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ペットロボットは介護に活用できるのか?期待できる効果について解説

ペットロボットは、孤独感やストレスの軽減に役立つとして介護業界にも注目されています。
しかし、具体的な効果を知らなければ、費用のかかるロボットを簡単に導入することはできません。
期待できる効果や注意点を把握して、必要性をしっかり検討しましょう。

ペットロボットに期待できる効果

ギネスブックにも認定されている メンタルコミットロボット「パロ」

ペットロボットは現在も研究が進められ効果も実証されており、すでに海外では多くの介護施設で導入が開始されています。
特にアザラシ型のロボットである「パロ」は、2002年に癒し効果の高いロボットとしてギネスブックに認定され世界的にも有名です。
このロボットは、2007年にデンマークで本格的に介護分野にて活用され始め、多くの自治体で導入されるようになり、アメリカでも2009年に医療機器として承認されました。
そして、各メーカーでもペットロボットの開発は進められ、現在では豊富な種類と機能が選べるようになっています。
それでは、具体的にどのような効果が期待できるのか確認していきましょう。

●アニマルセラピーと似た効果が期待できる

アニマルセラピーとは、動物を活用して心の安定や活性化を図る治療方法で、医療や介護分野で用いられる手法です。

  • ○ストレスの軽減
  • ○癒しの効果
  • ○孤独感の軽減
  • ○コミュニケーションの拡大
  • ○意欲の向上 など

多くの効果が得られ、高齢者が感じやすい負の感情を改善できるセラピーといえます。
そしてペットロボットでも同様の効果が期待でき、尿検査においてストレス数値の軽減が確認されているのです。
また、コミュニケーションは精神の安定や意欲向上には重要ですが、高齢者はその機会が減少しやすい状況にあります。
言語のやり取りだけではなく、相手の反応に合わせたアクションは非言語的なコミュニケーションとして重要です。
接触や声をかけることで反応するペットロボットは、さまざまなコミュニケーションを行う機会にもなり、他者との会話のきっかけにもなります。
種類によっては、言葉を発するタイプもありますので、実際に会話をしているような感覚で接することも可能です。
ロボットを介護に活用することで、自然とコミュニケーションが拡大して良い刺激になり、触れ合いをとおして心を和ませて笑顔が増え、見ているだけでも孤独感が少なくなるでしょう。

●認知症の予防や改善

認知症の発症や悪化にはストレスが大きく関与しています。

  • 高齢者のストレスの原因には
  • ○独居や周囲との交流が減少することでの孤独感
  • ○身体の衰えや病気などへの不安
  • ○できることが少なくなり自信喪失
  • ○日々の生活に楽しみや刺激が無い など

高齢者の多くは、さまざまなストレスを抱えやすい状況にあり、認知症のリスクを高める可能性があるのです。
これらのストレス要因を軽減することができるペットロボットは、認知症対策としても有効といえます。
拓殖大学の研究によると、認知症の方にペットロボットと触れ合う「ロボットセラピー」を実施したところ、徘徊する回数や時間が減るという結果が見られました。
さらに机を叩くなどの落ち着きのない行動なども減少し、反対にテレビを見るなどの意欲的な行動が増えたということです。
徘徊にはいくつかの原因が考えられていますが、特にストレスや不安感は助長する要因として重要視されています。
研究の内容からも、ペットロボットは不安感やストレスの軽減に貢献し、認知症の改善・予防の効果が期待できるでしょう。

●うつ病の予防や改善

「老年期のうつ病」は認知症とも関連があり、うつ病から認知症を発症することや、反対に認知症からうつ病を発症することがあるのです。
特に高齢者の多くは「喪失体験」を経験し、人とのつながりや自分の役割、経済面などさまざまなことを喪失することでうつ病を発症しやすい状況にあります。
本来アニマルセラピーはうつ病にも効果的とされており、その代用ができるペットロボットにも予防・改善の効果が期待できるのです。

動物のペットとの違いについて

命を世話するという重みはペットも人も変わりません

通常のペットでは得られないロボットならではの利点もありますので、ここからは主に犬猫と比較しながら違いについて説明します。

●世話をする必要がない

  • 動物を飼うと
  • ○毎日のエサやり
  • ○トイレの片付け
  • ○ワクチンや病気、不調時の対応
  • ○しつけ
  • ○散歩や遊び など

生活する中で必ず行わなければならない仕事が増えます。
役割という面では良い部分でもありますが、楽しみであると同時に義務でもあり、自身の状態によっては負担にもなるのです。
その点ロボットであれば義務的な世話の必要は一切なく、負担を感じる心配がありません。
世話をすることで愛着が湧くという点も大切ですが、無理を強いられればストレスや不調の原因にもなるため注意が必要です。

●ランニングコストが安い

犬や猫を購入する際は、種類やブリーダーにもよりますが20万円〜40万円前後が相場になるでしょう。
ちなみに、前述したアザラシ型ロボットのパロは、最高級のものとして40万円台するロボットです。
国内で最も有名な犬型ロボットであるSONYの「aibo」は、公式ホームページにて本体+ベーシックプランで30万円台で購入することができます。
実は、購入金額の上限で考えれば、動物もロボットも大きな差はありません。
しかし動物の場合は加えてさまざまなランニングコストがかかります。

  • ○エサ代
  • ○トイレに関する費用
  • ○ゲージやお手入れグッズなどのペット用品
  • ○病院代
  • ○壁や家具の破損による費用 など

合計すると毎月数千円は必要になります。
ペットロボットの場合は基本的に充電に必要な電気代や電池交換費用のみなので、追加費用がかなり抑えられるでしょう。

●安全性が高い

動物にも性格の違いや成長過程での元気な時期がありますので、飼い主をけがさせる可能性があります。
噛みつきや引っかきだけでなく、散歩に行った際「引っ張られて転倒した」という事故も発生する危険があるのです。
また、初めて飼う場合にはアレルギー反応が起こる可能性もあるため、健康上のトラブルにも注意しておかなければなりません。
その点、ロボットは危害を加える心配がなく、ぬいぐるみタイプでもアレルギー対策が行われており安心です。

●気軽に導入できる

先ほどは高級なロボットを例に挙げましたが、実際には1万円台から販売されているものもあり、動物とは違い気軽に導入することができます。
触れることで反応が得られるタイプや、言葉によるコミュニケーションができるタイプなど、比較的安価で種類の違うものを複数用意することも可能です。
ペット不可の物件に住んでいる場合は、動物を飼いたくても難しいでしょう。
また、生き物であればいつかは死んでしまうので、精神的なショックからペットロスやうつの原因にもなり得ます。
ペットロボットであればそのようなリスクもなく、お試し気分で手軽に導入しやすいです。

機能 手触り 目的 コスト さまざまな要素を含めてペットロボットを選定する

ペットロボット導入での注意点

最後にペットロボットを介護に活用する際、気をつけておくべきポイントをまとめました。

●種類、機能、コストの差が激しい

ペットロボットの種類は多岐にわたり、それぞれ特徴や機能面に大きな違いがあります。
センサーやAIが使われている高性能なものほど高価になる傾向があり、動物を好みで選ぶよりも選択が難しいかもしれません。
セラピーとして考えると、基本的にはaiboのような動物型のロボットのほうが効果的といえますが、選ぶ視点としては次のようなポイントがあります。

  • ○言葉によるコミュニケーションを重視するか
  • ○より動物らしく触り心地の良いぬいぐるみ型にするか
  • ○高性能で言語認識、感知センサー、AI搭載など多くの機能を求めるか
  • ○反応種類が少なくともコスト面や扱いやすさを重視するか など

●対象者の状態に応じて介入する必要がある

利用する側にも、ある程度操作に対して理解を要するタイプもあるため、購入して置いておけば効果があるというわけではありません。
筑波大学の研究では、高齢者がロボットと接する際、事前に説明や促しを行うほうがセラピー効果が高いという結果が出ています。
理解が不十分な場合には、接し方や操作方法を伝え、充電や電池交換などの簡単なメンテナンスを行える人が必要になるでしょう。
対象者の性格によってはスムーズに受け入れができず、「子供扱いされている」など悪く捉えられる場合もありますので、十分に配慮しなければなりません。
また自発的に移動するロボットの場合は、フラットな場所を確保するなど環境面にも注意が必要です。

●動物とまったく同じ効果が得られるわけではない

ペットロボットの有効性をお伝えしてきましたが、動物のペットには生きているからこその価値や可能性があります。
そのため、ロボットにまったく同じ効果があるというわけではありません。
条件や環境を満たすことができれば、生き物のほうが高いセラピー効果を発揮する場合もあります。
最終的には安全性やコスト面、利用する側がどの程度対応できるかなど、総合的に検討し導入を判断する必要があるのです。

ペットロボットの特性を理解して導入しよう

ペットロボットには、アニマルセラピーのような孤独感を解消する効果があり、心理面を支える貴重な存在になる可能性があります。
購入後の労力やコスト面、高い安全性があることから、動物のペットよりも手軽に導入することが可能です。
対象となる方の性格によっては拒否される場合もありますので、どのような見た目で機能が必要かなど、購入する際は総合的に検討してロボットを選ぶようにしましょう。

参考:
産総研
産総研(2021年7月10日引用)
障害保健福祉研究情報システム ソーシャルロボットと倫理(2021年7月10日引用)
筑波学院大学 高齢者を対象とするロボット・セラピーの研究 ― 実施方法に関する検討 ―(2021年7月10日引用)
事例紹介:特集 ロボット・セラピー導入効果 香川美仁(2021年7月10日引用)
健康長寿ネット 認知症のアニマルセラピー(2021年7月10日引用)
SONY aibo(2021年7月10日引用)

  • 執筆者

    大久保 圭祐

  • 総合病院に6年間勤務し、脳神経外科や整形外科のリハビリテーションを中心に、急性期・回復期・慢性期を経験。その後、介護支援専門員の資格を取得して家族と共に介護事業を設立。代表取締役であると同時に、現場では機能訓練指導員・介護職・ケアマネジャーを勤めプレイングマネージャーとして活躍。現在は、経営業務をメインに記事の監修やライターとしても活動中。

    保有資格等:作業療法士、介護福祉士、介護支援専門員

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