食事で大切なのは栄養バランスだけじゃない!より元気に過ごすために改めて考えたい、食事における3つのポイント
栄養バランスのとれた食事が大切なことは、どなたでもご存知かとは思います。
しかし一方で、本当に栄養バランスがとれた食事だけが、良い食事なのでしょうか?
今回は、意外と見落としがちな食事における重要なポイントを3つ、ご紹介します。
皆さんも食事について、こんな見落としをしてしまってはいませんか?
どんなにおいしい食事でも、一人で食べると味気ない
食事は、人生において楽しみの一つです。
しかし、栄養バランスや介助などに気を取られ、食事が「楽しみの時間」ではなくなってしまった結果、食事に対する意欲そのものが低下してしまうことがあります。
筆者も実際に訪問看護師からこんな話を聞いたことがあります。
軽度の認知症がある一人暮らしの女性のために、ケアマネジャーが宅配のお弁当を手配しました。
そのお弁当は栄養バランスがとれたおいしいと評判のものでしたが、その女性は手配されたお弁当のうち、いつも半分以上箸をつけていませんでした。
心配したケアマネジャーが訪問し、お弁当を食べる様子を見学しようとしたところ、その方は笑顔でケアマネジャーと話しながら、お弁当を食べ始めました。
そして宅配を開始して初めてきれいに、お食事をすべて召し上がったそうです。
食事が終わった後、女性は笑顔でケアマネジャーにこう言いました。
「明日も来てくれるの?一人じゃなかったから、食事がおいしかったわ」
どんなに栄養バランスが良くておいしい食事でも、一人で食べることによって食事に対する意欲が下がってしまうことがあります。
飲み込みなど、体の機能面を見ることももちろん大切ですが、それと同等かそれ以上に、こういった部分まで考えたうえで対応することが大切なのだと教えていただいたケースでした。
今回のように「一緒に食事を取るようにしたことで、食事量が増えた」というケースは、決して珍しいものではありません。
もし、ご家族に食事量が少なく、どうすればよいか迷っている方がいたら、まずはできる限り複数人で食事をしてみてはいかがでしょうか。
たったそれだけで、食事量が大きく改善できるかもしれません。
「外では食べられるのに」の原因、実は使う食器類にあるかも?
お昼はデイサービスで一人で食べられているのに、夜や朝はご家族の介助がないと食べられない。
さてはデイサービスでは職員の方に遠慮しているから食べられているのでは?
そう考えてしまいがちですが、実はこの原因は、食事内容や介助する人によるものではなく、食事の際に利用する食器やスプーン、フォークの違いかもしれません。
病気などによって自力で食べることが難しい方を対象とし、現在は「自助具」といってさまざまな工夫を凝らした食器やスプーン・フォークが多数作成されています。
よって、デイサービスではその方にあった自助具を利用することで、食事がスムーズに取れている可能性があるのです。
もし、デイサービスや病院などでは自力で食事ができているのに自宅ではできない、ということがある場合には、リハビリ専門職の方へ自助具の相談をしましょう。
あるいは直接デイサービスや病院へ、どのような自助具を使っているのかを相談し、なにをどのように使うことで食事を摂取できているのか、できれば食事の様子を見学させてもらえるとよいでしょう。
食事=食べることだけで終わらせない!
介護が必要な状態になると、つい食器のセッティングから運搬まで、すべて介助してしまいがちです。
しかしこれらの行為一つひとつが、実は良いリハビリにもつながります。
一緒にご飯をよそう、食事を運ぶなど、できる限りご自身でやっていただくことで、食事の場がそのままリハビリにもつながります。
また、家庭内におけるご自身の役割をお願いすることで、その方にとっても日々の生活に張り合いを持たせることができます。
実際に筆者が勤務した施設では、入居者さん一人ひとりに対し、それぞれ役割がありました。
手足に軽い麻痺があるAさんは、食事前後にテーブルをきれいに拭きます。
車いすのBさんは、テーブルに置いてあるティッシュの残量をチェックする係。
軽度の認知症があるCさんは、キッチンカートへ食事を置き、自分の食事は自分で運んでいただく。
このように、ご自身でできる範囲の役割をこなしていただくことで、それまでただ座っているだけだった各利用者さんの表情が徐々に明るくなり、数カ月後にはもっと食事に関わりたいと、レクリエーションとして料理教室が開催されるまでになりました。
このように、食事はただ食べるだけで終わり、ではありません。
それにプラスして役割を依頼することで、リハビリになる可能性もあるのです。
まとめ
食事は、楽しみ。
この一見当たり前のようなことが、介護となると難しくなってしまう現状があります。
だからこそ、食事についてつらいと少しでも感じるようなことがあれば、すぐに担当のケアマネジャーなり、利用している施設のスタッフへ相談してみてください。
きっとまた、食事が楽しみになるような、意外な解決or対策方法を教えてくれるでしょう。
参考:
前田佳予子他:「食」とは命と生活の根幹だ:医療と介護Next:2016年2巻2号:pp04-33