視覚障害者でも、AIと音声でまわりの状況がよくわかる。活用する6つのメリットをご紹介
視覚障害のある方にとって、周囲の状況を把握することは苦労が伴います。
この助けとなるべく、AIと音声を使って周囲の状況を教えてくれる「視覚障害者の目」となるツールが登場しています。
本記事では6つのメリットを取り上げ、解説します。
周囲の状況を音声で伝えてくれるサービス
「視覚障害者の目」となるツールは、周囲の状況をAIを使って、自動で認識することが特徴です。
その内容は音声で、利用者に伝えられます。
機器の形状も以下の通り、多種多様です。
- ○メガネに装着するタイプ
- ○スマートフォン
- ○スーツケース型
また音声は、以下の機器を使って聞くことができます。
- ○耳元、または耳の近くに設置したスピーカー
- ○スマートフォンアプリ
- ○Bluetooth®機器
視覚障害者に向けた設備には点字などがありますが、すべての箇所に設置されているとは限りません。
「視覚障害者の目」となるツールを活用することで、どこにいても周りの状況を認識でき、安全かつ適切に判断し行動することが可能となります。
加えて、生きる喜びを感じるシーンも増えることが期待できます。
「視覚障害者の目」になるツールを活用する6つのメリット
AIを用いた「視覚障害者の目」となるツールの活用には、6つのメリットがあります。
ツールを使いこなすことで安全に暮らせるだけでなく、日々の喜びや楽しみを増やせます。
また能力次第で、仕事での活躍も期待できます。
それぞれのメリットを、順に確認していきましょう。
●メリット1:周りの人が誰かわかり、人や物とぶつからずに済む
「視覚障害者の目」となるツールは、以下に挙げる2つの機能を持っています。
- 1)誰か近づいて来た、または近くに障害物があることを知らせる機能
- 2)近くにいる人が誰かを知らせる機能
1番は、安全な歩行を行うために欠かせない機能です。
白杖を使わなくても人や障害物の存在を認識できることは、快適な歩行に役立ちます。
機器によっては、マスクをしているかどうかを知らせてくれるものもあります。
加えて近くに人がいる場合、その方が知り合いであれば、誰なのかを認識することも可能です。
これはAIを用いたツールならではの特徴。
相手が誰かすぐにわかるため、コミュニケーションもスムーズに進み、豊かな生活にも貢献します。
●メリット2:子どもの様子や、人の表情もわかる
「視覚障害者の目」となるツールは以下の通り、近くにいる人の状況も知らせてくれます。
- ○子どもが何をしているか
- ○性別や年齢
- ○ほかの人の表情
積極的な活用により、状況に合わせた適切な対応を行えます。
●メリット3:書類に書かれた文字を自動で読み取り、音声で読み上げ可能
文字ならばなんでも読み取れる点も、強みの1つに挙げられます。
たとえば、以下の内容も音声で教えてもらえます。
- ○ビジネス文書の内容
- ○名刺
- ○電子メールの内容
- ○郵便物
- ○新聞や本に書かれている内容
- ○紙幣(1,000円札、5,000円札、1万円札の区別)
- ○現在時刻
日常生活から専門的な内容まで、幅広く対応。
どのようなシーンでも、あなたの理解を助ける心強いツールです。
●メリット4:街の標識や看板の内容もわかる。ナビゲーションできる機器もある
街なかで見かける標識や看板、建物内の部屋番号も、書類などと同じ要領で簡単に読み取ってくれます。
安全な歩行を行えるとともに、目的地をスムーズに見つける手助けとなるメリットは見逃せません。
加えて機器によってはスマートフォンと連動し、目的地まで声を使ってナビゲーションしてくれるものもあります。
スムーズに移動する上で、大変便利な機能といえるでしょう。
●メリット5:メニューの内容や商品名、価格もわかる
飲食店のメニュー選びや、ショップでの商品選びは楽しいもの。
視覚障害者の方もこのツールを活用し、好みのものを選べます。
読み取れる項目は、以下の通り多彩です。
- ○メニューの内容
- ○商品名
- ○製品ラベルやパッケージに記載された内容
なかには商品につけられたバーコードやRFIDタグを読み取り、製品の詳細や価格を知らせてくれる機器もあります。
街なかでも一人で思いのままに過ごせることは、活用する大きなメリットといえるでしょう。
●メリット6:色や室内の明るさ、風景も音声で伝えられる
ツールのなかには、色や室内の明るさを知らせてくれるものもあります。
これにより、以下のことも可能です。
- ○好きな色の服を選ぶ
- ○室内の明るさを知らせる
- ○照明を消したかどうか確認できる
加えて、どのような風景か声で知らせてくれるものもあります。
海や高原、観光地に行く際には、楽しむための重要なアイテムとなるでしょう。
普及には、周囲の温かい目が重要
「視覚障害者の目」となるツールはその特性上、多少なりとも音声が発せられることは避けられません。
その場に居合わせた方のなかには、この声が気になる方もいるでしょう。
しかしツールが発する音声は、視覚障害者にとっては命綱となり得る重要な情報です。
また商品や看板など、さまざまな物にスマートフォンを向けている方を見かけたからといって、写真や動画を撮っていると決めつけてはいけません。
それは、本記事で紹介したサービスの利用者という場合もあるためです。
このため周りの方は寛容な心を持ち、温かい目で見守ることが重要です。
ツールの活用で、いきいきとした生活や仕事が行える
「視覚障害者の目」となるツールの活用により、日々の生活や仕事をスムーズに行えます。
またより良いコミュニケーションを取れ、好きなことをしやすくなる点も大きなメリット。
いきいきとした日々の生活や仕事の実現に、大きく貢献します。
将来は一歩進めて、「目が見えない方でも、あたかも見えるような感覚を提供する」サービスの登場も期待されます。
より良い日々を過ごすため、活用を検討してみてはいかがでしょうか。
参考:
Verizon Media Japan TechCrunch 視覚障がい者のためのAI視覚をテーマとするSight Tech Globalカンファレンス開催(2021年7月22日引用)
オージー技研 障害物や周囲の情報をセンサーで検知。音声や振動で伝えるスマート白杖(はくじょう)への期待(2021年7月25日引用)
OrCam Technologies Ltd. OrCam MyEye(2021年7月22日引用)
OrCam Technologies Ltd. 前川 裕美さん 「OrCamで人生がかわりました。」(2021年7月22日引用)
OrCam Technologies Ltd. OrCam MyEye 2 オーカムマイアイ2(2021年7月22日引用)
OrCam Technologies Ltd. オーカムマイアイ2で文章を読むには(2021年7月22日引用)
OrCam Technologies Ltd. オーカムについて(2021年7月25日引用)
毎日新聞社 AIで視覚障害者の「目」になるアプリ カメラの先の物や人を読み上げ MSが開発(2021年7月22日引用)
朝日インタラクティブ 視覚障害者の「目」を代替する「Seeing AI」–日本MSが日本語版をリリース(2021年7月22日引用)
マイクロソフト Seeing AI に日本語版が登場(2021年7月22日引用)
日本マイクロソフト [マイクロソフトフィランソロピー] 視覚障碍者向けトーキングカメラ アプリ: Story with Seeing AI | 日本マイクロソフト(2021年7月22日引用)
インプレス 日本マイクロソフト、視覚障碍者の“眼”となるSeeing AIの日本語版をiOSで提供開始(2021年7月22日引用)
アップル Seeing AI 視覚障碍者向けトーキングカメラ(2021年7月22日引用)
アイティメディア 視覚障害者を支援するAIスーツケースが実証実験開始、コンソーシアムも発足(2021年7月22日引用)
一般社団法人 次世代移動支援技術開発コンソーシアム AIスーツケース・デモンストレーション@コレド室町(日本橋)(2021年7月22日引用)
-
執筆者
-
千葉県在住で、ITエンジニアとして約14年間の勤務経験があります。過去には家族が特別養護老人ホームに入所していたこともありました。2018年からは関東にある私大薬学部の模擬患者として、学生の教育にも協力しています。
現在はライターとして、OG WellnessのほかにもIT系のWebサイトなどで読者に役立つ記事を寄稿しています。
保有資格:第二種電気工事士、テクニカルエンジニア(システム管理)、初級システムアドミニストレータ