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治療できる認知症がある?家族に高齢者がいるならぜひ知っておきたい、慢性硬膜下血腫のこと

「治療できる認知症」があることをご存じですか?
認知症の進行を遅らせることはできても、ほとんどの認知症は徐々に進行し、完全に治るということはありません。
ところが、慢性硬膜下血腫が原因で起こっている認知機能の低下は、タイミングを逃さずに治療すれば治ることが多いのです。
そこで今回は、ご家族が急に認知症になったと感じたときのために知っておいてほしい、「慢性硬膜下血腫」についてご紹介します。

慢性硬膜下血腫01

慢性硬膜下血腫かも?~どんな人がなりやすい?転倒歴と3つのポイントをチェック~

買ってきた豆腐を落として中身がつぶれてしまった!
つぶれてしまった豆腐はもう、元の形には戻りません。
私たちの脳も豆腐と同じくらいにやわらかく、つぶれてしまったら元には戻りません。
そんな脆弱な脳を守るために、わたしたちの頭は頭蓋骨という硬いヘルメットで覆われているのです。
さらに、頭蓋骨と脳の間には硬膜・クモ膜・軟膜の三層からなる髄膜(ずいまく)があり、クモ膜と軟膜の隙間は髄液(ずいえき)という水で満たされています。
この髄液がクッションとなり、頭蓋骨と同様に脳を守る役割をしています。
このように、脳は髄液というクッションと、頭蓋骨というヘルメットで二重に保護されているのです。
しかし、これだけ頑丈に守られているにもかかわらず、何らかの原因で脳が傷ついてしまうことがあります。
その一つが、慢性硬膜下血腫です。

●時間がたってから症状が現れる慢性硬膜下血腫

慢性硬膜下血腫02

慢性硬膜下血腫は、頭をぶつけたことをきっかけに、硬膜の下(脳と硬膜の隙間)でじわじわ出血し、血がたまる病気です。
通常は、受傷後三週間以上たってから、頭痛、会話のつじつまが合わない(認知症)、片側の手足に力が入らない(麻痺)、尿失禁などの症状があらわれてきます。
この病気は50代以上の男性に起こりやすく、そのほかに影響を及ぼす要因(リスクファクター)として代表的なものは以下の3つが挙げられます。

  1. 1)高齢
  2. 2)薬
  3. 3)飲酒

高齢者は動脈硬化が進んでおり、ちょっとした衝撃で出血するリスクが高いうえに、脳梗塞後の予防などで、血が固まりにくくなる薬を内服している方も多くいます。
そのため、お酒を飲んで転んでしまった場合に、じわじわとした出血が起こることがあります。
大出血を起こして即座に救急車で運ばれるということではなく、二週間~一カ月程度かけて血腫ができるのが「慢性」と言われるゆえんです。
「最近転びやすくなった」「急に認知症が進んだ」といったような症状が出現した場合、三週間~数カ月前に転んだり、頭をぶつけたりした記憶があれば、慢性硬膜下血腫の可能性も考えてCT検査を受けることを検討しましょう。
筆者は長く脳外科病棟に勤務していた看護師ですが、慢性硬膜下血腫の患者さんのなかには、そんなことで?と思うような受傷時のエピソードがありました。
ドアを開けたときにおでこが軽くぶつかった、畳の部屋で昼寝をしていて寝返りをしたときにちょっと頭をぶつけたなど、ご本人が「頭をぶつけた」と認識しないようなささいなことが、引き金になっていることもあるのです。
なかには、転倒や頭をぶつけた記憶がまったくないという方もいますから、転倒歴があれば慢性硬膜下血腫の可能性がより高まると考えたほうが良いかもしれません。

認知症だと決めつけてしまうまえに、慢性硬膜下血腫を疑ってみて!

慢性硬膜下血腫03

ご家族が認知症になったらどのように感じますか。
年だから仕方がない?周りに知られたくない?
確かに認知症の多くは治ることなく、ゆっくりと進行していきます。
治療をすれば進行を遅らせることもできますが、完全に止めることはできません。
しかし、慢性硬膜下血腫が原因で起きた認知症は、適切な時期に処置を施せば治ることが多いのです。
認知症が、硬膜下血腫によるものかを見分ける明確な基準はありませんが、加齢による認知症が気づかないうちにゆっくり始まるのに対し、慢性硬膜下血腫ではある日突然認知症の症状が始まります。
じわじわ出血して大きくなった血腫が、脳を圧迫し始めると症状がでてくるので、その時期から「急に認知症になった」と感じるのです。

●手術でたまった血を取り除けば、症状も取り除かれる

原則として慢性硬膜下血腫と診断されれば、手術で血を取り除きます。
たまった血が取り除かれると、脳への圧迫もなくなりますから、症状は速やかに改善していきます。
後遺症もほとんど残りません。
しかし、受診のタイミングが遅れてしまうと後遺症が残ってしまう場合があるため、回復不能なダメージを受けるまえに、処置をしなければなりません。
先にお話ししたように、完全につぶれてしまった脳は元には戻りませんから、症状に気づいたらできるだけ早く受診することが大切です。

日常生活の予防策は、転ばせない環境づくり

慢性硬膜下血腫04

年齢や性別を変えたり、脳梗塞を予防するためのお薬などをやめることはできませんから、慢性硬膜下血腫の一番の予防は転ばせないことといえます。
とはいえ、高齢者は非常に転びやすいものです。
高齢者が転びやすい要因は、体力や筋力の低下、飲んでいる薬などご本人側によるものと、とりまく環境などご本人以外のものとに分けられます。
ここからは、転ばせない環境づくりについてお話したいと思います。
平成28年度版高齢者白書によると、65歳以上の高齢者の事故発生場所は「居室」が45%と最も高く、次いで「階段」、「台所・食堂」となっています。
この結果からもわかるように、高齢者の事故の多くは住宅内で発生しているため、まずは自宅内の環境を見直すことが大切です。
さらに、厚生労働省の人口動態統計をみてみると、家庭内における転倒・転落の原因として、「スリップ、つまずき及びよろめきによる同一平面上の転倒」が、65歳以上の高齢者で群をぬいて多くなっています。
この問題においての「同一平面上の転倒」とは、障害物がない平らな場所で転ぶことを意味しており、つまずきやよろめきといった転倒を誘発する原因と、個々の特徴を考慮して環境を整える必要があります。
たとえば、滑りやすさだけを考えればフローリングは危険ですが、すり足で歩く方にとっては滑りにくい床は歩きにくく、逆に転びやすくなってしまいます。
また、階段を降りる際、足元が暗いと危険だからと足元灯を新たに設置したものの、今まで習慣になかった「スイッチを押す動作」が増えたことで、逆にスムーズな行動ができなくなってしまうこともあります。
以前筆者も、
「スリッパは滑りやすいから、かかとを覆うタイプの履物にかえてみては?」
とアドバイスをした方が、後日かかとを踏んでよろけながら歩いているのを見てヒヤッとした経験があります。
バリアフリーにするだけが転倒予防対策ではありません。
あくまでも、それぞれの特徴に合った転倒予防対策が必要なのです。

まとめ

高齢化が進む日本では、認知症を発症する方が増えています。
高齢者白書によると、認知症患者は2025年には700万人になると推計されています。(2012年には462万人)
しかし、アルツハイマー型やレビー小体型など有効な治療法のない認知症が多いなか、慢性硬膜下血腫に代表される一部の病気はtreatable dementia(トリータブル・ディメンティア-治療できる認知症)として注目されています。
認知症だから病院に行っても仕方がないと諦めるまえに、「治療できる認知症」の可能性はないのかを確認してみてください。

参考:
内閣府 平成28年度版高齢者白書(2018年2月12日引用)
厚生労働省 人口動態統計 平成21年度(2018年2月12日引用)

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