特養、老健、療養病床はすべて役割が違う。どの施設に入所するか?誰に相談するべきか
介護施設への入所を考えている人は少なくありません。
今回は、各施設の特徴や役割の違い、特養・老健と療養病床との違い、またどのように入所を進めればよいのかをお伝えします。
目次
介護保険施設とは「特養」「老健」「療養病床」の3種類
介護保険施設とは、介護保険が適用となっている3種類の介護施設のことを指します。
- 1)介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
- 2)介護老人保健施設(老健)
- 3)介護療養型医療施設(療養病床)
高齢者の住まいについては、ほかにも「サービス付き高齢者向け住宅」「有料老人ホーム」などがありますが、これらは介護保険施設ではありません。
介護保険施設は、要介護認定を受けた人のみが入所の対象となっています。
月額費用は、介護にかかる費用、居住費、食費などが必要になりますが、有料老人ホームなどとくらべると割安になっています。
それでは、介護保険施設それぞれの特徴や役割について見ていきたいと思います。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は終のすみ家
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)では、原則要介護3以上である方で、在宅生活の継続が難しい方が入所し、介護サービスを受けることができます。
特養には、ユニット型施設(新型)、従来型施設(旧型)の2種類がありますが、近年は入所定員29人以下のユニット型施設である地域密着型特養が増えています。
特養に入所するメリットは、利用料金が比較的低価格で24時間体制の介護を受けられることです。
多くは、看取り介護に取り組んでおり、終身対応が進んでいます。
医療的な対応は、病院ほど厚い対応を受けることはできませんが、終のすみ家として人生の最後の部分を安心して過ごすことができます。
内閣府が2015年(平成27年)12月に発表したデータでは、実際、近年では老人ホームで亡くなられる方が少しずつ増えています。
特養には、原則として要介護度3以上の人しか入所できません。
しかし要介護度1~2の人であっても、在宅生活の継続が難しいのであれば入所することができる場合があります。
介護老人保健施設(老健)は在宅生活の復帰を目指す
介護老人保健施設(老健)は、要介護認定を受けており、かつ在宅復帰が見込める人が入所し、集中的なリハビリテーションを行うことによって在宅での生活の再開を目指します。
たとえば、病気によって入院されていた高齢者が、病気は治療で完治したものの、長期入院により身体機能が低下して、在宅生活が難しくなってしまった場合などに利用します。
入所時には在宅復帰に向けての計画が立てられ、退所日までに在宅復帰を目指しリハビリを行います。
老健には、ユニット型老健(新型)、従来型老健(旧型)の2種類がありますが、最近では医療的ケアに取り組んでいるユニット型老健が増えてきています。
老健と特養の違う点の一つに職員の配置基準があります。
老健では、在宅復帰を目指すという観点から、医師や看護職員、リハビリテーションの専門職である理学療法士などが多く関わっています。
もちろん、日常生活面では介護職員も身の回りのお世話に当たります。
ただし老健では終身に渡る対応はできません。
基本的には入所時に立てられる計画に基づいてリハビリなどが行われ、期間が経過すれば退所することを前提としています。
介護療養型医療施設(療養病床)では慢性的な医療的ケアを
介護療養型医療施設(療養病床)は、病院で行われる急性期治療や回復期治療の必要がない場合に、その後の慢性的な医療的ケアを受けることができる施設です。
要介護1以上の認定を受けている人が入所することができます。
慢性的な医療的ケアとは、たんの吸引、胃ろうや腸ろうによる経管栄養、経鼻経管栄養、酸素吸入などのことを指し、医師、看護師、理学療法士などの機能訓練指導員がこれらの医療的ケアに当たり、日常生活においては介護職員が対応します。
介護療養型医療施設では、入所者100人につき医師が3人配置されていますので、投薬の調整などの医学的管理も行われ、看護師や理学療法士・作業療法士も多く配置されています。
また、多くの療養病床では、急変時には併設されている病院にうつることができます。
しかし、療養病床は削減される流れがあり、2020年に廃止の方向で議論されています。
現在の療養病床については、医療型療養病床、新型老健、有料老人ホームなど新しい制度で行われる施設に転換される予定になっています。
今後入所を希望される場合には、その施設が今後どのような方向に進んでいくのかしっかりと聞いておく必要があります。
施設入所はどこに相談すればいい?
介護保険3施設はどれも特徴を持っており、それぞれ異なった役割を担っています。
入所を検討する際は、ご本人のニーズに合わせて選ぶと良いでしょう。
ただし、施設の現状を把握しておくことも重要となります。
たとえば特養では、人気の高いところでは数年待っても入所できないところもあり、
老健においては、在宅生活の再開が高いハードルとなってしまうことがあります。
さらに療養病床では、上述したように今後大きな方向転換がある可能性があります。
こうした現状を十分理解したうえで、どの施設を選ぶかについては、在宅ケアマネジャーや病院のソーシャルワーカー、地域包括支援センターなどと相談して、早めに進めておきましょう。
まとめ
介護保険3施設は、それぞれの役割ごとに入所者のニーズに応えています。
その役割の違いを理解することが、今後どのように介護施設を選んでいけばいいのかといった判断材料になります。
介護が必要な本人と家族、双方にとって安心できる環境を探すことが大事です。
参考:
内閣府 死亡数の年次推移
厚生労働省 介護保険3施設の概要(平成30年1月9日引用)