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歩行障害・認知症・尿失禁。その認知症、治療できるかもしれません。特発性正常圧水頭症(iNPH)をご存じですか?その1

特発性正常圧水頭症(以下、iNPH)。
この病名を一度も聞いたことがない、という方も多いのではないでしょうか。
認知度が低い病気であるため見逃されることも多く、実際には多くの患者さんがいると考えられています。
しかし、この病気が原因で引き起こされた認知症は、早期治療で治る可能性が高いのでぜひ知っていただきたいと思います。

「認知症」と「老化による物忘れ」はイコールではありません

これは物忘れ

老化現象がひどくなったものを認知症だとお考えの方が多いですが、そうではありません。
認知症について厚生労働省は、
「いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったためにさまざまな障害が起こり、生活するうえで支障がでている状態」
と定義しています。
つまり、原因となる何らかの疾患があり、それによって引き起こされた症状が認知症なのです。
認知症の原因になる疾患で一番多いのはアルツハイマー病で、全体の約70%を占めています。
次に脳血管障害(脳梗塞や脳出血など)で約20%、レビー小体型約5%、その他と続きます。
これらの病気にご高齢の方全員がかかるわけではないので、「年をとればみんな認知症になる」ということはありません。
とはいえ、誰でも高齢になればちょっとしたことでも忘れやすくなり、その物忘れが認知症の始まりではないかと不安になるのは最もなことです。
筆者は訪問看護師ですが、訪問先で利用者さんになにか質問をしたときに、なかなか思い出すことができず「ぼけちゃったのかしら」と気にされる方がいます。
認知症の方の場合は忘れている自覚がなく、その事がらの全体を忘れてしまっているため、そのたびに筆者は「自覚があるなら大丈夫ですよ」と説明しています。

朝食を例に説明しましょう。
老化による物忘れの場合は、朝食のメニューを思い出すことができなくても食べたことは覚えています。
メニューも「卵料理」などのヒントを与えると思い出すことができます。
しかし認知症では、朝食をとったこと自体を忘れてしまいます。
本人には朝食をとった記憶がないので「食べさせてもらえない」と訴えることもあるでしょう。
このように、認知症と老化による物忘れには大きな違いがあり、朝食を食べたこと自体を覚えていれば、まず心配することはありません。

「治る認知症」と「治らない認知症」はなにが違う?

アルツハイマー病やレビー小体型認知症は神経変性疾患(しんけいへんせいしっかん)といって、神経細胞が少しずつ障害を受けて壊れていく病気です。
このうち、アルツハイマー病は、脳内にたまった異常なたんぱくによって脳の神経細胞が壊され、脳が委縮(ちぢむこと)することで、認知症が進んでいきます。
なぜ発症するのか、その原因はわかっていません。

一方、脳血管障害は、脳の血管が詰まってしまう脳梗塞や、血管が破れてしまう脳出血などによって、その先の脳に栄養が送られず細胞が死んでしまう病気です。
原因は高血圧や糖尿病などの生活習慣病です。
ではなぜ、これらの認知症は一度発症すると治らないといわれているのでしょうか。
通常、ヒトはけがや骨折をしても治療をすれば傷は治り、骨はつながります。
これは、傷ついた部位の細胞が分裂して組織を再生するからです。
しかし、脳は一度細胞が死んでしまうと再生できないという特徴のある臓器です。
アルツハイマー病やレビー小体型、脳血管障害では脳細胞が死んでしまいますから、残念ながら病気が治る(脳細胞が再生する)ことはありません。
つまり、原因となる病気が治らなければ、それによって引き起こされた認知症も治らないということになります。
ところが、認知症のなかには治療すれば治るものも一部ですが存在するのです。
それが、慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症などです。

慢性硬膜下血腫は硬膜の下に血液がたまって脳を圧迫する病気、正常圧水頭症は頭のなかに水がたまって脳を圧迫する病気であり、いずれも脳そのものが損傷を受けたわけではありません。
つまり、たまった血液や水を取り除けば、脳を圧迫するものがなくなるため、症状も改善するのです。
脳そのものが傷ついていないこと。
それが「治る認知症」といわれるゆえんです。
慢性硬膜下血腫は以前ご紹介しましたので、今回は正常圧水頭症に焦点を当ててご紹介したいと思います。

水頭症は「頭のなかに水がたまる」病気です

頭のなかに「水」がたまるといっても、水道水がたまるわけではありません。
水というのは脳脊髄液(のうせきずいえき)のことで、通常は髄液(ずいえき)とよばれています。
まずは髄液についてご説明します。

●髄液は、絶えず産生・循環・吸収を繰り返し、量はいつも一定に保たれている

皆さんは「脳」というと、隙間なくギュッと身が詰まった塊を想像するのではないでしょうか。
実は、脳の真んなかには脳室(のうしつ)という空間があります。
髄液はこのなかでつくり出されて、脳室を出たあとは脳と脊髄(背骨のなかにある大切な神経)の周りを流れたあと、再び体内へ吸収されます。
この一連の流れがスムーズなとき、髄液はいつも同じ量(全部で約130ml)に保たれています。
水頭症は、この一連の流れが悪くなったり吸収がうまくいかなかったりして、過剰な髄液がたまった状態になることで起こります。

●idiopathic normal pressure hydrocephalus 特発性正常圧水頭症(iNPH)

水がたまると脳内の圧が高まる

成人では頭蓋骨の大きさは決まっており、中身が増えたからといって大きくなったりはしません。

入れ物(頭蓋骨)の大きさは変わらないのですから、中身が増えると内部の圧が高くなります。
これを頭蓋内圧亢進(ずがいないあつこうしん)といいます。
頭蓋内の中身が増えてしまう水頭症は、当然内圧は亢進するのですが、なかには一部内圧が変わらないタイプのものも存在します。
このように頭蓋内圧が変わらないものを「正常圧」水頭症といい、脳出血などのあとにおこる続発性正常圧水頭症と、高齢者に多く見られ、はっきりした原因がない特発性正常圧水頭症(iNPH)に分けられています。
この病気の特徴的な症状は歩行障害・認知症・尿失禁ですが、続発性の場合は原因が分かっているので、見逃されることはありません。
問題になるのは、原因がわからず、いつの間にか発症している特発性のほうです。

まとめ

認知症は一度発症してしまったら、少しずつ進行していくものがほとんどです。
しかし治療できる認知症は、適切な治療を行えば進行は止まり、回復することも十分期待できるのです。
iNPHはテレビなどで取り上げられる機会も増えてきましたが、いまだ認知度が高いとはいえません。
しかし、今後ますます高齢化が進み、認知症の患者さんも増えるであろう日本において、iNPHは重要な病気です。
本記事その2では、iNPHを中心にご紹介するとともに、早期治療の必要性についてお話します。

参考:
厚生労働省 認知症とは

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