ヒートショックはなりやすい人がいる?高齢者はぜひチェックしたい対策方法を解説!
ヒートショック。
主に寒い時期に起こるこの現象は、突然死や重篤な症状を引き起こす原因の一つとされており、事前の対策が必要です。
しかし、言葉自体は聞いたことがあるけれど具体的にどうすればいいのか、ご存知でない方も多いかと思います。
そこで今回は、ヒートショックについての解説および対策方法をご紹介します!
ヒートショックは血圧の急激な変動によって起きる!
ヒートショックとは、急激な温度の変化によって、体内の血液循環に異常をきたす現象を言います。
血液循環、というと少し難しくなりますが、まず押さえておきたいのが、周囲の温度と血管の関係です。
人の体内には大小さまざまな血管が張り巡らされており、隅々まで血液を送りだすために、血管はゴムのように柔らかく、弾力があります。
そして、心臓の鼓動に合わせて血管が収縮することで、全身に血液を送り込んでいます。
血管の収縮は外部の温度の影響を受け、寒い場所では血管を縮めて、内部に熱がたまりやすいようにする一方、暑い場所では逆に血管が拡張することで、熱を外部へ分散させます。
よって、暖かい場所から急に寒いところへ行くと、血管が急激に収縮するため、血圧がグンと上がり、寒いところから急に暑い場所に行くと、血管は今度は急激に拡張するため、血圧がグンと下がってしまいます。
このため、寒い時期の入浴は、寒い脱衣所から急に熱いお湯に浸かることにより、簡単に大きい温度差を引き起こしやすく、それが血圧を急激に上下させてしまいます。
この大きな温度差がヒートショックと呼ばれる現象の大きな要因であり、重篤な症状を引き起こしかねない原因とされています。
●ヒートショックは冬だけに起こる!?
ヒートショックという言葉は、秋から冬と、主に寒い時期によく聞かれる言葉です。
なぜ、主に寒い時期にはよく聞かれ、春や夏にはほとんど聞かれないのでしょうか。
それは、この現象が「温度差」によって起こりやすくなるからです。
東京ガスの調査によると、夏は室温とお湯の温度差が13℃だったのに対し、冬は温度差が32℃と、その差が約20℃にも上ることが分かっています。
厳密に何度温度差があるとヒートショックが起こる、という定義はありませんが、温度差があればあるほど起こりやすくなることは確かです。
その証拠に、気温が低くなる時期に合わせて浴室での死亡数は増え、気温が高くなる時期に合わせて死亡数は減少することが分かっています。
そのため、寒くなる時期に集中して注意喚起が行われる、というわけです。
高齢者や高血圧の人は、ヒートショックが死亡原因にもなりうる!?
激しい気温差による血圧への影響は、誰でも受けるものです。
ではなぜ、特に高齢者は注意しなくてはいけないのでしょうか。
2010年国民健康・栄養調査によると、30歳以上の日本人男性の60%、女性の45%が高血圧と判定され、50歳代以上の男性と60歳代以上の女性では60%を超えています。
よって、年齢を重ねれば重ねるほど、高血圧の方の割合が増える、ということが言えます。
高血圧であるということは、より血圧の変動が激しくなってしまうため、重篤な症状を引き起こすリスクは高くなります。
また、血管は年齢を重ねるごとにどんどん伸縮性が弱まってきます。
このことが高血圧を招くとともに、急激な温度差によってさらに血管の収縮性が弱まり、結果としてさまざまな症状を引き起こしてしまうことが考えられるのです。
高血圧の割合が高くなること、そして加齢とともに血管自体がもろくなっていること。
この2つの理由から、特に高齢者に対し注意喚起が行われているのです。
そして、特に重篤な症状を引き起こしやすいのが、もともと高血圧の方や高齢者が発症しやすいとされている、以下の2つの病気です。
●脳卒中
脳卒中とは、脳梗塞と脳出血という、脳の重篤な病気を2つ合わせた総称です。
脳梗塞は脳そのものに栄養や酸素を送るための血管の一部が詰まってしまうことで、さまざまな症状が現れます。
詰まってしまった血管が大きければ大きいほど、脳へのダメージは大きくなり、なかには命に関わるほど重篤となるケースもあります。
一方、脳出血は血管が破れてしまうことで出血を起こしてしまう状態を言います。
脳出血の場合、出血そのものも、もちろん恐ろしいのですが、血液が硬い頭蓋骨の中にたまり、脳そのものを圧迫してしまうことも問題となります。
そのため、脳梗塞と脳出血、どちらも発症することで命に関わる重篤な病気とされています。
●心筋梗塞
脳卒中とともに、発症すると命に関わる病気が心筋梗塞です。
心筋梗塞とは、心臓が動けるように栄養や酸素を送る血管の一部が詰まり、心臓が正しく動かなくなってしまうことで起こります。
ヒートショックでは特にこの急性心筋梗塞によって心臓が突然動かなくなることが原因で死亡に至るケースが少なくありません。
ポイントは「温度差をどうやって解消するか」
ヒートショックは、急激な温度差によって引き起こされるため、予防するためには、温度差を極力少なくすることが重要となります。
しかし、浴室および脱衣所に暖房設備を設置している住宅は少ないのが現状です。
東京ガスの調査によると、高齢者が多く住む築20年以上の戸建住宅の8割は、暖房のない浴室であることが分かっています。
また、日常生活においてトイレや浴室で暖房を使用している人は2割程度にとどまり、100%の使用率である居間と比較すると、極端に低い数字となっています。
長い時間滞在する居間と違い、浴室やトイレなどは短時間しか滞在しないため、「もったいない」という気持ちが働くことは事実です。
電気代やガス代を節約するために、居間の暖房もつけっぱなしにしない、というご家庭も多いかと思います。
実際に筆者の実家も暖房は控えめにすることが習慣となっており、普段は重ね着をすることで寒さをしのいでいます。
この方法によって確かに日中の寒さはしのげますが、浴室は服を脱ぎ、裸になる場所です。
重ね着によって保たれていた体温が寒い脱衣所によって急激な温度差を生み、それがヒートショックを引き起こす原因となってしまいます。
そこで、今日からできる対策方法を2つ、ご紹介します。
●対策その1 お風呂に入る際はシャワーを併用する
寒い日に熱いお湯を湯船にため、寒い浴室の中で熱いお湯を全身に浴びる。
一見すると、とても気分爽快になる場面ですが、この状態はヒートショックを起こしやすい状態であるとも言えます。
そこで対策として、入浴前から熱めのシャワーを浴室内で出しておき、少しでも浴室を暖めることをおすすめします。
●対策その2 お風呂のドアを開けた状態で湯船の蓋を開け、少し時間を空ける
本来は、浴室や脱衣所にも暖房器具を置き、暖めておくのが一番良い対策です。
暖房器具を準備できない場合でも、お湯を沸かした後にお風呂のドアを開けて脱衣所まで湯船の湯気が行きわたるようにするだけでも、脱衣所の温度を上げることができ、ヒートショックを和らげる効果が期待できます。
たったこれだけでも、体に与える負担の大きい温度差を減らすことが期待できますので、ぜひ試してみてください。
まとめ
ヒートショックが原因と思われる死者数は、一年間で約1万9千人もいると推測され、決して他人事ではありません。
にもかかわらず、認知率は約44.2%、と低くなっており、シニアと呼ばれる高齢者の方では3割弱とその認知率はさらに低下しています。
まず、ヒートショックという言葉の意味を知ること。
そして、適切な対処方法を取ること。
この2つが、冬の突然死を防ぐためには非常に重要となります。
参考:
東京ガス「注意!冬に増加する入浴中の「ヒートショック」の症状とその対策」(2018年2月23日引用)
東京ガス:入浴とヒートショック~シニアの入浴環境の実態と意識~(2018年2月23日引用)
東京ガス:高齢者以外も注意!ヒートショックの原因・症状と対策「ヒートショック予報」による予防とは?(2018年2月23日引用)
嶌田理佳:ヒートショックを予防するための対策:ハートナーシング.メディカ出版,2014年27巻4号,p73
岡庭豊:病気がみえる vol.2 循環器 第4版.メディックメディア社,東京,2017,pp.314-321.
お風呂タイムにご用心! 『ヒートショック』 | 岐阜市にある信頼できるかかりつけ医 あんどう内科クリニック さん
2020年1月26日 11:32 PM
[…] 健康を取り戻すOGスマイル(https://ogw-media.com/smile/cat_doctor/1214)より […]