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福祉避難所の利用方法。直接避難してはダメ?対象者・設備・持参すべき物品は?

災害時に介助の必要な高齢者や障がい者などが避難できる「福祉避難所」。
数が少なく一般の避難所と利用方法が違うので、近所の福祉避難所について事前に知っておくことが大切です。
今回は「対象者・設備は?直接避難はOK?持参物は?」などを解説します。

いざというときのために 備えておきたい知識と物品

福祉避難所とは?対象者は?

●福祉避難所とは?

福祉避難所は、災害対策基本法による避難所の1つで、一般の避難所では生活に支障のある「要配慮者」を受け入れる避難所です。
災害時に身を寄せ必要なケアや相談を受けられるよう、市区町村が基準を満たす施設を指定したり協定を結んで確保しています。
全国に一般の指定避難所は78,243カ所あり、そのうち福祉避難所は22,078カ所(2019年10月1日現在)。
数が十分とはいえず、近年の災害の多発により市町村も指定を急いでいます。

介助が必要な高齢者などの要配慮者を受け入れる避難所が福祉避難所です

●受入れ対象者は?

福祉避難所の受入れ対象者(要配慮者)は以下の方々です。

  • ○高齢者(一人暮らし、高齢者のみの世帯、介助が要るなど)
  • ○障がい児・者
  • ○乳幼児や妊産婦
  • ○傷病者
  • ○難病患者
  • ○医療的ケアを要する人、医療的ケア児
     (人工呼吸器や酸素供給装置、胃ろう、痰吸引、経管栄養などのケアが必要な場合)
  • ○上記の者の家族

なお、福祉避難所は在宅の要配慮者が利用対象で、すでに高齢者施設などに入所している方は入所中の施設で対応するので対象外です。

●どこが福祉避難所に指定される?

市区町村から福祉避難所に指定されるのは、建物や立地の安全性・設備やスペース・職員体制などの要件を満たす以下の施設です。

  • ○老人福祉施設(特別養護老人ホーム、老人デイサービス、老人福祉センターなど)
  • ○障害者支援施設など
  • ○児童福祉施設(保育所など)、保健センター
  • ○特別支援学校
  • ○一般の避難所(小中学校、公民館など)
  • ○宿泊施設

※一般の避難所でも、施設の一部を区切ったり空き部屋を使い、要配慮者のための避難スペース「福祉避難室」を設置し、そこで受入れをされる場合もあります。

●福祉避難所はどこに公表されているの?

以前は災害発生前に事前の福祉避難所の公表があまり行われない傾向がありました。
(過去の災害時に福祉避難所に一般の避難者が殺到し混乱を招いた事例があるため。)

しかし2021年5月に「災害対策基本法」と「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」が改正され、「事前に受入れ対象者を決めてから市区町村が福祉避難所に指定された施設を公表する」ことに変更されています。

これにより今後徐々に市区町村のホームページなどで福祉避難所の公表が広まることでしょう。

一般の避難所と設備や環境はどう違う?

では福祉避難所と一般の避難所は設備や環境がどのように違うのでしょうか?
福祉避難所の特徴を挙げてみます。

●福祉避難所の設備・環境

  • ○原則バリアフリーか、障害者用トイレやスロープ・手すりを設置
  • ○ラジオ・文字放送対応テレビ・筆談用具・ファックスなどの確保に努めている
  • ○車いす・歩行器・杖・補聴器・ストーマ装具・酸素ボンベなどの備蓄が図られる
  • ○福祉避難所としての物資(水や食料など)や器材の備蓄が図られる
  • ○要配慮者の特性を踏まえて、避難生活に必要な空間を確保
     (障がい者がパニックになったとき落ち着けるカームダウンスペースなど)
  • ○生活相談員や福祉関係職員などを確保
  • ○連絡責任者が決められ、発災時には速やかに市区町村と連絡を取る体制がある

ただし、避難者が避難先の福祉施設の入所者と同じサービスを受けられるわけではない点、あくまで一時的な避難であり、同行する介助者や家族は福祉避難所の運営に協力を求められる場合もある点などを理解しておきましょう。

利用方法は?福祉避難所に直接避難してもいい?

では「要配慮者」に当てはまる人が福祉避難所を利用したい場合、直接福祉避難所に行ってもいいのでしょうか?

●これまでの利用方法

これまでの福祉避難所への避難手順は以下の通りでした。

これまでの福祉避難所への避難方法
まず一般の避難所に避難(「一次避難」、身の安全確保を優先)
市区町村が福祉避難所への移動希望者数をとりまとめる
後から福祉避難所が開設されたら、移動が必要と判断された要配慮者を移す(「二次避難」)

しかしこれでは一般避難所(体育館など)で体調を崩す要配慮者もあり、災害発生直後の対応ができず、また避難所を移動する負担が大きいことが問題に。

そこで、令和3年5月に「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」>が改正され、以下のように変わりました。

福祉避難所が新たに公示されることも 持参物の見直し時に合わせてチェックしよう

●新しくガイドラインが変更されてからの利用方法

令和3年(2021年)5月以降、市区町村の福祉避難所運営について、国のガイドラインが新しく変更され、事前に要配慮者を把握して、どこの福祉避難所がどの要配慮者を受け入れるか指定して公示することになりました。

※注意※
ただし、このガイドラインは改正されたばかりなので、しばらくは市区町村の体制が整うまで「これまでの避難方法」が続くと思われます。
したがって、お近くの福祉避難所の受入れ対象者が公示されるまでは、以前と同じく「まず一般避難所へ避難→あとから福祉避難所へ避難」の手順になると考えられます。

福祉避難所への新たな避難方法(公示後)
事前に市区町村が要配慮者を把握し、各指定福祉避難所で受け入れる対象者を調整する
市区町村が指定福祉避難所ごとの受入れ対象者を公示する
災害が発生し避難するとき、要配慮者は開設された福祉避難所に直接避難する
※ただし事前に指定され公示された福祉避難所に避難

(要配慮者の把握には、既存の「避難行動要支援者名簿」「個別避難計画」「障害児・者サービスの利用情報」などを活用)

また公示の方法はガイドラインでこのような形式が紹介されています。

<公示例>※実際の基準は市区町村で異なります

名称 受入対象者
社会福祉法人〇〇苑 高齢者(要介護3程度)
〇〇高齢者福祉センター 市が特定した者
▲▲障害者センター 身体障害者(視覚障害者、聴覚障害者)
□□特別支援学校 在校生、卒業生、市が特定した者
〇〇地区センター 妊産婦・乳幼児
△△地区センター 要配慮者(※受入れ対象者を特定しない)

※家族等も受入対象とする

なお福祉避難所のすべてが発災時に開設されるとは限らないので、これまで通り一般避難所への避難も想定し、場所を確認しておくことが大切です。

福祉避難所の利用について最新の情報を確認したい場合は、事前に各市区町村に問い合わせしておくとよいでしょう。

福祉避難所への避難で持っていくと便利な物品は?

適切なサポートを受けるためにお薬手帳やヘルプカードなどの自分の状態がわかるものも忘れずに

福祉避難所に要配慮者の人が避難するとき、一般的な避難用具に加えて持っていくとよい物をリストアップしました。
個々でニーズは違うでしょうが、避難グッズ準備の参考にしてください。

【福祉避難所に持っていくとよい物品】

●手元を照らすライト(自立するタイプ)

昼夜問わず介護や医療的ケアが必要な場合に、手元を照らせるライト
(手で持たず床やテーブルに置ける自立タイプ、手回しで充電できるタイプが便利)

●かかりつけ医に処方された「薬」と「お薬手帳」

普段服用している薬・頓服で出ている薬・お薬手帳も忘れずに

●介護食・とろみをつける「とろみ剤」

レトルトの介護食や、お茶や汁物に使う「とろみ剤」も用意しておくと食事が安心
(福祉避難所といえども個別の嚥下機能や病状にあう食事が手に入るとは限らないため)

●「介護保険被保険者証」・「障害者手帳」・「障害福祉サービス受給者証」など

すぐに要配慮者だと判断されるよう、介護度や福祉サービスを利用していることがわかるものがあれば、念のため持参を
(福祉避難所は受入れ要件に「要介護3以上」など一定の基準を設けている場合がある)

●持病のある人は「救急医療情報キット」「ヘルプカード」など

自治体によっては、「救急医療情報キット」を役所の福祉課などで配布しています。
(冷蔵庫の中に入れておくと119番に電話したとき、救急隊員が持病やかかりつけ医・担当ケアマネジャーを知ることができる情報用紙の入ったキット)
持病があったり介護・福祉サービスを受けている人は、これを冷蔵庫に入れ、避難グッズにも用紙をコピーして入れておくと、被災して混乱しているときもうまく説明できます。
例:目黒区「防災・救急医療情報キット」

●知的・発達・精神障がいのある方は「症状や特性を書いたもの」を

避難先の環境によって症状が増悪したり混乱する可能性がある知的・発達・精神障がいなどを持つ方は、起こりやすい症状や特性、周囲に対応してほしい方法を書いた紙を持っておくと避難所スタッフもわかりやすい
(以下のようなダウンロードして記入できるフォーマットもある)
例:NHK「わたしのトリセツ(取扱説明書)」※発達障がい者向け

●人工呼吸器や吸引器を使っている方は「電気がなくても使えるもの」を

人工呼吸器を利用している方はかかりつけ医や訪問看護に災害時はどこへ避難すべきか優先順位を確認し、電源が無くても呼吸や吸引を数時間維持できる道具を用意する
(医療機関に搬送が必要でも時間がかかる恐れがあるため)
また、自治体によっては「緊急医療手帳」「災害時ハンドブック」「災害時対応ノート(災害対策ノート)」など、災害時の医療ケアの情報をまとめることができるフォーマットを用意しているところもあるので、そちらにも記入して持っておく
例:堺市「私の災害時対応ハンドブック~人工呼吸器等をご利用の方へ~」

まずは地元の「福祉避難所」の情報確認を!

災害時には、福祉サービスや在宅ケアを受けている方などは「福祉避難所」の選択肢も。
事前に受入れ対象者(介護度や障害レベルなど)の情報を市区町村のホームページなどで確認しておくことが大切です。
情報がまだ公示されていない場合や、迷ったときには安全な場所に一般の避難所があればそこにまずは避難し「身の安全を確保」、あとで福祉避難所に移ることもできます。
避難グッズの準備とともに、情報を確認しておきましょう。

福祉避難所についてはこちらの記事もご参照ください。
福祉避難所の現状と課題。「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」改正で何が変わる?

参考:
内閣府 福祉避難所の確保・運営ガイドライン 平成28年4月(令和3年5月改定)(2021年7月12日引用)
内閣府政策統括官付参事官・事務連絡 社会福祉法人等の福祉施設等の指定福祉避難所としての活用に関する協力依頼について(依頼)令和3年5月20日(2021年7月13日引用)
江戸川区 災害時における福祉避難所の設置運営に関する協定(雛型・入所)(2021年7月15日引用)
一般社団法人 日本内科学会 アクションカード在宅医療支援編(2021年7月15日引用)
岡崎市 福祉避難所について(2021年7月16日引用)
上越市 福祉避難所の対象者と避難方法(掲載日:2020年6月15日)(2021年7月19日引用)

  • 執筆者

    湖上ゆうこ

  • 大学の社会福祉専攻を卒業後、内科・リハビリ病棟から精神科まで担う医療法人でソーシャルワーカーを勤めました。医療相談・地域連携をはじめ、入所施設の当直シフトもこなしていました。出産後はライターに転身。我が子の療育先で「やっぱりケアの専門職はすごい!」と感嘆する日々。多くの患者様やご家族の声に向き合った経験を活かし、一般の方には分かりやすい制度や社会資源の説明を、経営者・施設職員・コメディカルの方には明日の実践のヒントとなる情報をお届けします。

    保有資格:社会福祉士、精神保健福祉士

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