときに起こる失禁です。骨盤底筋群と呼ばれる排尿を我慢する筋力が弱ることで起こりやすくなります。
  • ○切迫性尿失禁:突然尿意が起こり排尿を我慢できなくなる状態です。前立腺肥大や子宮脱、脳卒中後遺症などが関与している場合があります。
  • ○混合型尿失禁:上記2つが混合した状態です。
  • ○機能性尿失禁:認知機能や身体機能の低下により、トイレへの移動が間に合わない場合を指します。尿意や排尿などの機能は正常です。
  • ○溢流性尿失禁:排出障害により、排尿後であっても残尿感があり溢れるように少量ずつの失禁が続く状態です。

●便失禁について

便失禁の原因は大きく3つに分けることができます。

  • ○漏出性便失禁:便意がなく、意思とは関係なく失禁する状態です。原因は排便に関連する神経の障害や直腸がんなどが考えられます。
  • ○切迫性便失禁:突然の便意を感じて我慢ができない状態です。排便を我慢する筋力の低下、神経の障害、直腸の機能低下などが考えられます。
  • ○混合性便失禁:上記2つの要因が関連しているタイプです。

高齢者は便秘にもなりやすく、薬によるコントロールをすることが多くあります。
その調節がうまくできていない場合にも便失禁の原因となるでしょう。

おむつトラブルの対処と予防法

はくタイプのリハビリパンツ・介助しやすいテープ式おむつ

●状態に適したおむつやパッドを使用する

高齢者用のおむつは、使用する方の状態や生活スタイルによってさまざまな種類があり、適したものを活用することでトラブルを予防できます。

リハビリパンツ

  • ○下着感覚で着用でき、パンツスタイルなので自尊心が保たれやすく導入時にもおすすめ
  • ○失禁が少量、トイレに行ける、生活の中での尿漏れが心配な方に最適
  • ○基本はトイレを利用するので肌トラブルが起こりにくい
  • ○尿とりパッドを使用することで対応量の調整ができ幅広い方に活用できる

テープ式おむつ

  • ○ベッドでの生活が中心、排泄コントロールが難しい、失禁の量が多い方などに適している
  • ○吸収力が高く、尿とりパッドもさまざまな吸収量が販売されていて対応力がある
  • ○介助する側が操作しやすい仕組み

寝たきりなどで長時間の使用が必要なときには、できる限り通気性の良いタイプを利用すると良いでしょう。
コストは若干高くなりますが、肌の状態が悪化すると通院や薬が必要になりますので、結果的には身体にも経済的にも助けになります。
夜間トイレが心配で眠れない状態であれば、吸収量の多い夜用のパッドを利用することも大切です。

●できる限り清潔に保ち異常があれば医師に相談

清潔を保つことが肌トラブル回避の基本です。

ポイントとしては

  • ○洗浄剤を使うのは1日1回程度、洗いすぎは肌を弱らせる
  • ○洗う際はゴシゴシせずに泡で洗い、拭き取る際も押さえるように水分を取る
  • ○こまめなおむつ交換で肌への負担を減らす
  • ○清拭の後に保湿クリームなどを使いスキンケアを行う

高齢者は肌が弱いので強く洗うと傷がつく恐れがあり、傷口からさらに状態を悪化させる可能性があるので注意が必要です。
また、できる限り排泄はトイレを使うようにして、おむつがメインの排泄場所にならないように心がけましょう。
そうすることで、排泄機能の維持やトラブルの予防にもつながります。
毎日必ず状態をチェックし、悪化しているようなら早めに医師へ相談してください。
肌トラブルの原因もさまざまなので、市販品に頼りすぎないことも大事です。

●介護保険サービスを活用

要介護認定を受けていれば介護保険サービスが利用可能

おむつ交換やトイレ介助など、排泄に関する部分は介護の中でも特に負担が大きいです。
要介護認定を受けていれば、介護保険サービスが利用できおむつトラブルを軽減することもできます。

サービスの例としては

  • ○訪問介護で定期的なおむつ交換、清拭、トイレ誘導、入浴などの介護が受けられる
  • ○訪問看護で褥瘡のケアが受けられる
  • ○デイサービスを利用して排泄ケアを受けながら全身機能を高める など

正しいおむつ交換の方法や現状に適した製品の選び方など、アドバイスを受けられるのもメリットです。
また、プロによる介護が提供されるため、家族としても負担が軽減できるでしょう。

排泄介助に不安がある場合は介護保険サービスを検討しよう

高齢になるほど排泄に何らかの不具合が起こりやすく、おむつを利用する方も多くなるでしょう。
しかし、同時に肌トラブルや排泄機能低下などを招く可能性もあるため注意が必要です。
トラブル防止には、清潔な状態をキープすることが重要ですが、家族だけで対応が難しいときは介護保険サービスの活用も検討しましょう。

参考:
日本泌尿器科学会 尿が漏れる・尿失禁がある(2021年7月5日引用)
エリエール 尿漏れのお悩みはここで解決!便漏れ・便失禁の原因と治療について(2021年7月5日引用)
エリエール 大人用おむつの選び方・使い方 大人のおむつかぶれ~原因と対策~(2021年7月5日引用)
みんなの介護 排泄トラブルはQOLの低下に直結する!?…のに、「特に何のケアもしていない」との回答が5割近くも!(2021年7月5日引用)
健康長寿ネット 高齢者の排尿障害と対策(2021年7月5日引用)

  • 執筆者

    大久保 圭祐

  • 総合病院に6年間勤務し、脳神経外科や整形外科のリハビリテーションを中心に、急性期・回復期・慢性期を経験。その後、介護支援専門員の資格を取得して家族と共に介護事業を設立。代表取締役であると同時に、現場では機能訓練指導員・介護職・ケアマネジャーを勤めプレイングマネージャーとして活躍。現在は、経営業務をメインに記事の監修やライターとしても活動中。

    保有資格等:作業療法士、介護福祉士、介護支援専門員

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